夜、俺はアーシアを横抱き…要するにお姫様抱っこで抱きながら住宅街を跳びまわっていた。
目的の民家に付くとアーシアを降ろし、アーシアがポストへチラシを投函、そしてまた抱き抱えて跳ぶを繰り返す。
このチラシは無論、あの簡易魔法陣の書いてあるチラシだ。
まあ、現代に悪魔を信じている人は少ないわけなので、まさか自分で魔法陣を描いてまで召喚する者はまず居ない。
だからこうして配っている訳だ。
俺の一番記憶に残っている契約は…………うん、濃かった、とにかく、濃かった、主に召喚してくださった方々が………
「イッセーさん、本当に手伝って頂いて宜しかったんですか?」
「ん?むしろ女の子を夜中に一人で行かせる事の方がダメだろ?」
ふむ……おかしいな、アーシアが出発時に比べかなり赤くなっている様な……風邪か?これは急がねば!!
魔界で教えてもらった初級呪文の生活応用その93風除け!!(ウインドのSP消費の約一割)
「あれ?風が…」
「さあ、ちょっとスピード上げるよ。目を回さない様に注意だ」
「え?イッセーさんッッッッキャァァァァ!!」
直後の踏み込みで速度を上げるとアーシアが悲鳴をあげながら抱きついてくる…
『おい、また細かいのが降って来たぞ、大丈夫か?』
ああ、未だ大丈夫さ、うん、未だ大丈夫だ。
だって細かいんだろ?なら、大丈夫だ。
実はフル装備な俺。足の速さは約五倍!!
軽く車は越えるぜ!!
ああ、やわらかくていい匂いが……
『おい、落ちてくる量が増えたぞ』
おっといけないイケナイ…流される所だった…
ありがとう赤龍帝。
本当はチャリで行くべきなんだろうが、フル装備の俺のほうが早いし、少しでもレベルを上げたいから訓練としての意味もある。
「さあ、アーシア着い…た…ぞ?」
幸せそうな顔で目を回しているアーシアちゃん
ヤバイ、そんなに重症だったのか!?
アーシアを横抱きから背負う形に変えて残りをアーシアに負担をかけない程度で早く配る。
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残り2,3軒になってアーシアが目を覚まし、背中であわあわしだしたのでいったん止まり降ろして健康状態の確認、額に手を当て熱の確認……
おかしいな、顔は真っ赤なのに平熱の範疇だ……
『おかしいのはお前だ』
何!?赤龍帝お前外の様子がわかるのか?
『否、何だか言わなければ成らない気がしてな……』
いけない、アーシアの目がまた回り始めた!!
「イイイイッセーさん!?」
「ん?どうしたアーシア?」
「大丈夫ですから!!もう少し速度を落として頂けばそれで問題ありません!!」
「そうか、じゃあ次の家は近いから少し歩くか」
「はい」
歩きながら結構遠いが目視できる範囲に神社を見つけアーシアに教える
「アーシア、あれが神社。ここは何の神様か俺は覚えてないけど考え方によっては教会より神に近いともいえるから近付いちゃダメだぞ」
「悪魔は精霊の集まる所や土地の神様に関係する所へは行ってはダメなんですよね?クリスチャンの私には『八百万の神』は理解しかねますけど……」
「ああ、一神教だからね…あらゆる物に神が宿るって事は正反対なわけだし……」
「はい、そうなんです…」
「……ここの、蛇……だったけ?……たしか…クチナワ?……違うな、白蛇……むう、思い出せない」
危うく禁止コードに引っ掛かりかねなかった……
うん、ここの神様は絶対蛇じゃなかったな。鉈?そんな筈はない。
「お、ここ結構易くて美味い鉄板焼き屋。で、そっちには青雷亭。美味しいパン屋だけど時々変態(ぜんら)が出没するから注意。
この大店舗はRQ商会(人間界)支店、何であるのか知らないけど基本なんでも揃っている。日常必需品から最終兵器玩具まで何でも揃っているが、最後のものは気にする必要ないからな。基本的に困ったらRQ商会ってことで」
「はい」
そんなこんなで案内しながらチラシを配った。
アーシアは別に体調が悪かった訳ではないそうだ。
なら如何した事だろう……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ただいま、帰還しました」
チラシ配りを終え、部室へ
「あらあら、お帰りなさい。いまお茶を入れますわね」
まず最初に出迎えてくれたのは副部長、姫島朱乃さん。
三年生の先輩で、つやつやな黒髪の美しいいつもニコニコ笑顔の大和撫子のようなお方だ。最近珍しいポニーテールである所もポイントが高い。
ん?なんでこんな紹介を今頃またするのかって?
特に意味は無いよ、ただ自分の置かれた状況の再確認さ。
「やあ、イッセー君。夜のデートはどうだった?」
爽やかスマイルのイケメン王子こと木場祐斗。
女子校から共学になった駆王学園の多くの女子のハートを射抜くイケメン王子、時折抹殺しようと思ってしまうがこの思いは間違えじゃないはずだ!!
「!!……?」
「どうしたんだ、木場。体を抱いて震えだして」
「いや、なんだか急に寒気が…」
おやおや、風邪かい?気を付けないとダメだよ?木場クゥン?
「……深夜の不純異性交遊?」
静かな声で厳しい事を言ってきたのは小柄な一年生、小学生にも見えてしまえる炉利っ子少女塔城小猫ちゃん。
「酷いなぁ、小猫ちゃん」
「……でも、アーシア先輩」
小猫ちゃんの指差す先にはさっき小猫ちゃんの行った事に反応したのかあわあわしているアーシアが……
その反応はいけない!!
直ぐにアーシアを再起動させて我らの女王(クイーン)いや役割(ロール)は王(キング)なんだけどね、リアス部長のもとへ向かう。
「部長。ただいま帰還しました………?」
部長はボーっとしたままあらぬ方向を見つめ物思いにふけっている?
………
「部長、ただいま戻りました!」
声を少し大きくする。するとそれに気付いたのか、部長はハッと我に返った様子を見せる。
「ご、ごめんなさい。少し考え事をしていたわ。ご苦労様、イッセー、アーシア」
最近部長はよく考え込んでいる。
少し目を離すとボーっとしてため息をついていることも多い。
しかし、こういったものは繊細(デリケート)な問題であることが多いので………うん、俺にはどうしようもない。
「さて、今夜からアーシアにもデビューしてもらいましょう」
「え?」
「つまりはアーシアにも契約取りに行ってもらうってことだ」
「わ、私がですか!?」
狼狽するアーシア
「そういうこと、チラシ配りは今日で終了。二人にデートばかりさせていると、二人の関係のばかりが先に進んでしまいそうだもの」
下僕弄りはやめてくださいよ、それにそのネタは理性に悪いです。いや、ダメージはないですけど。
俺のときと同様に準備は進み…
「あら…彼女、部長や私に次ぐ魔力の持ち主かも知れません。魔力の潜在キャパシティが豊富ですわ」
朱乃さんがそう言い、部長が微笑みながら言う。
「それは吉報だわ。『僧侶(ビショップ)』としての器を存分に生かせるわね」
その後何事もなくアーシアのデビューは成功し帰宅した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「先にシャワー頂きますね」
「おう、ゆっくり入ってきな、疲れただろ」
「はい、分かりました」
アーシアと別れ、俺は自室でアイテムを確認する。
「…装備、八種類がランダムで五つずつ。
それに六種の魔石の瓶詰に…『簡易GOアイテム界』…使い方知らないんだよなぁ…後は…何なんだろう…何も分からない…」
魔石はまるで薬のビンのようにラベルが有ったから解って、『簡易GOアイテム界』は前に防人さんに見せて貰った事が有る物とほぼ同型だからわかったVer.2,95って書いてあったのも決定付けるものだったけど。
しかし、残りのこれ等は解らない。鉄柱?謎の金属製の円柱。これは直径5cm高さ10cmくらい、あと直径10cmくらいの球体と『簡易GOアイテム界』に何処か共通する所のある機械……色からして緋色金製?…………まさかね。
ベッドの上で謎の品物を前に並べ唸っていると突然、床に光が走る。
光は円状に展開し、其処には見覚えのある図柄…
――グレモリー眷属の紋様!?
俺は魔法陣から眼を離さずに広げていたものを急いでしまう。
その直後、見覚えのある赤い髪の女性…
ブッチャケ、リアス部長が現れた。
何故?この時間に?俺の部屋に?
「ぶ、部長!?な、何用で御座るか!?」
しまった、てんぱって噛んだ!!
しかし、部長のその顔はなにやら思い詰めた様な表情である。
部活の時も同様でしたがね。
俺を確認するなり、部長はズンズンという効果音が合いそうなくらいの様子で詰め寄ってきた。
そして……
「イッセー、私を、抱きなさい」
………………………………………………ゑ?
今まで聞いた事のない謎の言語で話しかけられた気がする。
俺があまりの一言でポカンとしていると部長が更なる一言を
「私の処女を貰ってちょうだい。大至急頼むわ」
ナニヤラ俺ノ中デ、今マデ聞イタ事ノ無イ巨大ナ破断音ノ様ナオトガキコエタキガシタ………
『おい、相棒ォォォォ!!今までに無い亀裂が入ったぞ!!なあ、これ大丈夫?大丈夫なのかァ!?応えてくれェェェ!!相棒ゥゥゥゥ!!』
俺の中で龍が1匹吼えた。