落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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裏四理「 俺の―――勝ちだァァァァァアアアアアァァァッッ!!」

 カツン、カツン、カツン。乾いた音を立てて階段を登っていく。身にまとうのはいつも通りの軍服。響くのはいつも通り軍靴の音。いつも通りなのはそれだけ。

 それだけだ。

 

 イ・ウーからは戻ってきたのはついさっき。その脚でこのに向かっていた。俺が開けていた間に理子は母親の形見のロザリオを奪い返しにアイツの別荘、紅鳴館に遠山と神崎を使わせたらしい。そして、それは成功した。

 流石、と素直に賞賛しておく。

 ありがとう、と感謝しておく。

 でもそれはアイツを呼ぶ伏線なんだけどさ。

 だから。

 だから。

 階段を登りきった。

 扉を開けて、

 

「─────」

 

 風が強く吹いている。身体を叩きつける。そして、そこには遠山が、神崎がいて。その向こうに、アイツが───『無限罪』ブラド。

 俺の勝つべき相手。

 そして、その手には、

 

「ああ────」

 

 俺の女が。俺が好きになった女の子。

 峰・理子・リュパン・4世。

 彼女はそれまで、絶望に身を落としていたのに。彼女は笑った。俺の姿を見て、笑った。にっこりと、とろけるような優しい笑みで。ああ、お前はいい女だよ。

 待ってろ。もうすぐだ。

 

「────勝てよ、蒼一」

 

「──ああ、勝つさ」

 

 俺がプラドに勝つから。勝って一緒に幸せになろう。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あんた……!」

 

「お前は……」

 

 神崎と遠山が何かを言おうとするけど、

 

「黙ってろ。お前らの出番はここまでだよ」

 

 二人を通り抜けて。通り抜けて──さらに進んで。カツン、カツンと、音を鳴らして。  すぐ目の前へ。

 腕を伸ばせば届くような距離で。

 

「よお、久しぶりだなぁ。吸血鬼」

 

「ゲハ」

 

 ブラドは、吹き出した。

 

「ゲハ、ゲハハハハハハハ! ゲハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 笑って笑って。

 

「ああん? テメェ、何しに来たんだよ! テメェみたいな落ちこぼれがなにしてんだよ!?」

 

 ブラドは笑う。馬鹿にするようにではなく、事実馬鹿にしてるのだ。お前は人間で、俺は吸血鬼。種として存在している位階が違うのだ。だからお前が来ようが意味はないと、ブラドは笑う。

 

「意味はねぇだろ? ねぇよなぁ──だから死ねよ」

 

 拳が振るわれた。理子を掴んだ手とは逆の手で俺に拳を叩き込んだ。

 そして、それは、

 

「ぐっ……うっ……!」

 

 そのまま俺の腹に叩き込まれた。直撃だ。胸骨が音を立てて砕かれた。コンクリートの床を無様に転がって。

 

「が、はぁ!?」

 

 ブラドが血を吐いた音を聞いた。

 

「蒼一!」

 

 突然、血を吐き背を丸めたブラドから理子が解放される。俺の下へと駆け寄ってくるが、

 

「──いい」

 

「っ……!」

 

 ピタリと、止まった。  

 ふらりと、俺は立ち上がる。

 

「どうした? ブラドよう。血なんか吐いてさぁ」

 

「てめぇ……! なにをした!?」

 

 なにをした、か。 そりゃあ不思議だろう。ブラドが俺を殴って確かに俺はぶっ飛んだのに、ブラドが俺と同じように血を吐いていたのだから。

 

「……蒼一?」

 

「安心しろって、別に溜めたりなんかしねぇよ。教えてやるよ。これはな、お前に勝つために俺が作り上げた、俺の第二の過負荷(マイナス)───『二律相立(ダブルアクション)』だよ」

 

二律(ダブル)──」

 

相立(アクション)、だと?」

 

「おおう、そうだぜ? ずっと考えてたんだよ。お前に勝つためにどうすればいいか」

 

 考えた。

 考えて考えて考えて考えた。

 過負荷(マイナス)の俺がより強いブラドを倒すにはどうすればいいか。俺にはなにがあって、ブラドにはないのか。それを考えて、作り上げたのが『二律相立(ダブルアクション)』だ。

 

「コイツはな、俺が受けたダメージの割合をそっくりそのまま返すっていう過負荷(マイナス)なんだよ」

 

「わり、あい?」

 

「そうだ、割合だ。よくある受けたダメージを返すのとはちがうんだぜ?」

 

 ゲームみたいだと思えばいい。俺MAXHPが100と仮定し、10のダメージを受けたとする。普通ならそういう能力だとそのまま10を返すのだろう。でもそれって大した効果はないだろう。相手のMAXHPが1000とか10000とかだったら10のダメージなんて意味ない。

 

 だけど、この『二律相立(ダブルアクション)』は違う。

 

 与えるのは割合のダメージなのだ。

 俺が10すなわちMAXHP100の1割のダメージを受けて、『二律相立(ダブルアクション)』で返したのなら。相手のMAXHPが1000ならその1割である100のダメージを与え、MAXHPが10000なら1000のダメージを返す。

 

 それが、この過負荷(マイナス)だ。

 

「いやぁ、苦労したぜ。完成させるために教授(プロフェシオン)と遙歌の2人とバトったんだからよう」

 

 マジで死ぬかと思った。そのかいあって完成にこぎつけたけど。

 

「………なんなんだ、テメェ……」

 

「あ?」

 

「どういつもりで、そんなスキル持ってきた! 話し聞いてりゃあそれは完全に相打ち狙いじゃねぇか!」

 

「はぁ?」

 

 おいおい。 

 なにいってんだよ、コイツ。

 

「安心しろよ。ちゃんとコイツでお前に勝つからよ」

 

 かかか、と俺は笑いながら、懐から二丁拳銃を抜き、

 

「行くぜーーーー!」

 

 

 

 

 

 

 人はみんな簡単には負けることをわかっていない。

 勝ったり負けたりすることを当たり前だと思っている。

 だから負けても笑っていられるのだろう。

 でも、負けられない時にだけは負けないと勝手に思ってるんだろう。

 でも負ける。

 必然で、偶然で。

 運命で、宿命で。

 すれ違いで、勘違いで。

 順境で、逆境で。 

 思惑外れで、思惑意外で。

 簡単に、単純に。

 容易く、気安く。 

 

 

 人は負ける。

 

 

 でも─────好きな女の子為に戦う俺が負ける訳がない。

 

 

 

「か、か、かはは、はは」

 

 笑う。全身から血を流しながら。血に染まっていない箇所なんてない。骨も全身殆ど砕かれてるし、痛くないところなんてない。

 でも、それでも。

 

 負けてない。

 

「ぐ、げ、がはぁ……」

 

 そして、全身ボロボロなのはプラドも同じだ。俺もコイツも間違いなくHPがすっからかんだろう。

 

「か、はは……ど、どうしたよ、ブラド。死にかけじゃねぇか」

 

「ぬ、抜かせやぁ……。この失敗作、が……」

 

 どれだけ殴り合ったのだろう。神崎も遠山も茫然としていた。弾丸で撃ち抜いた傷や銃身で斬りつけた傷や拳の傷とかいろいろある。

 もっとも、

 

「余計な、お世話だ!」

 

 終わらせる気もないが。もう二丁拳銃は壊れてしまったから素の拳で。大した勢いもないそれら呆気なく、ブラドの顔面に叩き込まれ、

 

「ぬ、ぐ、う……!」

 

「くぅっ……!」

 

 同時に膝をつく。その衝撃だけでぶっ倒れそうだ。それはブラドも同じだろうけど。いや、それはどうでもいいか。とりあえず、立たなくちゃ。

 

「あれ?」

 

 立とうと、してふらついた。世界が回ったような感覚を得て、それを見たブラドが口を歪めた。

 ダメだ。倒れるな。

 負けないって、決めたんだろう。負けられないんだ。 

 いくら俺が過負荷(マイナス)だからってここだけは負けられないんだ。

 

 でもそんな思いとは裏腹に体から力が抜けて。倒れそうになって、

 

 

「────────蒼一ーー!」

 

 

 地面を踏みしめた。 

 そして、ボロボロになった俺の懐に滑り込んで来たのは、

 

「理子……」

 

「この、馬鹿がっ! そんなにまでボロボロになって! 新しい過負荷(マイナス)ならもっと勝てそうなのをなのを作ってこい! 一体なにを考えてる!」

 

 理子は目を真っ赤に腫らして。涙をぽろぽろ流して。俺の体を支えながら抱きしめてくる。

 か、かははは。

 なに考えてる、か。俺は理子の顔を見つめながら、

 

「………こういうことなんだよ」

 

「なにがだ!?」

 

 『二律相反(ダブルアクション)』は言ってみれば強さも弱さも一緒くたにする過負荷(マイナス)だ。 

 強いヤツを引き下げて。弱いヤツを引き上げる。

 弱さも強さも平等に。強さも弱さも無意味に。

 プラスもマイナスも異常(アブノーマル)過負荷(マイナス)も平等で無意味にしてしまう過負荷(マイナス)だ。

 

「プラスもマイナスも異常(アブノーマル)過負荷(マイナス)も意味なくて、それでも勝敗を決めるのは、さ」

 

 そんなの一つしかない。

 

「─────愛、だろ」

 

「────────!」

 

 だから、この過負荷(マイナス)なのだ。俺にあってブラドにはないもの。

 それが愛だ。それが、理子だ。

 

「愛の為なら、理子の為だけなら俺は勝てる」

 

「あ、う、あ………」

 

 理子が顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせた。相変わらずストレートな言葉に弱いなぁ。茫然としていた理子の頬に軽くキスしつつ、抜け出して、未だに膝をつくブラドの前に。

 拳を握りしめる。

 

「そういうわけだから負けとけよ、お前」

 

「ふ、ふざけん、じゃあ、ねぇ……」

 

 悪態をつくが、それでも動けない。俺だって、理子がいなかったらなんにもできなかっただろう。それでも確かに俺には理子がいるから。好きな女の子の前でカッコ悪いところ見せられないだろうが。

 だから。

 拳を振り上げて叩き込み、

 

 

 

「俺の―――勝ちだァァァァァアアアアアァァァッッ!! 」

 

 

 

 人生初の勝利の雄叫びを上げた。

 

 

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