落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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二回戦ですよー


第七海「若いな」

 目が覚める。それはごく当たり前のことだけれど昨日まではそんな当たり前のことが再びできるとは思ってもいなかった。横たわっているベッドは机を並べた上に布を敷いただけの貧相なものだが、屋根があって体を覆う布団があるだけ上等だろう。耐久力には不安があるがそこは電脳空間なのだから被害は少ないだろうし。

 アサシンを締め上げるだけですむ。

 

「ん……」

 

 昨日の決戦で疲労した体は想像以上に疲れていた。十四年の人生において他人と競い合ったのはほとんど初めてで、ましてやそれが命懸けだ。疲れない方がおかしいというもの。およそまとも体質ではないけれどそこらへんはまともらしい。

 

「お、おはよう。主殿」

 

 起き上がって視線を動かせば壁にもたれかかって座っているアサシンがいる。いくらなんでもベッドを並べて寝るというのは精神的にアレである。肉体的には問題はなくても気持ちの問題である。流石英霊というべきなのか不自然な寝方でも疲労はないらしい。本人曰く慣れているとか。

 

「いやぁ慣れると案外寝やすいもんだぜ。常在戦場ってやつさ」

 

 何が面白いのか苦笑しながら立ち上がる。

 

「さて、主殿。今日も一日始まりだ。二回戦の相手が発表されてるだろうからな」

 

「解ってるわ。それと教会へ行きましょう、昨日上がった貴方のレベルの分魂の改竄もしたいし、たまには教会で祈りたいわ」

 

「そりゃ重畳。……まぁその前に朝飯だな」

 

「焼きそばパンとカレーパンしかないのだけれど」

 

「文句言うなよ」

 

 

 

 

 

 

 二回戦の対戦相手の名を確認した後に教会へと訪れる。教会の蒼崎姉妹には正直いい印象はない。姉は神聖な教会が視界が曇るくらいにタバコを吸っているし、妹はどうにも性格ががさつだ。できるのならば関わり合いたくない人種だけれどステ―タスが弱体化しているアサシンには魂の改竄が不可欠な以上関わらずを得ない。

 それでもなるべく必然以上は接触を避けたいのだが、

 

「よーブルー、今日もよろしく頼むぜー」

 

「来たわね、この落ちこぼれ。さっさと本来の力取り戻しなさいっての」

 

「うっさい」

 

 アサシンと蒼崎青子はどうにも仲がいい。

 青子はアサシンの真名に気付いているらしいし。なんとなくムカつく。

 

「まぁ、君のサーヴァントは一部では実に有名だからね。破壊屋のアレとは気が合うというのもあるだろうし」

 

「……そういうものですか」

 

 なにやらノリノリで青子と会話しているのがそこまで有名であるというのも違和感がある。少なくともカレンはあんな存在を全く知らない。

 

「ま、君の世界ではそう関係ないだろうさ。むしろかなり遠いだろう。真名を知らないんだったか、そこらへんも考慮して彼の真名を探ってはどうだね?」

 

「……」

 

 好きにはなれないが、アドバイスとしては有効そうなので心には留めておく。妹はがさつでも姉のほうは思慮深い。これで教会でタバコを吸わなければ好きになれそうなのに。

 

「おーいカレン、ちょっといいかしら?」

 

「……なんでしょうか?」

 

「どのパラメーター上げるか聞いてなかったからさ。どれにする?」

 

「ふむ」

 

 現在アサシンのステータスは敏捷がC-、あとは変わらずEのままだ。基本的にこれまでの改竄ではほとんど全てが敏捷につぎ込んでいるのだが、

 

「ここまで敏捷極振りっていうのも珍しいわよ。こいつ敏捷の伸びはやたらいいんだから、他にもリソース注げば? 魔力とか幸運とか」

 

「いや、でもアサシンの場合は」

 

「別に魔術使わなくても魔力上げる意味がないことないわよ? 上げまくってればその分魔力ダメージにも態勢できるよ。幸運は言うまでもないわね」

 

「なるほど」

 

 一回戦のライダーは物理的ダメージオンリーだったが、これから先魔力ダメージを使う相手がいないわけがない。ならば魔力を上げるのも一考かと思って、

 

「おいブルー解って言ってるだろ」

 

「てへ」

 

「……?」

 

「気にするな主殿。魔力は必要ない。耐久でも上げてくれ」

 

「……いいのかしら?」

 

「あぁ」

 

「……ならそうしましょうか」

 

「あいあいー」

 

 アサシンの体が光に包まれ、軽く浮遊する。青子が端末を操作して、

 

「ほい完了ー」

 

 魂の改竄が終了する。浮遊した体が床に降り立つ。アサシンは数度感触を確かめるように手のひらを握りしめ、

 

「この分だと、もう少し耐久上げれば新しいスキルが使えそうだな」

 

「それはいい話だけれど、魔力が要らないという理由を説明してもらいましょうか」

 

「勿論、でも俺の固有スキルに関係ある話だからな。アリーナ行って帰ってきてからにしよう」

 

「解ったわ」

 

「またよろしくねー」

 

 教会を後にし、

 

「……!」

 

「おや、君は」

 

 一人の老人と遭遇した。

 

 

 

 

 即座にアサシンが霊体化する。

 見る限りかなりの年齢だった。髪は全て白く、顎を覆う髭もまたそうだ。顔には皺が多い。

 

「貴方は……?」

 

「初めましてだね、オルテンシア嬢。私は――ダン・ブラックモアという」

 

「――!」

 

 ダン・ブラックモア。

 それは二回戦の対戦相手として告げられた名前だ。そしてその名はカレンですら知っていた。

 曰く英国の英雄。女王の懐刀。欧州の修道院や教会を転々とし世俗にも疎いカレンですら知っている名前だ。戦果やどういう状況で名を上げたかは知らないけれどどういう存在かは聞いている

 それだけの英雄が今回の相手ということ。

 だが、

 

「邪魔をして悪かった。妻に祈りをささげていてね。中では取り込み中のようだったから遠慮したのだが……。もう終わったのかね」

 

 そんな前情報に反して彼は穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「……え、えぇ。けれど中で祈るのは進められないかと」

 

「解っているとも。あの二人の前で無防備を晒すことなどできない」

 

 それはまったくもって同意だ。あの魔術師と魔法使いはブラックモア卿以上に有名なのだ。

 彼は私を静かに見据え言う。

 

「若いな……年齢的にもその在り方も」

 

 彼は私を見て言う。

 そしてそれを否定する術を持たなかった。

 

「君ははたして何の願いを抱いて戦場へと赴くのか……。いや、それすらも迷っているのか。正直君の生い立ちには同情を禁じ得ない。そうであるのも仕方がないだろう。戦いの中でそれを得られると願っているよ……いや、これは年寄りのおせっかいか。すまないね、どうにも年を取ると説教臭くていけない」

 

「いえ……」

 

 反論する術はない。その通りだ。死ぬために月へ来て、それでも死にたくなくて聖杯戦争に挑んで、既に一人の人間を殺した。聖職者の名が聞いて呆れる。もっとひどいことに今の自分は勝ち進んでどうこうしたいという願いすらないのだ。

 ダン・ブラックモアの慧眼は見事だ。初対面でここまで見抜くとは年の功というのは恐ろしい。

 

「さて、私はここで暇しよう。戦場にて相見えるのを楽しみにしている」

 

 そう言ってブラックモア卿は去っていく。アリーナへと向かったのだろう。彼のサーヴァントと共に。

 彼の言っていたことは何一つ間違っていない。

 でも、だからこそ、

 

「見つけていけばいいさ主殿。俺も手伝うぜ」

 

「えぇ」

 

 私は一人ではない。

 名も出生も解らないが、それでも共にいてくれる従僕がいるのだから。

 

「さぁ、アリーナに向かいましょう。貴方の新しいスキルとやらが楽しみだわ」

 

 

 

 

 





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