実況パワフルプロ野球 サクセス 立ち上がれ!恋恋ナイン編   作:柿の樹

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第七話 スターティング・オーダー

「んじゃ、行ってくるわ」

「ああ。OKしてもらえるといいな」

「してもらわないとこっちが困るっての。夏の大会に出ない学校なんて、そうそういないんだしさ」

「そうだな。じゃあ、とき春の人達によろしく言っといてくれ」

「おうよ。色の良い返事、期待しておけよ」

「コラ!早くしなさい、置いていくわよ」

「あ、は~い!じゃ、後は頼んだぜキャプテン」

 

そう言って、柿原は三ツ沢監督の車へと乗り込み、ときめき青春高校へと出発した。練習試合の申し入れをしてもらう為だ。

本来なら部長であるオレが出向くべき何だろうけども、この話を持ち出してくれたのは柿原だし―――なんとも、向こうに二人知り合いがいるらしいので、この件の最終確認と敵情視察、そして同窓会も兼ねて出向いてもらうことにした。

 

ちなみに、その知り合い二人のうち一人は、同じシニアに所属していた幼馴染で遊撃手の女の子。もう一人は同じ中学に通っていた野球部のピッチャーで、なかなかの実力者らしい。

 

もう時期は六月二週目……夏の大会に参加を決めている学校が多い中、幸いなのかどうかは分からないが、ときめき青春も先月にやっと部員が集まったらしいので、今年の夏は参加を見送るとのことだった。だから、その話を偶然聞いた柿原が、この事を話題に上げてくれたのだった。

 

練習試合か。

もしこの話が通ったならば、これが恋恋野球部の初陣となる。

互いに無名校同士の対決ではあるけれど、今の自分たちの実力を見るにはいい機会だ。練習試合とはいえ、負ける気は無い。

 

思わず身震いをした。ふと右手を見ていると、手のひらは手汗でびっしょりだった。

ああ、オレって……嬉しいんだな。まだ決まった訳じゃないけど、試合ができるってことが……。

 

「さて、オーダーを考えないといけないな……」

 

オレは一抹の期待と不安を胸に、大グラウンドへと駆け足で向かった。

 

 

 

 

 

第七話 スターティング・オーダー

 

 

 

さて、オーダーか……。

 

試合のオーダーを決めるのは普通監督の仕事だ。しかし、三ツ沢監督は監督初心者どころか野球自体が全くのど素人である。なので、今回の練習試合オーダーについては俺に一任されている。

選手自体も九人丁度しかいないので、代打・代走はもちろんなし。考えるのは投手の継投くらいだ。

こういう訳なので現状監督の出番はほとんどないに等しい。だから、秋の大会まではとにかく勉強に専念してもらいたい。

 

……そして、オーダーの事に戻るが、ちなみに言うとオレの打順はすでに決まっている……四番だ。ただ、今のところはオレしかまともに長打を打てないから暫定的に入っているだけだし、そもそも俺は元から四番を打つタイプじゃない。中学の時もたまに四番に入る時はあったが、基本は二、三番だったくらいだし。

 

後は他の奴らだけど、シニアで上位打線を打っていた矢部君と柿原はともかくとして、初心者が三人、ソフトからの転向組が二人……小沢は経験者とはいえ三年のブランクがあるし、諏訪部に関しては野球を始めたのがつい三週間前だ―――にしては当たりが良ければかなり飛ばすんだよなコイツ。そして、投手のあおいちゃんは打撃はお世辞にもいいとは言えない。

 

「これだけで大体決まってしまうような気がしないでもないな」

 

そんな事はとりあえず頭の隅に追いやり、ウォーミングアップと基礎練習を済ませたあと、メモ用紙とクリップボードを持って、各メンバー達の打撃練習を見ていった。

 

そして全員が打撃練習を済ませたところで皆をベンチ前に集合させた。

 

「ええ、皆知っての通り、今日は柿原とタマキせんせーがときめき青春高校へ練習試合の申し込みに行ってる。まだ出来ると決まった訳じゃないけど、この際だから打順を決めたいと思う」

 

練習試合と聞いたとたんに、皆が緊張していくのが分かった。オレ達の初陣だしな、分からんでもない。

 

「とりあえず、今までの打撃練習での内容からオーダーを決めた。長期的には暫定的なものだけど、とき春戦では今から言う打順で決定だと思ってくれ。よほどの事がない限りは変えない。じゃあまずは―――」

 

いよいよ打順を発表する。皆がかたずをのんでオレを見つめている。

 

「一番センター、矢部君」

「合点でやんす!」

 

矢部君は今のメンバーではダントツに足が速い。それにバッティングも悪くないし、アベレージも高い。リードオフマンとしては文句なしだろう。ただ、中学の時のデータを見ると得点圏打率が低いのがちょっと気になったかな。

 

「二番ショート、夏野さん」

「任しちゃってよ!」

 

ソフトからの再転向で、待望の正遊撃手。中学時代に経験があったらしいのでそのまま入ってもらった。打撃に関しては、パワーは無いけど低めをさばくのがうまい。バントよりも打撃でつなぐ二番として猛威をふるってもらいたい。

 

「三番ファースト兼リリーフ、柿原」

「まぁ、無名とはいえシニアで上位打線を打っていたでやんすからね」

 

シニア時代、野手として出場する時には二番や三番を打っていたらしいその打撃には、正直驚かされた。本人が以前言っていた通り、ミート打ちとカッティングのレベルはかなり高い。先月、一緒に草野球に乱入した時は、一〇球以上粘ってから痛烈な一打を浴びせるなど持ち味を如何なく発揮していた。そして、こいつも低めへの対応がうまい。

 

「四番サード、パワプロ―――まぁ、オレだな」

「あかつき中でクリーンナップを打っていた実力、期待してるよ」

 

とりあえず、現行メンバーの中ではオレが一番安定して長打を打てる……と言っても、本質は中距離打者だと自分では思っているので、何とか"つなぐ四番"として頑張っていきたい。まぁ、あかつき中でクリーンナップを打っていたというプライドも多少なりとあるので、簡単に譲る気は無い……たぶん。

 

「五番ライト、諏訪部」

「!?……いいのか、俺なんかが五番に座っても」

「ああ。まだ荒いけど、パワーは十分に期待できる」

 

こいつが一番びっくりした。考えてた自分が一番驚いたくらいだ。

まだフォームが定まってないから打撃自体は荒いけど、ジャストミートすれば驚くほどの飛距離を出してくる。正直、潜在的な長打力は俺よりも上かもしれない。それに、最初はかすりもしなかった一四〇キロの球にも、最近は対応できるようになってきている……本当に野球歴三週間かこいつ……。

とにかく、将来の四番候補には間違い無いだろう。今後の成長が楽しみである。

守備に関しても、動きはまだもっさりとしているが、深い位置から楽々とレーザービーム送球して見せるあたり、感服に値する。

 

「六番レフト、青木」

「うぅ、緊張する~」

 

夏野さんがショートに入った関係でオレがサードへ戻ったため、レフトへと移ってもらった。

正直打力は最底辺だが、ガッツはある。クリーンナップからの仕切り直しという点では、積極的な打撃で下位打線を引っ張っていってほしいところ。

 

「七番セカンド、高橋」

「下位打線か~まぁ、気楽にいかせてもらうぜ!」

 

三人組の中では一番パワーがある。脚もそこそこだから上位打線においてもいいけど、セカンドと言う関係上守備に集中してほしいのもある。本人も言っているが、気楽にやっていって時たま一発を狙ってもらいたい。

 

「八番キャッチャー、小沢」

「アベレージ低いから、まぁ妥当かな~」

 

大事な扇の要だ、他の奴ら以上に守備に専念してほしい……元々打撃は最低クラスなので尚更だ。

しかし、パワーは高橋と同じくらいあるのでラッキーな長打を期待してもいい。

 

「九番ピッチャー、あおいちゃん」

「まあピッチャーだもんね」

 

コレはほぼお決まりの様なものだ。例によってあおいちゃんは打撃が弱いし、スタミナ的な問題でも一番打席の回らない9番に置くのはセオリーと言えるだろう。とにかく、あおいちゃんはピッチングに集中だ、エースだしね。

 

「とりあえず、各々が自分の役割をしっかり理解した上で、これからは練習していってほしい。うちは急造チームだし、特にパワーがある訳でも、機動力がある訳でも、小技がうまい訳でもない……正直今のオレ達じゃ―――」

「パワプロさん、三ツ沢先生からお電話です」

「―――ん、ありがとうはるかちゃん。ちょっと待っててくれ……はい、はい……へぇ。そうですか、はい、ありがとうございます。とき春の監督さんにもよろしく伝えておいてください。……はい、では……。皆、とき春との練習試合決まったぞ!」

 

おお、と皆から歓声が上がる。

 

「来週の土曜日に向こうのグラウンドでするそうだ。詳しい事はせんせー達が帰ってきてから説明するらしい」

「うひょーでやんす!遂にオイラの真の姿がベールを脱ぐでやんす!」

「アンタに脱ぐほどのベールなんてあるの?」

「夏野さん、手厳しいですね」

「…………(必ず勝つ)」

 

皆、やる気は満々みたいだ。

相手の強さは正直分からない……けど、それでも自分たちがどこまでできるのか、どれだけやれるのか、まずは知らなければいけない……勝つにしても、負けるにしても。でも、負けてやる気は無い。

 

「いよいよ、ボクが投げるんだね……」

「あおいちゃん……。でも、練習試合だしさ……あんまり気負わなくてもいいよ。ま、オレも大分緊張してるけどね」

「ふふ……。練習試合でも……絶対に、負けないよ!」

「うん、そうだね。絶対に勝とう!よし、今日から皆気合入れ直して練習しろよ!」

「「おー!」」

 

六月三週、来るときめき青春高校との練習試合に向けて、オレ達は再び練習を開始した。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「よー。帰ってきたぜぇ~」

「あ、お帰り柿原。せんせーもお疲れさまでした」

「いいのよ、これも監督の仕事だしね。じゃあキャプテン、皆を集合させてくれる?」

「分かりました」

 

しばらくして、三ツ沢監督と柿原が帰ってきた。

練習を中断させ、部員達を部室のホワイトボード前へと集合させる。

見回してみると皆緊張した面持ちのようだ。

 

「皆そろったわね。それじゃ来週の練習試合と試合相手のときめき青春高校について説明するわね」

 

監督は懐からメモを取り出し、淡々と読み上げていった。

 

「試合会場はときめき青春高校野球部グラウンド。試合開始は14:00で、集合は40分前。うちは午前中はここで練習してから電車で向かうわ。電車賃は片道四百円よ。……休日だから大丈夫だとは思うけど、校内の治安が多少悪いから気をつけてね。試合後は、いくらか時間を設けてるわ。思う存分技術交流をして頂戴。次に相手チームの選手だけど……柿原君、お願い」

「は~い。まず、言っておくけど、とき春を舐めてたらエライ目に遭うかもしれないんでそこんとこ注意しとけ。全員一年だけど……なんてったって、ウチよりも経験者の比率が高いからな」

 

治安……悪いのか。じゃあ何であっちで試合するんだよ……。まぁそれはそれとして。

ウチと似たようなチーム状況とは聞いていたけど、経験者が多いのか。

 

「ファースト、神宮寺光。右投げ左打ち。脚は遅いけど、高いミートセンスとパンチ力を兼ね備えた安打製造機(ヒットメーカー)だ。恐らくクリーンナップに入ってくるだろうな」

「安打製造機か、厄介だな……」

 

「セカンド、茶来元気。右投げ右打ち。突出したものは無いけど、バランスのいい選手だ。積極的に振ってくるタイプだから、勢いにのまれないようにな」

「特徴は無いけど欠点も無い選手ってことですね」

 

「サード、稲田吾作。右投げ右打ち。安定して長打を狙える中・長距離打者だ。鈍重だけど肩は強いから、刺されないように気をつけろ」

「こいつもクリーンナップだな、たぶん」

 

「ショート、小山雅。右投げ両打ち。僕と同じシニアでプレーしてたやつだ。……パワーは無いが、ミート力があって小技もうまい。守備に関しても、身体能力を技術でうまく補ってる名手だ、エラーは滅多にしない。……一つ言っておく、"巧いぞ"」

「巧い、か……同じショートとして負けらんないわね」

 

「キャッチャー、鬼力剛。右投げ右打ち。アベレージは低いけど、パワーはホント目を疑いたくなるレベルだ。フェンスオーバーを何度も見せられたからな……。肩も強いから、盗塁死、牽制死には十分に気をつけろよ」

「まさに四番キャッチャーって感じだな~。同じ一年とは思えないぜ」

 

「外野陣は、センターに矢作伸雄、ライトに三森右京、レフトに三森左京。三人とも弱肩だけど、揃いも揃って俊足だ。打ち上げれば、まずアウトになるだろうな……それだけ守備範囲が広い。それに、走塁・盗塁も積極的にしてくる。幸い三人とも打力自体は弱い方だから、打ち取るのはまだ楽かもしれん。ただ、内野安打になる確率もそこそこあるからな」

「なんかセンターのやつからはオイラと同じ匂いがするでやんす。きっとさわやかな眼鏡イケメンに違いないでやんす!」

「そんな事ある訳ないでしょ」

 

「最後にピッチャーだ……。林啓太、左投げ左打ち。僕と同じパワフル第三中出身で、野球部のエースだった奴だ。スリークォーターから多彩な変化球を投げ込む技巧派サウスポー。MAXは143キロ。持ち球はスライダー、スローカーブ、カットボール、スプリット、スクリュー、チェンジアップ、シュート変化するツーシーム。スクリュー以外の変化量は大したものじゃないが、キレがあるし、これを抜群の制球力で操ってくる。物怖じせず、淡々とアウトを積み重ねるクールなマウンドさばきも特徴だ。正直、闘志むき出しのやつとはまた違った威圧感がある」

「まさにエースって感じだね……ボクとはえらい違いだよ」

「ああ。正直早川とは全然レベルが違う。僕らだってアイツから打てるかどうかなんてわからない。……でも」

「―――うん。抑えれば、負けない!絶対、負けないよ」

「流石、ウチのエース様だ分かってらっしゃる」

 

……。

 

凄いな、ときめき青春高校。

正直、聞いた限りじゃオレ達よりずっと選手のレベルが高い。特にピッチャーの林なんて、総合力じゃ猪狩と同じくらいかもしれない。そして、まったく正反対のタイプだ。

 

勝てるのか、こいつらに。

 

「じゃあ、キャプテンと監督。最後に一言ずつお願いします」

「ええ。パワプロ君、先にお願いね」

「あ、はい……」

 

さて、何て言おう。言葉が出てこない。

皆俺の顔を見て、オレの発言に注目している。

 

見かねたのか、あおいちゃんが声をかけてくる。

 

「パワプロ君……カッコイイ事なんて言わなくてもいいんだよ。キャプテンが何か言ってくれれば、それだけでボク達は元気になれるからさ」

「あおいちゃん……うん。皆、勝つぞ!」

「「おー!」」

 

その後、三ツ沢監督が当たり障りのない言葉で締めくくり、今日は解散となった。

 

 

 

 

 




や~題名があれですけど、今回はまだ戦いませんでした。次話で、ついにとき春チームと激突です。

え?ピッチャーは青葉じゃないかって?それはまた後々


次回 『第8話 ときめけ青春!恋せよ球児!』 まもなくプレイボールです!

恋々オーダー&ステータス(一年目6月時点)
1.中 矢部  2DDBDDE チャンス2、盗塁4、走塁4
2.遊 夏野  2EEDCCD バント○、ローボールヒッター、流し打ち
3.一 柿原  2CEECCC AH、粘り打ち、流し打ち、ミート多用
4.三 パワ  3CDDBDD 広角打法、ムード○、対エース○
5.右 諏訪部 3FDDAEF レーザービーム、送球4、三振、強振多用
6.左 青木  1GFEEEG エラー、積極打法、積極守備
7.二 高橋  4GEDCFF ムード○、強振多用、積極守備
8.捕 小沢  3GEFCEF 三振
9.投 早川  2GGFDEE

早川
129km/h DD 先発◎、中継ぎ◎ キレ4、緩急○、短気
カーブ2、シンカー4

柿原
141km/h CD 中継ぎ◎、抑え◎ キレ4、奪三振、闘志、球持ち○
Hスライダー1、スラーブ4、シンカー3、ツーシーム
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