落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第八海「俺はそういう存在だって」

 

 アリーナに一歩足を踏み入れた瞬間にそれに気づいた。違和感などと言った曖昧なものではない明確な異変だ。視界の中、採食が明らかにおかしいと解る。いくら何でも紫や緑は異常だ。

 

「毒だな。アリーナ全体に仕掛けられているトラップみたいなもんだ。かなり厭らしいやり方だけど効果は高いな」

 

 つまりは敵のサーヴァントの攻撃か。先ほどあったブラックモア卿がこういう手段をとるとは驚きだけれど、

 

 これは戦争だ。

 

 こういう手段こそが寧ろ真っ当なのだ。

 

「どうするマスター。即効性はないとはいえいていい場所じゃない。一度戻るか?」

 

「……いいえ、進みましょう」

 

「諒解だ」

 

 頷くアサシンはあくまでいつも通り。少なかれ毒に蝕まれているといにも関わらず平然としすぎだった。

 

「あぁ、さっきの話と被るんだが、とりあえず俺には状態異常は効かない。そういう固有スキル持ってるんだ。相手が毒を使ってくる以上は帰ってから話すよ。主殿も俺と契約しているから若干恩恵があるはずだが……大丈夫か?」

 

「えぇ、なんとか」

 

 アサシンの言う通りなのか、身体のだるさや吐き気はあるが我慢できないほどのものではない。むしろ、この程度なら慣れているくらいだ。

 

「……そうか。じゃあ行こう。なるべきエネミーとは戦わずに、戦っても早めに決めた方がいい」

 

「わかったわ」

 

 進む。

 毒の結界の中だというにもアサシンの動きには衰えがない。見る限り体力も減ってないようだから状態異常が効かないというのは本当らしい。そういうことならば今回の相手にはかなり優位に進めるかもしれない。しかし状態異常を無効にするというのはどういうスキルなのだろう。固有スキルは基本的に英霊の行いの断片のようなものの結晶だ。宝具とまではいかなくても中には反則的な効果を持ったスキルもあるらしい。

 

「アーチャー、これはどういうことだ」

 

「ん? なんのことっすか旦那」

 

 しばらく進んだ先から声が聞こえた。ダン・ブラックモアと緑衣の若い青年。青年のほうがアーチャーのサーヴァントなのだろう。アリーナという立派な戦場であるが、彼らはかなり互いに意識を向け合っていてこちらに気付く様子もない。

 

「どうする?」

 

「せっかくなので聞いておきましょう。おもし……こほん。興味深い話が聞けるかもしれないわ」

 

「言い直した意味ねぇよ」

 

「解っているだろう。なぜイチイの毒を使った。一回戦の時にお前には使用を禁止したはずだ」

 

 ブラックモア卿の声は先ほど話した時よりもずっと剣呑で重い。静かだが、しかし確かな怒りの感情が見て取れる。

 

「と、言われても。戦争なんですから、楽できれば楽できりゃいいじゃないっすか。この毒でさっきの嬢ちゃんが死んでくれれば俺たちの勝利で万々歳じゃないですかねぇ」

 

「それではいかん。誇りというものが欠片もない」

 

「誇り、ねぇ……。埃の間違いじゃないっすか? 積もり積もったって鬱陶しいだけじゃないっすか。そんなで敵は殺せねぇ。俺は夢見るロマンチストじゃなくて、現実見据えたリアリストなんでね」

 

「アーチャーよ」

 

「くどいっすよ。俺はそういう存在だって旦那も解ってるでしょ」

 

「……今回は不問としよう。だが次はないぞ」

 

「はいはい」

 

 ブラックモア卿がリターンクリスタルを握る潰して消え去る。後には静寂だけが残って、

 

「主殿主殿」

 

「なにかしら?」

 

「すっげー悪そうな笑い方してるぜ? 悪役みたい」

 

「気のせいよ」

 

 アサシンの見当はずれな勘違いは気にしない。大事なのは今の会話の内容だ。

 

「随分とすれ違ってるわね」

 

「……あぁ、方向性の違いだな。あの爺さんはよっぽど正面から戦いたいらしい。でもサーヴァントのほうはそうじゃないと。これは付け入る隙になりそうだな」

 

「えぇ、実に。これはたの……おもしろそうね」

 

 輝いてるなぁと半目を向けられたがやっぱり気にしない。

 

「ま、先に進もうぜ。こういうのはどっかに結界の起点になるものがあるはずだ。それぶっ壊してトリガーとってレベル上げようぜ」

 

 アサシンの言葉に頷きながら探索を開始する。アサシンにも自分にもそれほど影響はないとはいえ長居しくはない。焼きそばパンとか購買部で買ったものが腐りそうだし。あと保健室で影の薄い子からもらった弁当も。

 当分進んで通路の先に枝のようなものを見つける。明らかにアリーナのディティールに合っていない。あれがこの結界の起点だろう。

 

「壊しなさい駄犬」

 

「あいよー」

 

 何やら悲壮感を漂わせながらアサシンが起点の枝を破壊する。それによっておかしかった色彩が戻り、身体のダルさも消えていく。毒の結界が解除されたのだ。

 イチイの毒とブラックモア卿は言っていた。それがあのアーチャーの宝具に関連しているのだろう。戻ってから図書館で調べる必要がある。

 なにはともあれ、 

 

「続けてトリガーとレベル上げに行きましょうか。まずはそれからね」

 

「極めて諒解、ってな」

 

 




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