落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第十七海「俺はだからこそ安らかに」

 さて、実に困った。

 白黒二人のありすに赤いバーサーカーらしき魔人。誰がどの役割なのか皆目見当つかない。一回戦のシンジや二回戦のダンは今回に比べれば随分真っ当だっただろう。

 主殿も俺も誰をぶん殴ればいいのか明確だった。生前から考えることは苦手で、この聖杯戦争は相手が解りやすくて真っ向勝負好きとしてはトーナメント方式はありがたい。

 まぁその恩恵も今はないのだけれど。

 そして今困った状況で中、扉一枚挟んだ保健室の中では

 

「はぁ……桜? お茶。ついでにあのありすとかい小娘の情報を貰えないかしら」

 

「む、無理ですよぉ」

 

 絶賛後輩NPCで遊んでいた。マスターの健康管理が役目であるはずの間桐桜に無茶苦茶な注文である。一回戦毎に支給品をくれるだけでもありがたいと言うのに。主殿も当然そこらへんは理解しているだろうが、

 

「はぁ……」

 

「なんですかそのため息はっ」

 

「いいえ、なにも。そうね、貴方はそうやっているのかいないのかよくわからないキャラですものね、黒化するなり反転するなりしたらどうからしら?」

 

「なんてことを言うんですか! そ、そんなことないですっ」

 

 完全に趣味全開だった。

 まぁ本来は戦闘が性分ではない主殿なので、それなりにストレス発散が必要だろうが桜をいじっているのはまず間違いなく主殿の性分である。

 桜には申し訳ないがしばらくは弄られてほしい。

 

「俺に飛び火するからなぁ」

 

 慣れている、慣れてはいるのだ。主からこう色々ひどい目にあわされるというのは俺としては基本だ。生きているころからそうだったし、ムーンセルに観測された他の自分も大体そんな感じだった。どうやら魂レベルでそういうのが染みついているらしい。いや、なんかわかりやすく名前つけるとむなしくなりそうなので止めるけど。

 別に嫌っていうわけでもないし。

 

「こんにちは、なにをなさっているのですか?」

 

「あん?」

 

 思考から脱し、聞こえた声に視線を動かせばそこにいたのはレオとガウェインだ。相も変わらず自信満々でさらけ出しているらしい。

 

「アンタか。悪いけど保健室はうちの主殿が使用中だぜ。心に傷を被いたくなかったら回避をお勧めする」

 

「いえ。ただ一人で貴方がやたら悲壮感を漂わせていたのでなにかあったのかと思いを声をかけたんです」

 

「……そんな感じだった俺?」

 

「それはもう。ミス・オルテンシアと仲たがいでもしましたか?」

 

「違うよ。こう、人の魂の如何に思考を馳せていてだな」

 

「魂……なるほど貴方が言うと深みがありますね」

 

 そうやって意味深にレオは微笑む。もしかしなくてこっちの真名ばれているのだろうか。いや、確かに結構有名だった自覚はある。それに俺が今付けているヘッドホンは彼女(・・)の物でそれから年代でも割り出せばすぐに正体を掴むことができるだろうけど、当然のようにバレているというのは主殿に申し訳ない。

 

「あんまり深く考えるなよな、敵のサーヴァントの戯言だぜ?」

 

「敵だろうとなんだろうと有益な情報は得るべきだと思いますが? むしろココではそれこそが肝要でしょう」

 

 ごもっとも。

 それにしてできた王様だ。俺たちを完全に見下している――というよりも自分たちが勝利して当然だと思っている。同時に相手がなんだろうと手を抜いたり慢心することもない。王の素質、この少年はそれが完全に備わっているのだろう。

 

「ココを思い出すなぁ」

 

「はい?」

 

「アンタと似たやつを知っているって話さ。王様として完成されたやつをな」

 

「参考までに話を聞いても?」

 

 別に構わないけど。保健室の中ではまだ会話が続いていて終わりそうにもないし、ガウェインはレオの背後で控えて何も言わない。こちらを障害と思っていないのか、俺みたいなのに自分の主を変えられると思っていないのか。

 ともあれ肩をすくめながら記憶にある王の少女を思い出す。

 

「アンタとそれほど変わらねぇよ。馬鹿みたいに強い部下率いて自分も馬鹿みたいに強くて。唯我独尊にして傲岸不遜。傲慢と謙虚が隣り合わせして、頭がおかしいとしか言えないような奴だよ。部下を愛し、愛され。敵すらも敬って、認める常勝の王、常に全力であることを欲して、放っておけばあっさり世界征服しそうな奴だったな」

 

「なるほど、それは素晴らしい。確かに僕の求める王の形だ」

 

「だろうな――俺はそういう嫌いだけど」

 

「ほう、その心は?」

 

「なに、もっといいのを知ってるってだけさ。いや、単純にこれは俺の好みの話だけどな。覇道を歩む王とそれに率いられる狂奔の臣下たち。忠誠と隷属の軍団。なるほど悪くないさ、仕える方は魂から信奉して王の後を追っているんだからな」

 

 そう、あの連中は確かにそういうやつらだった。でも、それでも、

 

「俺は――俺たち(・・・)はそうじゃなかった。明確な指針があったわけじゃない。足並みそろえて軍隊みたいに戦ったわけじゃない。むしろてんでバラバラ好き勝手やっていたさ。それでも、俺たちは間違いなく前を向いていた。今ある全ての為に全力で駆け抜けていた。忠誠と隷属じゃなくて愛と絆の軍団。俺は、そういう奴らのほうが好きだったんだよ」

 

「……まるで、その中に自分は入っていないような言い方ですね」

 

「入ってねぇよ。笑えることにな。でも、俺はだからこそ安らかに敗北(なっとく)してここにいるんだ」

 

 そう。袂を別っても絆が消えたわけではなかった。だから、俺はアイツに全てを任せることができた。悔いはあったけど後悔はない。というのは言葉が遊びがすぎるだろうか。

 

「えっと、なんだ? らしくもなくだらだら語っちまったが、つまりだ少年王よ」

 

 率いられることを良しとしない馬鹿(ニンゲン)がいるって話さ。

 

「人間、ですか」

 

「あぁそうだよ。降ってわいてくる力全部無視しちまう大馬鹿野郎さ。俺がソレ。アンタはそれの存在を無視してるからな、絶対そのうち痛い目みるぜ? ……というのは余計なお世話かね」

 

「……いいえ。見識が深まりました。“人間”、なるほど心に留めておきます。感謝を、“瑠璃色の守護者”。できることならば僕は貴方と戦いと思います。ミス・オルテンシア共々、貴方がたの勝利を願っていますよ」

 

「そうかい、こっちとしてはお前さんとやりたくないけどな」

 

「では」

 

 軽口は聞き流されレオは去っていく。ガウェインは変わらず、こちらに一礼してからレオの背後に忠犬の如く付いて回っていた。二人が去って行って、

 

「……やれやれ」

 

 変に要らないことを語ってしまった気がする。本気であの二人には当たりたくない。どうせ当たるなら七回戦にしてほしい。今戦っても絶対に負けるのだから。

 

「ともあれまずは三回戦突破かね」

 

 アリアといいココといいロリはおっかないのばっかりだ。

 

「とりあえずトラウマが増えないことを祈ろう、うん」

 

 もう遅い気もするけれど気にしない。




ちょいと本編ネタバレ的な?
当然レオは魔改造的な?


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