落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第十二海「シャーウッドの森の殺戮技巧見せてやる!」

「申し訳ありません。やはり占星術は門外漢でした」

 

「おい」

 

 病み上がりの体でトリガー探しを中断して第一層にも足を延ばしてアーチャーの残したものを探し回って色々かき集めてシオンへと運んで行ったが結果が先の一言だった。

 

「いえ、これも計算通りです。残念ながら真名は解りませんでしたが、手掛かりは得ました。断片ですかマトリクスになりそうなものは得ましたよ」

 

「本当ですか?」

 

「えぇ……おそらくは彼のサーヴァントは暗い過去の持ち主……純英霊ではなく反英霊。また、曖昧ですが森のイメージを得ました」

 

 反英霊。

 所謂英霊である栄光や尊敬を集めた存在と反して畏怖や恐怖を集めたことによって生まれた存在だ。確かにこれまでのアーチャーの行動からすれば尊敬を集めたとは言いえないだろう。勿論、時代によって左右されるだろうが。

 

『森、ね……。なるほどそういうことか』

 

「アサシン?」

 

『いや、まだ確証はないからな。それにこういうのは自分で考えた方が主殿の為さ』

 

 上から目線が実にムカつく。このサーヴァントとは一回戦の終わりに自分が十四歳ということを知って若干の子供扱いがある気がする。アサシンは大体二十歳前後ということなのでそれも間違っているわけではないが、実に腹立たしい。

 

「今ブラックモア卿はアリーナにいるようです。私にはこの程度しか助力できませんが、実際に貴方の目で確かめに行くのをお勧めします」

 

「えぇ、勿論」

 

 私は魔術師としては素人に毛が生えた程度だ。七日前までは完全な素人で、自分なりに少しは修練しているがそれでも牛歩の如くだ。ならば実践で経験を積むしかない。

 

「アリーナへ行くわよアサシン」

 

「応とも」

 

「気を付けて」

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナへ踏み込む。アリーナの奥にブラックモア卿とアーチャーはいるようだが、

 

 とりあえず無視して経験値とPPT稼ぎに勤しむ。

 

「いいのか主殿」

 

「えぇ、世の中金よ金。いっぱい稼いで札束でぶん殴ってあげましょうか?」

 

「なにそれこわい」

 

 せっかくなので目につくエネミーや宝箱を片っ端から回収していく。

 

「あれだな俺の国にこういう話あったぜ、わざと決闘に遅れて相手を焦らして焦らせるやつ」

 

「実に素晴らしく姑息な戦い方ね」

 

「いや……一応日本最強の剣士だったんだけどね」

 

 軽口を叩きながら粗方収穫し終えて、ようやく奥へとたどり着く。当然のようにブラックモア卿とアーチャーが待ち構えていて、

 

「金策に励む聖職者っていうのはどうなのさ」

 

 開口一番にげんなりとした顔をしながらアーチャーは言った。

 

「奥で待ち構えているのが悪いのでしょう。えぇ、貴方たちが正面なり、入り口前で待っていたならばすぐに立ち合いましたとも」

 

「うっわ、このシスター性格悪いよ。そこんとどうなの? まぁうちも足並み揃ってるとはいいがたいけどさ」

 

「え? 主ってこんなもんだろ」

 

「うわ調教されてやがる」

 

 ――調教ではない躾だ。ダメな犬にはそれ相応の対処をするのが当然だろう。

 

「お前さん……苦労してるんだな……」

 

「ははは……慣れっこさ」

  

 乾いた笑いでアサシンとアーチャーがそろう。随分と仲がいい。

 

「まぁ、あれさ。こういう虐げられる生活っていうのも慣れればそれなりに楽しめるぜ? あれ、いいのか? 俺こんなんで楽しめるようになっていいの? ……とか思っちゃうけどさ。お前さんだってそれなりに楽しみあっただろう?」

 

「まぁ否定はしねぇけどよぉ。でもお前、お仲間戦友に味方してボッチとかマジどんな気持ちだよ。想像できねぇわぁ」

 

「おいトラウマをほじくるな。つかボッチプレイならアンタの独壇場だろうが。ボッチ引きこもり劣勢って三拍子そろってるじゃねぇか」

 

「……」

 

「……」

 

 がっつり二人で落ち込んでいた。

 

「ほっほっほ。どうやら随分似通った二人のようだ」 

 

「まったく……」

 

 ブラックモア卿は朗らかに笑い、私は嘆息する。

 トラウマほじくるのは私にやらせてほしい。

 

「うわ、うちの主殿が不吉なこと考えだした。愚痴タイムはやめよう。ここからは戦闘パートだ」

 

「おぉ、上等だ。頭の痛くなる話よりもまだそっちの方がマシってもんだ、シャーウッドの森の殺戮技巧見せてやる!」

 

 空気が変わった。互いに笑みがあって、それまで下らない話をしていたとはいえ互いに英霊。切り替えは早く即座に戦闘状態に移行している。

 

「アーチャー」

 

「解ってますぜ旦那。卑怯な手は無しだろう? 俺からそれ取ったらもう甘いマスクしか残らねぇっていうのに。まったくこれで生娘を口説けってか?」

 

「アーチャーお前の実力はわしが一番よく知っている。お前の腕前は長年狙撃主であった私ですら背筋が凍るものだ」

 

 ブラックモア卿の言葉にアーチャーの口端に笑みが浮かぶ。言葉通りに彼らは真っ向からの勝負をする気なのだ。それに最早アーチャーは迷いなく頷き、

 

「なら偶には縁がなかったやり方をやってみますか!」

 

 アーチャーが腕のクロスボウに矢を番える。

 それよりも早く、

 

「アサシン!」

 

「あぁ!」

 

 アサシンが前に出る。真っ向勝負だろうと狙撃だろうと私たちの戦法は変わらない。一回戦のライダーと同じだ。

 接近あるのみ。

 近接格闘A+++を持つ以上、至近距離での技術で彼に勝る英霊は数少ない。相手がアーチャーであり、不意打ちと毒を主としているならば距離を詰めて格闘戦に持ち込めばこちらの圧倒的有利。

 

「オォ!」

 

「解りやすすぎるぜ!」

 

 アーチャーが矢を放つ。それも複数だ。番えてから放つまでほぼノータイム。アサシンが迎撃するがそれでも二、三本は被弾してしまう。

 

「弓兵だから距離詰めるとか頭悪すぎだろ! 随分なご主人様だなぁ!」

 

「まともな人間が俺の主が務まるわけないだろ!」

 

 被弾に構わずアサシンは進む。前に出る。アーチャーも近距離で狙撃は可能だろうと関係ない。馬鹿の一つ覚えであろうと彼が最も力を発揮できる間合いはそこなのだから。

 アサシンが振りかぶった拳をアーチャーが防ぎ、カウンターで蹴りを放ってくる。

 

「返すぜ!」

 

 決まるが威力はやはり低い。矢も体術も威力は高くない。

 だからこそ、

 

「イノシシかお前は!」

 

「愚直だな……だが、それゆえに効果は高い」

 

 前に出す。

 振りかぶった拳がアーチャーのガードをぶち抜いて一撃を与える。

 

「くそっ」

 

「まだまだ!」

 

 拳を叩き込んだ勢いを使って深く沈みこみ、

 

「百花繚乱!」

 

 膝を爆発させた飛び膝蹴りを叩き込む!

 その一撃はアーチャーへの鳩尾にもろに叩き込まれ吹き飛ばす。なんとかアーチャーは態勢を立て直し、

 

「アーチャー」

 

「茂みの棘よ……!」

 

 ブラックモア卿の言葉に、アリーナの床に手を当てる。魔力が増加するそれはスキルの前兆だ。

 

「アサシン!」

 

「諒解!」

 

 指示が届いた瞬間に発動される。アサシンの足元からアリーナを突き破って来た棘が襲う。全身に巻き付いてくるそれを

 

「――唖吽!」

 

「……っ!」

 

 アサシンの震脚と声帯砲が吹き飛ばす。アリーナ全体を揺らがすほど衝撃だったが、それでもアーチャーもブラックモア卿も怯むことはなく、

 

「ほら、どうだ!」

 

 矢を放つ。棘を吹き飛ばしたアサシンは技後硬直のせいで避けられなかった。命中し、

 

 アサシンの状態が毒となって――一瞬でそれが消える。

 

「ッ旦那! やっぱコイツ毒効かねぇ!」

 

「そのようだな」

 

「ばれたか」

 

「いずれ解ることよ。気にしなくていいわ」

 

 アサシンの固有スキル異能無効B。

 対魔力の上位版ともいえるそれは同ランク以下のあらゆる魔力ダメージ状態異常相手固有スキルを無効化するものだ。あくまでアサシンの肉体のスキルなので触れていなければ意味はないが少なくともこれまで使われた毒ならば完全に無効化できる。

 

「真っ向から来てみろよ!」

 

「面倒だねまったく! ペナルティで弱体化してるっていうのによぉ!」

 

「自業自得だぁー!」

 

 攻め続けるアサシンにそれを回避して矢を射るアーチャー。現状を見ればこちらの有利。奇襲と毒。相手のサーヴァントの真骨頂を二つも潰している。

 それでも――、

 

「落ち着け、アーチャー。火力を上げよう」

 

 ブラックモア卿の存在がそれらのアドバンテージを帳消しにする。ブラックモア卿がコードキャストを発動したことによってアーチャーの攻撃の威力が上がる。

 

「アサシン、回避を!」

 

 手数が多いのを単発の威力を上げられれば一気にこちら側の不利だ。毒が効かないからアサシンは手刀や足刀で次々に撃ち落していく。

 射撃と迎撃が何度も機械的に繰り返され――

 

『――アリーナでの戦闘行為は禁止されています――』

 

 セラフからの警告が響き渡る。

 その瞬間アサシンもアーチャーも示し合わせたようにそれぞれの主の下へ。

 

「ここまでか。やればできるではないかアーチャー」

 

「まったく、慣れないことするからへとへとですよ旦那。毒駄目で奇襲無しとか、どんな縛りプレイだっていうの」

 

「そういうな、それでもわしたちならば勝てる。ではオルテンシア嬢、次は決戦場で相見えよう」

 

 そう残してブラックモア卿とアーチャーはアリーナから出ていく。

 彼らの姿が完全に消えて、

 

「ふう……なんとかなったわね」

 

「あぁ。でも毒に奇襲も封じてやっと互角か、気が抜けないな」

 

「えぇ……」

 

 随分と疲労がたまっている。やはり目前で英霊同士の戦いを目にするというのはかなり精神的に重い。決戦は近いのだ。今の攻防で得た情報を図書館で調べたり、シオンに相談するなりしてあの緑衣のアーチャーの真名を掴まなければならない。

 それでも、今は、

 

「帰りましょう、アサシン」

 

「あいよ。お疲れ主殿。帰って確り休もうな」

 

 




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