その男、砲雷長につき。   作:べらんべぇ

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第3艦、響、見つめる者は

~2067/08/13/05:00_誠~

どっかに吹っ飛んでいた俺の思考を体に戻したのは、聞きなれた起床ラッパだった。

「お、おい今なんつった?」

あまりにはぶっとんだ内容だったもんだから、俺は考えるより先に聞き返していた。

「なにも、イージス護衛艦ひびきは、50年前の艦艇……」

その時、少女が何か腰に手を回そうとしたのが見える。

「てめぇ……!!!」

少女の胸ぐらを掴み上げ、憲兵から取り上げた9ミリ機関拳銃をそいつの眉間に構える。

「誠さん‼」

「い、痛い……!!!」

「もう一度聞く、イージス護衛艦ひびきは、本当に50年前の艦艇なんだな?」

「だか、ら……さっきからそういって……‼」

「やめて誠さん!苦しそうだから‼」

俺は少女の胸ぐらを離した。

「ゲホッ、ゲホッ……‼」

地面に膝まずきながら咳き込む少女を今度は一才の遠慮なく踏みつけた。

「ぐあ……っ!?」

「お前、軍人だな?しかもかなり射撃になれてると見たが……」

少女は倒れながら呻いていたが、軍人というワードを聞いて、俺の足から抜け出した。

「……やっぱりな」

こっちの女と喧嘩してるときに時々出てきたロシア語、憲兵が降って来たときに誰よりも早く気付いた洞察力、そして腰につがえていたMP-443 グラッチ。

「Вы русский?(お前ロシア人か?)」

取り上げたグラッチを眺めながら9ミリ機関拳銃を向ける。

「あなたロシア語を……!」

少女は驚きを隠せていないようだ。

目を見張りながら俺に取り上げられたグラッチを見つめている

「Можете ли вы помочь вам?Complexion плохо?(どうした?顔色が悪いぞ?)」

「ちょ、ちょっと、いくらなんでも無抵抗な子供に……!!!」

でかいほうが言いかけたのを遮って俺は続ける。

「お前、さっき復唱した時に、咄嗟にグラッチを抜こうとしたな?」

でかいほうが驚きの顔で俺と少女を交互に見つめる。

「ど、どうして気が付いた……!?」

「軍人とはいえ、所詮は人間、行動の前には必ず予兆がある、それに注意していれば簡単なこった」

「君は一体……!!!」

「そんなことより責任者に会わせろ、お前じゃあ話にならなそうだからな」

我ながらバッサリ言ったと思う、少女はちょっと傷付いたような顔をした。

「し、司令官なら……」

 

 

~2067/08/13/05:15_響 ~

なんなんだこの人。

私は久々に恐怖という感情を思い出した。

「し、司令官なら……」

痛み続ける脇腹を抱えながら、なんとか立ち上がろうとするが、思うように立てない、足が震えている。

「だ、大丈夫?ほら掴まって……」

そういって手をさしのべてきたのは、先ほどまで私を変態呼ばわりしていた彼女だ。

「うっ……すまない……」

しょうがないので私はその手に掴まった。

「君達は一体なんなんだ……、変態呼ばわりされるわ踏まれるは……」

「アハハ……ごめんなさいね、あの人、そんなに悪い人じゃないの……」

そういう彼女の顔は、嘘をついてる様には見えなかった。

むしろ……

「ん?どうしたの?」

「……!!!な、なんでもない」

「……?」

ちょっとだけ、暁を思い出すような、やさしい笑顔だった……

 

~2067/08/13/05:17_誠~

「な、なんだこれは……!!!」

俺の目の前に広がるのは、どう見ても地方総監部ではなく、かといって教育隊や陸時の駐屯地でもなかった。

「な、何って、第13鎮守府……」

「ち、鎮守府……?」

なにいってんだこいつ、と正直に思った

「とにかく、1度司令官に……あぐっ……」

「お、おい大丈夫か?」

つい、いつもの癖で反射的に踏んだり蹴ったりしたが、相手はどうやっても女の子だ、さすがにきつかったろう。

でかいほうが背中をさする。

「と、とにかく司令官に話してくるよ、二人にはちょっと待っててもらうけど……」

普通こういうのは客間に通すものだが、今は大人しく外で待つことにした。

「わ、私もいくわ……」

でかいほうが一緒についていくらしい

「あ、あなた名前は……?」

ちっこいほうが俺に聞いてくる。

「ん?あぁ、豊後誠だ」

「了解した…」

そういって二人はドアの向こうに消えた。

 

~2067/08/13/05:18_ひびき~

もう、誠さん、ほんとにやり過ぎ……

おまけに私が「ひびき」だって気付かないし……

「はぁ……っはぁ……っ」

「司令官さんがいるのどこ?大丈夫?」

「う、うえ……」

2階か。

少女は途中まで私の肩に掴まっていたが、途中から明らかに様子がおかしくなったからおんぶで運んだ。

「先に医務室に言った方が良くない?」

少女は軽くかぶりをふった

「このまま、上に……」

「わ、わかった……」

にしたってなんで誰もいないのよ、さっき起床ラッパが鳴ったばっかりじゃない。

起床ラッパが鳴ってから既に約20分だ、この時間なら丁度体操が終わって皆宿舎に戻る頃だ。

「あの部屋?」

私は1つの部屋を指差した。

「うん…」

なにこの子、明らかに様子がおかしい。

誠さんにやられただけじゃない、どう見たって具合が悪い。

「司令官さんになんて説明すれば……」

バン‼

ん?銃声?ああ皆いないと思ったら射撃訓練か。

気にせず私はドアノブに手を掛けた。

 

 

~2067/08/13/05:19_誠~

くそ、ここの連中は揃いも揃って奇襲訓練でもうけてんのか‼

「お、おい、ちょっと待てって!話を聞けよ‼」

俺の目の前にいるのは、またしてもさっきのちっこいのと同じくらいの女の子、めぼしい違いは真っ黒に近いセーラー服、そして長く白いその髪。

「黙れ‼貴様さっき響に何をした‼」

どうやら話し合いでどうこう出来そうにない。

「響?あの子響って言うのか!」

俺の乗っていた船と同じ……

「菊月!どうしたの!!!」

また出た、今度は……

「長月‼手伝え‼不審者だ!」

長月と呼ばれた少女だ。服は隣のと同じだが、髪の色は鮮やかな緑だ。

ってか俺もう不審者決定かよ……

「だから!話を聞けよ‼」

「な、なんか向こうさん事情ありな感じが……」

「響を蹴ったんだぞこいつ‼」

「……は?マジそれ?」

今度は俺に聞いてくる。

「え、あ、いやまあ反射的に……」

「……ふーん、そう……」

あヤバい。俺ヤバい‼マジでヤバい!地雷踏んだ‼

「じゃあ遠慮は一才入らないな」

そういって俺になんとも特徴的な銃を向けて来る。

「……仕方ないか」

俺はそれだけ言うと動き出した。

「っ……!!!」

菊月という少女は反応こそはしたが、次の瞬間にははっ倒されて俺に銃を向けられていた。

「……え?」

長月の方は何が起こったのか理解出来ず、思わず銃の構えを緩めた。

その瞬間を見逃さず俺は長月の銃を撃った

「あっ!」

カランカランと軽い音を立てながら銃は向こうに落ちた。

「終わりだガキども、手をあげて降伏しろ」

この間わずか5秒。うん、また短くなった。

菊月には取り上げた銃を、長月には9ミリ機関拳銃を構える。

「お、お前一体……!!!」

倒れたままの菊月が、信じられないといった顔で俺を見つめてくる。

「あ……菊月……」

長月の方は銃だけとはいえ撃たれたことが相当びっくりしたらしい、その場にへたんと座りぐったりしている。

「な、長月‼」

「ほらみろ、相手の技量も図らず飛びかかるからそうなるんだ」

「ぐ……!長月‼」

菊月は長月に駆け寄った

「っち、おい大丈夫か?」

俺も駆け寄り長月の手を掴む。

「お、お前一体なんのつもりだ……!」

「さっきはお前らが勝手に攻撃してきただけだろうが、だからやむなく撃ったんだよ。……ほれ、大丈夫だ、手には当たってねぇ」

「え、あ、うん……」

「悪かったな、撃っちまって」

俺は膝だちの状態から立ち上がろうとするが。

「動くな」

背後には警戒していたはずだが、いつのまにやら俺の喉元には刀があてがわれていた。

だが、今度は菊月の声でも長月の声でもないようだ

「……背後には警戒していたはずなんだが?」

俺は両手をあげてゆっくりと立ち上がる。

「いやはや、俺も最初はビビったよ、なんせ背中から出ている殺気はんぱねぇし」

俺?ということは男か?いや、聞こえる声音は完全に女のそれだ

「まあでも……」

おそらく菊月たちの方を向いたのだろう、髪が揺れる音がする。

「ガキどもは気付けないぐらいには抑えてたんだろうな」

女が小さくため息をつく。

「くっ……うるさい‼それよりどうするんだそいつ!」

「……俺に争いの意思はないとりあえず刀をおろしてくれないか?」

「けっ、やだね、あんたおろした瞬間俺を投げるつもりだろ?」

バレていたか、そうなれば仕方ない。俺は動き出そうとした、だが。

パチ、パチ

手を叩く音がして、全員一斉にそちらを向く。

ちなみに俺はギリギリ見えない。

「天龍、刀をおろせ」

「えー、なんだよ提督。せっかく……」

提督?マジでここどこだ?

それにこの声どっかで……

「おろしなさい」

「ちぇ……」

そういうと喉元の刀がはずされる。

「大丈夫ですか豊後さん」

「ああ、おかげさまで大丈……おいまてなんで俺の名前……」

振り返った俺は言葉を失った。

そして叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「西村ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼!!!」

あの日アスロックを勝手にぶっぱなした、西村雅人がそこにいた。

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