落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第四十一海「我々の業界ではご褒美です!」

 

 あのアサシンの真名を知ることはできたが、同時にこちらの真名も知られることとなった。二人の英霊の格は大体ほぼ互角らしいので、あと三日でできることはサーヴァントのレベルを上げて同時に私の魔術師としての力量も上げなければならない。

 相手はあのユリウス。ハーウェイの塵処理屋。その腕前は相当な物だろう。もし仮に彼と私が相対することとなれば危ないだろう。

 

「いや、フィッシュあるから絶対近づかないって」

 

「しかし、遠距離から魔術や銃を使ってくるというのは十分考えられますね。その対策もしておきましょう」

 

 マイルームにてシオンとアサシンとのブリーフィングだ。畳の上に蒼一がどこからか持ってきたちゃぶ台を三人で囲んでいる。机の上には例によって蒼一が握ったお握りが。おかかと天むすのおかずが増えていた。相も変わらずしょっぱくて少しシオンが顔を顰めていた。

 そういえば麻婆豆腐のお握りはないのだろうか。

 

「無理だよ。手が焼け爛れるわ。つかマスター、真面目に真面目に」

 

「わかってるわよ」

 

 これでも真面目なつもりだ。

 マグダラの聖骸布は私の主礼装だ。基本的に聖骸布を装備し、状況によって回復用やステータス強化の礼装を使っている。聖骸布の捕獲は男性に対してはほぼ確実に捕縛し動きを止められるが、

 

「サーヴァントにはあまり効かなさそうよね」

 

「少なくともガチ戦闘じゃあ効かねぇよ。四回戦の時の俺もそうだったし、アイツも同じだろうな。いや、ギャグ空間だと絶対抜けれらないけどね? あと普通の人間にも効果はあるはずだ」

 

「ギャグ空間云々はともかくとして、ユリウスに効果があるのは確かでしょう。向こうそれを警戒しているでしょうが」

 

 自分の聖骸布のことはそれほど有名だとは思わないが、それでもあの男なら情報を持っているだろう。下手に伸ばしても攻撃用のコードキャストで反撃されるのがオチだろう。

 

「んー、でもちゃんと自衛技術はあった方がいいだろうなぁ。シオンが言ったみたいに銃とかで攻撃してくる可能性は無きにしも非ずだからなぁ。布槍術の練習でもしておくか?」

 

 無茶を言うな。

 

「そうですね……私のバレル・レプリカを使いますか? 概念兵装としてはともかく銃としてはすぐに使えるでしょう」

 

「銃ですか」

 

 あいにくそんなものを使ったことはない。地上ではよく見かけたが、自分が相手をしていたのは悪魔で人間ではなかった。残念ながら心得はない。自分は祓魔師で代行者見習いだが本質的には聖職者だ。聖職者とは銃とかパイルバンカーぶっ放したち、HAKKYOKUKENNでヒャッハーするのは仕事ではないのだ。

 

「いやまじでこの世界の聖職者碌なのいないよな……あぁでもメーヤとか大概だったしなぁ。……でもアレ? 女装無双兄貴とか姉萌え審問官とか……聖職者というのは化物か!」

 

 クワッ、と目を開いて叫んでいた。

 実に失礼なので天井からつるしておいた。

 微妙に嬉しそうで気持ち悪い。

 

「我々の業界ではご褒美です!」

 

「……大丈夫ですか彼?」

 

「放っておきましょう」

 

 話を戻す。

 とりあえず自分に銃を使うのは難しいのではないだろうか。

 

「そうですね……残り三日もあることですし、精密射撃とはいかなくても威嚇射撃くらいはできるようになると思います」

 

「……そうですね。アリーナの探索を終えたらお願いします」

 

 幸い相手のアサシンの真名は割れているのだ。これ以上無理に接敵して被害を増やす必要はないだろう。レベルを上げて、自衛手段の習得に努めるべきだ。

 

「あぁいや待ってくれカレン。そういうわけにもいかないぜ」

 

 簀巻きになっている蒼一から少しだけ真面目な声が上がった。

 

「確かにあいつの圏境はマトリクスのおかげでネタバレしたけどな。それでもあの透明化を破壊したわけじゃあない。圏境自体破壊するのは簡単だけど壊し切るのはちとキツイ。決戦の時にノータイムで透明化されたら結構痛いよ」

 

 圏境。

 それはアサシンの固有スキルだった。

 完全透明化が固有スキルというのは頭おかしいとしか言いようがない。中国人というのは化物か。

 

「うむ、TYUUGOKUは気よ付けろよー。俺らとか中国陣営と戦って都市二つと城一つ吹き飛ばしたからなー。SANGOKUマジ怖い」

 

 たまに聞く蒼一の武勇伝とか色々頭おかしいのではないのだろうか。大体どれも街とか豪華客船とか吹き飛ばしたとかそんなのばっかだ。どれだけ戦闘地域に恨みがあるのだろうか。

 

「いや、恨みとかは無くてちょっとテンション上がっちゃうんだよねー。あ、でも清水ぶっ壊したのは正直済まんかった」

 

「それで、なにが言いたいのですかアサシン?」

 

「ん、あぁ。できることなら決戦前にあの圏境を完全に封じたいって話だよ」

 

「可能ですか?」

 

「ありゃ気功術だからな。勁脈ぶっ壊せばいける。そういうのシオンなら作れるだろ? できるなら接触型のサーヴァント用プログラムがいいんだが」

 

「ふむ……」

 

 僅か思案気な顔をしてホロウィンドゥを展開して、少しの間操作をし、

 

「可能ですね。一時間ほど時間をください。すぐに作成しましょう」

 

「さっすが」

 

 そんな簡単にできるものなのか、という疑問がないわけでもないが、それでもシオンがやると言っているのだ。ならばそれを信じるのが今の私にできることだ。

 端末からは既にアリーナに新しいトリガーが精製されたという通知は来ている。ユリウスと接敵できるかはともかくとしても探索は必要だ。

 

「あぁいえ、アリーナの入り口にエーテライトを仕込んでおきましたのでユリウスが侵入すればすぐに解りますよ」

 

「……さすが」

 

 全く彼女には頭が上がらない。蒼一が倒れた時だって彼女がいなければ彼の復帰は難しかっただろうし。頼もしいバックアップがいるというのは実に恵まれている。これはこの聖杯戦争で私だけの特権だろう。

 そう思ったら同じことを考えたのかシオンは苦笑して、

 

「こうやって敗北したのに生き残っているのも私だけでしょう」

 

「ははは、案外他にもいたりしてな」

 

 

 

 

 

 

 

「んー、やっぱいないなぁ」

 

『えぇ、こちらにもらしき反応はないですね』

 

 シオンのプログラムが完成して一時間。ユリウスの反応を待ってもう一時間。それでもあの男は現れなかった。とりあえずアリーナ第二層へと赴いた。

 一言で言えば熱帯雨林だ。

 

「……暑いわね」

 

「暑苦しい格好だしなぁ」

 

 カソックよりも戦闘用の法衣を着てくるべきだったろうか。四回戦よりも華やかな花や岩。魚ではなくて大きなエビとかもいるが、あれは食べられるのだろうか。もしもアサシンがあれでお握り作ったら絶対に食べるのをやめておこう。

 それにしても気温も湿度も高い。これまでのどのアリーナよりも明るく華やかだった。

 

「私はもっと薄暗くて涼しいのが好みよ」

 

「ま、俺もそっちのほうがいいね」

 

 言葉を交わしながらアリーナを進んでいく。

 エネミーは歪な人型や蜂のような姿のものが多い。かなりスキルを多用して着て手強いが、アサシンの武術の前では鎧袖一触だ。経験値を稼ぎ、宝箱を漁る。途中で藤村先生から依頼されていたイセエビも入手して

 

 あっけなくトリガーへとたどり着いた。

 

「……これ、罠じゃないでしょうね」

 

「大丈夫だろさすがに。へんな気配ないし」

 

 言葉通りにすんなりトリガーを手に入れることができた。呆気ないと言えば呆気ないが、それでも何事もないならそれでいいだろう。あと三日はあるわけでその間にあのプログラムを使えばいいのだ。あの主従が何事もなく決戦まで行くというのは考えられない。

 嵐の前の静けさ、というやつかもしれない。

 

「ま、任せとけって。もう不覚は取らんし、アンタは絶対に護るさ」

 

「期待しておくわよ、ガーディアン?」

 

「その呼び方あんまかっこよくないんだよなぁ……」






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