その男、砲雷長につき。   作:べらんべぇ

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第1艦、50年後の日本へ、出会いの始まり

~2016/07/11/15:31_誠~

 

「な、何が、起きた!?」

港を出て僅か5分、CICでうとうとしていた俺の目を覚ますかのように、突然、爆音と衝撃が走った。

「こちら機関室!穴です!いきなり船体に穴が空きました!」

「攻撃か!?一体どこから……!」

「負傷者多数‼……あ!桜田……‼」

ブツッっと無線が切れる音が艦内に常設されたスピーカーから響く。

「CIC、艦橋‼損害報告!」

今度は入れ替わりで艦橋から放送がかかる。

「船内機関室にて謎の爆発!恐らくアンノウンからの攻撃!」

「バカな、ソナーは反応しなかったのか‼」

それもそうだ、そもそもソナーに感が無かったのはなぜだ?中国製ならまだしも、ひびきに積んであるレーダーは純日本製のスパイレーダーだぞ。

「一才反応はありませんでした、完全にグリーンです!」

マジかよ、じゃあ乗り上げたか?いや、ここらは一才岩礁はなかったはずだ、だったらなぜ……!

「レーダーに感あり!」

俺の思考を遮断するかのように、新たな情報が入る

「艦船か?魚雷か!?」

「この速度は……魚雷です!艦尾方向から2本‼広がりつつ接近‼」

ソナーの声を聞いた俺は急いで艦内マイクを取る。

「武鐘発動、対潜戦闘よぉぉぉい!」

「対潜戦闘よぉい!これは演習ではない‼繰り返す、これは演習ではない‼」

この台詞を訓練以外で言いたくはなかったが、俺は急いではマイクのダイヤルを機関室前廊下にセットする

「ダメコンA班、CIC!状況報告‼」

「火災完全に鎮火!ただ、機関室の中にまだ乗組員がいます!」

「了解!引き続き頼む‼」

「了解!」

次だ、俺はソナーに近づく。

「ソナーどうだ、相手の魚雷は」

「……確かに魚雷ですが、変です、探信音がしません」

「探信音がしない?本当なのか?」

妙だな、そう、思い今度はダイヤルを艦橋にあわせる。

「艦橋、CIC!副長ぉ、目標からの探信音なし!目視による確認を具申します!」

「探信音がしない?本当なのか砲雷長?」

「自分でも確認したが、間違いない、恐らく_____」

余裕な会話もここまでだった。

「砲雷長ぉ!前甲板VLA解放!アスロック飛翔中!」

「なんだと!?」

誰だ!?この忙しい時にアスロックなんて……!!

いや、検討はついてる!

俺はそいつのもとに駆け寄って胸ぐらを掴みあげる。

「西村ぁ!テメェ、何勝手に撃ってやがる!一人でアスロック撃つバカがどこにいるんだ!」

「お、御言葉ですが、やらなければ、やられます砲雷長!」

やばい、西村の目がマジだ。

たしかにそれは正論だが、言い返す前に怒号が響く。

「CIC、艦橋!豊後!誰が撃てといった!さっさと自爆させろ!」

「……!了解!」

自爆ボタンを押した俺は立ったまま半(狂)笑いの西村を見ながら叫ぶ。

「こいつをCICから叩き出せ‼」

西村が出ていくのを見届けた俺は、急いでソナーになおる。

「ソナー、魚雷までの距離しらせ!」

「本艦との距離、150ヤード!後10秒で接触します!」

近い!

言い終わると同時に、CIWSの銃声と回復した機関音が同時に響き、艦橋から放送が入る。

「各員衝撃に供え‼」

避ける気か、無理だ、探信音がしないとはいえ、魚雷が磁気信管なら……!!

「接触まで6秒!」

ひびきを信じなければ……!

 

 

 

 

「5秒‼」

頼む

 

 

 

 

 

「4秒‼」

避けろ

 

 

 

 

 

「3秒‼」

頼む……!

 

 

 

 

 

「2秒‼」

避けてくれ!

 

 

 

 

 

「1秒‼」

ひびき‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎょ、魚雷全弾回避!!!通りすぎていきます‼」

「よっし!出せる限りで最大船走!逃げるぞ‼」

かわしてしまえばこっちのものだ、さっさと離脱しなければ

「最大船走ぉ!」

先ずはハワイまで逃げ切らなければ、報告はそれから__

「新たな魚雷音接近‼」

何!?

「どこからだ‼」

「……!本艦の真下です!」

次の瞬間、ひびきの船体は真っ二つに折れた。

 

 

 

~2016/07/11/15:42_誠~

(くそ、体が動かない……!)

気付けば俺は、海の中にいた。

(他の連中は……)

回りを見ると、海面に何人か浮かんでいる。

(他に沈んでいるヤツは……!)

まわりを見渡したが、どうやら沈んでいるのは俺だけだ。

(……俺だけならいいか)

不思議と死の恐怖はなかった。

むしろこの冷たさが心地よい。

(……ん?)

誰かくる、潜ってくる。

(誰だ、くるなよ)

沈んでいく俺の方に必死に向かってくる。

やがて息が続かなくなったのか、泡を拭いて口を抑えながらこっちにくる

(……ああ、幻覚でもみてんのか俺は)

そんなことを考えていると、

(誠さん!)

(誰だ……?)

(手を伸ばして‼諦めないで……!)

(女の娘……?)

(いかないで誠さん!)

気がつくと俺は、その娘にむかって手を伸ばしていた。

(まだ死んじゃだめ!生きて‼)

どんどん光が薄くなっていく、気付けば海面があんなに遠くなって……

(手を掴んで‼)

言われるがまま、俺は手をつかんだ。

(いよっし……!!!)

そこからの記憶はない。

 

 

 

~2067/08/13/00:12_響~

 

ようやく終わった。

響はベランダにでて、うんと背伸びをした。

「響ちゃん、お疲れなのです」

そういって隣にすわって、お茶を出してくれたのは、電だ。

「ああ、ありがとう」

受け取ってそれを一気に飲み干す。

「ん……ありがとう電」

「どういたしまして、なのです」

そこから先は二人とも何も話さなかった。

ただお互いに寄り添って空を眺める、いつもの二人の日課だった。

だが、今日はちょっと違った。

「あのね、響ちゃん」

「ん?なんだい?」

電が口をゆっくり開いた。

「電ね、明日から超長期間の遠征に行くことになったのです」

「え……」

あんまりにも突然の通告だったので、響は情けない声を漏らしてしまった。

「それってどういう……!」

説明を求める前に、響の口は塞がれた。

「ん……ちゅ……」

「い、いなずま……」

唇が剥がれた。

「だからね響ちゃん」

まってよ、それじゃまるで……!!

「いなずまのこと、忘れないで欲しいのです……」

そういった電の顔は、涙で、濡れていた。

超長期間の遠征任務、それは艦娘達の間でも有名だった。

 

 

一番死ぬ確立が高い任務。

として。

 

 

「電、まってよ、なんで急に……!!」

「前から司令官とお話して、二人で決めた事なのです」

そんなのきいてない!

響は何回もかぶりを降った

「響ちゃんには伝えたかったのです、私の気持ちを」

「嫌だ!」

響は電に抱き付いた。

 

~2067/08/13/04:39_響~

 

「電!」

響は布団から勢い良く起き上がった。

「あ……」

また、この夢か。

響は頬に伝わる涙をこすって、自分の部屋を見渡した。

「みんな、沈んじゃったもんね……」

なれたつもりだったが、やっぱり寂しいみたいだ。

起床まで、まだ幾分か時間があるので、気分転換に響は廊下にでた。

「あ、響ちゃんおはよう、早起きだね!」

そういって笑顔で語りかけて来るのは、吹雪だ。

「吹雪こそ早起きだね」

「うん、もうトレーニング終わって、今からお風呂!」

「そう」

「よかったら響ちゃんも一緒に入る?」

「え?」

「だって汗すごいよ?」

どうやら響は自分でも気付かないうちにものすごい汗をかいていたようだ。

「……うん、入る」

響の返答に、吹雪はニッコリと笑った。

 

~2067/08/13/04:45_響~

「あー、響ちゃんいい臭いー」

「吹雪、熱い」

そういって離れようとはするものの、浴槽に浸かりながら、がっちりと響をホールドして離さない。

「響ちゃん」

ホールドはそのまま、吹雪は突然、大人びた声で語り始めた。

「また一人で泣いたでしょ?」

「っ……」

見抜かれてる。

「いいんだよ、無理しなくて。泣きたいときは誰かに泣きついてもいいんだよ」

優しく語るその口調は、雷そっくりだった。

「……うん、ありがとう」

響の返答に、また吹雪はニッコリと笑った。

 

~2067/08/13/04:45_響~

「ふいー、朝風呂は最高だねー、やっぱり!」

牛乳を飲み干した吹雪は出口に歩き出す。

「じゃあ私は部屋に戻るね‼」

「うん」

短い返事をして、響も牛乳を飲み干した。

「吹雪」

出口に向かっていた吹雪をひきとめて、名一杯叫んだ

「ありがとう‼」

「へへっどういたしまして!」

そして、照れくさそうに、今度こそ吹雪は立ち去っていった。

 

~2067/08/13/04:50_響~

響は海岸を歩いていた。

特に目的はなく、ただ単に散歩をしているだけだ。

「うーみーはひろいーなーおーきーいなー」

何となく歌を口ずさんで見たが、やっぱり静かに歩く方がいい。

「綺麗だな……」

水平線を見ながら、響は姉妹達に話しかけるかのように、目を瞑った。

どのくらいそうしていたか分からないが、響はあることに気がついた。

「ううん……」

誰か倒れてる、しかも片方は艦娘だ!

「ちょ、ちょっと大丈夫かい?!」

慌てはその娘にむかって走りよる。

「うう……」

「なあ大丈夫かい?」

とりあえず揺さぶってみたが、反応はない。

「……じゃあ、仕方ないかな」

そう自分に言い聞かせ、響は艦娘の上に馬乗りになり、唇を近づける

「うーん……」

そして目前まで迫ったその時。

「……あれ?ここは___」

彼女が目を覚ました。

「……おはよう」

「あ、どうも……」

「…………。」

「…………。」

二人の間に微妙な空気が流れる。

そしてそは沈黙を破ったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎにぁあああああ!!お、襲われるうううううう!?」

「だ、誰が襲うかあああああああああああ!?」

二人の悲鳴にも近い叫び声が、鎮守府に響いた。


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