シャルティア好きな人ごめんなさい。
あと攻殻機動隊オンライン面白いですね!
下手の横好きですがやってます。
ではではー
・・・
玉座の間。
四十一の旗が掲げられたこの場所は、ナザリック地下大墳墓の所謂「最終地点」である。
用途としては、主が面会をしたり、大規模な命令を下す場所に使用される。
そしてもしここに侵入者がやってくるような事があればこう思うだろう――
――「美しい」と。
天井には暗黒質の光を放つシャンデリアが下がり、磨き上げられた床からは白亜の巨柱が幾本も屹立して夜空のような天井を支えていた。
その様はまるで大地の巨人が星々の輝く夜空に精一杯手を伸ばしているようであり、儚げな美しさと不変の頑強さを併せ持った、一種の「聖地」のような場所であった。
そして今、玉座の間にはナザリックに仕える全シモベが招集されていた。
様々な種族、レベル、力の雰囲気…個体差はあったが一つだけ共通している事があった。
それは「跪いている」こと。
方向は王座。
位の順に王座から整列し、目あるものは閉じ、頭あるものは下げ、手あるものは地に、足あるものは折り、心あるものは最大限の敬意と祈りを捧げていた。
招集命令から約一時間。
多少の差はあるが大体のシモベ達は命令から五分後に来た。
そして誰に言われるでもなく皆跪き、55分もの合間ピクリとも動かずただただ頭を垂れていた。
その行動原理は「忠誠心」のみ。
狂気にも近しい至高の御方に対する信仰。
もしその至高の御方が死ねと言えばなんの抵抗もせずに死ぬし、白と言えば黒も白になるのだ。
そして至高の御方に仕えることを自分の生きる意味としている。
――ならその至高の御方の姿を確認したら?
その時、玉座の間の扉が開かれると至高の御方であるモモンガ…いやアインズ・ウール・ゴウンが姿を現した。
全シモベ達がより一層身を引き締め服従の姿勢を強める。
だからといって服従に不備があった訳では無く不完全な訳でも無かった…それはつまり歓喜に打ち震えるその身を押さえつけるために力んでいるにすぎないのだ。
しかしシモベにとって全知全能であるアインズがそんな自分たちの不敬に気が付いていないはずがない。
だが、アインズは今シモベ達の列の合間を悠々と歩いている。
それでもアインズはシモベ達の失態をお叱りにはならない。
それはアインズの慈愛の心からなのだろう。
シモベ達はその優しさに更に敬意を深め、頭を垂れた。
・・・
(いやー…いつ見てもシモベ達の、服従の姿勢?は完璧だな…)
アインズは玉座に歩きながら両脇に跪いているシモベ達をチラと見ながらそう思う。
もはや畏まられることには慣れつつあるが、もう少し楽にしてもらっても構わないと思う…そう体育座りとか。
「ふむ…」
今アインズの後ろにはアルベド、サンコが続いている。
そしてサンコは影に潜っている訳では無くその身を晒していた。
この時点での懸念事項は、シモベ達がサンコに向かって敵対行動を起こすこと。
シモベ達にしてみればサンコは全くの不審者だし、過保護なくらいのシモベ達は何か行動を起こしかねない。
(…大丈夫か)
しかしサンコを見たシモベ達に僅かな不安は蔓延しているようだが、まだ誰も行動を起こしていなかった。
アインズはゆっくりと歩みを進めると更に玉座に近づいた。
そしてやっと見えてくるのは守護者各員。
ガルガンチュアを除く第一から第七までの階層守護者。
デミウルゴス、コキュートス、アウラ、マーレ、そして――
(シャルティアか…)
先ほどの事のすぐ後だ、どう思っているかは解らないがショックを受けている可能性は高い…。
(慎重にいかなければな…)
玉座への階段をのぼりながら、シャルティアへの対応を頭の隅で考える。
アインズは漆黒のローブを少し、わざとらしく翻して振り返ると玉座に座った。
そして持っていた宝杖を床に垂直に立て、跪くシモベ達を見まわした。
――壮観である。
軍隊のような揃った美しさではない。同じ種類のシモベはおらず、ただ力を持つ者たちがそれぞれの輝きを見せていた…つまり星空だ。
アインズはいつまでもそれを見ていたい気持ちに駆られるが、階段をヌルヌルと移動してくるサンコを見て気を引き締めた。
「…サンコさん、よろしいですか?」
アインズは小声でサンコに尋ねると、サンコは影の指で丸を作った。
そしてサンコが玉座の左に立ったのを確認するとオーラと共に口を開いた。
――全体集会の始まりである。
「我がシモベ達よ!」
声の振動に玉座の間がビリビリと震えた。
少し大きすぎたとアインズは反省すると、少しだけ声を落とした。
「…まずは急な招集に集まりご苦労。」
「いいえアインズ様。アインズ様の命令に従うのは当たり前の事…労おうなどと思わず壊れるまでお使いください」
右に控えた唯一立っているアルベドが微笑を称えお辞儀をする。
見ればシモベ達の中にも微かに頷いている者もいた。
アインズはテンプレのようなこの毎回の挨拶に少しうんざりしながら、それをぐっと堪えた。
「ゴホン…私も忠義に応えよう」
「感謝します、アインズ様」
ここまでがテンプレだ。
アインズはここからが話すべきことだと、今更ながら緊張する。
そして緊張しながらも、立ち上がり勢いよく言い放った。
「単刀直入に言う、皆に私の仲間を紹介する!ここにいる液体粘上の影…サンコは私のかつての仲間!つまり彼は至高の四十一人の内の一人である!」
アインズは一度そこで言葉を切ると左腕でマントを翻した。
そして腕でサンコを示す。。
「全シモベ達はサンコに敬意を…いや、仲間として尊敬するように!」
「アインズ様の御心のままに!」
反応はすぐだった。
まず階層守護者が更に頭を下げて口にする。
するとそれは伝播していき、守護者の後ろのシモベが口にして頭を下げ、そのまた後ろのシモベ達にも伝わっていった。
(ひとまず安心かな)
声は伝わっていき、扉まで届いた。
アインズサンコの事を至高の四十一人の内の一人と宣言した時点で、それに反乱…はないだろうがシモベの中に混乱や疑問などが浮かんだりしたら…サンコの居心地も悪いだろう。
だが見る限りサンコにもアインズと同じ対応をしてくれそうだ。
アインズは第一目標が達成したと、脳内の項目にチェックを付ける。
そして第二目標である「サンコの姿と声の一致」の為、サンコに視線を向けた。
サンコもそれに気が付いたようで、首だけ振り向いて思いっ切り親指を立てた。
アインズは子供のような反応に半ば呆れながら頷き返すと、再び玉座に座った。
そして頭を垂れていたアルベドに合図を送る、するとアルベドもそれに気が付いたようだ。スッと背筋を伸ばすと未だ平服しているシモベ達に振り返った。
「これよりサンコ様による、大変ありがたいお言葉があります。皆、傾聴になさい」
「ハ、俺」
アルベドの司会にサンコは無茶ぶりされた人のようなリアクションをした。
さっき親指を立てたのは何だったのか…?
次第に顔を上げたシモベ達の視線がサンコに集まってくる。
シモベ達にとって新しい至高の御方の、初めての言葉だ。
必然的に注目度は高いだろうし、サンコの緊張は相当のものだろう。
しかし当のサンコは――
(考えといてって言ったじゃないですか!)
――何も考えておらず、唐突な挨拶に驚いているようだった。
(これは助け船を出した方がいいか!?)
サンコの姿は背中しか見えないが、完全に動揺している。
このまま放っておくと下手なことを言いかねないだろう。その前に止めるなり助言するなりすべきだ。
そう決めるとアインズは極めて小声でサンコを止めようとした。
「サンk」
「同氏諸君!」
(手遅れだったーー!!?)
アインズの言葉をかき消すような大声をサンコは出した。
しかも内容が…!?
「我らは志を同じくする仲間だ!同じ思想を持ち、利益を分配し、ナザリックひいてはアインズ・ウール・ゴウンの為に血反吐を吐いて頑張ろうではないか!我らは運命共同体なのだ!その肉体は違えどその魂は一つに繋がっているのだ!アインズ・ウール・ゴウンばんざぁぁい!!!」
(共産主義みたいなこと言ってる――!!?)
サンコの力のこもった挨拶…もとい演説にシモベ達の動きが完全に止まる。
(これはまずいんじゃないか!?)
下手をすると敬意が離れてしまうかもしれない。
それは成功したはずの第一目標が失敗になる可能性もも出てくるということだ。
アインズは不安になり…助け船を出そうとする。
しかし反応はすぐ帰ってきた。
「アインズ・ウール・ゴウンばんざぁぁい!!」
シモベ達は全員立ち上がると各自歓声をあげた。
「サンコ様ばんざぁぁぁい!!!!」
「アインズ様ばんざぁぁぁぁい!!!!!!」
惜しみない拍手と雄たけび。足を踏み鳴らし、口々にアインズとサンコに対しての称賛を吼えた。
それは玉座の間を振動させ、轟音となって地下墳墓全体に響き渡った。
シモベ達は立ち上がり、各自拳に当たるものを振り上げる。
そして歓喜の感情を躊躇いもなく発露させ、吼えた。
(えぇ…?)
その様にアインズは困惑する、そして沈静化された。
「サンコ様!サンコ様!サンコ様!!御身が不変でありますようにぃぃ!!」
「サンコ様は偉大!我らの忠誠をお受け取りくださいぃぃぃ!!!」
「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
なんだか狂信者のようだが、事実シモベ達の行動は常軌を逸していた。
いつもはこんな事は不敬だと絶対にしないだろうが…。
アインズはこの非常事態にアインズはそうするべきかと思考を巡らす。
(そうだアルベド!)
シモベ達の中でも特に敬意を重んじているアルベドならば、喝をいれるなりシモベ達を御してくれるだろう。
「アルb」
「グスン」
(泣いてる―――!!?ていうか俺の言葉さえぎられ過ぎィ!)
シモベ達の喧騒の中、アルベドは目元を押さえて泣いていた。
「あ、アルベドよ。なぜ涙する?」
「は、はい。申し訳ございませんアインズ様。」
アルベドは涙を急いで手の甲で拭うと、切なそうな顔をする。
「サンコ様の御言葉に感動してしまって…私としたことが涙が」
原因は解る。でも理由がわからなかった。
「…そんな感動できる言葉だったか?」
「はい!私サンコ様がどのような御方かわかりかねていましたが、素晴らしい御方だと確信いたしました!!……一番はアインズ様ですけど……」
「…」
みればシモベ達の中にもアルベドと同じように泣いている者もいた。
他のシモベ達の反応をみるあたり、どうやらそれは本当らしい。
ただサンコの姿と声を一致させるだけで良かったのだが、期せずしてサンコの信仰も獲得できたようだ。
(これでいいんだろうか…?)
結果オーライなような気もするが、アインズはどこか納得できなかった。
(まぁ…目的達成できたしいいかぁ…)
アインズは思考放棄すると、気だるげに、だが全体に聞こえるように通達する。
「あー…全シモベは各員持ち場、あるいは任務に戻れ。階層守護者だけはこのすぐ後に私の執務室に集合しろ」
「アインズ様の御心のままに!!」
アインズの言葉で流石に喧騒が一瞬で収まる。
そして――騒がしくなったシモベ達の集会は終わったのだった。
・・・
「――という訳だ。そしてこれは他言無用だ」
「なるほど。つまりサンコ様は四十二人目の至高の御方というわけですね」
全体集会の後。
アインズの執務室には、先ほどの約束の通りに階層守護者全員とセバスが集められていた。
「流石デミウルゴスだな。理解が早い」
「いえ、アインズ様自らの智慧溢れた御言葉。理解に容易く存じます」
「う、うむ…」
アインズは若干引きながら、それでもデミウルゴスの頭の良さは普段から認めていた。
スパイでギルドを抜けたとか、かなり突拍子もない話だと思うのだが…。
自分なら理解できない。
「シャルティア、アウラとマーレ、コキュートスそれとセバスはどうだ?」
だからこそ他の守護者達も理解しているか確認する必要があった。
皆頭は良いが、話が話だ。こういう確認は重要だと思われる。
「私は理解しました!アインズ様」
「…ぼ、僕も解りましたアインズ様」
「ジブンモ、アウラ達ト同ジデス。アインズ様」
「このセバス、理解いたしました。アインズ様」
アウラ、マーレ、コキュートス、セバスが、元気よく手を上げたりオドオドしたり腕を組んで頷いたり丁寧に腰を折って頭を下げたりした。
しかし――
「シャルティア。お前はどうだ?」
――シャルティア地面を見つめるばかりで返事をしなかった。
(やはり気にしているか)
サンコが侵入してきた時。
シャルティアはこれに相対し、サンコにとどめをさしかけた。
シモベ達の常識で言えばこれは問答無用で大罪である。
確かにシャルティアはサンコが至高の四十二人目など知る由も無かった。
しかし傷つけた事実は消えないし、言い訳も通用しない。
そもそもシャルティアが自分自身を許す気は無いのだから仕方がない。
――シャルティアは――――
「サンコ様!」
シャルティアは跪くと頭を地につける。
(やはりこうなるか!)
アインズはある程度この事体になることを予測していたが、それでも緊張はする。
失敗するとシャルティアが死んだり追放されたりする可能性があった。
「この度は御身を傷つけてしまい大変申し訳ございませんでした!」
シャルティアは土下座をしたまま吼える。
その表情は良く見えないが苦悶そのもののような気がした。
「おん?」
執務机のすぐ近くに立っていたサンコは突然のシャルティアの贖罪に、疑問符をつけて首を傾げた。
そしてその時、アウラが手を打った。
「…あ。そうか…戦闘配備の時、既にシャルティアは侵入者と応戦中だったんだっけ…」
なにか納得したかのように頷くアウラ、そして他の守護者も少しずつ表情に暗いものが混じり始めた。
そして一瞬の静寂の後、アルベドの静かな声がそれを破った。
「サンコ様は至高の御方…怪我をさせるなど言語道断。アインズ様、サンコ様、ご命令とあればいつでも私達は――」
その時、シャルティアに向けて守護者達から殺意が放たれた。
それは普通仲間に対しては扱われないであろう、見紛うことのない本気の殺意。
しかし「当たり前」だ。至高の御方を傷つけるというのは「罪」なのだから。
もしアインズかサンコが間違って「処刑」などと言おうものなら守護者達はすぐさま「罪を」犯したシャルティアに飛びかかるだろう。
そしてきっとシャルティアもそれに抵抗しない。
状況は既に一瞬即発。
唯一地に伏しているシャルティアと、それに殺意を送る守護者達。
そしてそれを見る至高の者。
場には殺気が溢れていた。
しかし鶴の一声により、この状況は壊れることになる。
「控えよ」
その言葉には何の感情も含まれていなかった。
極めて軽い言霊。しかしそれを言ったアインズからは「殺意」が溢れ出ていた。
…アインズ自体は気が付かないが、この時のアインズの殺気は守護者の殺意が霞むほど「濃かった」。
シャルティアに殺意を向けていた守護者達が一斉にアインズに跪いて頭を垂れる。
そしてアルベドがそれを代表してか謝罪を述べた。
「申し訳ありませんアインズ様、大変お見苦しいものを…」
「よい。それよりも今回の事だ」
アインズは執務机に頬杖をつくと、精一杯の威厳のある声で自分のペースに持って行こうとした。
「そもそもシャルティアはサンコさんが至高の御方ではない…否、至高の四十一人の容姿を知っていたからこそサンコさんが至高の御方かと疑うことすら出来なかった…そうだな?シャルティア」
アインズの問いに土下座をしていたシャルティアは顔を上げると質問に答えた。
「はい…しかし――!」
傷つけた事実は消えない。
そんなことはアインズも知っている。
だからこそ少しだけ、アインズは肩の力を抜いた。
「そうだ、傷つけた事実は消えない。だが情状酌量の余地は全然あると思うのだ。それにもしもの時に応戦してもらわなくては困る」
「…ですが」
「私はお前たちを家族のような存在だと思っている…子供のミスを許せずに何が家族か」
「…あ、アインズ様……私、感謝いたします…しかし!それでも罰をお与えください!」
(…)
アインズ自身こんな事態になったのはコチラに来てからは初めてだ。
この段階でシャルティアが諦めてくれたらそれで良かったのだが、アインズはまだシモベ達の思考パターンを完全に把握している訳では無かった。
「…そもそも罰を与えるのはサンコさんだ、私ではない」
「あ、うん」
アインズの苦し紛れの逃げにサンコも反応する。
「はい…サンコ様……お手を煩わせてしまうことになりますが…何卒…宜しくお願い致します…」
そしてシャルティア再び頭を地につけた。
その姿は沙汰を言い渡される前に震える罪人か、断頭台に立たされた敗国の幼姫のようであった。
「ふーん…」
そしてサンコは興味なさそうにシャルティアを眺めていた。
もしサンコさんが「処刑」と言ってしまったら…アインズは背中に冷や汗が伝うような不安を覚える。
だからアインズは先手を打つことにした。
「サンコさん」
「ん?なんすかアインズさん」
呼びかけにサンコはクルッと振り返った。
「…私はシモベ達の事を家族のように思っています…出来ればサンコさんもそのように思って頂ければ…」
「うんそうですねアインズさん。自分もそう思います」
アインズは言外に「罰はいらない」ことを匂わせる。
それがアインズの望む最高の結果だったのだが…。
どうやらサンコさんも同じ気持ちだったようだ。
アインズは自分の言いたいことが伝わったと安堵する。
このままサンコがシャルティアを「許す」と言えば、シャルティアもシモベだ、納得してくれるだろう。
そしてアインズが椅子に体を預けなおすと同時にサンコが振り返った。
そして仁王立ち。シャルティアも顔を上げると悲しげな眼でサンコを見上げた。
「では沙汰を下す」
サンコは声音を変えてシャルティアに声をかける。
そしてすぐに戻り、極めて軽く、まるで笑いかけるかのように――
「じゃあ私刑執行ね」
――罰を下すことを決定した。
(話聞いてなかった!?)
・・・
「ねぇサンコさん」
「はい?」
守護者達が退室した後の執務室。
アインズとサンコは、アインズが起立、サンコが正座という形で相対していた。
「確かに自分も正確に罰は無しとは言いませんでした」
「はい」
アインズは子供を叱る教師然。
威厳みたいなものを出していた。
「シャルティアは家族です!だから私は罰などいらないと思って…!」
「うーん…そういう訳にもいかんでしょう」
「何?」
予想外の反応にアインズは驚く。
しかしサンコは悪びれもせず頭を掻いて答えた。
「アインズさん…いやアインズさんの中の人って人の上に立ったことないでしょ?」
「うッ」
確かに人の上に立ったことなどないし、何ならブラック企業勤めだ。
「自分は少しだけやったことあるんですけど…やはり因果応報。誰かがミスをした場合ある程度ペナルティを与えないと、本人が(真面目なら)納得できなかったり他の人が嫉妬したりでろくなことになりません」
「た、確かに…」
「勿論情状酌量の余地がある上に、命令すれば何でも聞く部下なんて…常識は通用しない…好都合。ですから少しだけの罰を与えた方がいいですね」
「…」
どうやらサンコにはそういう経験があるようだ。
かなり納得できたし、その通りだと思った。
しかし――
「じゃあ私刑ってどういうことですか?」
「私の趣味だ!」
「おおい!?」
唐突な趣味発言に、アインズは昭和並にこけると仏頂面になる。
「いや…何するかは知りませんけど…変なことはよしてくださいよ?」
「いやいや理由はあるんですって」
アインズの確認にサンコは手を振って否定する。
「ほら液体粘上の影について調べるって言ったじゃないですか」
「…あぁ!」
現在液体粘上の影について知っているものは誰もいない。
だから近いうちにその調査をするという話だったのだが…。
「つまりシャルティアにその手伝いをさせることが罰だと?」
「うん、そういうことですはい」
アインズは頷くと、骨の指を顎に当てた。
「しかし…働くことを罰と思わないのがシモベなのであって…」
「あぁ、解ってますよ!そこらへんはお任せあれ」
「うーん…大丈夫なんですよね?」
なおも不安な様子のアインズに、サンコは立ち上がると笑って頷く。
「シモベ達を傷つけたく無いのは自分も同じですよ…大丈夫です、大事にします…」
そう言うとサンコは執務室のドアを開け、その液体の足を一歩踏み出した。
アインズはその背中を見送りながら不安と共に安堵を感じていた…少なくとも一人ではなくなったのだから。
…しかしアインズは気が付かなかった。
サンコについていた「もう一人」が姿を消していたことに…!
最後の展開が急すぎるのよー。
シャルティアは余り重くならないようにしましたが…大丈夫かな。
はい、私刑ってなんでしょうねー…!
次回もお楽しみに…ではではー