1週間経過
夜、俺はそこそこ形になった即席ナックルガードにしっかりと武器上達屋を入れて近くの森の奥に行き、樹を殴っていた。
同じ部屋で寝ている木場に気付かれないのかって?
居ない所を見られてばれてるかも知れないが外出時はばれてねえでございますよ。
俺の隠密力を舐めんじゃねえ!!と言いたいが……あの人達から逃れれた事は一度も無いんだよなぁ……
現在使っているこの籠手(ナックルガード)(材料:木、布、鉄板)は残念なことにSPDに補正は掛からずATKも1しかない。
だから基本素の力+一桁で木を殴り続けている。
でもやっぱり武器上達屋1900×10はとんでもない。一発で191回分の熟練度がたまるのだから。武器を使う才能が皆無に等しい俺でも既に拳の熟練度が100を超えた。
それでもこの籠手はATK10……
大き目の樹を選んで殴り続けているんだけど未だに倒せていない。
精々一割削ったくらいまだ身体能力では木場や小猫ちゃんに遠く及ばず、守るにも技術に体が付いて来ない。小猫ちゃんの力みたいにまだ常識に収まるものなら完全に、ノーダメージで受け流せるはずが精々三割減から六割減。
こんなんじゃああの人達の喰らったら芥子粒どころか蒸発するね、絶対。
にしても木場、頑張ってきたんだなぁ…技術が半端じゃない。俺の流しに合わせてくるせいで軽減効率が半分以下にされる。
と言うより、反射的な流しじゃ相手にできないんだよな、あの二人…どんな人生…いや悪魔生?送ってきたんだろう………地獄の密度じゃ負ける気はしないけど!!
樹に向かい百本の打ち込みを終えて俺は軽く技の練習。
三連激…残像拳以降は現在の身体能力ではとてもじゃないですが無理です………と言うか…三連激しかできないって事ですね。
右、左で打ち上げムーンサルト
次にSP…魔力を使って
一回目とは比べ物に成らない精度を感じ落ち込む。強化に引っ張られないといけないことにとっても落ち込む。
一通りの型と言ってもあの人達のなので異常にハード、いったいどんなコンボだってくらい。
一発目が当たれば必中必殺の連激と成る。でもまだ錬度不足。もっとだ、もっと早く鋭く重くそして自然に!!!
三分後…
その場で身動きが取れなくなりました……まだ、早かったか……
あー、クソッ!!
今日はここまで!!
俺はのろのろと鉛のように重くなってしまった体を引き摺りながら別荘へと歩き出した。
このままじゃまた、手が届かなくなる……
そういった焦燥に駆られながらも頭は冷静にと自己暗示を掛けながら
水分摂取に台所の方へ……台所にある調味料でスポーツドリンク…モドキを作って……なんと豊富なことか…普通は無い物まであるではないか……飲んで一息つくと…
背後から声を掛けられる。
「あら?起きたの?」
ここまで接近に気付けないだと!?
予想以上に自分は疲労していると同時にどうも長く平穏に暮らしていて抜けてしまったのかと再確認する
しかし、外へ出ていたのは気付かれていないようだ。
「…どうも、部長。こんばんわ」
「如何したの?何だか暗いわよ?」
「Jud.何の問題もありません」
思わず口から出た。あの人達に使わされていた返答。お前は今より罪人となるなんていわれたな…
良いか、今よりお前は罪人だ。故に貴様に人権なんぞ無い。もとよりこの世界に人権なんぞ無いがな。
とも言っていた。
その通り、俺は初めの頃酷い日には十回は死んだ、そして蘇生され、直ぐに修行と言うのも生易しい地獄だった。しかし、あの時は他に道がなく、途中からは目標を持って、死兵の如く動いた。
だが今あの人達は居らず。蘇生と言う手段は一度使ってもらい…もう、無い。
そして、今はその、俺を生き返らせてくれた人の人生の分岐点。
無様は許されない…
考えがちょっと過去に戻りかけた所で声を掛けられる。
「ちょうど良いわ、少し、話しましょう」
ここで漸く振り返り、目に入った、ティーライトキャンドルの炎の灯りでほど良く映える紅い髪で現在(げんじつ)に引き戻される。
そして言葉に詰まった俺は
「……部長……その眼鏡は?」
「あー、これ?気分的なものよ。考え事をしている時にかけていると頭がよく回るの。ふふふ…人間界暮らしが長い証拠ね」
部長は小さく、クスクスと言った感じで笑う。そして何時もどおりの俺のうっかり。
「でも、何時もと違った色気がありますね、ネグリジェ姿なのも素晴らし……ッハ!!」
部長がぽかんとした顔をして一瞬動きを止めて、なるべく大きな声を出さないように堪えながら笑い出す。
しまった……こんな時くらい大人しくしろ、俺の煩悩!!
「ハァ……あはは、正直ね、イッセー」
「俺は悪くないです。悪いのは俺の無駄に強くて時折漏れ出す俺の煩悩と、そんな普段と違う顔の部長です。仕舞いには襲いますよ?丸一日掛けて改造しますよ?俺の煩悩、嘗めないでください頂きたい!!」
そろそろ隔離壁型理性も残りヤバインデスカラ!!
「あらあら、それはあの時にして欲しかったわね」
この部長!!冗談だと思って居やがる!!!
「………まあ、良いでしょうそれより、部長は何を?」
部長がテーブルに広げる地図らしきものとフォーメーションを書き込んだ紙……そして戦術書?
部長はそれを片付けてしまう。
「……正直、こんなものを読んでも、気休めにしかならないわ……」
部長はため息混じりにそう言う。
「……どうしてとは聞きません。」
相手は上級悪魔、我々のいた所を通り過ぎた存在。本で知れる内容は向うも知っているだろう。これを使っても勝てるだろうが、変化を入れないと潰されかねない。
俺は、そうだった。戦術を学んでも道を塞がれ、叩き潰された。あの人達、容赦ないもん…
アレだね、道を片っ端から叩き潰されて何処にも逝けなくなった所を直でドカン。そんな感じだった。
「正直、一番の問題は対戦相手、ライザー本人なのよ」
「……フェニックス、そんなに不死性が強いんですか?」
「はぁ~…そうよ、攻撃しても直ぐ再生して傷を治すの、しかもその業火は骨すら残さないってね…
八勝二敗、これ何だか解る?ライザーの公式『レーティングゲーム』の戦績よ。しかも二敗は懇意にしている家系への配慮でわざと負けたもの……実質は全勝ね」
「あーそれは……再生上限とか無いんですかねぇ…」
それだけの能力なら少しくらい綻びが有る筈だ………いや、規格外で無さそうな人達を知っているから絶対とは言えないけど……
「倒す方法もあるわよ?」
「それは?」
空間ごと消し飛ばすは止めてくれよ?流石に俺には荷が余りにも重過ぎる。
「圧倒的な力で押し潰すか、起き上がるたびに何度も潰して精神を潰すか…前者は神クラスの力が必要。後者はこっちのスタミナが持つか解らないってとこね…」
「つまり、肉体攻撃はほぼ、無意味で、精神攻撃で行くしかないと?HP無限で膨大なM(マインド)Pを零にしろって事ですね……」
そして考え込む、精神を削るには……拷問?効果的だが捕まえられるかが怪しい。
言葉によって?ダメだ、弱みとかが解らない…
無限キルをするには
あームズイ!!
「はぁ…これは、辛い戦いに成りますね……部長の望まぬ結婚をどうやって回避したものか……それにしても、結構な嫌いようですよね、ライザーのこと、お家事情を考えても拒否するって……」
「……私は《グレモリー》なのよ」
「………」
ただ、家名を言っている訳でもないな、無駄な事は言わない。無言で続きを待つ。
「……何処まで行っても、あくまでグレモリー家の者であるって、そんな風に私個人を認識してもらえない、見てもらえないのが嫌なの。人間界での生活はとっても充実していたの。悪魔グレモリーなんて誰も知らないから皆、私を私として見てくれるもの」
「なるほど、ただの家の道具のような扱いは嫌ですよね……」
遠くを見るような寂しそうな瞳で部長はそう言った。もう少し感情を発露させてしまえば泣くように、叫ぶように成りそうなくらいだった。
そういうことか……確かにあのライザーはな……リアス個人を見ているようで見ていない、あくまでグレモリー家のリアスだな……
「私は、グレモリーを抜きとして、私を、リアスを愛してくれるヒトと一緒になりたいの。」
「それが、個人の願いと言った所ですか……」
さて、これは…如何するべきかな…お家事情も大切だが、俺としては一人の乙女の願いを叶えてあげたい、だが力不足だ。
「部長、基本的に俺は個人を個人として見ます。正直な話、種族的に敵だとか味方だとか、そういった風に判断はしないようにしているんです」
「そして、俺は当たり前のように部長は部長…いや、これじゃなんか違いますね、失礼ですが…俺はリアスはリアスとしてみています」
「まあ、朱乃さんも、小猫ちゃんも、アーシアも、個人としてみています」
「……木場はちょっと、イケメンって言う偏見が時たま入りますが基本的に個人として見ていますよ」
「まあ、余計なことも言いましたが、俺は家を抜いて、部長、リアス・グレモリーのことが好きですよ?」
向うに口を開く暇を与えず、続けて言い切る。
女性相手に真面目に好きだとか言うのに成れて居なくてメッチャ顔が熱い。なるべく区別の付きにくい暗い場所に行こうと思い、悪魔の夜目の効きを思い出し軽く絶望する。
しかし、部長は頬を真っ赤に染めている。
あれ?部長ほどの美人なら言われ慣れて……!?
「………あ、あの……他のメンバーも、朱乃さんはもちろん小猫ちゃんや木場、アーシアも部長個人の事を好きだと思いますよ、いや、間違えなく!!」
「え、ええ」
「さ、さて、じゃ、じゃあ俺はこれで、明日からちょっとあっちのモノを使って修行させて頂きますよ、少しでも部長の望みが叶いますように」
そういって、外界から意識を外して全力で部屋に向かった。
だから部長が何かを呟いていたとしてもシラネ!!