落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

3 / 71
裏三理「『二律相立《ダブルアクション》』を完成させるためだよ」

 ゴールデンウイーク、その次の日。5月7日、その深夜。とあるファミレスの一角にて。 どうにも気持ち悪い集団がいた。

 

 目を伏して、腕を組んで黙っているのは、

 

「………………………」

 

 茶髪を適当に伸ばした整った顔立ちの全身黒ずくめの青年。

 少女向けの服飾雑誌を食い入るように読むのは、

 

「ふむ、これはなかなか……」

 

 銀髪で大量のヒラヒラがついたフワフワした服と眼鏡の少女。

 大量のデザートを頬張るのは、

 

「おお、これおいひー!」

 

 金髪のツインテールでこれもフワフワした服の少女。

 彼女の横で口を開けたのは、

 

「えー、じゃあ俺にもくれよー」

 

 黒髪を肩辺りでまとめた軍服の少年。

 

 『完善超悪(ヒーロー)』、遠山金一。

 

 『下降生流(クールダウン)』、ジャンヌ・ダルク。

 

 『怪盗覽目(ドロップウインク)』、峰・理子・リュパン・4世。

 

 『才覚反転(リバースプレミアム)』、那須蒼一。

 

 

 イ・ウーにいる過負荷(マイナス)による裸ワイシャツ同盟である。

 

「んじゃ、まあ始めますかー。ではまずはジャンヌくんどうぞ!」

 

「べつにない」

 

「コラコラ」

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、ジャンヌよう、話が進まねえじゃん。ホラ昨日の話でいいからさ」

 

「…………ちゃんと過負荷(マイナス)使わずに、特別(スペシャル)として戦ってやったさ。負けた。普通に負けた。なんだそれは。おかしいだろ。わざわざ調整してまで特別(スペシャル)の連中に合わせたんだぞ? なのになんで負ける?」

 

「そりゃおまえ、根っこが過負荷(マイナス)だからだろ」

 

「………………」

 

 無視して雑誌読み進めてんじゃねぇ。現実逃避しても変わんねえよ。どれだけ調整しても過負荷(マイナス)過負荷(マイナス)でしかない。

 

「そりゃあお前は策士だからそういうの得意だし、俺らの中だとかなり器用だけどさぁ、根っこは変えられねぇだろ」

 

 オマケに最後は化けの皮剥がれてたろ。

 結局過負荷(マイナス)全開で、

 

「お前のせいで地下倉庫《ジャンクション》水没しちまったじゃねぇか。どうすんだよ、請求書とかきたら」 

  

 俺が横槍入れてなかったら水没じゃなくて、爆発させてたろうが。

 

「……くそぅ、あんなチンチクリンと変態にも勝てないのか私は……」

 

 鬱モードに入っちまったよ。こいつ結構勝ちたがりだからなぁ。過負荷(マイナス)だから勝てないけど。

 まぁいいや。

 

「じゃあ、金一くん! 次どうぞ!」

 

「…………………………」

 

 目を伏せていた金一は、ゆっくりと目を開け、

 

「…………パトラがそろそろ動くようだ」

 

「ふうん。パトラ、パトラねぇ」

 

 あのクレオパトラ7世のアホ女。

 そこそこの異常(アブノーマル)、なんだけど……。

 

「まぁ、そいつはどうでもいいや」

 

「そうか」

 

 再び金一は再び目を伏した。別に反論もないから話しを進める。進めて話すのは──本題だ。

 

「実はさ──」

 

 一つ区切って。 金一を、ジャンヌを見回して。理子の、かすかに震える理子の手を握りしめて、

 

 

「────────いい加減ブラドに勝とうと思うんだよ」

 

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 金一は片目を開け、ジャンヌも目を上げた。理子は震えをごまかすように俺の手を強く握る。

 

「いやさぁ、ほら大分前にも俺と理子でケンカ売ったじゃん? まぁ、思いっ切りボコボコにされて結局は遙歌が助けてくれたんだけどさー」

 

 そのせいで今の遙歌はイ・ウーのナンバーツー。

 プラドはナンバースリーだ。

 

「でもよう、カッコ悪いよなぁ。ソレ」

 

 今の俺は妹に守られているわけだ。

 守るべき妹に、守られてるわけだ。

 惚れた女も──守れてないわけだ。

 

「そりゃあ、俺は過負荷(マイナス)だから最低(マイナス)最悪(マイナス)で無意味で無価値でなにより無責任だけどよう」

 

 それは、なんというか。

 なんともいえないけど。

 

「プラスとかマイナスとか異常(アブノーマル)とか過負荷(マイナス)とか普通(ノーマル)とか特別《スペシャル》とか。そういう以前の前に人としてどうよ?」

 

 人でなしの俺が言うのもどうかと思うけど。落ちこぼれの俺が思うのもどうかと思うけど。それなりの矜持くらいあるのだ。矜持というよりも──意地か。

 

「だからいい加減ブラドに勝とうと思うんだよ」

 

「思うのは勝手だかな」

 

「どうやって勝つつもりだ?」

 

 ジャンヌも金一は呆れるでもなく、馬鹿にするでもなく。純粋に不思議そうに聞いてきた。

 

「勝つことも負けることもできないのが、お前の在り方じゃなかったのか?」

 

 それは、そうだ。

 那須蒼一は勝つことも負けることもできない。かつてただの落ちこぼれだった名残なのかどうか知らないけど、俺は勝てないし、負けない。ハイジャック事件の時には神崎には戦闘では勝ったけど、状況的には遠山にやられた。総合的には──よくわからない。ジャンヌの時はそれこそ最後に横槍をいれただけだ。

 ──勝ったも負けたもない。

 昔、ブラドに喧嘩売った時は殺されかけたけど、結局は遙歌がブラドを倒した。

 

 負けてないけど──勝ってもない。

 勝ってもないけど──負けてない。

 

 それが俺の過負荷(マイナス)としての特性だ。

 

「わかってるよ。だからさぁ、一回イ・ウーに帰ろうとおもうんだよ」

 

「へ、なんで? 聞いてないよ!?」

 

「ああ、うん、今いったからな」

 

 なんでかというと、

 

「ブラドを倒すための俺の第二の過負荷(マイナス)─────『二律相立(ダブルアクション)』を完成させるためだよ」

 

 待ってろ、理子。

 俺はお前と幸せになりたいんだよ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。