落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第2真「ヨイッチーツヨツヨ!」

 若獅子タッグマッチトーナメント本選である。 

 源義経と椎名京、『源氏紅蓮隊』。

 長曾我部宗男と島津岳人『400万パワーズ』。

 黛由紀江と武蔵小杉、『ザ・プレミアムズ』。

 那須与一と葉桜清楚、『桜ブロッサム』。

 福本育郎と蜂屋壱助、『無敵童貞軍』。

 クリスティアーネ・フリードリヒとマルギッテ・エーデルバッハ、『大江戸シスターズ』。

 武蔵坊弁慶と板垣辰子、『デス・ミッショネルズ』。

 不死川心と榊原小雪、『KKインパルス』。

 九鬼英雄と井上準、『フラッシュエンペラーズ』。

 板垣亜巳とクッキー2、『アーミー&ドッグ』。

 川神一子と源忠勝、『チャレンジャーズ』。

 大友焔と風間翔一、『ファイヤーストーム』。

 武田小十郎とステイシー・コナー、『ワイルドタイガー』。

 羽黒黒子と板垣天子、『地獄殺法コンビ』。

 松永燕と直江大和、『知性チーム』。

 本選出場十六チームの内、半数以上が川神学園の生徒だというから恐れ入る。そうでなくとも川神学園の姉妹校である天神館や九鬼財閥の従者部隊、川神在住の一般人とのことで川神という土地の凄味がこれ以上なく明確に理解させられるだろう。ホームグラウンド、という言葉では片づけることはできない結果だ。予選で結構な強度の他の地方の武芸者や外国の参加者もいたが実力で退けたのは見ていた解った。

 だからこそ、これだけ大きな規模の大会であるにも関わらず、本選出場者たちは控室に於いても実ににぎやかだ。和気藹々とこれから真剣勝負するとは思えない様子だった。

 

「……」

 

「……」

 

 匿名希望の二人組による『源氏万歳』を除いて。

 全身を青と赤のローブで覆った二人組である。青い方が背が高く、赤い方が小さい。かなり大きめのローブで顔はおろか体型や性別すらも判断できずこの上なく妖しい。他の本選参加者も会話しながらチラ見するほどに不気味だ。

 全員が思っているだろう。

 誰だこいつら。

 誰だというか。

 那須蒼一と那須遙歌である。

 

『にいさぁーん! だから言ったんですよこんな意味のない変装!』

 

 頭の中に遙歌の声が響く。テレパシーのスキルらしい。これによって頭の中で思い浮かべることで会話ができる。

 便利な妹ちゃんだ。

 

『いや、言っただろ。俺もお前もそこそこ有名じゃねぇか。俺は『拳士最強』でお前なんか知る人ぞ知る元テロリストだろうが。そんなのが大っぴらに参加できるかよ』

 

『だとしても! 間違いなくこれは普通に出るより目立ってますって!』

 

 ごもっともである。

 というか義経や弁慶たちの視線が辛い。意味もなく源氏の子孫として見栄を張った結果がこれである。

 

「あの……」

 

「っ」

 

 とか思っていたら義経に声をかけられる。黒髪のポニーテールの美少女だがあんまりレキとは似ていない。まぁ、八百年という年月が開いているのだから仕方がないといえば仕方がないのだが。

 

「その、源義経だ。『源氏万歳』というチーム名なのだけど……源氏が好きなのか?」

 

 すっげー眩しい笑顔だった。こう、純真さ的な意味で。

 

「……」

 

「……」

 

『うわあああああああああああ! なんだこれ! すっげぇまぶしい! レキー! レキさぁーん! 我が嫁ー! 毒電波に塗れて無表情でエロゲをポチポチプレイする汚れ系我がヒロインよー!』

 

『ちょ、錯乱しないでください!』

 

 錯乱していたらどこからか飛来した弾丸が頭部に命中した。

 

「んがっ!」

 

「だ、大丈夫か!?」

 

「……あぁ」

 

「狙撃だと……!? この閉所で……まさか機関の手がここまで!」

  

 なるべく低い声で心配してくれた義経に返答する。後頭部に命中したが威力はそれほどでもなく少し鈍い痛みがある程度だ。姿勢を正して大丈夫アピール。心配してくれていたほかのメンツにも義経が大丈夫と伝えてくれてた。

 しかしどこかで見てるのかレキの奴。

 というかあいつの異常目視しなくても命中するとか何時の間に強度を上げていたのやら。

 

「そ、それで話を戻すんだが」

 

「まー、あたしらからしたらあんまり冗談半分につけた名前だったらあんまり見過ごせないんだよねぇ」

 

「そうだ……貴様ら解ってるのだろうな? その名が内包する真の力を。常人が偽ればただでは済まないぞ」

 

 ひょっこり顔を出したのは少し癖ッ毛ぽい少女。長大な錫杖を手にし、気だるそうな様子だが見れば意外と隙はない。半開きの眼のこの少女がなんと武蔵坊弁慶である。

 もう俺は何も言わない。

 というかクローンとか嘘じゃねぇかなとか思ったり。きっとよく似た別人だよ、うん。だってアレが女体化して若返ってもこうなるわけがない。義経とレキだって汚れ度が月と鼈なわけだし。

 

「んで? そこんところどーなのかなぁ?」

 

「べ、弁慶! そんな問い詰める風に言ってはダメだ!」

 

「いいんだって主。こういうのはちゃんとしないとさぁ。ほら、黙ってないで、なんか言ってみ?」

 

 半目であるにも関わらず鋭い瞳が問い詰めてくる。これ以上のだんまりは辛そうだ。

 

『に、兄さん……』

 

『よ、よし。お兄ちゃんに任せろ』

 

 那須蒼一はコミュ障だった。そう、だったのである。それはもう過去のこと。今の俺はそんなものから卒業したのだ……!

 

「オーウ、ワタシタチゲンジダイスーキ! ヨシツーネ、ベンケーイ、ヨイッチーツヨツヨ!」

 

「……」

 

「……」

 

「こいつ……まさか機関のスパイか!?」

 

『にいさぁあああん!』

 

 なんだよ。源氏式挨拶と言えばこれだろう。

 

「ふーむ。主」

 

「な、なんだ?」

 

「こいつら信頼できるよ。まさかここまで源氏式挨拶を完璧にこなせるのがいるなんて」

 

「えぇ!? そ、そんな挨拶あったか!? 義経は知らないぞ!?」

 

「俺も初耳だぞ姉御」

 

『ミラクル!?』

 

 なんだよ話がわかるな武蔵坊弁慶というの名前の武蔵坊弁慶ではないお方!

 

「まぁ今決めたからね」

 

「えぇ!?」

 

「おいぃ!」 

 

「まぁ大丈夫でしょ、悪い奴じゃないと思うよー? 悪い気は感じないし。だから皆だって遠目に見てるわけだし」

 

「そ、そうか」

 

「まて、姉御。それは組織の仕組んだ罠の可能性が」

 

「うるさい与一」

 

「あだ、あだだだだだだ!」

 

 まぁなにはともあれ。こうして絶賛アウェーの中で時間は過ぎていく。

 

『しかし俺は何も見ていない』

 

『私も何も見ていません』

 

 義経たちが川神学園の友達のあたりへ戻ろうとした際に振り返った灰色の髪の俺たちと同じくらいの青年が、

 

「ふっ、貴様らが何であろうとこの『審判の目(ジャッチメント。アイズ)』は全てを見透かしている。……忘れるな」

 

 とかそんなことを那須与一とかいう名前の人が残していったが俺たちは何も見ていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 『知性チーム』VS『ワイルドタイガー』、『知性チーム』の勝利。

 『400万パワーズ』VS『無敵童貞軍』、『無敵童貞軍』の勝利。

 『地獄殺法コンビ』VS『デス・ミッショネルズ』、『デス・ミッショネルズ』の勝利。

 『源氏紅蓮隊』VS『桜ブロッサム』、『源氏紅蓮隊』の勝利。

 『ザ・プレミアムズ』VS『アーミー&ドッグ』、『ザ・プレミアムズ』の勝利。

 『ファイヤーストーム』VS『大江戸シスターズ』、『ファイヤーストーム』の勝利。

 本選も残すところ『源氏万歳』VS『フラッシュエンペラーズ』、『チャレンジャーズ』VS『KKインパルス』の二組のみである。

 そして今、

 

「フハハ! 九鬼英雄降臨である! お主ら、どこの誰だから知らぬが手加減などするなよぉ、今の我は一人の男としてここにいるのだ!」

 

「守る方は大変だけどねこりゃぁ」

 

「……」

 

「……」

 

 俺と遙歌、九鬼英雄と井上準は試合会場で向かい合っていた。俺も遙歌もいまだにローブで姿を隠したままで不審な視線がやばい。この七浜グラウンドはほぼ満員となっているがほとんどが川神市民らしいのでアウェー感は予選と変わらずかそれ以上だ。レキとかキンジたともどっかで見ているのだろう。試合会場自体には四方をおっさんと爺どもが待機。おっさんというか爺というか、川神鉄心を初めとしたマスターランクの強者だ。審判兼試合の被害を抑え込む役目らしい。

 

『さて、『源氏万歳』だが結局まったく正体が解っていない。予選ではあのローブを着たままで危なげなく勝ち進んでいたから実力は保証済みだがな』

 

『うーん、どうだろうなぁ。確かに動きはそこそこだけど、そんなに強い気を感じないんだよなぁ』

 

 そんな風に俺たちのことを寸評してくれるのは西方十勇士の石田某と――件の『武神』川神百代。

 糞とか評価されていた彼女だが意外にも、本当に意外にも普通に解説の役目を果たしていた。遠目から見れば確かに馬鹿げた気だが、それでもあそこまで言われるというのは少し不思議にすら思える。

 しかしこれマジでいつになったら脱いでいいのだろうか。

 一応九鬼英雄と対戦することになったのは偶然ではなく本選開始前に『チャレンジャーズ』の源忠勝に頼み込んで変わってもらった。やたら目つき悪かったから、変わってもらえるかは心配だったが、なんやかんやで変わってくれるあたりツンデレな人である。

 変わってもらった理由は九鬼揚羽からの依頼だった。

 俺たちの参加は九鬼の一部には伝わっているようで、彼女から直々に依頼されたのだ。

 まず、参加者の内に悪意を持つ者はいないかどうか。これはクリア。というか俺たち以上に妖しいやつなんていなかった。

 もう一つは、

 

『弟を無理させないようにしてくれ、か』

 

『弟想いの人なんですねぇ』

 

『だからこそ断れない』

 

 家族への想いというのには相も変わらず弱いのが俺だ。そんなんだから今こうしているわけだし。

 ともあれどうにかして九鬼英雄に無理をさせずに退場させる必要がある。紋様との契約もあってまさか負けるわけにもいかないし。

 どうするかなと思い。

 

『試合――開始!』

 

 始まった。

 

 

 

 

 

 

「ホワチャアアアアアアアアアアア!」

 

「喰らい、やがれぇぇええええ!」

 

 九鬼英雄の少林拳をメインにした中国拳法に井上準の我流拳法。なるほどそこらへんの武芸者とは一線を画し、同年代にしては見事ともいえる強度だ。単純な白兵技能ならば武偵高内でもそこそこ上位に食い込む練度。

 それらが開幕と同時に一気呵成に叩き込まれ、

 

「悪いね」

 

「カウンターのスキル『反射的鏡導(ミラーモーメント)』」

 

 少林拳特有の腕や足を延ばし遠心力を使った長打を潜り抜けた俺の手刀が九鬼英雄の首筋に叩き込まれ即座に意識を奪い。

 拳の連撃にできた隙を逃さずに放たれた遙歌の掌底が顎に叩き込まれ井上準の意識を即座に奪った。

 

 それで終わりだった。

 

『な、なんと……!』

 

『今のは……』

 

 周囲からざわめきが広がりつつある中で、

 

『ここで九鬼からのお知らせです』

 

 スタジアム全体にヒューム・ヘルシングの声が各箇所のスピーカーから響き渡る。

 

『チーム『源氏万歳』は九鬼から本トーナメントを盛り上げるために参加させた特別ゲストにてございます。実力は見ての通り。というわけで彼らにもそろそろ正体を表してもらいましょう』

 

 一度途切れる。

 つまりそれはローブを脱げと言外に言っているのだ。さすがというべきか魅せ方を解っている。

 戦闘力を見せつけて、妖しい奴からなんかすごい奴に思わせてそれからのお披露目だ。注目度は抜群。これからのことを考えると正体を隠したままというのは俺たちもきつい。

 だからローブを脱ぎ捨てる。

 

『紹介しましょう――』

 

 身にまとうのは最早語るまでもない戦装束。

 蒼の着流しに袴。指先から肘までを覆うバンテージ。胸には大きな十字傷、蒼髪蒼目。その隣には豪奢な十二単を二重に重ね着した濡れ羽色の髪と紅目。

 

『『拳士最強』那須蒼一とその妹那須遙歌です!』

 

 スタジアムのすべての視線が集まり、

 

「――」

 

 全身が総毛立つような馬鹿げた激しい気が襲う。それはスタジアム内全員の歓声も騒音も抑え込むような密度。誰かなんて言うまでもなく。

 動かした視線の先――『武神』は飢えた獣のように凄惨に嗤った。

 

 

 

 

 

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