落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

60 / 71
第四十三海「……感情などない」

 

 一日目ユリウスたちの襲撃に合いアサシンが倒れた。

 二日目は彼の回復に一日を費やし、三日目には復活した蒼一と共に相手のサーヴァントと交戦し互いの真名を暴きあった。四日目は動きはなく、五日目で相手のアサシンの固有スキルを封印した。そして六日目は互いに遭遇することはなく、

 

 こうして七日目の決戦の日を迎えていた。

 

 ユリウス・B・ハーウェイ。

 間違いなくこれまでで最強の敵だった。魔術の腕ならばブラックモア卿と同等なのかもしれないが、ユリウスには彼にはなかった殺意がある。勝つための結果として殺すのではなく、殺すためにあの男は私と戦う気なのだ。

 それはこれまでの相手とはわけが違う。本当の殺し合いだ。

 一回戦の慎二はゲーム感覚、二回戦はブラックモア卿は騎士の決闘、三回戦のありすは夢の国の遊び。四回戦のさつきは人間と化物の闘争だった。必勝を誓い、自らの勝利を信じていたがそれでも憎み合ったわけではない。(てき)ではあったけど(かたき)ではなかった。

 それでもユリウスは絶対的な殺意を以て私たちと戦う。

 レオという太陽への干渉を防ぐために私たちという障害を、彼の影として排除するつもりなのだ。

 それが仕事なのか本物の忠誠心なのかは解らないが、それでも彼の力は本物だ。

 だからこそ準備は万全に。

 購買部でアイテムを揃え、昨日接敵しなかったからこそ存分にレベル上げができたからそれの改竄に教会へ行く。

 ついにアサシンの敏捷値がAランクにまで至った。それはすなわちサーヴァントとしても超一流の部類だ。ギリギリ入ったとはいえAランクには変わりない。筋力もBランクにまでなった。代わりに耐久はCランクのままで幸運や魔力は依然Eランクでしかない。それでも彼は最早言うまでもなく武の英霊であるから、最低限の力で最大限の威力を生むということに長けている。

 それに宝具も強力なのだが()の彼のソレは能力としては極めて単純なものだ。所謂パラメータタイプ、というサーヴァントだろう。固有スキルで高くはない筋力値や耐久を補い、特化した敏捷で確実に当てに行く。その延長線上にも宝具はある。

 宝具が強力なサーヴァントに比べれば解りやすいが、単純故に強い。敏捷上げてればなんとかなるので実に初心者向きのサーヴァントだ。相性優先で召喚されるというのも納得かもしれない。

 

「え、相性いいって認めてくれんの? なにカレンデレ期き、あいたぁ!?」

 

 くねくね気持ち悪かったので蹴りつける。聖骸布でつるすのは飽きたのでこれからは肉弾だ。幸い拳士最強などという見本がいるので参考にさせてもらう。

 

「中々に筋がいい。誰に似たのか、気になるところだ」

 

 アサシンを蹴りつけていたら声を掛けてきたのはダニ神父だ。黒いカソック姿のソレは口端を歪めたままに、楽しそうにこちらを眺めている。

 

「なんでしょうか神父? 私たちに用でも?」

 

「用があるのは君たちではないかね? 私を通さねば決戦場へは入れぬよ」

 

「チッ」

 

「マスター、だめ、舌打ち」

 

 腹立たしいことにそれは事実だ。これまでと同じく決戦場へのエレベーターの前にはダニ神父が待ち構えている。つまりはこの男が邪魔というわけだ。

 

「相性悪いなあ……」

 

「ははは、小娘の癇癪に付き合う私ではない。すでに対戦相手はエレベーターの中で君を待っている。準備ができたのならば行くがいい」

 

 それは――万全だ。

 アイテムも強化も。シオンから借りた黒い拳銃は太もものホルスターに収められ、透明化と固定化がされている。マグダラの聖骸布は常の通りだし、魔力回復用のポーションの類も持った。

 そして覚悟もまた。

 ここで終わるわけにはいかないから。

 背後で無言のアサシンも同じ思いのはずだから。

 進む。

 

「では――存分に、殺し合い給え」

 

 

 

 

 

 

 

 落ちていく小部屋の中に充満しているのはユリウスの殺気だ。これまで幾度となく向けられ続けて平気とはいわなくても耐性や慣れといったものは生まれている。それに隣のアサシン――李書文には意外なことに殺気はなかった。覇気には溢れている。闘気にも満ちている。けれど四回戦の後の奇襲ほどの殺意はなく、稚気とした笑みを浮かべていた。エレベーターが動き出し、

 

「カカッ、よい目をしている。死地に足を踏み入れ、しかし尚前に進むその気概見事! 初めて会ったときは見違えるようだ」

 

 いっそ無邪気と言っていいほどの笑っているアサシンにユリウスは非難の視線を送ったが、それでもアサシンは止まらなかった。

 

「時代を間違えた聖女とはよく言ったものよ! なるほどわしの時代ならば歴史にその名を刻んでもおかしくはなかっただろうな」

 

「生憎、そんなことに興味はありません。歴史に名を遺したらどうだというのでしょう? 貴方とてそうしたくて生きていたわけではないのではありませんか?」

 

「うむ。わしは武人だ。お主の従僕と違って壊すのが専門だが、求めたのは武の頂のみ。名を残すなど考えたこともなかったわ!」

 

「ま、そこらへん俺も同感だね。カレンはともかく、俺らみらいな求道者はそこらへんどうしてもおざなりだ。自分の求めるものが自分の中で完結している。他者のためだろうと自分のためだろうと、なりたい自分があって、それの為に駆け抜けてきたんだから」

 

 蒼一の言葉に李書文も笑みと共に頷いた。やはりこの二人は似通っているのだろう。破壊者と守護者という差異はあれども、武芸に生きた者同士の共感がある。私もそれは蒼一の過去を知ることでその生き様をある程度は理解しているつもりだ。

 あぁ、ならば。

 

「貴方はどうなのですか。貴方はなぜ戦い、聖杯を求めるのでしょうか?」

 

 視線を向けた先は当然ユリウスだ。今更いうまでもなくこの男との中々に因縁深い。蒼一曰く、彼の弟であるらしいレオとは私自身数度言葉を交わし、蒼一は何度か人の在り方について語っているらしい。あのアーカードも交えていたというからゾッとする。

 それに三回戦の時にシオンとシエルの決闘に割り込めたのはユリウスのハッキングが原因だった。肉体を残す彼は突破できなかったファイアーウォールを精神体である私が突破しシオンを助けた。そしてこの五回戦は蒼一を殺されかけた。

 ちなみにまだ仕返しは終わっていないから。

 

「この黒いオーラがコトミーそっくりなんだよなぁ……」

 

 自害しろアサシン。

 一体どこが似ているというのか。あんなダニ神父と私を一緒にしてほしくない。 

 ともあれ私の問いかけにユリウスは意外にも答えを発した。

 

「愚問だ。レオに聖杯を送り届けるために……」

 

「それは本当ですか?」

 

「……何が言いたい」

 

 ユリウスの目が細まる。感情がのった視線が突き刺さるが、ためらわない。口の端に笑みすら浮かべ、指を祈るように組む。

 

「たまには聖職者らしいことをしようかと思いまして。さぁどうぞユリウス・B・ハーウェイ、迷える子羊よ。地下の決戦場につくまで告解を聞きましょう」

 

「何かと思えば下らん。俺は神など信じていないし、告解などする気もない。罪を犯したことがないなど言わんが、全て仕事だ」

 

 仕事。そうユリウスは仕事人だ。彼自身が殺しを愉しんでいるのではないのは既に聞いているし、その通りなのだろう。無味乾燥な砂漠の黒蠍。無慈悲に無感情に塵処理の如く人を殺し続けてきたのだろう。

 

「そうだ。全てはレオ、ひいては西欧財閥の為に。それが俺の生きる理由だ」

 

「――本当に?」

 

「……なんだと」

 

 わずかに、ほんの僅かに声に動揺が混じっていた。

 

「たとえば私の駄犬(サーヴァント)、も真名は解っているでしょうから隠しはしませんが、どの人生、あらゆる可能性で自分が愛した人のために戦っているという他に類を見ない色ボケ英霊ですが……」

 

「あれ? なんか貶されている?」

 

 事実しか言っていないのでスルーする。

 

「ですが、それでも彼は愛に生きた。愛のために戦った。愛のために駆け抜けた。それを私は一番よく知っています。そういう人間の在り方に私はこれまで触れて、誰よりもその生き様を知っていると思える。だからそう、そういう生き方をしている人間を少しは解ってしまう」

 

 たとえば貴方のように。

 

「……!」

 

「貴方も同じ目をしています。レオのため……というわけではなさそうですが。レオへの献身は見事でしょうが。、それだけではないでしょう? レオ自身への愛がないわけではないでしょうが、それ以上の感情が貴方にはある」

 

 私の言葉にユリウスは目を見開く。それが図星かどうかというのは解らない。これはあくまで私の想像でしかないのだ。実際ユリウスは肯定しなかった。否定もされなかったが。

 

「愛など、くだらん」

 

「そんなわけないだろう!」

 

 吐き捨てるような言葉に反応したのは蒼一だ。

 

「おいおい何言ってんだ愛よりすげーもんは無いんだぜ? この世の出来事は大体愛で何とかなると言っても過言じゃないし俺はそうやって生きてきた。あぁ、先ほどカレンの言った通りに俺は色ボケ英霊でな。惚れた女の為なら化物退治だろうが世界征服だろうがなんだってやってのける! 」

 

 笑みを浮かべた蒼一の言葉は嬉々とした感情で包まれていた。

 

「なるほどカレンの言う通りだよ、ユリウス。どうやら意外にもアンタは俺の同類らしいな。その厚い面の皮の下にどれだけの想いを隠してる? アンタは冷たいかもしれない、それでも朽ちたわけでも死んでいるわけではないだろうよ」

 

「……感情などない。俺はハーウェイの一員としてやるべきことをやっているだけだ」

 

 それは、自分に言い聞かせているような言い方に聞こえた。そんなわけがない。大体そんな事務的な感情だけでこの聖杯戦争を勝ち上がれるわけがないのだ。実力があって、目的が定まっていれば私はここに立っていることはなかった。

 だからユリウスもまた確固とした己の望みを抱いている。それを本人が目を背けているのか、気づいていないのか、気づいていないふりをしているのかはともかくそれだけは間違いない。

 自分に嘘をついているだけだ。

 

「強情な人ですね貴方は」

 

「……黙れ。不浄の女の戯言など耳を貸す気はない」

 

「カッ、言うことに欠いてそれか? それじゃあ返す言葉もありませんって言ってるだけだろうが。そして貴様、俺の主を侮辱したな? 悪いが少し前からその言葉を口にした奴はぶっ潰すと決めてるんだ。言っておくが俺の女はお前みたいなむっつりに負けねぇぜ? お前を踏み台にして、俺とカレンの未来のための礎になってもらうか! ははは、あいたぁ!?」

 

「おおぅ、いい一撃」

 

「それはどうも」

 

 調子に乗ってr笑い出した蒼一に拳を叩き込んだ。李書文にも褒められるとは案外私にも才能があるのだろうか。やはり練習しよう。

 そんな私たちの様子を見て赤のアサシンは哄笑を上げる。

 

「カカカカッーー! 手ひどくやられたの。流石は守護者と聖女。そこらへんのことには口がよく回る。よい物を見れた」

 

 その言葉と共にエレベーターが止まった。

 決戦場の到着したのだ。

 

「……無駄口はここまでだ。行くぞアサシン」

 

「承知。残る試合も少ない。そして相手は拳士最強だ。相手にとっては不足なし、どころか光栄よ、ここで打倒しその字を奪うのも一興だ」

 

「悪いがこの名は譲れないし、負けるつもりもない。だが魔拳士李書文、一人の武人として俺の全霊を以て相対させてもらう」

 

「是非もなし」

 

 蒼一の覇気も。

 李書文の闘気も。 

 ユリウスの殺意も。

 そして私の覚悟も十分だ。

 この男との因縁ももうここまで。

 私たちの全身全霊を以てユリウス・B・ハーウェイを殺すのだ。

 

「勝つわよ」

 

「極めて諒解」

 





テッテレー かれん は マジカル☆八極拳:E を おぼえた (

長くなったのでエレベーター会話だけです。
おかしい、一気に書こうと思ったのに。解せぬ。



感想評価お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。