落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第四十二海「――貴様たちは決戦場で殺す」

 鍵盤を叩きながら思うことはこれまで戦って来た者たちのことだ。 

 結局昨日ユリウスたちと接敵することはなく一日が終了し、これで五日目に入る。昨夜はシオンにバレル・レプリカの使い方を教えてもらって、一応は撃てるようになった。元々誰でも使えるように作られたのが銃というものだし、シオンの教え方が良かったのだろう。威嚇射撃と言いながら的役の蒼一に当てまくってたのが威嚇と言っていいのか謎だが、まぁサーヴァントに銃弾が効くわけでもないので気にしない。

 そういして一夜あけ昼前だ。日程的には今日中に圏境のスキルを封印しておきたい。だから朝から行くのではなくユリウスたちの行動待ちで動いてなかった。

 束の間の休息ということだろう。

 シオンはプログラムの整理をしているし、蒼一は図書館から持って来たらしい漫画を読んでいた。

 そして私はピアノを弾く。シオンのおかけで粗末なオルガンはグランドピアノまで進化していた。結構場所を取るが私の数少ない趣味だし、他の二人も受け入れてくれた。

 

「……」

 

 間桐慎二。ダン・ブラックモア。ありす。そして――弓塚さつき。

 これまで自分たちが戦ってきた相手たちのことを思い返す。

 思い返して、私ができるのはその程度しかない。彼らは既に死んでしまって、もうなにもできないし、ムーンセルに分解された以上は何も残っていない。天上に召されたのか、それとも地獄へと落ちたのかは定かではないが、どちらにしろもう生きる者たちの世界には干渉できない。この電子の海では骸さえ残さず完全に分解されるのだ。もうこの世界に彼らの残滓はどこにもない。

 だからこそ彼の散り様を私は忘れてはならない。

 泣き叫んでいた慎二も。皮肉気に笑ったエル・ドラゴも

 静かに亡くした人の名を呼んだブラックモア卿も。安らかに笑っていたロビンフットも。

 夢から覚めたありすも。目覚めに涙したナーサリー・ライムも。

 私のことを友達と呼んでくれたさつきも。魂の輝きに満足して行ったアーカードも。

 死んでしまっては全て終わりだからこそ、生き残った者こそが彼らの想いを受け継いでいかなければならないのだ。

 だからこれは私なりの鎮魂歌。

 意味なんてないだろうけど、私自身の気分の問題だ。他人を蹴落として生き残るなんて聖職者としてはあるまじき行為だけど、それでも私は生きることを願うから。

 だからこそ彼らの存在を刻み付けなければならない――

 

「……ふぅ」

 

 指を止める。朝食を取ってからもう一、二時間は立っていた。

 背後からぱちぱちという拍手が二つ分。

 

「お見事です」

 

「うんうん。リーズがいたらデュエットでもしてほしかったなぁ」

 

「なるほど、それは素晴らしいものになったでしょう」

 

「……言っておくけれど私は音楽家じゃないわよ?」

 

「そんだけできるなら名乗ってもいいと思うけどね」

 

 別に音楽そのものが好きなわけではない。それでも教会で讃美歌などを演奏するのは嫌いじゃないし、悪魔祓いを除けば数少ない自分の取り柄で、

 

「自身の取り柄を鍛えるのは私の趣味ですから」

 

「人のトラウマをほじくるのが趣味じゃなかったのか……」

 

 失礼なことを言っていたので吊るした。

 

「そこ、失礼なことを言っていると吊るしますよ」

 

「もう吊るしてるよ!」

 

 若干飽きてきた蒼一の簀巻き姿だった。そろそろ新しい感じを取り入れたいものだ。何がいいかなぁと考えていたら甲高い音が鳴った。出所はシオンの端末だ。

 

「ユリウスがアリーナに入りましたね。カレン」

 

「えぇ」

 

 簀巻きを解く。頭から落下した蒼一は当然の如く両足で確りと立つ。その顔には常と変わらぬ飄々とした笑みが。既に彼には勁脈破壊プログラムは仕込まれていて、彼か私の意識一つで接触部分から侵入し、発動する。

 問題は接触できるかどうかだが、それでも蒼一のスキルならばそれほど難しくないだろう。

 しかしここには念を入れて――

 

「主殿主殿。顔顔、すごい悪い顔してますよー」

 

「ふふふ、なぁに安心しなさい。目には目を、歯には歯を。ハンムラビ法典にもあるわよ? 右ほおを叩かれたら左を頬を裂きなさいと」

 

「ねぇよ。自分の愉悦で法典汚しちゃダメだろ」

 

 

 

 

 

 

「……なぁカレン?」

 

「なにかしら? あと、暑くてしゃべるのもおっくうなのだけれど」

 

「あぁうん、そうだけど……この展開はどうよ?」

 

 この展開とはこの唾棄したくなるほどに暑苦しい熱帯中でユリウスたちが通過するのを待って、隠密用のコードキャストを発動して岩の影でジッとしていることか。

 

「だって、あれだけ奇襲され続けたでしょう? せめて一撃返さないと気が済まないわ」

 

「うわーわからなくもないけど……もっとこう俺は武人同士の戦いをしたかったんだけど」

 

「それは決戦場でやりなさい。今は我慢しなさい」

 

「あいあいっと。でも実際問題アレに奇襲は難しいぜ? あの圏境もある程度見破れるって言っても何が来るのか解るくらいなんだから。そこらへん説明したろ?」

 

「説明されたし、貴方が説明したじゃない。一度くらいなら破壊するのも簡単だって。なら奇襲で壊して、あとは触れるだけ。簡単でしょう?」

 

「言うのはね。ま、確かにそれが一番だな。うんうん流石は我主殿。ちゃんと作戦考えてくれてて助かったよ。これでなにもなかったら仰天してたわ」

 

 当然だ。ここまで来て作戦なしとは在りえない。いや蒼一もそう信じてくれていたらからこそ、何も言わずにここまでついてきてくれたのだろう。

 だからまぁ折檻は後回しだ。

 

「なくならないですね……」

 

 ほろりと涙を流したアサシンは置いておいて。

 しばらく動かずに待つ。

 小一時間程待って、

 

「来たぞ」

 

 小さく蒼一が言った。言葉通りに廊下の曲がり角からユリウスが歩いてくる。一人で歩ているように見えるが、それでも近くにアサシンがいるのだろう。見ていて嫌な圧迫感がある。

 シオン謹製の隠形プログラムは取得したマトリクスや蒼一自身のスキルから圏境に近いもので、周囲のデータに溶け込むようにしているからかなり注意深く見ないと熟練の魔術師でも気付かれることは無いらしい。 

 視線で蒼一に合図を送る。タイミングは完全に彼任せだ。

 

「……ふむ?」

 

 唐突に虚空から声があった。アサシンだろう。

 

「どうした」

 

「……いや、なんでもな――」

 

 パリン、と喝采音がなった。

 その瞬間にはアサシンの赤い姿が見え、その背後には蒼一がいた。

 

「ぬ――!」

 

「遅いぜ」

 

 私の目には全てが終わっていた。

 口から血を零し腹部を押さえて姿をあらわにしてアサシン。驚愕に目を見開くユリウス。いつの間にか私の横に戻ってきていた蒼一。

 

「やられたぞユリウス、天地を返された! 勁脈もやれた! これはもう当分使えんぞ!」

 

 破顔し、血を吐きながらの言葉。その姿は確かに現されている。四回戦直後に私たちが襲撃してきたあの武人は手傷を負い、しかしこれ以上ないくらい楽しそうに嗤っている。

 

「……」

 

 それにユリウスは眉を顰めながらも無言だ。忌々し気にこちらを睨みつけてくる。

 

「カカカカ! まさかわしらが奇襲されるとは思わなんだ! 因果応報というやつだのう!」

 

「何を笑っているアサシン」

 

「これを笑わずにいられるかよ! いや見事、素晴らしいとしか言うほかないな!」

 

「……」

 

 笑みを浮かべたままのアサシンにユリウスはもう言葉を発しなかった。視線は物質化しような殺気だ。

 一度息を吐き、

 

「カレン・オルテンシアそして拳士最強よ。――貴様たちは決戦場で殺す」

 

 ありったけの殺意を載せた簡潔な言葉。それだけを残してユリウスは消えた。最早語ることはないと言わんばかりの必要最低限の殺害宣言。塵処理屋としての、暗殺者としての本領発揮。

 殺すためだけにユリウスの意識は特化されている。

 そういう男だと知っていたが、実際に晒された以上怯まずにはいられない。

 

「でも、ミッションコンプリートだぜ。やったな」

 

「えぇ、そうね。お疲れ様」

 

「おう、頭撫でてくれてもいいのよ?」

 

 まぁ考えておこう。足で頭踏みつけるくらいはしてあげてもいいかもしれない。この英霊ならばそれでも嬉しいだろう。

 

「バッチコイだ!」

 

 

 

 




完全にMキャラが板についてきたなぁとか(

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最近あんまないので寂しいなとかおもってたり
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