口内炎と腱鞘炎のダブルコンボ!
ハー…本編にはいつになったらいけるんだろうか…巻いていこう。
…あ、シャルティアファンの方ごめんなさい(二回目)
これはR-18タグ付ける日も…こない…はずだ。
・・・
死蝋玄室…その中の一室。
そこにシャルティアの個室はあった。
部屋の中に部屋というのもおかしな話だが、吸血鬼の花嫁もいる死蝋玄室の中のここはシャルティアの、所謂「プライベートルーム」である。
部屋の広さは五畳半程だろうか、シャルティアが寝泊まりしているここは普段ならばそこらに性的な玩具が散らかっていたりアインズのポスターが張られていたりなど、とても至高の御方などには見せられない部屋であるのは確実だった。
――しかし今日は違う。
部屋は全て和風になっていた。
床には畳が敷かれ、壁紙は和紙に張り替えられていた。
卑猥な物は全て片づけられ、掃除は隅々まで行き渡り埃一つも積もっていない。
天井からは和紙と檜の木組みで作られた灯りが下がり、数個の行燈が部屋の中を照らしていた。
そして部屋の真ん中には赤い布団が敷かれ、その上には赤と白を基調にした着物を着た白髪の少女が座っていた。
――つまりシャルティアである。
普段であれば「ゴスロリ」といわれる格好をしている彼女だったが、今は部屋の雰囲気に合わせてか「和服」を着ていた。
髪もいつものリボンでは無く花の簪で止め首筋が見えていた、それにいつもつけている香水もつけていなかった。
しかしその代わりにか部屋の隅で何かが焚かれ、部屋全体に良い薫りが漂っていた。
そしてシャルティアのその顔は――緊張していた。
「…今日……」
布団の上で正座をしたシャルティアはポツリと呟く。
「今日…私はサンコ様に…」
守護者会議の後、シャルティアはサンコ様に「自分の部屋で待っていろ」と命令された。
つまり…曲解のようだがシャルティアは私刑のことを「夜伽」だと判断した。
そして自分の部屋で待っていろ…というのは、自分が行くまでに「夜伽」の準備をしておけということだろう。
だからこそシャルティアは吸血鬼の花嫁に命令し、部屋の内装を変えさせた…夜伽の準備の為に。
そして止まった心臓が動いているかのように錯覚しながら、サンコが来るのを待っていた。
勿論シャルティアに「経験」などない。
これが罰への償いになるのであればシャルティアにしても願ってもいないことだし、むしろ至高の御方にこの身を捧げられることは本望と言えるだろう。
しかし前述の通りシャルティアに経験は無い…だからこそシャルティアの今の不安は「満足」していただけるか?だった。
知識が無いわけではないが、テクニックというものは持っていない。
それにアルベドのようなプロポーションを持っている訳でも無い。
シャルティアは自分のストンと落ちるような胸を見下ろす。
いつもはパッドを入れているのでかなり大きく見えるが…本来の自分は少女の身体だ。
…アルベドのことは嫌いだが、少しあの体格が羨ましくなる。
しかしこの容姿を責めることはできない。なぜならそれは自分の創造主であるペロロンチーノ様がお与えになったもので、それに文句を言うのも不敬だからだ。
であれば私にできる精一杯のことをしよう。
せめてサンコ様が気持ちよくなれるように――
ガチャリ。
――その時、唯一洋風な、和風のこの部屋の扉が開かれた。
(ついに…)
ノックが無いということは吸血鬼の花嫁ではないということだろう。
…つまりサンコが…私刑を執行しにきたということだろう。
(あ、挨拶を…)
まだ完全には開いていない扉の前に敷かれた布団の上、シャルティアは震えそうになる体を押さえつけながら、三つ指をついて頭を下げる。
「ふ、不束者ながら…この度は精一杯ご奉仕させて…いた、いただきます」
何度か嚙みながらシャルティアは挨拶をする。
こういう時は挨拶をするのが礼儀と教わったからだ。
そして扉が完全に開ききった音と閉まる音、布団に近づく足音が聞こえた。
その一つ一つに体が震えるのを感じながらシャルティアは閉じた目に更に力を込めた。
そして覚悟を決めた。
しかしそれ以降、何の音もしなくなった。
一切の音と存在が聞こえない。
(これが…焦らしプレイでありんすか…?)
サンコ様の御姿は見えないが挨拶をする自分の姿を見て楽しんでらっしゃるのだろうか…?
ならば自分はできる限りみじめにこのまま頭を下げ続ければいいだろう。
しかし絶対ということは無い。
間違えていたらそちらの方が問題だろう。
最悪、ここで頭を上げてもプレイの一巻になるだろうし、シャルティアは頭を上げることを決意する。
そしてゆっくりと視線を上げるとその御足を拝見しようと――
「…!」
――メイド服が見えた。
そんなものサンコがつけている訳も無く…!
「なっ!?お前は!」
「…?」
視線を上げたシャルティアは驚きの余り布団の上に尻餅をつく。
シャルティアの視界、そこに居たのはサンコではなく――
「申し遅れました。サナ・リムファティックと申します」
――あの時私のエインヘリアルを倒したメイドだった。
・・・
シャルティアは布団の上で腰が引けたままサナを指さす。
「お、お前…サンコ様の…なぜここに…!」
シャルティアは動揺していつもの口調を忘れると、頭を下げるサナ・リムファティックに狼狽していた。
だが、それも一瞬。守護者としての威厳を取り戻すと、姿勢を正す。
「ゴホン…サナ・リムファティックと言ったかえ?」
「えぇ」
余り敬意を感じない返事にシャルティアはムッとしながらも尋ねる。
「…サンコ様はどちらへ?私の所へ来るんでは?」
夜伽ならば代理…ということもあり得ないだろうし、サンコ本人が「すぐに行くから」と言っていた。
しかしサナが来た、ならば…考えられる可能性としては…中止だろうか?
どうやらサナ・リムファティックはサンコ様の側近のようだし、それを伝えに来た…というのであれば筋が通っているだろう。
「…?」
しかしその問いかけに、サナ・リムファティックは可愛らしく首を傾げた。
………
(え?何で?)
それにシャルティアもキョトンとする。
当たり前のようにサナは首を傾げたが…今までの会話の中で首を傾げる要素は一切無いだろう。
(え?理解?)
何故首を傾げるかの理由を求めるというのであれば…。
考えられるならば理解力だろうか?
声量が足りなかったとか、言葉が通じていないとかだろう…多分。
「その…サナ・リムファティック…?」
シャルティアは意識を戻すと、未だにポカンとしているサナに再び尋ねる。
そしてお互い見つめあったまま暫くの沈黙が続いた。
「…」
「…」
そしてサナがポンと手を打った。
「そうだ、連れてくるように言われてたんだった」
「忘れてたでありんすかぇ!?」
どうやら今の沈黙はサンコからの命令を思い出すための時間だったようだ。
…いや普通覚えているだろう。至高の御方からの命令だぞ?
もしかしてこいつ…馬鹿か?
(いや…こいつはサンコ様からのいわば使者…私の感情など出しては…)
そしてシャルティアは自分の「罰」の事を思い出すと、粛々とどこに行くかを尋ねることにした。
「あ…それでサンコ様の元に行くんでありんすのよね?」
「はい」
「じゃあ連れていってくださる?」
「断る」
シャルティアの当然の問い。
しかしサナ・リムファティックはそれをニッコリと断った。
その態度に粛々としていたシャルティアも流石にイラッとした。
「…シモベとして上下関係は知っておくべきd」
「その前に私刑を執行する」
「…!」
再びシャルティアの言葉が遮られる。
しかしシャルティアが再び怒ることは無かった。
なぜならサナが言った――「私刑を執行する」という言葉。
そしてこの文脈はまるで「サナ・リムファティックが私刑を執行する」みたいじゃないか。
サンコ様がしない、そしてサナがする…つまり「夜伽」ではないのか――?
「そもそも
シャルティアが自分の過ちに気づく中、サナ・リムファティックは謝罪する。
そして刀が差してある腰に手を回し――
――メイド服を取り出した。
「え?」
「じゃあこれに着替えてください。手伝いますので」
・・・
第六階層。
闘技場前。
そこにはメイドが二人いた。
片方は黒髪の美女、片方は銀髪の美少女。
黒髪の美女は刀で武装していて、銀髪の美少女は恥ずかしそうにモジモジしていた。
そして黒髪の美女は微笑み、銀髪の美少女の赤く染まった顔を覗き込んだ。
「行きますよ、シャルティア」
「……」
「どうしたのシャルティア?お返事は?」
「…はい、お姉さま…!」
「よろしい」
シャルティアは恥ずかし気に、だがしっかり返事をする。
サナも満足したらしく頷くと、闘技場に一歩踏み出した。
それにシャルティアも慌ててついていく。
靴の響かせるコツコツという音を聞きながら、うす暗い石造りの通路を通ると眩しい出口が見えてくる。
二人とも瞳孔の拡大による視界不良などは無いのでそのまま突き進む、するとかなりの広さの練習場の全容が見えてきた。
大きな観客席に大きなグラウンド、大きな天井…何もかも壮大で何もかもから迫力を感じた。
そして平坦なグラウンドの中、天上からの光が作る影の中、二人は蠢く液体状の影を見た。
「おー来たね」
潜っていたのだろうか、液体状の影は膨張すると人型になった。
そしてグラウンド入り口に立つ二人に手を振ると、手招きをした。
…サンコ本人である。
そして二人はそれに従いサンコの前に移動して跪づく…跪づこうとした。
しかしそれは正常には行われなかった。
なぜならシャルティアがスカートの裾を踏んで転んだからだ。
「も、申し訳ございませんサンコ様ッ!痴態を…」
シャルティアは「普段は絶対にしないミス」に急いで頭を下げる。
痴態…失敗、シモベとしてサンコの前でそんなヘマをするのはとても辛いことだからだ。
だからこそ罰になる。
サンコは「私刑が執行されていることを」確認すると嬉しそうに笑う。
「いやまぁ…そんなこといちいち謝らんでいいんだけど…どう?その服気にいった?」
「…!は、はい」
シャルティア自分の着ている「メイド服」を触ると、頷いた。
シャルティアへの「私刑」。
それはこの「ドジっ子メイドの呪い服」を着ること。
ドジっ子メイドの呪い服――ユグドラシルで九十九回転ぶと自動で手に入るネタアイテムだ。
装備制限は無く誰でも装備でき、装甲は紙。
してその効果は「一定時間着用して歩くとで必ず転ぶ」というものだ。
…正直、実用性は全く無い。
しかし!しかしだ。
どうやらシモベ達は主の前で失敗することを恐れているらしい。ならば実害を与えないものの効果覿面なこの呪いのメイド服は、罰として最適だろう。
だからネタを入れつつのこの「罰」を選択した。
シャルティアの守護者の任を仮解任。サンコの下にはプレアデスのような独立した組織は無いのでサナ・リムファティックの下につけた。
…姉妹の妹として。
それもいつも上に立っているシャルティアへの罰になるかも…というのは流石に考えていなかったが。
「んじゃ改めて…その服を着て暫く俺のメイドになるのが、私刑。後で文句とか後悔とかしないように」
「御心のままに」
シャルティアは改めて跪くと、頭を下げる。
まぁ罰ならば何でもいいのかもしれないが…これがサンコにとっても理想であった。
「うんうん…それじゃ早速、訓練用ダミー出してきてくれるかな?」
サンコは影の指で闘技場の一角を指さす。
指さした先には味気ない案山子が一つ、寂しげに立てかけられていた。
「かしこまりました」
二人は立ち上がるとその案山子を取りに行く。
サナは問題なく、シャルティアもその間にも転びながら、その案山子を手に取った。
…ちなみに練習用の案山子なので、取る動作をすれば無限に取り出すことが出来るらしい。
「そこに設置」
そして指示に従い、二人はサンコの前に三本ほど突き刺した。
「待機」
「かしこまりました」
そして二人に後ろで待機させるように命令した。
…だいぶ命令慣れしてきたように思えた。
サンコは腕を前に伸ばすと、足元に影を作る。
そして振り返るとシャルティアに新たな命令を下した。
「これから身体測定…もとい俺の身体調査をするからしっかり見といて後でレポートを提出してくれ」
「…かしこまりました!」
シャルティアは紙とペンを取り出すと、書き込む準備を始めた。
…正直、サナは頭が悪い
最初、サンコはサナに自分の事について書かせようとした。
だがまさか字が書けないとは…。
サナ・リムファティックは、所謂「脳筋」というやつである。
――サンコは弱い。
超越者の中でサンコは弱い。
だからこそサポート、戦闘ができるシモベを…サナを創り出した。
その過程でサナを「道具」として扱うことで、サナに知力は必要なかった。
というよりまさか現実化することで影響がでるなんて思わなかったのだ。
サナは頭が悪い。
知力を振らなかったから当然のことだ。
だから「自分のレポートを書け」という任務ができるかすら不安だった。
だからこそシャルティアに頼んだ。
・・
「えーと…」
サンコは液体粘上の影のスキル、特性を思い出していく。
というか自分のことながら余り覚えていない。
「ん…」
とりあえず思い出せる範囲の事をやろう、そうしたら思い出していくかもしれない。
俺は右手を出すと、スキル名を口にする。
「液体流用・影――」
呟く。
すると影で出来た右手が蠢き、膨張する。
右手が膨張すると奇形になる。そして収縮すると、その手には鋭く短い短剣が握られていた。
数は四本。全て影の液体でできているが、鋭さは充分そうだ。
液体流用・影。
スライム系の初期スキルであるこれは、自らの液体状の身体を硬化、または変形させて敵を攻撃したり防御ができる。
物理系のスライムの基本攻撃であるこの攻撃は、状況に臨機応変に対応でき、予備動作が少ないため全く対応ができない。
という触れ込みなのだが、実際は「剣」や「盾」、「短剣」など決まった形しか出せなかった…ゲームだし仕方ないね。
じゃあ今はどうだろう。
「♪」
短剣をジャグリングのように上に投げる。
そしてキャッチ。
「…まぁユグドラシルでこんなことは出来なかったし…」
ユグドラシルではこんなに自由に短剣を扱ったりは出来なかった。
これも違いだろうか…。
ナイフをジャグリングする。
影でできた短剣がクルクルと宙を舞う、落ちてくると影の手でそれを受け止め、またそれを空中に戻す。
そしてすべてのナイフが手に重なった時点で一気に案山子に投げつけた。
ストストストストッ…
布で出来た案山子にナイフは何の抵抗も無く突き刺さる。
「まぁこれは前と同じ…ところでシャルティアちゃん書けてる?」
「は、はい。滞りなく」
振り返るとシャルティアに確認する、どうやらレポートは順調なようだ。
そして視線を案山子に戻した。
「うーん…」
短剣は未だに案山子に突き刺さっている。
ユグドラシルでは刺さったら即霧散していたが…これも変化か。
だが何というか…まだ短剣が自分の一部という感覚がする。
自分の一部なのであれば動かすことも可能だろう。
俺は意識を短剣に伸ばすと、その形を変えようとした。
「…難しいなこれ…!」
しかし簡単にはいかない。
サンコも元人間だ。人間には短剣の形をした手は無いし、液体状の身体もない…いやそもそも身体の一部が独立もしない。
そして今は短剣の形を変えて、案山子の表面の一か所に集めようとしているのだが…短剣は蠢くばかりで動きすらしなかった。
「むむ…」
投げた先で変形、敵の背中を攻撃…みたいなことを考えていたが…動かせすらしないとは…。自動回収はできないと…。
触れば回収できようが、自分の一部をどこかに置いてけぼり…なんて事態も避けたい。
「要練習…手足並に動かせないと意味ないでこれ…」
サンコはぼやき案山子に近づくと、短剣を引き抜いた。
触れた短剣は蠢動すると、手の中に取り込まれそのまま体に取り込まれた。
「ふー…」
サンコはため息をつくと、次の「形」を作り始める。
「液体流用・影――盾」
今度は左手を前に突き出すと、膨張する。
しかし今度は短剣の比じゃなく大きく膨張していた。
手はサンコの身長と同じ大きさぐらいまで膨らむと、一気に硬化し、盾の形を成した。
そして盾の重さに従い、地面にズンッ…と突き刺した。
「…!」
その時さっきとは違う感覚がした。
それにサンコは目を見開いて納得する。
つまりこういうことだ。
どうやら質量保存の法則はこの身体にも適用されているようなのだ、だから自分の身体と同じくらいの体積がある盾を「創り出す」ことは出来ない。
じゃあ盾分の液体はどこから供給するのか――
――それは「足元」からだ。
覚えているだろうか、サンコの足元には「底なし沼」がある。
これはコチラに来てから溺れたあれだ。
で、思い出したのだが…液体粘上の影の設定ではこの底なし沼は「俺の一部」らしい。
そして氷山の一角のように俺が突き出しており、繋がった人型でコミュニケーションをとる…みたいなことらしい…。
――ああ、説明が難しい!
…つまり、そもそも全ての影の中には「底なし沼のような世界」があるのだ。
で、その底なし沼のような世界は実は俺の身体の一部…いや本体らしい。
んで、まぁ意識は人型にしかないが底なし沼も身体の一部として扱える。
そんで、液体流用・影の場合。足りない液体は底なし沼のような世界から「汲み上げて」いるらしいのだ。
つまり「液体流用・影――盾」を創り出す際、底なし沼のような世界から足りない分の液体が足を通ってポンプのように汲みあげているということなのだ。
その感覚にサンコは気づくと事実として頭の中に保存した。
(どのくらい汲み上げられるか確かめてみるか…?)
自分の能力を確かめてみたくなる。
そしてサンコは空いている右手に限界まで「汲み上げよう」と――やめた。
(その前に盾の性能の調査だ。順番でやろう)
サンコは盾を構えたまま振り返るとシャルティアの方を向く。
「シャルティアちゃんー」
「はい、なんでしょう?」
呼ばれたシャルティアは振り返ると、紙とペンをしまい深くお辞儀する。
「スポイトランスでこの盾を…あー…」
一応気遣う。
「この盾を突いて…みてくれないか」
自分を傷つけた罰中に俺に槍を向けさせるのは酷だろうか?
いや…盾だし手合わせだし、多少はね?
「俺の盾を本気でついてぇぇ!!!!!!!!(卑猥)…なんかえっちぃ!」
「は、はぃっ!?……か、かしこまりました」
大丈夫と判断したサンコは(テンションの)制限を外す。
「…叫べば面白いと思ってます!」
「…サンコ様…?」
「いや何でもない…バッチコーイ」
気づけばシャルティアの方は準備が出来ていた。
メイド服のままスポイトランスを構え、サンコに相対する。
手合わせとはいえその気配は本気。
まぁそう命令したのだから仕方ないのだが…サンコは盾を構えると衝撃に備えた。
シャルティアもその瞳に真剣な光を宿し、長い息を吐いた。
「では…参ります!」
そしてシャルティアは神速の突きを放つ為のステップを――
「あっ」
――裾を踏んで転んだ。
「…」
「…」
シャルティアは静かに立ち上がると服に付いた砂埃を払う。
そして紅潮した顔を髪で隠すと、何事もなかったかのように再び槍を構える。
「…では、参ります…」
「バッチコーイ…」
そしてシャルティアはステップを踏むと、再び、今度はちゃんとサンコに槍を突き出した。
――キリリィッ!
金属と金属がぶつかり削れる音がすると、盾の一部が闘技場の端まで吹き飛んだ。
さすがレベル100と言ったところか、シャルティアの刺突によりかなりの衝撃と負荷が盾にかかり、サンコの身体を後退させた。
「たぁいむ!」
「かしこまりました」
二発目を放とうとしているシャルティアをサンコは慌てて制する。
あぶあっぶっぶ…もし二発目以降を放たれていても堪え切れただろうが、それよりサンコには吹き飛んだ盾の一部が気になった。
見れば槍の刺突によって、盾の表面が溝ができたのかのように削れていた。
サンコは盾を構えたまま、盾の一部が吹き飛んでいった方向に歩いて行く。
シャルティアに吹き飛ばされていた盾の一部は闘技場の壁にこびりついていた。
見れば盾の時の硬さは無くなっており、ただの液体粘状になっていた。
離れていても俺の一部という感覚はやはりあるが、動かせない。
というかそもそも盾の硬度はどうか、シャルティアに対してちょっと削れた程度…まあ充分か。
――いや、それよりもこの身体に慣れてないから削れたのか。
(早く慣れないとな)
サンコはまた溜息をつくと、こびりついた俺の一部に手を伸ばした。
人差し指でゲル状のそれに触れると、吸い込まれるようにサンコの身体に戻っていく。
そしてしっかり回収したのを確認すると俺は、盾の削れた部分を「補填」しようとする。
すると回収した液体がそのまま盾の削れた部分に集まっていった。
…しかしどうにも硬化しない。
……もしかして液体流用でしか硬化しないのだろうか?
まぁ液体流用を使えば硬化は出来るのだから問題はないだろうが…?
サンコは液体流用・影――盾を解除する。
巨大な盾分の体積が底なし沼に戻る感覚がした。
「液体流用・影――盾」
そして再び盾を出す。
戻したり出したり大変だが、再び液体が汲み上げる感覚がする。
そしてまた左手が膨張すると盾を成した。
見れば削られた部分も直っていた。
…つまり耐久値が設定されているということか。
俺の受け方が悪いというのもあったろうが、シャルティア並の攻撃で盾の一部が吹き飛んだ、つまり盾の大きさが減っていくのだ…もしここで再発動せずに補填できたなら無限盾ができただろうが…。
身体から離れた液体が動かせないのと同様練習でどうにかなるかもしれないが、こちらには本能的な直観は無かった。
今の自分に必要なのは「慣れ」だ。
自分の体の調査なんてアインズさんには言ってしまったが、そもそも何を調べたら良いかも解らない。
ならばこの身体で生活して、徐々に慣れていくのが最善のように感じる。
それに調査項目も慣れていくうちに自然と埋まっていくだろう。
まだ解らないことは多い。
それを埋めていくことに愉しみは無いが、将来的なことを見据えると自分を知るという事は当たり前、かつ当然のことだ。
…それは自分の目標の為でもある。
…というかアインズさんの目標はなんなんだろうか?
一切聞かなかったが…後で訊こう。
サンコは再びシャルティアに向き直ると盾を構える。
「シャルティアちゃん…調査は置いといて槍で手合わせ頼む」
「はい、御身のままに」
ただ生活するより、実践に近い手合わせの方が効率がいいだろう。
サンコは再び槍を構えたシャルティアに盾を持って相対する。
「では参ります」
シャルティアは踏み込み槍を突き出す――
「あっ」
――ふみっ…ドサッ…。
こうして、サンコとシャルティアの「慣れ」は始まったのだった。
ドジっ子メイドの呪い服!
効果は必ず転ぶこと!
地味だけど凄い罰やでこれぇ!?
てか最近ネタ入れ過ぎかな…自重…自重…