落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
目を開ければそこは知らない天井だった。いや、まったく知らないわけではなく、予選時の数度立ち寄った保健室。そう、保健室。怪我した生徒や体調の悪い生徒を
「おはよう、主殿。そういう時は知らない天井とでも言うもんだぜ?」
ベッドの横に青年が現れた。蒼い装束に蒼髪蒼目にヘッドホン。全体的に真っ青な青年だ。
彼を見て、彼がどういう存在なのかを認識して、思わず額を抑える。
「おいおい、どうしたよ主殿。もしかしなくても名前以外になんにも思い出せないとかじゃないだろうな」
「……違います」
そう、違う。別に記憶に欠陥はない。ない、が。
「私は……生きている……?」
「応とも。アンタは生を渇望し、俺がそれに応えた。そしてそれこそが契約の成立だ。改めてよろしく頼むぜ、主殿。俺はサーヴァントアサシン。あー、それで。とりあえずアンタの名前を聞かせてもらっていいかね?」
「……カレン。カレン・オルテシアです」
「カレンね、いい名前だと思うぜ。あと、もう一つ聞きたいことあるんだが」
「構いません、なんでしょうか?」
「記憶が欠損ないなら、他になにかおかしいところないか? サーヴァントとか聖杯戦争とかセラフとかの説明いるか?なんか俺のステータスがやたら低いんだけどさ」
いや魔力と幸運はもともと低いけどとかぼやくアサシン。
それに思わずため息。そういう知識もないわけではない。
それでも、
「別に私自身にはなんの不備もありません。
「は? いや、なんか俺のステヤバイんだけど。唯一他人に誇れる敏捷値もギリDというローステなんだが」
「だから私がマスターならそれが真っ当です――私は
「……」
アサシンが口を開けて呆けた。場違いとはいえその顔は小気味がいい。
「え、どういう……?」
「私は
そう、自分はただの修道女だ。一昔前ならともかくプログラム云々という現代の魔術を使うことなどできないのだ。
「え、でもだったらどうやってセラフに? というかシスターってのは恰好で解るけど、そんだけカスタマイズできてるならそれなりの技量が」
確かに今の服装は一般的な修道服、いわゆるカソックだ。確かにマスター候補たちは基本的に専用の術式を用いなければオートで学園の制服を着ることになる。その術式は以外に高位のソレで固有の服装をしているのはマスターの中でも一握りだろう。そういう意味では自分はその一握りのマスターに入るのだろうが、
「ここに入るのには聖堂教会の魔術師に任せきりでこの恰好もその人が設定してくれたのです。私はなにもしていません」
「おうがってむ」
へたくそな英語だった。服装からも見ておそらくアジア圏の英霊なのだろうか。
「……後悔しましたか?」
「ん?」
「せっかく契約したマスターがこんな落ちこぼれで。もっと他にもいいマスターがいたのではないですか?」
我ながら皮肉気な言い方だった。今更なにを言っているというような言葉で、もうどうしようもないことだがそれでも思わず口に出していた。
「んー」
その言い方にしかし柳に風とアサシンは受け止め。
「別に? このくらいの逆境とかいつものことだぜ。それに安心しろよ、武っていうのは弱い奴の手段だからな。むしろ弱体ステどんと来い。寧ろ俺の人生はこうじゃなくっちゃなぁ」
そう言ってアサシンは笑っていた。
言葉の通りにカレンが言った不備を上等だと飄々と笑っていた。
あぁなるほど。
なるほどこれは英霊だ。
こういう状況を笑って流せるほどに自分は強くない。
「そんなことないさ。あそこで諦めずにいられるのは――アンタの強さだよ主殿」
「……」
アサシンの言葉が胸に届くのを自覚しながら、それでもなるべく平静を給うとしながら立ち上がる。これといった不備はない。歩くのにも、なんなら走るのにも問題ないくらいだろう。そんな自分を眺めながらアサシンは変わらず笑みを浮かべていた。
「さて。とりあえずここから出たら戦場だ、俺はアサシンっていってもガチの殴り合いのほうが趣味だからそこらへんコソコソやるの心配しなくてもいい。あぁ、あとこれが一番大事だが真名はどうする? 今ここで教えておくか?」
真名。
文字通り英霊の真の名前。それが明かされれば何に強くて何に弱いのかが明確に浮き彫りになるので、絶対に相手には知られてはならない最重要事項だ。
「やめておきましょう。今の私では思考を読まれればレジストなんて無理ですので」
「極めて諒解。アンタに俺の真名名乗る時を待ってるぜ」
それまでにどれだけ魔術のことを学ばなければならないのか。今の自分は素人と変わらないのだけど。
ともあれ、自らが渇望し、拾った命だ。死にたくないのだから戦って、生き残らねばならない。
それが今のカレン・オルテシアの願いなのだから。
現在敏捷のぞいてオールE。敏捷だけギリDってとこですね