落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
「センパイ、大丈夫ですか?」
保健室にて目覚めた時、目の前に桜の顔があった。どアップ。思わず悲鳴を上げそうになるほど驚いたがみっともないし、キャラでもないので黙っておく。
「おはようございますセンパイ」
「……えぇ、おはよう」
桜が退いてから体を起こす。
息を吐いて身体の状態を確かめる。事故に対するメディカルチェックくらいは可能だ。簡単なものだが数値的な異常はないし、自分でも疲労は取れたと思う。端末に表示さrれた時間は朝を表示していてるし、十分な休息は取れた。
「はい、少なくとも肉体的な面いえば問題ありません。ただ……精神的な面ではまだ不安定です。あまり無理をしないでくださいね?」
精神的な事に関しては仕方ないだろう。彼が未だ回復していないのに心から休まることなんてできない。それでも動ける分には問題ないのでよしとする。
「あの……センパイ?」
「いえ、大丈夫よ」
彼女が心配気にこちらを覗きこんでくる。前々から思っていたけど随分と感情表現豊かな少女だ。言われなければAIと気づかないだろう。
そういえばなぜ彼女は私のことをセンパイと呼ぶのだろうか。
「覚えていませんか? センパイ、予選の時のロールが私と同じ保健員だったじゃないですか」
「……そういえば」
本選からのことが印象が強すぎて、大分薄れていたがそういえば予選時は自分はそんな
「っ」
「センパイ?」
「い、いえ。なんでもないわ……」
なにやら微かな頭痛があったが、まだ疲れが取れていなかったのだろうか。いや、メディカルチェックでは問題なかったのだから気のせいだ。今はこうして雑談している暇も惜しい。起き上がってベッドから出た所で、
「あぁ、おはようございますカレン」
シオンだ。
「シオン、アサシンは」
「えぇ、解っています」
一つ頷き端末が鳴った。表示されたのはなにかしらの術式だった。かなり複雑なプログラムなのか一見しただけでは私には解らない。それでもこんなタイミングで送ってくるということは、
「えぇアサシンを回復させるためのプログラムです。なんとか一晩で纏めることができました」
「っ……ありがとう、それでどうすれば」
「焦らないでください、順を追って……いえ、やはりまずは貴方はアサシンの下へ向かってください。貴方の前ではやせ我慢をしていたが、やはり消耗は激しい。貴方がそばにいるのがいいでしょう」
しかしそれではこの術式を用いることができない。
「端末で通信すれば問題ありません。起動すれば大した手間もありませんしね。彼自身にも一通りの手順は説明しておきましたから。だから行ってください」
●
「おう、おかえりカレン」
マイルームに戻り見た彼の顔はやはりよくない。それでも口調や視線は乱れていなくて昨日よりも落ち着いたのだろう。いつも通りに壁際に腰かけて飄々とした笑みを浮かべていた。
「疲れは取れたか? 桜苛めなかった? ん?」
微妙にうざい。けれどそれはある意味いつも通りなのでそのうざさも彼が元気になったということなのかもしれない。あと別に桜苛めていないし。これまででも苛めたことはない。
ともあれ彼の姿に少し安心し、
「あら、貴方こそシオンによからぬことをしなかったでしょうね? 去勢してあげようかしら?」
「してないよ。そんなすぐ去勢とか怖いこと言うな」
げんなりした風にアサシンが言う。こういう時のアサシンの顔は随分輝いてるなぁと思う。
「そんなことないよ。輝いてないよ。うん……ほんと……だよ?」
反抗も力ない。いやこのサーヴァントは最近少しマゾに目覚めつつあるので、これが嬉しいのかもしれない。
「気持ち悪いわ」
「うわ言うねー」
雑談していたら端末が鳴った。シオンだ。
『あーあー、テステス。聞こえていますか、カレン?』
「聞こえています」
『それは重畳。アサシンは?』
「いるわよ」
横でやたら手を振っている。アレ、結構大丈夫ではないのだろうか。
『いえ、先ほども言った通り痩せ我慢ですよ。貴方がいるからでしょうね。彼がそういうサーヴァントであることは貴方も知っているでしょう』
「……えぇ」
『さてアサシンの治療について説明します。まず今の彼の状態をまとめるとパスが切られ、体内の魔術回路が乱されています。昨日も言いましたがこれは血管や内臓などをシェイクされ、その上で延命措置も外されたようなものです。今はアサシン自体の魔力で持っていますが今日入れて以てあと一日二日です。おそらくは彼でなければ直撃喰らった直後に消滅していてもおかしくはなかった』
シオンが言っていることは昨日聞かされたことの復習だ。
『はい、その上で彼の治療法について説明します。私がサーヴァントに魔力供給し貴方とのパスを繋げ直す。アリーナから魔力を供給する必要がありますが、それほど難しくもなく治療可能です――しかし今回それは無理でした』
「無理、とは?」
『昨夜一度簡単に試したのですが、こちらの介入を受け付けませんでした。いえ、これは予想していたことです。私はランサー……リーズから彼の真名を聞いていますから』
それはこちらも同じだった。シオンのランサー、リーズバイフェに関しては真名は宝具について私はすでに知りえている。
『ともあれ彼に対する私からのアプローチは不可能です。無理にやれば私とアサシン共に魂魄がダメージを負う可能性もありますし。これは言ってみればアサシンの性質です。固有スキルに異能無効というものがあるらしいですが、それとは別に彼のデータ……魂の問題として』
魂。
アサシンの、彼の在り方。
『端的に言います。彼に介入できるのは貴女だけだ、カレン』
「……けれど、私にはそんなスキルは」
『いいえ、貴方は既に一度しています。四回戦決戦後からアサシンの髪と目の色が変わっている。それが証です』
そういえば確かに四回戦の決戦を境目にして特徴的だったあの蒼髪蒼目は黒くなっている。本人が言うには黒のほうが素で、蒼色は後天的なものだったらしいがそれと何か関係あるのか。
『えぇまあ……大有りなわけですが、それは本人からどうぞ。それですね、具体的な方法ですが……』
シオンが言いよどんだ。彼女にして珍しい言い方でこほんと一つ前置きをして、
『――セックスです』
「……はい?」
『性交渉です。これは魔術としては極々一般的なことですらから。えぇ、他意はありません。先ほど送ったプログラムは事に致せば勝手に動きますから。その……アサシンは貴女を寵愛しているのでしょう? では頑張ってください』
端末から音が消えた。
というか寵愛って。どんな言い方だ。
しかし――セックスとな。いや、私としても昔の魔術師にはそういう行為がポピュラーな儀式の手段だったことは知っている。知っているが、しかし自分がそんな目的で行うだなんて思っていない。
アサシンへと視線を向ける。
「……いやん」
顔を染めてしなを作っていた。
イラッときた。
睨みつけたら照れたようにきょろきょろしたりしているのが気持ち悪い。それでもよく見ればうすっらと汗をかいているし、辛そうだ。シオンが言っていた通りにこういうのはやせ我慢なのだ。それに気づいてしまっては黙っていられない。
「……はぁ」
仕方ないので脱いだ。
「え、ちょ、カレンさん!? そんな積極的とかアサシンさん準備ができない……!」
「だまれ駄犬」
顔を真っ赤にさせて喚くアサシンを押し倒して馬乗りになる。なんだこいつは生娘ではあるまいし。
「いや、そうだけど生娘じゃないけど! それでm積極的過ぎないですかね!? もっとこう……っ、なんで私がそんなことしなければならないっていう葛藤の下に俺が殺し文句を言ってアンタが真っ赤になって暗転するという展開では……」
「知らないわよそんなこと」
だって、
「……これくらい慣れているもの」
そう、別にこんなことは初めてじゃない。悪魔祓いとして活動中で悪魔に取りつかれた男性の欲望を受け止める為として、魔に犯されるということはそれなりの数を経験している。こんな華奢で女としても碌に発達していない体でもそういうことはあった。
自分の体は穢れている。
碌に知りも知らない男に抱かれるのは正しく娼婦の行いだろう。それにこのセラフでは関係ないが、被虐霊媒体質のせいで地上では全身傷だらけで消毒液のにおいが染みついて離れていなかった。
だからそう、不浄の聖女というのはまるで間違っていなくて。
私は結局紛い物ので――
「それは違う」
アサシンの手が私の頬に触れていた。
「違うよ、カレン。アンタが偽物だなんてことはないさ。それは俺が保障する」
「アサシン……?」
「俺の髪とか目の色はな、俺の想いで変わるんだよ。あの蒼色はかつてただの人間だった頃の俺が惚れた女との絆の証だった。けどそれが変わったんだよ。俺はアンタに惚れたからさ。ここにいる俺は、今アンタを好きになった。愛している。アンタに在り方に、アンタの愛に、アンタのすべてに。だからカレン」
アンタが偽物だなんてことは絶対にない。
「――」
「もしそうだったらあの吸血鬼に勝てることなんてできなかったって。それに、アンタが穢れってるなんてことはない。綺麗だよ」
「――――」
「うん、まぁ俺が言いたかったのはそういうこと。やっぱこういうのは気持ちが大事だと思いますはい」
…………。
…………この男は。
困るようなことを素面で当然のように言う。四回戦での決戦でもそうだったし、ちょくちょくそういうことをこれまで言ってきた。
なんだか力が抜けた。
そのまま彼の胸へと倒れる。
「おっと……カレン?」
心臓の音と熱が伝わってくる。こういうところはセラフは融通が利かない。これでは私の鼓動や熱が伝わっている。
思わずため息。
もっとこう、自分は余裕のある人間でありたいと思っていたのに。
「貴方は、馬鹿ね」
「よく言われる」
そうして唇を重ねる。
欲望でも姦淫でもなく――愛に包まれたのはカレン・オルテンシアはこれが初めてだった。
おまけ
レキ「一夫多妻去勢拳を覚えました」
あというまでもなく端末繋がったまま(
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