落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第十八海「あたしはありす。あたしもアリス」

 さてどうするべきか。

 桜と、桜で遊んだことで随分とストレス発散や気分転換になったが結局なにも変わっていない。なにをするにしてもあの赤い魔人を倒すなり退かすなりしなければならないのだ。

 アサシン曰く、真っ向から勝負するというのは自殺行為とか。私が一流の魔術師、アサシン自身が本来の力を取り戻していれば倒せるらしいのだが、当然現状不可能。

 というわけで、

 

「ふむ、バーサーカー……いえ、それよりも双子のマスターですか」

 

「えぇ、貴方はどう見るかしら?」

 

 食堂で昼食をとりながらシオンに相談してみる。いずれ敵になるかもしれない相手とはいえ今はそうではないし、こういう相談できるのは彼女しかいない。それに彼女も拒否することなく相談に乗ってくれるので遠慮はしない。

 

「原則マスターが二人というのは在りえませんね。これが地上だったならばシステムの隙を付いて似たようなことができるかもしれませんが、ここは月。管理の権化ともいえるムーンセルの支配下です。そういったイレギュラーは度外視するべきでしょう」

 

 シオンは指を立てて、

 

「考えられる可能性はこうですね。その二人のどちらかがマスターで、残りはサーヴァントと使い魔。おそらくこれが一番可能性が高い。けれど」

 

「けれど?」

 

「少女の片割れがサーヴァントの場合は、サーヴァントが人間と区別できないというのはおかしいし、そのバーサーカーがサーヴァントの場合は使い魔を召喚できるはずがない」

 

「ではありすのどちらかがマスターと?」

 

「えぇ。でもまた新たな問題があります。そのバーサーカーが使い魔としたら、サーヴァント並の使い魔を容易く召喚しているというのは不自然です。それほどまでに強力な使い魔を従えればいくら一番の魔術師でも脳が焼き付いてもおかしくない」

 

「貴方でもですか?」

 

「えぇ、仮に私のランサーと貴方のアサシン……完全な状態での話ですが、二騎同時使役など要領的に不可能です」

 

 シオンの言葉に視線をずらす。マスター同士で会話している間に、

 

「腰のキレが足りないな。もっと、こう、勢いよく!」

 

「まじかよ、俺すげぇ腰切ってるんだけど。具体的には必殺技使ってる時と同じくらい……!」

 

「愛が足りない! さぁアサシン、早くこのポーズを身に着けて月の放課後路地裏同盟結成を……!」

 

「二人しかいないけどな!」

 

 なにやら頭の悪い話をしていた。

 

「……まぁあのようなサーヴァントだろうと二騎同時というのは現実的ではありませんね」

 

「なるほど……ありがとうございますシオン。参考になりました」

 

「いいえ、私も貴方と話すのは思考の柔軟には丁度いい。……どうにもランサーは私のことを子ども扱いする」

 

「それは、アサシンも同じですね」

 

 互いに苦笑して、

 

「行きますよ。ランサー」

 

 シオンはランサーに声をかけ、

 

「行くわよ駄犬」

 

「もが!?」

 

 マグダラの聖骸布でアサシンの体を絡め取って吊り上げる。なにやら文句を叫んでいるが人が真剣に対戦相手に関して悩んでいるのに遊んでいるサーヴァントなのだからこのような扱いでも十分だろう。聖骸布ではサーヴァントを拘束しきるのは不可能だが、自分のサーヴァントであるアサシンは別だ。

 あとギャグ補正だろう。

 

「さて――幼女狩りと行きましょう」

 

 

 

 

 

 

「こんにちわ、お姉ちゃん!」

 

 食堂から一階に上がった途端に白いありすは現れた。シオンと相談し合ったすぐのことで驚いたが、それでも彼女の情報は必要だ。なのでできるだけ笑顔で彼女に話しかける。

 

「なにかしら?」

 

「お姉ちゃん! 今日はかくれんぼしよう! ありすが隠れるから見つけてね!」

 

 言って走り去っていく。相変わらずの健脚だ。もしかしたら私よりも足が速いかもしれない。少しへこむ。

 

「へこんでる場合じゃないよ主殿。たぶんアリーナに行ったな、追いかけたほうがいいと思うぜ」

 

 言われるまでもない。

 すでに姿を消したありすを追ってアリーナへいく。昨日と変わらず赤紫の世界には遠くにいるはずのバーサーカーの気配を伝えてくる。シオンの言っていたことを頭の中で思い返す。従えられるサーヴァントは規則的にも要領的にも二騎が限界。なのにその道理は無視され、バーサーカーは健在だ。サーヴァントをずっとアリーナに放置しておくのはおかしいだろうが、断定はできない。

 

「昨日粗方アイテムとか取ったけどエネミーも無視して進むか? それても稼ぎまくるか?」

 

「当然稼ぐわ、決戦までにはもういくつか貴方のスキルを取り戻したいし」

 

「次のスキルはもうちょっと敏捷と耐久がいるからそのつもりで頼むぜ」

 

 アサシンの言葉に頷きながらアリーナを進む。バーサーカーは完全にあそこから動かないようで、威圧感こそあるもの探索には問題ない。

 順調にエネミーを狩りながら進んでいってしばらく進んで、

 

 ありすを見つける。

 

「あーあ、見つかっちゃった! でもたのしかったよお姉ちゃん!」

 

 彼女は一人でアリーナで私を待っていた。こうして至近距離で向かい合ってもあの黒いありすやバーサーカーが来る気配がない。これまでと全く変わらずに笑っている。嫌な寒気が止まらない。この子はおかしい。明らかに私以上にこの聖杯戦争に場違いだ。ここは闘争の場なのに、それなのに彼女からは欠片も闘争の意識を感じない――。

 

「遊んでくれてありがとう! 遊んでくれたお礼に、ありすに聞きたいことがあったら何でも聞いて!」

 

 願ってもない展開だった。悪寒は消えないし、背後で霊体化しているアサシンからも苦い気配があるが、

 

「あの黒い貴方はなんなのかしら?」

 

 一番重要であろうことを聞く。今この少女たちに関しては推測に推測を重ねているだけで、決定的な事実は未だ一つも手に入れていない。先のことを考えるならばここでマトリクスなり、その手がかりでも欲しい。

 

「あたしはありす。あたしもアリス。さぁさぁあの子は誰でしょう? 大丈夫だよお姉ちゃん、すぐに解るから。んー、これじゃあちゃんと答えたことにならないからもう一つだけ聞いてもいいよ」

 

 いつの間に回数制限がと思うが、それでもこの一回を大事にしなければ。今の質問は核心を突きすぎたのなら、次はもっと現実的な問題として、

 

「あの大きな友達をどかしてくれないかしら?」

 

『主殿言い方言い方』

 

「ジャバウォックのこと? それに関してはあの子に聞かないと解らないわ」

 

『お、うまくいったか?』

 

 アサシンの言葉に小さく頷く。

 ジャバウォック。それがあのアサシンの名前で、黒い方に制御権があるらしい。

 

「あ、そうだ! 今度は宝探しをしましょう!」

 

 宝探し――。

 宝。

 

「“ヴォ―パルの剣”を見つけられたらあの子も退いてくれるわ。あ、でも宝探しだからヒントがないといけないわ。そうね……ヴォ―パルの剣はアリーナにはないわ、そして何処にもない幻の剣だから。じゃあ、頑張ってねお姉ちゃん!」

 

 ありすが転移で姿を消す。

 それと共にアサシンが姿を現し、

 

「ジャバウォックにヴォ―パルの剣ね……まぁ随分解りやすいキーワードだけど、決めつけはよくないぜ。一回戦のライダーのこともあるしな」

 

「えぇ、解っているわ」

 

 確かに今のキーワード二つで大まかの想像は付くけれど、あのありすが嘘を言っている可能性もないわけではない。

 

「ひとまずヴォ―パルの剣……礼装かなにかかしら」

 

「さて、俺はそこら辺は詳しくない。でも」

 

「シオンに聞きましょう、なにかしら知っているはず」

 

「頼りすぎは良くない……なんて言ってられる余裕もないしなぁ」

 

 そう、私たちに余裕なんてない。

 ジャバウォックを対処しなければ、ありすたちの情報を手に入れられなければ。

 この月で死に果てるしかないのだ。

 




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