カタフラクトを乗り回す主人公が居ないから私が乗り回す為のIS 作:銭湯妖精 島風
手足を手錠で拘束され、猿轡と目隠しまでされた私と意識を失ったままの一夏は車に積まれ、そこそこ長い時間を掛けて移動した後、車から降ろされ何処かに運ばれた
金属が擦れる音と肌に触れた感触と温度から推察すると、どうやら鎖も追加された様だ
そして、目隠し越しに日差しを感じないから恐らく室内で監禁されていると推察される
さてどうしたものか、触った感じ手錠の構造に特異な事は無いから、針か針金とか割と細い金属が有れば外す事が可能だろう
あと後ろで手を拘束されているので、少し腕がつりそうだ
なので、とりあえず膝を使い猿轡と目隠しをズラして辺りを見渡す
まだ意識が無い様子の一夏を数m先に発見し、今自分がいる場所が何処かの倉庫の様な場所にいる事を確認して使えそうな物が無いか探す
幸い廃材ばかりで使えそうな物が直ぐに見つかり、足で上手く回収し、手早く手錠を外し鎖は南京錠で閉めてあったのでピッキングの要領で南京錠も外し入り口を見張る黒服にバレない内に一夏へ近寄り揺する
「・・・起きろ、起きろ織斑一夏」
軽く頬を叩くと、ゆっくり目を開けて驚いたのか目を見開き声を出そうとしたので、左手で一夏の口を塞ぎ声を出すなとジェスチャーをすると彼は素直に頷く
「・・・今、鎖を解く」
一夏の鎖の南京錠も外して彼を自由にすると
「なぁ、どっかで会った事は無いか?」
静かに鎖を解きながら彼が私に尋ねる
「・・・それは脱出してからゆっくり話そう、こっち」
近くに落ちていた手頃な縄と鉄パイプを拾い上げて投棄されているコンテナの影へ隠れる
「織斑一夏、貴方と私は彼処に居る黒服によって誘拐されている、恐らくは身代金・・・では無く貴方の姉、織斑千冬の2連覇を阻止したい誰の思惑と私は考えている、だから一刻も早く此処を脱出する必要がある」
私が小声で説明すると、一夏は悔しそうな表情をして少し項垂れるが直ぐに顔を上げ頷く
「残念ながら出入り口は黒服が居る彼処だけ、出入り出来そうな窓には板が打ってあって脱出は難しい、だから彼処の黒服をどうにかしてしまわないと脱出は不可能」
板を外すとなると恐らく音が黒服に聞こえてしまう、なら思い切って出入り口の彼等をどうにかして脱出した方がいい
「どうにかしてって、どうすんだ?」
「・・・今考えてる、待って」
コソッとコンテナの影から黒服を伺うと、入り口でずっと暇そうに立っているだけで、此方を伺う様子も無いので、ささっと移動し、手錠を二つ回収してコンテナの影へ戻る
「これを使って2人まで拘束出来るから、私がどうにかしてして見せる、ついてきて」
「お、おう、俺は何をしたらいい?」
少し戸惑いながら彼が頷きそう言うので
「大丈夫、私に任せて?もしもの時は、これで彼奴等を殴ってくれれば良い、貴方は自分が逃げ切る事だけを考えて」
鉄パイプを彼に渡して、壁伝いに移動し
「カウント3で奇襲を仕掛けて2人は拘束する、貴方は一目散に逃げて、私は私で上手くやるから」
私は不満そうな彼にを無視し、ゆっくり黒服の死角に着き
指を立てカウントする
きっちり3秒カウントし、進行方向に居たジャックに飛び膝蹴りを見舞い、隙を突いて後ろに回り足を払い投げる要領で地面に倒し、手早く手錠を右手と右足に嵌め、拳銃を取り出そうとしているウィルの足を払い、体勢を崩した所に立ち上がる勢いを着け顎へ頭突きをして怯んだ所を一本背負いの要領で投げ、関節技を極める要領で手錠で拘束し辺りを確認する
「もう1人は居ないみたい、今の内に逃げる」
唖然としていた一夏の背中を叩き、走り始める
「お、おう」
2人並んで走り、黒服が使っていた車を発見したので警戒しながら進むと、黒服の最後の1人とガラの悪そうな女が1人立っていて、ガッツリ目が合ってしまった
「・・・一夏、私が隙を作るから、逃げて」
「いや、でも」
私の言葉に食い下がろうと一夏はするが、彼方は許してくれる訳もなく
「ちっ、これだから男はつかえねぇーんだよ。まぁいい確か織斑一夏は人質として殺したらダメだったよなぁ?つー事は女の方は殺しても大丈夫って事だよな?ビル、ウィルとジャックを連れて来い」
「は、はい」
そう言い女の方はISを纏い、此方をニタリと笑みながら見てくる
ビルと呼ばれた黒服はバタバタと仲間の方へ走って行く
これはマズい事になった、手持ちの道具だけじゃ一夏を守り切れ無い
それに千冬さんが決勝を辞退してしまう
父づてでドイツ警察へ通報はされている筈だからもう時期だとは思うんだけど、困った
「・・・一夏、私が食い止めてる間に逃げて、今貴方を守りながらISを相手にする余裕は残念ながら私には無い」
「お前を囮にしろって言うのか?」
「違う、貴方が邪魔なだけ」
食い下がろうとする一夏に嘘をつき、まだ余裕の笑みを浮かべて此方を観察しているISの女を睨む
「一丁前に睨むんじゃねーよ、ガキが」
そう言い女が一気に距離を詰めながらショートブレードを取り出し突き出して来たので、一夏を突き飛ばしわたしも飛び退くが、軽く左腕に触れた様で、血が出る
「一夏逃げて、早く」
縄を両手で張り促す、正直いつまで持つか私も自身は無いのだ
「安心しろ、お前を殺した後にゆっくり追いかけて捕まえてやるからよ」
「性格悪いオバさんだな・・・行け一夏、出来たら早めに味方を呼んで欲しい」
「くっ、クソ!」
一夏が走って行くのを視界の端で捉えつつ目の前の敵に集中する
「んじゃ、今から殺すからな?お前が長生きすればするほど、あのガキの逃げられる時間も増えるから、せいぜい長生きしてくれよ?」
余裕の笑みを浮かべるオバさんに、かなりムカつくが集中し
「それはどうも」
間合いを図り相手の出方を伺う
どうせIS相手では逃げ切る事は困難、致命傷や有効打を与える事は生身では、ほぼ不可能
ならどうにかして時間を稼ぐしかない訳だ
私の気を知ってか知らずかオバさんはショートブレードで斬りつけてきた
軌道を読みギリギリで躱し、縄をオバさんの首に掛け、体重を全て掛けて引っ張り気道を締める
「おちろ、おちろ!!」
「かはっっクソが!クソがぁ!!」
私を振り払おうと暴れ始めるオバさんに対して私は必死に縄を引く
だが努力虚しくISのシールドバリアによって縄は焼き切れ、私は空中に投げ出されオバさんの右ストレートを喰らい骨が軋む嫌な音を聞きながら数m吹っ飛び硬い地面に叩きつけられ何度か転がる
完全に脳を揺らされ猛烈な吐き気と激痛を知覚しながら身体が全く動かせない
オバさんはイライラしているのか何か叫んでいるのだが、意識が混濁しているのか聞き取れない
オバさんが私へショートブレードでトドメを刺そうとしてきたので、最早此処までかと思った瞬間、白銀のISがオバさんを吹っ飛ばして、オバさんは逃げて行った
「おい、大丈夫か?!おい!?」
久しぶりに聞く幼馴染の姉の声は相変わらず、良く通る良い声だと思った瞬間、私の意識はプツリと切れた
次に目を覚ますと病院の、ベッドの上だった
「・・・知らない天井」
何気なく呟くと
「やっと起きたかツェリ、全く心配させやがって」
「・・・父・・・さん?」
身体を起こし左側へ顔を向けると、そこには不器用な私の父が心配そうに椅子に座っていた
どうやら包帯で左側を覆っているので左眼が見えてない様だ
「無茶してんじゃねーよ、母さんも心配してたぞ?帰ったら説教を覚悟しとけ」
「・・・はい」
母さんの事だ、きっと凄い雷が落ちる事になる
今から凄く憂鬱になってしまうが、自分で巻いた種、謹んで受ける事にしよう
「父さん、一夏は?」
「アイツなら無事だ、お前の活躍で目立った怪我もない」
その言葉を聞き安堵する
「良かった、本当に」
そう思い、私は病室の窓の外に広がる空へと目を向けた
ふぅ、漸くプロローグも終わりました
次から本編へ入りたいと思います
ご意見、ご感想、お待ちしております