落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第三十三海「悲鳴を上げろ! 豚のように!」

聖杯戦争も既に五日目となった。モラトリアムで言えば今日を入れてあと二日しかない。現状は一体どうなのだろうかとか、考えてみる。状況が悪い、というわけではなないのだろう。昨日のハンティング勝負では一応買ったわけだし、今日も同じ要領でやればいい。あるいは昨日以上の頑張りが必要だろう。互いの真名は既に解り合っているのだから、このムーンセル内でのデータというのが必須になってくる。

 それでも、私が気になっているのは、

 

「さつきのことですか?」

 

 シオンが問いかけてきた。

 今もまだこうして保健室に滞在している彼女だが、ここ数日で随分と調子が戻って来たようだ。毎日保健室に通っていて話し合っているが三回戦よりも前も理知的な彼女に、いやそれよりも柔らかい雰囲気になっている気がする。

 

「それは、まぁ仕方ないでしょう。私はもう戦うことはできない。肩の荷が下りるというものです」

 

 そうやって苦笑し、

 

「カレン、さつきのことでしょう。貴方が考えているのは」

 

 シオンの確信を持った言葉に頷く。

 弓塚さつき。

 彼女はどうしてこの聖杯戦争に参加したのだろう。これまで何度か遭遇し、一度はこの保健室で桜やシオンも交えて普通に会話している。聖杯戦争など忘れたように他愛のない話に花を咲かせたが、それでも彼女はただの少女に見えた。

 間藤慎二のような遊びでもないだろう。

 ダン・ブラックモアのような高潔さもないだろう。

 ありすのように白痴でもないだろう。

 それなのにどうして。

 

「私もそれなりに彼女について探ってみましたが、地上の弓塚さつきという魔術師(ウィザード)の痕跡は見つけられませんでした。よっぽど巧妙の名を隠しているのかそれでも完全に無名だったのかどちらかでしょうが……」

 

 シオンが言うまでもなく。多分彼女は本質的には魔術師ではない。彼女には魔術師特有の非常なまでの合理さというのに欠けているだろうから。

 

「よく見てるなカレン。聖職者よろしく人間観察はお手の物ってか?」

 

 霊体化を解いてアサシンが現れる。保健室に来るたびにボッチボッチうるさいから連れ込んだら、即座に霊体化して姿を消していた。

 このヘタレめ。

 あとそれは偏見だろう。

 

「ヘタレ言うなし、止めてね傷つくから。いや、ほら。シスターとか神父とかって告解聞くもんじゃないのか?」

 

「私はあまりそういうことしてこなかったのよ」

 

 修道女であり祓魔師なのだから。各地を転々として告解などしていない。

 罪は罪でも悪魔の罪ばかりだ。

 

「笑えねぇ……」

 

「全くです」

 

 冗談とは難しい。

 

「よしシオン。カレンに冗談を教えてやってくれ。得意だろ? コレコレ」

 

「その腰を切る謎のポーズはなんなんですか。リーズもちょくちょく私に迫ってきましたが。なにか、こう……妙に体が疼くというか……」

 

「ようし、是非やってみよう。アイツから復興を頼まれていたからな! パンダも白いのもいない以上俺たちでやるしかないぜ!」

 

 妙にノリノリのテンションで気持ち悪かったがシオンが立ち上がって並びだしたので一緒に並んでみる。シオン、私、アサシンという順番で横一列にならび、

 

「え、えっとこれは……?」

 

「そこで見てろよ桜」

 

 茫然としている桜の前に。

 せぇの、っとアサシンが声を掛け、

 

「放課後路地裏同盟ッ!」

「放課後路地裏同盟」

 

 腰を切りながらピストルの形にした手を突き出すという謎のポーズをアサシンだけではなく、シオンまでやっていた。妙にキレキレである。桜はいきなりの行動にポカンと口をあけて驚き、私はもうなんか呆れて言葉も出なかった。アサシンいい笑顔である。

 微妙に空気が凍って、ガラリと保健室の扉が開いた。

 

「こんにちわって……あれ?」

 

 さつきが入って来た。この微妙な空間をすぐさま察したのか冷や汗をかいて、

 

「お、お邪魔しましたー。アリーナで、待ってるね……?」

 

 すぐに出ていった。できることならばこの空気をどうにかしてほしかったのだが……

 

「まさかのご本人登場とは……!」

 

「これも計算通りです……はっ私はなにを!?」

 

「えっと、皆さん。メンタルチェックしていきますか……?」

 

 大丈夫なのだろうか私たち。

 

 

 

 

 

 

 第二層のアリーナ中央で私たちは対峙する。

 赤いコートと帽子、サングラス姿のランサーとさつき。蒼い着流しのアサシンと私。ランサーとアサシンは私やさつきの一歩前に出て向かい合う。

 すでにハンティングは終了し、スコアは昨日と同じく四対三だ。これで明日にはこの従僕についてのデータがムーンセルから送られることになる。

 それでもこの戦いは避けられないし、避けるつもりはない。ある程度の偵察は必要不可欠だ。それは向こうも同じ考えのようでハンティング終了後に示し合わせたようにこの場に集っていた。

 集い、そして戦火は開かれる。

 

「来るがいい、自らを人間というならばその輝きを見せてみろ! さぁ、オーダーを、マスター!」

 

「とりあえずハンティング負けた腹いせをどうぞ!」

 

「ヤー、マイマスター」

 

「来るぞ、カレン!」

 

 アサシンの言葉と共に魔力を送る。同時にランサーが懐から抜き放ったのは白の拳銃。ソレは遠目で素人が見ても馬鹿げた威力を誇ると想像できるし、アサシン自身がそう言っていた。

 だからまず最初に、

 

「瑠璃の加護よ……!」

 

 アサシン自身の耐久を底上げする。その上で、

 

「前へ」

 

「応よ」  

 

 前に出す。

 

「ハッ!」

 

 笑みを漏らしながらランサーは白の拳銃の引き金を引く。轟音と共に吐きだされる弾丸は一回戦の時のランサーの比ではない。古式のフリントロック式の銃ではなく、見るからに近代的な自動拳銃だ。魔力で弾丸が形成されているから残弾数はともかくとして単純な性能面では圧倒的にこちらが勝る。

 

「関係ないぜ!」

 

「だろうな」

 

 アサシンは銃弾を全て回避する。アサシンにとっては重火器というのはほぼ無意味だ。視認できない超長距離からの狙撃ならばともかく近距離からの弾丸など到底無意味だ。足場が確かなら数メートル先から放たれた対物ライフルさえも無傷で叩き落とせると豪語したのだ。

 ならばそれを信じるまで。

 

「蒼刀・錻――『無空抜拳』」

 

 接近したアサシンが予備動作抜きで拳を振るう。背後から見る私では何が起きているのか解らない。ランサーに近づけば近づくほど吐き気があるし、見るに堪えない。おそらくは他者の精神に作用するスキルのせいなのだろうが、アサシンは構わずに拳を放つ。

 

 そして無拍子の拳をランサーは避けることなく喰らう。

 

「っ!?」

 

「まだだ!」

 

 吹き飛んだランサーは血風をまき散らしながらアリーナの外壁に激突する。

 

「拳蒼発破!」

 

 追撃にアサシンが往く。送り込んだ魔力と共に拳撃を叩き込み、直撃部分が威力で破裂し夥しいまでの血がまき散らされる。一撃一撃に表示されているランサーのHPが大幅に減っていく。

 それでも、アサシンは攻撃の手を緩めない。外壁に亀裂が入るほどの拳の連撃。スキルを用いた拳の大瀑布。

 

「アサシン!」

 

「蒼の一撃、第一番!」

 

 アサシンが距離を開ける。それは当然攻撃の手を緩めたわけではなく、連撃の反動で大きく飛び、その跳躍の勢いすらも次の一撃に繋げるための予備動作。送られた魔力がアサシンの全身を巡り、

 

「乾坤一蒼ーー!」

 

 瞬発し、飛び出したアサシンが拳をぶち込みに行く。疾走は、私が気づいた時にはランサーの直前にまで至っていた。振りかぶった拳が射出され、

 

 突き出された黒金の銃口がアサシンの鼻先に止まった。

 

「――!」

 

「中々だ」

 

 引き金が引かれた。

 

「っおおおお!」

 

 すんでのところで首を傾けたが、避けきれるわけがなく肩を掠めた。アサシン肩が抉れ、血が舞う。

 

「純銀製マケドニウム加工水銀弾頭弾殻・マーベルス科学薬筒NNA9全長39cm・重量16kg13mm炸裂徹鋼弾ジャッカル! パーフェクトだ、ウォルター」

 

「出たな百万発入りコスモガン!」

 

「ついでだ。拘束制御術式『クロムウェル』、三番、二番、一番――解放」

 

「ん……!」

 

 さつきから大量の魔力が放出されランサーが受け取る。銃を握った手で四角の空白を作り、そこから覗く真紅の目が輝く。

 

「カレン! まともに見るな、持っていかれるぞ!」

 

 アサシンが戻ってきて、私の背中を叩く。いつもならば折檻だが、アレに魅入られかけていたのは確かだ。

 その間にランサーはその力を開放していた。殴られて、損傷していたランサーの肉体が崩壊し、不定形の影となる。

 

「これは……!」

 

「離れるなよカレン!」

 

 動きはランサーからは無かった。血だまりの中(・・・・・・)から巨大な黒犬が飛び出してきた。それはアサシンが最初にランサーを吹き飛ばした際に生じたもので、明らかに異常だった。しかしそれでも私やアサシンの身の丈をも上回る巨大な犬が出現していた。

 

「邪魔だぞワンコが!」

 

 魔犬の横顔をアサシンが蹴り飛ばす。明らかに異能で発生している存在であるにも関わらず異能無効のスキルを持つアサシンの一撃で消えないということはAランク以上のスキルか宝具……!

 

「相変わらずふざけた力だ……!」

 

 見れば魔犬だけではない。 コウモリやムカデ、先の二丁の拳銃を手にした腕。広がる影や飛び散った血から発生してくる。殴り蹴るが無尽蔵に湧き上がるソレは、

 

(デコイ)!?」

 

「残念全て本物です」

 

「やばっ……!」 

 

 アサシンの背後にいつの間にランサーは出現していた。アサシンの肩を掴み、振り向かせながら、

 

「悲鳴を上げろ! 豚のように!」

 

 押し潰し気味の前蹴りがアサシンの右ひざへとぶち込まれる。逆膝カックンとでも言えるそれに対するアサシンの反応は即座だった。

 

「伊達男さぁーん!」

 

 蹴りに合わせるように膝けりを放つ。

 アサシンとランサーの蹴撃が激突し合い、衝撃波がアリーナ全体を揺るがし――

 

『――アリーナ内でのマスター同士の戦闘は禁止されています――』

 

 ムーンセルによる警告音が響き渡る。視界に赤いノイズが走り、ランサーがさつきへ下がる。私もさつきも肩で息を吸っている。極至近距離で戦闘が行われた私は言うまでもなく、先のランサーのスキルはかなりの魔力を消費するのだろう。

 

「今日はここまでか。マスターよ、次はあんな命ではなく、必殺を願うよ」

 

「……は、はい」

 

「ではさらば。同胞だった宿敵とそのマスター。次は決戦場で会おう」

 

 ランサーとさつきがアリーナから消える。さつきの消費が激しかったのか、ランサーに庇われるようにして去って行った。あのランサーに近くにいて、兵器そうなのはそれほどあの二人が相性がいいからだろうか。月の聖杯戦争では相性重視でサーヴァントが選択されるというが。

 そう考えると私とこのアサシンの相性がいいというのは不思議な気分だ。

 

「むう……やっぱりそうか。悪い知らせといい知らせ、どちらから聞きたい?」

 

「解りやすければいいわよ」

 

「そうかい」

 

 アサシンは少しだけ苦笑し、すぐに眉を潜める。

 

「やっぱあいつの耐久値は大したことないな。何発か殴ればすぐに殺せる。けど――殺せない」

 

 そう、アサシンの拳は確かにランサーのHPを削っていたし、削り切っていたはずなのだ。最初の攻撃だけでレッドゾーンになったはずのに、ランサーのHPは尽きたと(・・・・)思った(・・・)瞬間に(・・・)全開にまで(・・・・・)戻っていた(・・・・・)

 つまりは、

 

「事前に言った通りにアイツの宝具の性質だ。それを開放させて、乗り越えないと勝機はない」

 

 四回戦にしてラスボス級現るというクレーム物のバッドニュースだった。

 

 




勝てる気がしねぇ……(

そういえば前の話で各番外編の蒼一の話をクラス変えて出したけど、そこらへんの鯖データもいるでしょうか。蒼一だけじゃなくて本編とかの別キャラとか希望があったら作って公開しますよっと。魔改造とかクレアブとかほかの作品でも可です

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