OVER SHADOW !   作:みころ(鹿)

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あけおめー。
年末年始忙しいのぉー…新年初がこれで良いのかって感じだけど毎回こんなんだからほいっ!

フラグ立てまくりな今回ー…覚えてられるかな、自分。

あと今年の抱負!
締めの仕方をもっと上手くしたいです!(小並感)




 11 旅立ち

・・・

 

 

ナザリック地下大墳墓の表層には草原が広がっている。

 

青々とした雑草が生えるここにはまばらに樹木が自生しており、吹く風がそれらを静かに揺らしていた。隠蔽工作として隆起させられた丘も景観を壊すことなく、その斜面に花を咲かせていた。

 

季節は春。芽吹いた草花が背筋を正す時期。

地上世界では春の訪れを喜び駆ける風と、それを慈愛の母のように暖める太陽の姿があった。

 

 

あいにくと今日の天気は曇りだが、出発するのにはなんら申し分無い天候だろう。

 

 

…そう今日はサンコとシモベ達が法国に旅出す日だ。

 

 

立案は昨日、決行は今日とかなりスピーディーな工程だが、半ば作戦が行われること自体が暗黙の了解的に浸透していた為、特に反対意見は起きずに実行に移すことができた。

…至高の二人が決めたことに反対できるシモベもそうそういないのも確かではあるが。

 

 

そして集合地点はナザリック表層の「入り口」…つまり「遺跡」であった。

 

 

ナザリックの入り口には神殿のような遺跡が形成されており、見る者に畏怖と一種の神気を与える。

古代風の柱に支えられた屋根はどこか西洋の教会のようでもあったが、人類に救済をもたらす…というよりかは破滅をもたらす予感があった。

 

外側から柱の合間を抜けると階段があり、そこから下に降りられるようになっていた。

 

――そして階段の傍には「王座」があった。

 

赤い、黒い…金縁で沈みそうな液体の王座。

神気溢れるこの場所には似つかわしくない愚物。

 

…だが、その神気を飲み込む程その「王座」は底が見えなかった。

 

周りの雰囲気すら飲み込み、その王座の威圧感のみを周りに与える…それは余りにも罪深く、影の様に周りを黒色に塗りつぶしていた。

 

 

そしてその王座の上には、影の化け物が座っていた。

 

 

・・・

 

 

夜明けの数分前、サンコはナザリックの入り口に自らの身体で作り上げた王座に腰かけていた。

 

 

…外の世界は風が支配している。

春初めの風は強く鈍色の雲を掻きまわしており、未だ日の差さない世界に僅かな色を与えていた。

昏い影色をした草花が風に揺られ、倒され波を作る。

まばらに生えた樹木は貧相で、折れそうなほどしなっていた。

外が垣間見える柱の合間からは殲滅兵のような無礼さで風が轟轟と吹き込み、サンコの身体に当たっていた。

見れば傍に立っているサナの裾もせわしなくはためいており、瞼を細く閉じていた。

 

 

「…なんなら暫く下に行ってもいいぞ?」

 

「いえ、任務に支障はありませんので」

 

「そうか…」

 

 

そう言ってお辞儀をするサナに、親切心で気遣ったサンコは少し居た堪れない気持ちになる。

そして頬杖をつくと、溜息を薄く長く吐いた。

 

 

(まぁ…まだまだこれから)

 

 

親切心とはままならないものだ。

自発的なモノであるため断られても責められないし、断られたらそれきりになってしまう。

そうなるとやはり気まずいという思いが出てしまうのも当然だろう。

 

ではどうすべきか――否、これに関して答えは無い。

 

残念なことにこの類の問題は正解が無い。大体の者がこの事態に直面し故意に解決するというのは難しい。

…そして人と関わる上で避けることは出来ないから質が悪い。

 

その上での最善は…相手側が自分の感情を読んでくれること。

 

これは大の大人でも難しいことだし、相当に頭が良くないと務まらない。

ましてや相手はサナだ。そこまでレベルアップしたら良いなとは思うが、今はまだ不可能だろう…期待する方が間違っている。

 

 

なんてことを考えながら、サンコは柱の合間から外を見ていた。

 

 

陽こそ出ていないが、辺りは大分明るくなっていた。

目の前に広がる丘は薄暗いながらも何があるか解る程度に明るくなっており、草木が影絵のように揺れていた。

曇りで太陽が見えないから正確な時刻は解らないが、夜明けの数分前であるのは確かであった。

 

 

「主」

 

「ん?何ぞ、サナ?」

 

「いささかルプスレギナとシズの到着が遅いように思われます…呼んできましょうか?」

 

「あー…」

 

 

今回の法国潜入作戦。

集合は地上に上がる為の階段前…そして出発時刻は夜明けと共に出発、と二人にも伝達した。

そして今は夜明けの数分前、確かにジャパニーズ五分前行動の精神に則ればもう到着してもおかしくない頃だ。現にサンコはそれに従い少し早めの時間にここに来た。

 

…遅刻?事故?

様々な可能性はあるが、確かに百聞は一見に如かず…様子見に行くのは悪くはない。

 

 

「却下!」

 

 

――見に行くのがサナでなければ。

 

サナに思考力は余り無い…そして記憶力も無い。

つまり探しに行ったが最後、サナの方が迷子になる。

サンコの位置は本能的に解るらしいが…。

 

「かしこまりました」

 

サナは何の疑念も抱かず、ただお辞儀をした。

…無論それが彼女達にとって当たり前だからだ。

 

そこに疑問を抱いてほしい…というのがサンコの願うところだが、「提案」をしてきただけ進歩したと言えるのだろうか?

 

(いい進化いい進歩)

 

サンコはうんうんと頷き、少し微笑んだ。

娘の成長を喜ぶ父親よろしく。

 

 

――と、階段の方から足音が聞こえた。

 

 

コツコツというブーツが石段に当たる音が下側から聞こえ、何者かが上がってきていることが解った。

…十中八九ルプスレギナかシズだろう。

 

夜明けは数分後だし、余裕のある出勤とは言えないが遅刻ではない。

…逆に時間ぴったりを狙った可能性すらあるか…?…いや、それはない。

 

そもそも時間より早めに来る利点は、不備があった場合対処しやすいという事にある。

時間丁度に来るようにして利点になるケースなどかなり限定される…だからこの場合普通に遅れたと考えるべきだ。

…それとも五分前行動という考えを持ってないか。

 

まぁどちらにせよ来たという事に変わりないし、問題ない。

サンコは階段の方向に体を反転させると、二人を待った。

 

 

…コツコツという音は徐々に大きくなっていく。

かなり早い歩調。そして一切息遣いを感じないあたりこの足音の主はシズだろう。

 

ならばルプスレギナは?

 

階段からはシズの足音であるコツコツという足音しか聞こえない。

ルプスレギナのものと思わしき足音は響いていないのだ。

…来ていないのだろうか?いや、流石にシモベである以上命令違反は起こさないだろう。

 

 

それを確認すべく、サンコは一音も聞き逃さぬよう感覚を鋭敏に研ぎ澄ます。

 

 

(…凄いな)

 

 

結論から言ってルプスレギナはいた。

シズの隣を、足音を立てないように。

 

要は気配を消しているのだ、彼女は。

 

だから一瞬いないように錯覚した。

サンコと言えど全力で探さないといけない程に。

 

呼吸を自然のものと同化し、足音を出さないように最大限に注意する。

殺意を殺し、感情を否定する。

道端に落ちている石ころのように、植物のように思考しない…思考による「音」を立てないようにしていた。

ほぼ無意識に近い状態でルプスレギナは行動していた。

 

…称賛に値する気配の遮断術だ。

彼女を選ぶのが「問題」じゃ無く「能力」だとしても、やぶさかでは無いと確信させるほどには。

 

 

それにサンコにはルプスレギナに二つアドバンテージがあった。

 

 

一つはルプスレギナが地下に居た事。

地下では空気の流れはほとんどない…つまり動きが感知しやすい。

それに階段という、地下でも狭い空間だ。探知範囲が小さいので索敵は容易い。

 

 

二つ目はルプスレギナが「瞬間移動(コンセプテッドベイグ)」を使っていないこと。

 

もし平野のような場所でかくれんぼ…ルプスレギナを感知するとしよう。

見つける術はある…サンコの感知能力で息を殺したルプスレギナを感知することは容易だ。

 

だが瞬間移動、探知される前に一切の痕跡を残さず消えられたら並の使い手では追跡は不可能だろう。…サンコならば自分の身体の一部を発信機のように擦り付けられるかもしれないが。

 

 

ともあれこの二つの理由からサンコは、ちゃんと二人が来ていることを確認できた。

…まぁなぜルプスレギナが気配を消しているかまでは解らないが。

 

サンコは玉座にて二人を待つ。

 

頬杖をつき、吹き入る強風に身を晒しながら階段を見つめていた。

夜明け前の灰色の雲は高速で動き、空を巡る。朝日の差し込む余地は無く、全ての存在は影を落とし…何もないところにも影を作っていた。

サンコとしては喜ばしい事だ。

 

 

――そして階段から頭が見えた。

白いレースを被った赤毛の髪の頭が、そろりそろりと出てくる。

…ルプスレギナの頭だ。

 

ルプスレギナは伺うように、辺りを見渡していた。

相変わらず気配を消しており、何かを探しているようだが…いや、逆説的にこれはサンコに気づかれないようにしている訳か。

そこまでして探すものは何だろう…?

 

ルプスレギナもう少し視界を確保するため、数歩階段を登る。

そして辺りを見渡そうとして、サンコと目が合ってしまった。

 

割と真面目な表情をしていたルプスレギナは、ばれたことにまず笑うとスタスタと階段を登り切った。

もう気配を消す気は無いらしく、足音を立て、普通の人間並の存在感を出していた。

 

 

「大変お待たせしましたっす!」

 

 

ルプスレギナはサンコの前で跪くと頭を下げる。

…だが言葉の調子の明るさといい、やはり敬意は感じられない。

 

「…まぁギリギリだけど遅刻じゃないし…多少はね?」

 

「お、そうっすか?」

 

極めて軽い調子。ルプスレギナは即座に立ち上がると、微笑みのまま立った。

…敬意もクソもないね、君。

サンコは頬杖をついたまま若干不満気に溜息をついた。

 

 

…そして確認する。

 

 

「なぁルプスレギナ」

 

「ん、なんっすか?サンコ様」

 

「俺の為になら死ねるか?」

 

「当たり前っすよ?」

 

 

さも当然。否、事実当然。

ルプスレギナは不思議そうな顔で、何の躊躇いもなく頷いた。

 

…どうやら「シモベ」ではあるらしい。

 

今回の作戦…いや、全ての作戦において「下」が「上」の命令を聞かないという状況は「腐敗」と「失敗」を意味する。

遂行は――不可能。

 

 

…ルプスレギナにも「問題」はある。

だがそれはこれから修正するつもりだから「問題視」はしていない。

 

しかし…命令に従わないとなると話は別だ。

そもそも法国には「潜入」することが第一目標である…これは覆せぬ根底だ。

 

故にそれを脅かす可能性がある「敬意」の感じられないルプスレギナに確認した。

 

 

(んー…歪んでるなぁ)

 

 

結果として問題は無かった。

他のシモベと同じくルプスレギナはサンコに忠誠心が厚く、その命令には喜んで順守する。

 

――だが敬意は無い。

 

やはり欠陥品。

あえて隠している可能性はあるが、どうも彼女は()()()()()しているらしい。

 

…普通、忠誠心と敬意は同列の物として語られる。

敬意があるから忠誠心が生まれ、忠誠心があるから敬意が生まれる…当たり前のことだ。

 

 

だが彼女は片方を持っていない。

 

 

ただそれが「規則」だから命令を聞く。

ただそれが「存在意義」だから命令を聞く。

ただそれが「命令」だから命令を聞く。

 

 

これがただ機械のならば問題は無い。

命令以外のことはせず、それ以外の時は動かないからだ。

 

しかしルプスレギナには「自我」がある。

 

自由意志とも言い換えられるそれは「自由な行動」を意味する。

つまり、もし仮にルプスレギナに何かを命じた時に、それ以外のことをしてしまう可能性があるのだ。

しかしそれは決して良かれと思ってでは無く「それをしてはいけないと命令されていなかった」…それだけだろう。

 

 

つまり命令された相手の為に行動する、というのが彼女にはできないのだ。

 

 

それに彼女は比較的活発な性格だ…何をするか解らない。

特に「潜入」など慎重さが要求される任務では「地雷」になりかねない。

…それで潜入向きの能力だから質が悪い。

 

 

勿論命令で縛るという事も出来る。

 

 

何かしそうな事、してはいけない事を命令し全て「禁止」する。

そうすれば機械のように問題を起さないだろう。

 

――それはだめだ。

 

アインズさんも否定するだろうし、俺もそんな機械などいらない。

自我のある形で相手への…「思いやり」が出来るようにするのが最高だ。

 

それとはき違えてはいけないのだが、別にサンコは敬意が欲しいわけでは無い。

 

飽くまで自分の意志で、敬わないならよし、敬うならなおよしだ。

矯正した上で自由意志を持っていなくてはならない…非常に難しい難問だ。

 

 

そしてこの難問の回答をあえて上げるならば――

 

 

「主」

 

「お?」

 

「夜が明けました」

 

 

随分と考え込んでしまっていたらしい。

サンコはサナの呼び掛けに意識を戻すと、辺りが大分明るくなっていることに気がついた。

…時間にしたら二、三分だろうか?

 

 

「おお…俺としたことが…」

 

「お疲れっすか、サンコ様?」

 

「いや、液体粘状の影に疲労は無い…はず」

 

 

見れば相変わらずルプスレギナはサンコの目の前に立っていた。

未だ影の中の神殿内ではルプスレギナの姿は薄暗く、光の無い黄色の目だけがハッキリと見えた。

 

 

「ああ、それと」

 

「はい?」

 

 

サンコはルプスレギナに尋ねる。

まだ解っていない事を思い出したから。

 

 

「なんで気配消してたん?」

 

「それはっすねー…こう、後ろからそろりそろりって近づいてー…。それからがばって抱き着いたら驚くかなーって」

 

「ガキか!?」

 

 

笑って答えるルプスレギナにサンコは唖然としながら頭を抑えた。

頭痛が痛い。

 

 

「誅殺…」

 

「!?」

 

 

そんな悶々としているサンコの様子にサナの眼のハイライトが消える。

どうやらルプスレギナの行動を不敬と判断したようだ…実際不敬なのだが。

 

死の危険を感じ取ったルプスレギナは一つ身震いし、サナの方に視線を

向ける。

サナは刀の柄に手をかけながら、ルプスレギナに殺意を向けていた。

 

 

そして無音で引き抜くとそのまま正眼に構えた。

 

 

…ルプスレギナはあわあわと謝罪する。

 

「待つっすサナちゃん!もうしないっすから!!…それに未遂っすから、ね!?」

 

「サンマイ二オロス」

 

「何その物騒な呪文!?…ていうかおっぱいを触った仲じゃないっすか、だから後生!!」

 

「!?…それが今と何の関係が!!?」

 

 

頬を染めて驚くサナの構えが大きく乱れる。

それをチャンスと見たルプスレギナは畳みかける。

 

 

「いや~サナちゃんのパイ乙は最高の揉み心地だったっす!すべすべの肌と確かな弾力が相まって最高の破壊力を持っていたっす!」

 

「…くッ…!?」

 

「吸い付くような心地よさっていうんすか?指が沈んでいって指先から快感が来るんすよ…そして何より!揉むたびに良い声を出すんすよねぇ!」

 

「…もう…やめて……!」

 

 

サナの頬は限界まで紅潮し、刀を地面に突き刺し跪いて項垂れた。

ようは恥ずかしいという事なのだがサナ自身それを自覚こそしていない、ただ体の力が抜けたように感じていた。

 

 

そんなサナの様子にルプスレギナは命の危機が去ったと喜び、ほっと溜息を――

 

「おい」

 

――びくりと震えると、そして恐る恐る新たな「殺気」が出された方を向いた。

新たな命の危機を感じて。

 

 

「…さ、サンコ様…?」

 

「おい、ルプスレギナ」

 

「な、何っすか…?」

 

「なぁ…なぁ…」

 

「は、はい…?」

 

 

サンコはうつむきがちに、遠い目でブツブツと呟いていた。

その様は狂人か叱られる子供の様であった…が、しかしその殺気は本物。

その落差をルプスレギナは若干不気味に思いながら、期待半分恐怖半分で次の言葉を待った。

 

 

そしてサンコは般若のような顔で吼えた。

 

 

「サナの胸揉んだとか裏山けしからんのよぉぉぉぉぉ!!?」

 

「ですよねー」

 

「おま!お前なぁ!!俺すらやったことない事してんじゃねぇぇぇっぇっェ!!!」

 

「はぁーん……よぉ童貞」

 

「言いやがったぁァァァァァ!!????」

 

 

サンコは自分の顔をぐしゃぐしゃと崩しながらルプスレギナに殴りかかる。

ルプスレギナはクククと嘲笑いながらそれを避けた。

 

…もはや会話の内容については詳しく言う必要はないだろう。

 

 

と、復活したサナが恥じらいながらサンコに寄って行った。

そして胸に拳を当て告げた。

 

 

「あ、主…私で良ければ…」

 

「…おぇぇ」

 

「主!?」

 

「…上は大水下は大火でそれに耐えなくなった……てか液体粘状の影って性欲あるんか?」

 

「いや据え膳食えよ」

 

「…ルプー、言葉使い」

 

 

見れば階段付近にシズが立っていた。

ルプスレギナと一緒に来ていた…が大方ルプスレギナに驚かすまで待っていろとでも言われたのだろう。

そして地上の喧騒に出てきた…と言ったところだろうか?

 

 

「そうだぞルプスレギナ~!俺、上。お前、下」

 

「体位っすか?」

 

「おまっ…不思議な力で死ぬことになるぞ!?」

 

「ねぇシズ、体位って?」

 

「…さぁ…?」

 

「収拾つかなくなってきた…」

 

 

・・・

 

 

「それじゃあ装備の点検をもう一度」

 

 

先程までの喧騒はどこへやら、玉座に座るサンコの前に立つ三人の合間には程よい緊張感が漂っていた。

勿論先の事件の雰囲気が抜けきっていないことも事実だが、空気を入れ替えることは出来たようだ。

 

既に夜明けは過ぎてしまったが、夜明けに何かあった訳でも無い。

だからと言ってグダグダとはしていられないので四人は慎重に、だが急いで行動していた

 

 

三人はサンコの命令に従い、各々自らの武器、防具、道具を確認していく。

 

 

「サナは?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 

サナの服装はいつもの狩衣のような長袖のメイド服に黒皮のブーツ。

長い髪は白い紙で括られおり、白い髪止めと黒髪が映えていた。

腰には神器級の黒刀が鞘と共に差されており、赤い紐で留められていた。

 

…いつもと違う所があるとするならば、装備が戦闘向きという所だろうか。

基本である時間停止対策もそうだが、光系攻撃対策として指輪をポケットの中に入れているというのもそうだろう。

 

それと簡単なバックパックを背負っていた。

 

 

「よし…次、ルプスレギナ」

 

「大丈夫っす!」

 

 

ルプスレギナの格好は…一見修道女のように見えなくもない。

被り物によって獣の耳は隠され、赤い二房の三つ編みだけが零れていた。

半袖と装備であるアームカバーにより肌の露出面積は減り、奇妙なバランスをとっていた。

足元まである長いスカートの隙間からは黄色のストッキングが見えていた。

手に持った十字の戦斧は聖なる雰囲気を零しており、それだけで祭壇の様であった。

 

見かけは敬虔な修道女の様だ。

 

 

その笑顔を見るまでは。

 

 

人懐こい笑みのように見えるがそれは違う。

解るものには見える嗜虐性の海、絶対に近づいてはいけない化け物の笑みを彼女はしていた。

 

 

「ん、お前装備だけ?」

 

「え、そうっすけど…」

 

 

確かにサンコは装備の準備をして来い、とだけしか言わなかった。

だが、これは旅だ。いくら人間のように着ているだけで服を汚す心配が少ないとはいえ、不測の事態に備えて予備の服とか装備なりは纏めて持ってくるべきだろう。服が燃やされたらどうするというのだ。

事実サナにはそれを指示しておいたし…ルプスレギナも頭は悪い訳じゃないし大丈夫だろうと油断した。

 

 

「んー…まぁ拘る必要はないし最悪取りに帰らせるか」

 

「なんすか?」

 

「いや、何でもない次シズちゃん」

 

「…完了しています」

 

 

シズの格好はメイド服に迷彩を混ぜたもの。

どこか兵士のような雰囲気が端々に感じられ、迷彩色のマフラーや左目を隠した皮の眼帯などがそれを強めていた。

手に付けた鉄製のガントレットや、金属製のブーツなども他のメイドとの一線を画していた。

 

そして象徴的なのはやはり背中に背負ったリュックサック…に括りつけられたアサルトライフルだろう。

ファンタジーの世界に似つかわしくないそれだが、今この場だけ、シズの手元にある時だけ

は違和感なく存在していた。

 

 

「そのリュックの中身は?」

 

 

そもそも持っていないルプスレギナとは対照的に、シズの背負っているリュックサックは軍隊式の大きくてしっかりとしたものであり、前にまである束帯には拳銃とコンバットナイフが差さっていた。

 

 

「…旅なら飯盒と思い持ってきました…その他にもレジャー用の行軍装備を少し…」

 

 

シズはリュックサックの蓋を開けると、中をサンコに見せる。

中には飯盒用の小鍋、コンロ、懐中電灯に折り畳み式のテントまで入っていた。

その他にも弾薬などが入っていたがこの際割愛しよう。

 

 

「…よろしいでしょうか?」

 

「うん、よろしい。でもこれ俺も()()()()()()足りなくなったらいつでも言ってね」

 

「…かしこまりました」

 

 

リュックサックの中身を指さし告げたサンコに、シズは了解と頭を下げる。

 

だが見たところサンコは何も「持っている」ようには見えない。

完全に手ぶら…背中に何か背負っているでも無し。

いつも通りの飄々とした影の人間といった格好しかしていなかった。

 

――だが持っていたのだ「足元に」。

 

積載量――不明。

総容積――不明。

稼働時間――不明。

 

そんな輸送機があるならば実験して確かめるのがヒトの常だ。

故に今回の旅は実験も兼ねているのだ。

 

サンコの足の下にある「底なし沼」に「物資」をありったけ積み込んでの行軍。

…大体三時間は経ったが問題は無い。

 

 

「うん、装備面で問題は無いか…あー…身体欠損、風邪、病、精神疾患のモノは?」

 

 

装備の点検が終わりサンコは次に移る。

装備の次は身体、精神の不備が無いかの確認…万が一という事もありうるからだ。

 

そして返事が無いことを確認するとサンコは少し思案顔になる…やり残しは無いかと考えていた。

 

 

「…うん、無いね」

 

 

数秒で全ての事を振り返り終えると、頷き、立ち上がった。

…液体粘状の影化による思考の高速化などはあるかもしれない、まだ解らないというのが本音だが。

 

 

「それでは…?」

 

「あぁ、それじゃあ――

 

 

 

サンコは右腕を振り上げると激励よろしく吼えた。

 

 

 

――法国潜入作戦を開始する!!」

 

 

 

・・・

 

 

 

「いやー嫌な事件だったっすねー」

 

「そう…なの?」

 

 

深い森の中。

作戦開始から六時間程経ち、見えない太陽が真上に上った頃。

サナはルプスレギナと共に木々の合間を歩いていた。

 

ルプスレギナは地図を頻りに見ながら軽くステップを踏むように歩いており、サナは枝に服を引っかけないように歩いていた。

 

 

「そうっすよー、すぐ下ネタに走るのは三流って偉い人が言ってたっすから」

 

「?」

 

「いや、最初から下ネタオンリーだったら良いんすよ?でも展開早いうえに唐突におふざけ入れられたら読み手側も困惑するっていうか…」

 

「??」

 

「…あー…何でもないっす」

 

 

ルプスレギナの言っていることにサナは首を傾げていると、ルプスレギナの方から会話を切ってしまった。…正直何を言っているか解らなかったから都合は良かったが。

 

サナはそんな事を考えながら後ろに振り返る。

後ろではサンコとシズが、少し離れた位置で話しながら歩いていた。

 

これからの仕事でシズは事務関係を担当するため相談することが多い、からその事について相談しているらしい。

 

 

だが少し離れているだけとはいえサンコの身が心配だ。

 

 

…まずサンコの命令で索敵に優れたルプスレギナが先行し、敵がいないか確認することになった。

そして次にルプスレギナにこそ及ばないが索敵がある程度できるサナも前に出る事になった。急な敵にも対処できるというのも選択の要になった。

 

そして残ったシズは殿としてサンコと共に歩き、護衛という事になった。

 

 

(不安だ…)

 

 

シズの能力を知らないというのもあるが、サンコの身に何かあったらと考えると…サナにはとても不安だった。

シモベという生物の本能にも突き刺さっているその不安を取り除くことはサナには出来ず、最悪の事態を考えると恐怖で身体がすくみそうだった。

 

やはり主に進言して今からでも護衛に回らせてもらおうか…?

 

今のサナにはそれが正解のように思え、そうしようと口を開く。

 

 

「サーナちゃん、前見てないと危ないっすよ?」

 

 

――だがルプスレギナの一言でそれは遮られてしまう。

 

 

サナは首を前に戻し、そのまま視線を横で歩くルプスレギナに向けた。

そして疑問が生まれる。

 

 

「…ルプスレギナは主の事が不安じゃないの?」

 

「ん?」

 

 

思わず言ってしまった一言に、地図を見ていたルプスレギナがこちらに初めて視線を向ける。

 

 

「うんにゃ、全然不安じゃないっすよ?」

 

 

眉一つ動かさずに否定するルプスレギナにサナは若干驚き、言葉を繋げた。

 

 

「…それは、何故?」

 

「あー…」

 

 

その質問にルプスレギナは若干考え、答える。

 

 

「だって私達が索敵を頑張ればサンコ様に敵に襲われる前に気づける訳っすよ?不安になるのはそこからでいいじゃないっすか」

 

「それでも…」

 

「大丈夫っすよ!シズちゃんも付いてるっすから!」

 

「…」

 

 

確かに索敵をしていれば主が襲われる前に気がつけるはずだ、それに最悪自分が主の元に戻る数秒はシズが稼いでくれるはずだ。

 

――それでもなお不安だ。

 

サナにとってサンコは掛け替えの無い存在だ。

サンコが壊れるくらいなら自分が壊れる、当たり前だ。

恐らくサンコという存在無くしてサナは存在せず、自らの心臓のように存在価値をポンプのように与えてくれるのだ。

 

…しかし、それが理由でサンコに仕えるのでは非ず。

 

心酔に近い、呪いにも等しい忠誠心をシモベ達は持っている。

花に当てられた蝶のように、本能的に従うしかないのだ…敬意をもって。

 

 

「理屈」では語れない「理由」がそこにはあった。

 

 

「うーん…サナちゃんはサンコ様が好きなんすね?」

 

「好き…?…いや、私はそんな…」

 

 

――と、ルプスレギナが唐突に尋ねてくる。

その内容にサナはまたも首を傾げた。

 

 

「サンコ様は至高の御方…恋愛対象として見るのは間違っています」

 

「ああ、いや…そうじゃなくてっすね…いやそういうことでもあるんすけど…」

 

「?」

 

「つまり…敬意と好意は同列になるか否かってことなんすけど…」

 

「どういうこと?」

 

「あー…そうっすよねサナちゃんはそういう娘っすよねー…」

 

 

そしてルプスレギナはうーんと悩み始める。

いまいちルプスレギナが何を言いたいのか解らないサナもまた困惑する。

 

…それから暫く、沈黙のままの行軍は続いた。

木々の合間をすり抜け、茂みの枝を服に引っかけないように歩いて行った。

 

 

ナザリック出口からここまで一直線。

予定ではこの森を抜け、その先にある尾根を越える。そして山下りの後平野に入り首都に向かう。人間の足でこの「距離」を歩けば三か月はくだらないだろう。

 

歩き始めてから六時間程度だが、一行は全体距離の五分の一を下していた。…やはりそこは人間基準には当てはまらない。

それに人間ならばある程度スピードの落ちる森であろうと、平原と同じ行進速度で移動できているのもその助けになっただろう。

 

それにかなりの距離を歩いているにも関わらずモンスターに一度も出会っていないというのも――

 

 

 

「…!…サナちゃん…ストップっす」

 

 

 

――ルプスレギナが真剣な顔で足を止めた。

そして身を屈めると手でサナを制した。

 

「敵…?」

 

声を潜めたルプスレギナに合わせてサナも声を潜めた。

そしてルプスレギナはサナの言葉に頷くと、前を向いた。

 

 

「…じゃあ予定通りまず私が偵察してくるっす…!…その間にサナちゃんは報告を…!」

 

「解った…!」

 

 

ルプスレギナの姿が掻き消えるのと同時に、サナは音を立てずに後ろに振り返ると全力疾走を始めた。

 

 

サンコまでの距離約1mを、障害物を踏みつぶしながら進む。

疾風迅雷の動きで地を蹴り、一刻も早くサンコの元に辿り着くためにそれ以外の事を全て頭の中から排除した。

 

 

そして一秒未満で辿り着くと、足元に跪いて報告する。

 

 

「報告します。ルプスレギナが敵性生物を感知しました」

 

「うん、解った」

 

 

サンコは特に驚きもせず、ただ頷くと、顎に手を当てた。

…サナは跪いたまま命令を待つ。

 

 

「報告しますっす」

 

 

――そしてルプスレギナが、サナの隣に跪いた状態で突如として現れる。

どうやら偵察は安全に終えられたようだ。

 

…ルプスレギナが報告を始める。

 

 

「この先30m地点で敵、幽霊犬(バーゲスト)3体を確認。推定レベルは16…つまり雑魚っすね!」

 

 

と、最初は深刻な面持ちだったルプスレギナだったが、敵が弱いと解ったからか…にやけた。

 

 

レベル16…確かにサンコ達のレベルから見れば雑魚だ。

道に転がる小石に恐怖する人間がいないように、サンコからしてみればレベル16程度の幽霊犬(バーゲスト)は障害にすらならない。

 

 

故にルプスレギナは(わら)う。否、嘲笑(わら)う。

 

 

――確かに笑ってもいいのかもしれない。

 

 

ルプスレギナにとってすれば最大の敵を予想し、いざ箱を開けてみれば中には小石が入っていたのだ。…なんという笑い種だろうか?笑わざるをえない。

 

 

ルプスレギナは本当に、()()()()()笑っていた。

 

 

「くっくっくっ…16って…あははははは!」

 

 

ルプスレギナの笑いは止まらない。

流れる水のように、新しい玩具を貰った子供の好奇心のように。

 

――嘲笑が、止まない。

 

 

 

「慎みなさい、ルプスレギナ」

 

 

 

しかし凛とした声がそれを遮り、止める。

 

ルプスレギナは笑い疲れたかのように、だらりと脱力するとどこか虚ろな目で隣のサナを…睨んだ。

 

 

 

「…何すかぁサナちゃん…説教っすかぁ…?」

 

 

 

口調は変わらぬ。

だがいつもよりその声は間延びしており、暗かった。

 

…垂れた髪の隙間からサナを睥睨するその目は…少し悲し気で、疲労し、確かな殺意が混じっていた。

 

 

しかし相反するそれを目の当たりにしても、サナは凛とした態度を変えなかった。

 

 

「ここは主の御前よルプスレギナ。慎みなさい、さもなくば…」

 

「…殺す、っすか?」

 

「ええ、殺すわ」

 

 

 

にべもなく頷く。

 

 

 

「不敬を犯した者は誅殺する。主に敬意を払わないシモベは斬り殺すわ、いかな理由であっても」

 

 

ルプスレギナが目を伏せる。

そして呟くように、言葉を吐いた。

 

 

「…例えば操られていても?」

 

「殺すわ」

 

「…そうあれと命令されていても?」

 

「殺すわ」

 

 

 

 

「……()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

「勿論、殺すわ」

 

 

 

 

 

サナは見上げてくるルプスレギナに、力強く頷いた。

 

ただ凛と、迷いなく。

真っすぐルプスレギナを見ながら。

 

 

そんなサナの視線にルプスレギナは若干怯んだように見えた。

そしてそのまま視線を下げてしまった。

 

 

 

だが――笑い始めた。

快活に、いつも通りに。

 

 

 

「ぷっはははは!ごめんなさいっす、サナちゃん、サンコ様!どうにもこうにも面白くって!以後気を付けるっす!」

 

 

 

既に彼女の様子はいつも通り元気になっており、明るく、先程のような影は無かった。

その様子が不敬なのでは、とサナは言いかけたが…やめた。

 

先程から無言であったサンコが無言で命令していた。

 

――これ以上何も言うな、と。

 

 

 

「もー気をつけなさいよー?」

 

 

 

そしてサンコはルプスレギナに乗っかり雰囲気を流そうと努めた。

二人の会話を聞いている時は深刻な顔をしていたが、今は笑顔であった。

 

 

「…申し訳ございません、主。主の御前で見苦しい…切腹をば」

 

「いや、いいです…。それより幽霊犬(バーゲスト)のことなんだけど」

 

「まだいるっすね~!」

 

「でしょ?…でも戦闘しても大して経験値にはならないだろうから…サナ」

 

「はい、主」

 

 

未だ跪いているサナにサンコは声をかける。

サナは普通に応え…否、何か戦の匂いを直観し

 

 

「殺気を出しなさい」

 

「かしこまりました」

 

 

サナは再び頭を下げると立ち上がった。

そして振り返ると数歩歩き、刃に手をかけた。

 

 

「…フー…」

 

 

…思えば命令されて刀を抜くのは初めてかもしれない。

自発的に抜くのと、主に命令されて抜くのとでは意思力が違う…サナはそれを嬉しく思う。

 

そしてゆっくりと息を吐くと、刹那で抜刀した。

 

――音が遅れて付いて来た。

 

瞬きほどの刹那で野太刀は最大限まで引き抜かれていた。

居合後のようにサナの挙げられた手の中にある黒刀は天を指しており、あるだけで周りの雰囲気を「食っていた」…まるでサンコの創り出した玉座のように、それだけで液体粘状の影であるようだった。

 

そして黒刀が抜かれた三秒後。辺りに死を告げる鐘のような薄く、長い、金属が擦れていくような耳障りな音が響いて行った。

…つまりサナの鞘から刀が引き抜かれた音が、その音速を超える抜刀速度に追いつけず三秒後に追いついたのだ。

それにサナは音を「切り裂いていた」…正確にはその周りの振動する空気という事なのだがそれに干渉し、また音の到着を遅らせていた。

 

 

そして同時に殺意が放たれた。

 

 

手に持った黒刀のように鋭く、一点の曇りもない。

心臓に直接突き刺さるような、首筋に刃を押し付けられたかのような殺意。

 

…殺意とはつまり「殺し方」のイメージだ。

 

敵と相対した時、殺意を感じるということは相手が自分を殺すイメージが出来ているという事。

つまり殺される想像を抱かれてしまう…それは自分と相手の力が拮抗しているか、相手より自分が弱い時にのみ起こる。

 

 

そしてサナの殺意は「刀」。

 

 

相手を斬るのが目的だから当たり前だが、もしサナより弱い者がこの殺気を受けたなら一刀両断され、身体が崩れ落ちる…そんなところまで克明に想像してしまうだろう。

 

 

 

…きゃいん…

 

 

 

「…幽霊犬(バーゲスト)逃げていくっす!」

 

 

 

おおよそ30m先から悲し気な犬の鳴き声が聞こえた。

恐らくサナの殺気に直撃してしまったのだろう。

 

感覚としては身体を何度も何度も切断され、刺され、死ぬイメージだろう。

本能という心臓を刃が貫き、恐怖という血が流れ、熱が奪われ生きた心地

を感じさせないだろう。

 

 

 

「サナーもういいよー」

 

「はい、かしこまりました」

 

 

 

サナは振り返りながらスパンと刀を鞘に戻した。

それと同時に殺意はなりを潜め、辺りには静けさが戻ってきていた。

 

そして振り返ったその表情はどこか清々しく、明るかった。

 

 

「はいお疲れー」

 

「お疲れっすー」

 

「…はい、ただいま帰りました」

 

 

…が、サンコの顔を見るや否やいつもの無表情とも凛ともとれる顔に戻った。

そしていつの間に立っていたルプスレギナよろしく、同じようにサンコの前に立った。

 

 

「それじゃ陣形を元に戻す、ルプスレギナとサナは先行し索敵…俺とシズちゃんは後ろから付いていく」

 

「お…?…そういやサンコ様、シズちゃんは?」

 

 

辺りを見回したルプスレギナはシズがいないことに気が――

 

「…いるわ、ルプー」

 

――シズが木の上から降りてくる。

そして着地音を消しながら、ゆっくりと膝を沈めた。

手にはアサルトライフルを持っている辺り臨戦態勢ではあるようだが…。

 

 

「おお、どこ行ってたっすかシズちゃん!?」

 

「…サンコ様、完了致しました」

 

 

行き先を尋ねるルプスレギナを無視し、シズはサンコに報告をする。

優先順位的にそれは正しい、ルプスレギナよりもサンコの方が優先されるべきだ。

そしてルプスレギナもそれに納得し頷いた…が、本心では「何が完了した」のか気になって仕方ないようだった。

 

 

「ん?なんだ、ルプスレギナ。俺はもう命令したつもりだったんだがな」

 

「ほら、早く来なさいルプスレギナ」

 

「…ルプー。命令順守」

 

「ほっほー…焦らしプレイって奴っすね!!」

 

 

ルプスレギナが笑い、手招きするサナに付いて行った。

それをサンコとシズは見送る。

 

そして二人が茂みに消えて、きっかり1m経つのを確認した。

 

 

「んじゃ行くぞ」

 

「…かしこまりました、サンコ様」

 

 

サンコが歩き出すのを皮切りに、シズも付いていく。

左隣をとことこ、と。

 

…右隣はサナだ、シズも無表情ながらそんなことは理解していた。

 

 

 

眼帯をつけていない右目の瞳孔が小刻みに動く。

黄色の眼はライトのように点滅を繰り返し、煌めいていた。

 

 

 

――まるでシャッターのように。

 

 

 

 




…この締めのひどさよw

もっと落ち着いて書く?でもそれすると更新頻度が遅くなる上に、それに見合う締めの上手さ向上には繋がらないんだよなぁ…。

練習あるのみ感はあるなぁ…。

あい、ではではー
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