作者の妄想全開です。
ご注意ください。

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飛騨が死に戻りする話。

(なぜ、私はここにいる?)

 

薄れゆく意識の中で、斎藤飛騨は自分に問う。

 

(確か・・・稲葉山城から逃げ出して、その途中で・・・崖から。)

 

飛騨の頭から流れる血が、地面を赤く染める。

 

(思えば・・・惨めな人生だった。)

 

家柄と無駄な誇りしか持っていなかった飛騨はは、他人に媚びへつらう事しか出来なかった。

 

それが正しいと疑わず、ずっと生きてきた。

 

本当は、(やつ)の生き方が羨ましかったくせに。

 

(もし、やり直せるなら・・・今度こそ・・・)

 

飛騨の意識はそこで途切れた。

 

#####

 

「これは・・・どういうことだ・・・。」

 

目を覚ますと飛騨は、見覚えのある光景の中にいた。

 

(これは確か、織田との戦の時の・・・)

 

かつて、織田が攻め入ってきた戦があった。

 

斎藤は見事それを押し返して見せた。

 

誰もがそれを自らの働きの成果だと疑わなかった。

 

一番の功労者の活躍を讃えはせずに。

 

「飛田殿。」

 

一人の兵が、飛騨に話しかけてくる。

 

「なんだ。」

 

「此度の戦、織田の者共は尻尾をまいて帰っていきましたな。」

 

「・・・そうだな。」

 

男はガハハと笑う。

 

「これも我らの働きあってのもの、

尾張の弱兵など我らにとっては造作もないですなぁ。」

 

「・・・」

 

不思議だ、この男と同じことを思っていたはずなのに、今はそれは違うとはっきり認識している。

 

飛騨は男の背後に一人の少女の姿を確認すると、歩み寄る。

 

「半兵衛、竹中半兵衛。」

 

「は・・・はい。」

 

飛騨が少女の名を呼ぶと少女は驚いて飛騨の方を見る。

 

「此度の戦、勝因は間違いなくお前だ。

お前がいなければ、きっと負けていただろう。

・・・ありがとう。」

 

少女は──詩乃は一瞬ぽかんとしたが、すこしすると深々と頭を下げてきた。

 

その詩乃に飛騨は背を向けて歩いていく。

 

(なぜこうなったか・・・私には分からない・・・だが。)

 

飛騨は拳を固く握る。

 

(こんどこそ・・・私は・・・)

 

#####

 

それから飛騨と詩乃は親交を深め、お互いを友と言える仲になった。

 

時には共に城下に出歩き、団子を食べながら語らったりもした。

 

だが、詩乃と仲良くなればなるほど、

周りの飛騨に対する視線も冷たくなっていった。

 

それでも、けして後悔はなかった。

 

自分は間違っていない、そう思えた。

 

そんな日が続いたある日。

 

「納得いかん。」

 

団子を食べながら飛騨は詩乃に言う。

 

「どうして私より飛騨殿が怒っているのですか。」

 

「あの無能共め、どうして素直に詩乃の功を認めようとせんのだ!

詩乃がいなければこんな国、とっくに滅んでいたというのに。

国主が国主なら兵も兵だ!」

 

我ながらかつての自分の首を絞めていると思いつつ飛騨は言った。

 

「ご自重なさってください。

仮にも龍興様の上士である貴方がそんなことを口走っていたと知れれば、打首は免れませんよ?」

 

「詩乃は悔しくないのか!」

 

「そういう訳ではありません。」

 

詩乃はそう言うと茶を啜る。

 

「なのでそろそろ、然るべき措置をとろうかと思います。」

 

「よろしい、やれ。」

 

「・・・止めはしないのですか。」

 

飛騨はフンと鼻を鳴らす。

 

「何をするにしろ、あの愚君にはいい薬だろうよ。

だが当然、私にも一枚噛ませろよ?」

 

「ですが飛田殿は龍興様の上士で・・・」

 

「その前に貴様の友だ、詩乃。」

 

「飛騨殿・・・。」

 

「私はお前ほど頭がキレるわけでもない。

だが・・・少しでも手助けをしたい。

・・・だめか?」

 

詩乃は静かに首を横に振る。

 

「こちらこそ、宜しくお願いします。」

 

「うむ。」

 

2人は顔を見合わせ、笑いあった。

 

#####

 

「やったな。」

 

「やりましたね。」

 

龍興を追い出し、占拠した稲葉山城の天守から外を眺め、飛騨と詩乃はそう言った。

 

「龍興様のあのマヌケ面は見ていてい気持ちがよかったなぁ。」

 

「全く貴方という人は、性格が悪いですね。」

 

「よくいうわ、詩乃だって笑っていただろうに。」

 

「でも良かったのですか?

今まで積み上げてきた権威をすべて捨てることになったのですよ?」

 

「今更何を言うか、私はこれでいいんだよ。」

 

飛騨は、沈む夕陽を見て呟く。

 

「そう、これでいいんだ。」

 

#####

 

「どうした・・・詩乃。」

 

「///////」

 

城下に出かけていた詩乃が顔を真っ赤にして帰ってきた。

 

詩乃は、城下で一人の男に出会った。

 

その男は、どこぞの間者で、今回の稲葉山城占拠について調べていた。

 

そして最後に、詩乃を件の竹中半兵衛だと知った上でこう言った。

 

「君をさらいに行く」と。

 

(あぁ、あの男か。)

 

飛騨は一人の男の姿を思い浮かべ、顔を赤くしている詩乃を見て吹き出した。

 

「フフッ、お前が色を知るとはな。」

 

「もう!からかわないで下さい!」

 

「ああ!悪かった!悪かったからなぐるな!」

 

しばらく詩乃とじゃれあって、飛騨は言う。

 

「でもよかったな、いざという時はお前だけでもその男の所へ逃げ込めばいい。」

 

「はい、でも・・・その時は貴方も一緒です。」

 

「・・・あぁ、そうだな。」

 

飛騨はこの時、一つの決意を固めた。

 

#####

 

しばらくして詩乃は、龍興に城を返還した。

 

しかし自分を裏切った詩乃と飛騨に対し、追手を差し向けた。

 

「ええい!どこまで追ってくるつもりだ!」

 

飛騨は、詩乃の手を引いて山道を走っていた。

 

「詩乃!大丈夫か!」

 

「ええ・・・なんとか・・・」

 

口ではそう言っているが、体力のない詩乃にはきついのか、息を切らしている。

 

それでもしばらく走ると右に曲がる道に差し掛かった。

 

(この道をまっすぐ行けば・・・しのはあの男に会える。)

 

飛騨は立ち止まって詩乃に言う。

 

「詩乃、先に行け。

私もすぐに追いつく。」

 

「そんな!飛田殿!」

 

「私の剣の腕は知っていよう。

大丈夫だ。」

 

「しかし!」

 

「いいから行けと言っているのだ!このノロマめ!」

 

「っ!!」

 

飛騨の気迫に、詩乃はたじろぐが握りこぶしを固める。

 

「必ず!必ず生き残ってください!約束ですよ!」

 

「あぁ・・・行け!同胞(はらから)よ!」

 

飛騨がそう言うと詩乃は道をまっすぐ走って行った。

 

「達者でな、詩乃。」

 

そう言うと飛騨は、刀を抜いた。

 

#####

 

ザシュ!

 

「ぐわぁ!」

 

飛騨の回りには切り捨てられた兵が数名倒れていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「お・・・おのれぇ!斎藤飛騨!」

 

指揮官と思しき兵が悔しそうに言う。

 

(あとは・・・あいつ1人か。)

 

飛騨は指揮官を鋭く睨みつけながら歩み寄る、

 

「ひぃ!」

 

だが、次の瞬間!

 

バァン!

 

「ぐっ!?」

 

破裂音と共に、何かが足を貫いた。

 

飛騨はその場にひざまづいた。

 

「鉄砲か・・・」

 

指揮官の前に鉄砲を持った兵が集まってくる。

 

「フ・・・フン!無様だな斎藤飛騨!

竹中なんぞに加担し、謀反を働くからこういうことになる。」

 

そういった男を、飛騨は嘲るように笑っていう。

 

「無様か・・・まぁ、そうだろうな。

自分でもそう思う。

何を今更、と思ってしまう。」

 

飛騨は立ち上がろうとするが、よろけて体勢を崩す。

 

「だが・・・それでも、決めたんだ。

私はもう間違わないと。

もう後悔するような生き方はしないと決めたんだ!」

 

飛騨は力を振り絞って立とうとする。

 

「自分が白の中にいるなんて言えない。

でも決して黒ではない!

私は・・・何も間違ってはいない!」

 

飛騨は片足の痛みを乗り越えて立ち上がる。

 

「そして手に入れたんだ、大切な友を。

その友が私を信じて待ってくれているんだ!

・・・だから!」

 

飛騨は刀を構えて叫ぶ。

 

「私は生きる!生きるんだ!」

 

そう言って敵に向かって駆け出す。

 

鉄砲の弾がが音を鳴らして飛騨に襲いかかるが飛騨に当たることは無かった。

 

そして飛騨は1人、また1人と鉄砲兵を倒していく。

 

「こ・・・このバケモノめ!」

 

飛騨は刀を構えて指揮官に歩み寄る。

 

「覚悟おおおお!」

 

バァン!

 

「がっ!」

 

刀を振り上げた飛騨の肩を鉄砲の弾が貫く。

 

その拍子に、刀は背後に飛んでいき、飛騨も倒れる。

 

「くっ・・・。」

 

「は・・・ハハハハハ!

手間を取らせよって!」

 

指揮官は倒れた飛騨に歩み寄ると、顎を持ち上げる。

 

「どれ、殺す前に、その体を楽しむとしようか・・・。」

 

そう言うと、飛騨の上の服をひん剥いて、下着姿にする。

 

「ヒヒヒ・・・」

 

指揮官の男が下卑た笑い声をあげる。

 

(・・・詩乃・・・すまない。)

 

と、諦めかけたその時。

 

「何してんだてめええええええ!」

 

「ぶべっ!」

 

ひだの後方から来た男が、

指揮官の顔面を鬼の形相で蹴飛ばした。

 

蹴飛ばした男は上着を脱ぐと、そっと飛騨にはおらせる。

 

「お前は・・・。」

 

男は飛騨に笑顔を向ける。

 

「初めまして、斎藤飛騨さんだよね。

俺は新田剣丞(にったけんすけ)

君を助けに来た。」

 

「私を助けに?

どういうことだ。」

 

「詩乃に頼まれてね。」

 

「詩乃に・・・だと?」

 

「飛田殿!」

 

声のした方を見ると詩乃が剣丞の部下を連れてきていた。

 

「ひよ!ころ!彼女の治療を頼む!」

 

「はい!わかりました!」

 

「お頭!お気を付けて。」

 

ひよところと呼ばれた少女に預けられた飛騨は、手当を受けた。

 

#####

 

結論から言うと、加勢に来た織田軍によって追手は撤退して行った。

 

しかし剣丞は一緒に来ていた斎藤結奈を助けるために怪我を負い、手当を受けた。

 

そして飛騨はというと。

 

「うつけめ・・・どうして戻ってきた。」

 

同じく手当を受け、現在、詩乃が腰にしがみつき泣きついていた。

 

「私は大丈夫だと言ったであろうが。」

 

「全然大丈夫じゃなかったじゃないですか!

剣丞様が来なければ、どうなっていたか!」

 

「詩乃はさ、俺を見つけた途端必死になって頼んできたんだよ。

君を助けてくれって。

それぐらい君のことが大事だったんだよ。」

 

「詩乃・・・。」

 

詩乃は涙声で飛騨に言う。

 

「私が生き残ったとしても・・・そばにあなたがいないと意味が無いじゃないですか・・・。」

 

涙を流してそういった詩乃を、飛騨は優しく抱きしめる。

 

「ありがとう、詩乃・・・ありがとう。」

 

そう言うと、飛騨は、剣丞に顔を向ける。

 

「剣丞殿も・・・ありがとう。」

 

「いいっていいって。

詩乃に頼まれたってのもあるけどさ、

かわいい女の子を助けられてよかったしね。」

 

「なっ//////!」

 

飛騨は顔を赤くする。

 

「はぁ、剣丞様・・・。」

 

「またですか・・・お頭・・・。」

 

「な・・・なんだよひよ、ころ、

そんな目で見るなよ。」

 

あたりは賑やかな笑いに包まれた。

 

#####

数日後

 

剣丞隊隊舎

 

「いつまで寝てるつもりだ剣丞!

さっさと起きろ!」

 

「は・・・はいぃ!」

 

飛騨に怒鳴られ、剣丞は飛び起きた。

 

「まったく。」

 

「おはようございます、飛騨。」

 

「あぁ、おはよう、詩乃。」

 

「今日も飛騨は厳しいですね。」

 

「あれぐらいしないとすぐだらけるからな。

我らが主様は。」

 

そう言った飛騨をニヤニヤと詩乃は見つめる。

 

「・・・何か言いたそうな顔をしてないか?」

 

「いえ、飛騨も色を知ったんですね。」

 

「なっ!//////」

 

「フフッ、いつぞやの仕返しです。」

 

詩乃と飛騨は、二人で笑い合う。

 

(これが正しいことかなんて、私には分からない。

ただ。)

 

「おーい、飛騨、詩乃、今から一発屋に行かないかー。」

 

「あぁ、行く。」

 

「お供します、剣丞様。」

 

(私はこれからも、詩乃と、剣丞と生きていたい。そう思った。)


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