地下へと歩みを進める俺たち。
地下にも電気を回しているようでしっかり明るい。
時折両脇に扉が有ったが小猫ちゃんが「たぶん、道の奥。あの人の匂いがするから」といっていたけど…あの人って誰?なんかその言い方だと恋人みたいで嫉妬する……ああ、アーシアか?たしか気違い少年神父ボコった時に会っていたね。
そしてここですと言わんばかりの大きな扉が現れる。
「あれだな」
「奥には堕天使とエクソシストの大群が存在すると思う。覚悟は出来ているかい?」
「当たり前だ、アーシアの場所によっては大技で一気に殲滅だ」
扉の向うには聞こえないような声でそう、会話する。
小猫ちゃんは静かに頷く
「良し、扉を…」
ぶち抜こうとした所で扉が勝手に開きだす。
そして儀式場が目に入る…
広い部屋、奥に十字架に磔にされているアーシアに、その近くに立つ堕天使レイナーレ
その手前には大量の神父全員光の剣を装備している。
「いらっしゃい。悪魔の皆さん」
レイナーレがそう言葉をかけてくるが、そんなことより…
「アーシアァ!!無事かぁ!!」
叫びが聞こえて俺に気付いたアーシアがこちらへ顔を向ける。
「………イッセー…さん?泣い「泣いてない!!」…」
どんな視力だよ!!チクショウ!!
ほらぁ…小猫ちゃんがまた心配する顔向けてきたじゃないかぁ!!
だから木場!!肩に手を置いてそんな顔するな!!
ほら、アチラさんもポカンとしてるじゃないか!!
「感動の対面だけど、残念、遅かったわね。ちょうど儀式が終わる所よ」
その時、アーシアの体が光りだし、
「……あ、あぁあッ、イィヤァァァァァァァ!!」
直後アーシアが絶叫する。
「ッ…アーシア!!」
駆け寄ろうとする俺を神父たちが囲む。
「木場ぁ!!剣を貸せ!!」
「え?」
「早く!!」
「わ、わかった」
剣を借りた俺は自分の剣の熟練度にブーストをかける
『Ⅴth power of Boost!!!』
五乗ブースト、何故か溜めて別個に、そして同時にブーストが使える。
32倍なら何とか、あれが使えるはず。そう考えるが魔力に不安が残るので…
剣に魔力を乗せ、それに五乗ブースト。
『Transfer!!』
これで10回分ブーストを消費。そして特殊技を発動。
「大ッ次元断!!(横薙ぎ)」
緑色の魔力の巨剣が出来るがそれはあの時見た物と比べ物に成らないくらい小さい。この部屋の半分くらいの長さしかない。
俺はそれを振りぬく。
部屋に居た神父の半数と、柱を幾本かをなぎ払い、効果が切れ魔力の剣が消える。
「木場、返すぞ……グッ…」
「どうしたんだい!?イッセー君」
「ちょっと油断しただけだ、それより来るぞ。前を向け」
ダメだ、無茶して魔力の九割持っていかれた…
如何やら木場の剣は魔剣だったようで渡した瞬間、更に魔力が減った。装備が外れたからだ。
あ゛ーー
ふと、アーシアのほうを見ると、体から大きな光が飛び出してきた。レイナーレはそれを手に掴み、何かを言いながら、狂喜に彩られた表情でその光を抱きしめ…体内に!?
直後、眩い光が発せられ、アーシアの癒しの力と同じ、緑色の光を発する堕天使が居た。
「木場、小猫ちゃん。アーシアを回収する。援護を…」
まるでそう言うとわかっていたかのように駆け出した俺の前に立ちはだかる神父を吹っ飛ばす二人。
木場の剣は神父の光の刃を食らう、そう言う力を持つ剣のようだ。
そして武器のなくなった神父を小猫ちゃんがクラッシュ
今はもう精々1.6倍だろうけど素晴らしい攻撃力だ。速度も上がっているから素晴らしい一撃。
磔にされたアーシアの拘束具を解き、抱きかかえるがぐったりしている。
「アーシア、迎えに来たよ……ヒール」
他人には聞こえない程度の声で唱え、アーシアに回復をかけるが効果が薄い
「………イッセー………さん…」
否、効いている様子が見られない。
「無駄よ、神器(セイクリッド・ギア)を抜かれた者は死ぬしかないわ」
冷笑を浮かべ、楽しそうにしている。
「神器(セイクリッド・ギア)を、返してもらおうか…」
「返すわけないじゃない、これを手に入れるために私は上を騙してまでこの計画を進めたのよ?証拠を残さないために、あなたたちも殺すのよ?」
ッチ!!
舌打ちをして動く
「木場!!小猫ちゃんアーシアを安全な場所に運ぶ、悪いが足止めは頼むぞ!!」
「わかった!!」
「……了解」
『Ⅱnd power of Boost!!!』
SPDを四倍、速度を二倍にして一直線に上へ向かう。
『Ⅱnd power of Boost!!』
儀式場を抜けて更にもう1回。計四倍の速度で聖堂へ。
カウントは現在40だけど一度に使えて20が今の限界。
約105万倍十分ではあるが何故カウントが50まで行くのか解らない。
20超えれば超えるだけ一気に体力持っていかれて活動時間が低下する。
30使えば一発で動けなくなる
なのに何故50までカウントするんだ!?
と、まあ無駄なことを考えながら聖堂の椅子にアーシアを寝かせる。
様子を見るが、顔は真っ青で、息も絶え絶え、体温も低くなっていてもう長くは無い。
ダメだ、これはもう助からない。裏技を使わない限り…
死後、直ぐであれば、もしかすると、あの人たちなら何とかできるかもしれない。
「アーシア、少し眠っていろ。起きればまた元通り…いや、今までと違って普通に友達を作って楽しく一緒に遊べる生活が待っている」
「……イッ…セー…さん、生まれ変わったら……生まれ変わっても……お友達に…なってくれ…ます…か?」
「何を言っているんだ、アーシア、今言ったろ?寝て起きれば楽しい生活が待っているんだ。だからそんな事言わなくても良い」
アーシアはもうまともに動けないはずなのに俺の頬をなで、
「………わたしの…ために、泣いて…………ありがとう…」
そして頬に触れていた手が滑るように落ちていった。
「……ヒール…」
ただ、少しでも生きるのが長引けばと思い、回復をかける。
ああ、また、ダメ……だった…………
涙を流しながら、無駄だと解っていても回復を重ねる。
どうしてだ?何故俺は助けられない。
タイミングも悪ければ力も足りない。
もっと力が欲しい、力が無いと失う。失いたくない、喪いたくない。俺は、あの人が言うには主人公の称号を持っているらしいけど、俺は世界を救うような主人公じゃなくて、周りの人が守れる主人公が良い…だが、今やることは嘆く事じゃない。一刻も早く、彼女を安全な場所に連れて行き、あの人たちを喚(よ)ぶ事だ。何処まで対価を払うことに成るかは解らない。今の俺だと、30回ブーストをかけても足りないだろう。
せっかく思い出した方が納まったと言うのに…何故続けてこの気持ちを味わねばならない…
ああ、そうだ。あいつのせいだ。
「あら、泣き叫ばないのね?」
後から声が聞こえてきた。
俺を嘲笑してくる
「見てご覧なさい。下で、『騎士(ナイト)』の子に付けられた傷よ」
レイナーレが傷に手をかざす。
いつか見たように淡い光が発せられ、傷が塞がってゆく…
こいつは、俺を怒らせに来たのか?
「見て、素敵でしょ?神の加護を失った私たち堕天使にはその子の神器(セイクリッド・ギア)は素晴らしい贈り物だわ」
「もう良い、その口を開くな」
『Boost!!』
「前にも言ったでしょ?バカなあなたにもわかるよう説明してあげる、単純な戦力差よ。私が千であなたが一。その神器(セイクリッド・ギア)を発動した所で倍の二、どうしても埋められないのよ?どうやって私に勝とうというの!!アッハハハハハハハハハ!!」
「なんだ、その程度か?」
『Ⅸth power of Boost!!!』
「ハハハ!?…え?そんな…この肌に伝わる魔力は…中級…いえ、上級悪魔?」
「これで超えたな。まあ、少し不安が残るか」
『Ⅲrd power of Boost!!!』
「これで、大体八倍だな、さあ、どうする?」
『Explosion!!』
「嘘でしょ!?」
「もう、いいから黙れ」
―――餓狼粉砕蹴―――
一瞬で間を詰め、全身を使い上下逆さの姿で、蹴り上げ浮かし、腕の力で跳躍、追撃で物理法則を無視して蹴りを浴びせる。上昇の勢いが消えるまで…
上昇をしなくなり、落下に入る前にレイナーレの足を掴み地面に向かい投げ飛ばす。
―――獅子王波―――
闘気を光線のようにしてぶつける。光線は一瞬だが直後、更に着弾点が爆発を起こす。
其処に更に落下速度そのままでの蹴りが……
地面をぶち抜く。
「本当は殺してやりたいところだが、貴様からは返してもらわないといけない物が在る」
其処には、既に羽はなく、手足も原型を留めておらず。
元あった美しい容姿は見るも無残に成っている…もう、《だったもの》と付けても良いくらいだが、まだ辛うじて生きているレイナーレが居た。
「ヒール。動けないが死なない程度に回復はしてやる」
俺は、そういって、無事な地面を探し、魔方陣…召喚陣を…薄らとしか残っていない記憶を頼りに書き始める。