落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第五桜「……まともな人間がいないのかここは」

 

「おはよーございまーす!」

 

 一度開けた扉を音を立てて閉めた。

 なんか変なものを見た気がしたのだ。

 

「全く……。目を覚めてまだ調子が悪いのかしらね。変なものが見えて変なものが聞こえたわ」

 

「ははは、現実逃避とか流石だなぁ」

 

 悟ったような目でアサシンは渇いた笑いを上げていた。なんか普通の人だったら心配になる様子だったが彼だとどうにも違和感がない。先ほどの教室から出て、生徒会まで来たが混乱は未だにある。もしかしたら、当分続くかもしれないので心に留めておく。

 そうやって少し時間を空けてもう一度扉を開いた。

 

「あ、酷いじゃないですかオルテンシアさん、ちゃんと返事してくださいよ。もう一度行きますよー? せぇの――おはよーございまーす!」

 

「……」

 

「……」

 

「……ふぅ」

 

「ため息つきながら扉閉めようとするな。エンドレスだぞ」

 

 仕方ないので部屋に入った。

 絨毯の敷かれた広い部屋だ。古風な日本の校舎だと思っていたがここだけが西洋風だ。部屋の奥にホワイトボードがあるが、そう見えるだけでディスプレイだろう。部屋の中央には大きな机があり、十人くらいなら詰めれば囲めそうなものだ。その奥に座っているのが金髪の少年。レオナルド・B・ハーウェイだ。赤ではなく黒のガクラン姿だ。西欧財閥の若き少年王。先ほどこちらのことを見透かすように口にしていた彼。

 

「兄さん、ガウェイン。ちゃんと僕に続いてくださいよ。やっぱり学生といえば大きな声での挨拶ですよね。僕も兄さんも学生生活とか全然送ってないですからねー。郷にいては郷に従え、形から入るのも重要ですよ。そういえばアサシンは生前学生だったらしいですがそこら辺どうでした?」

 

「挨拶の声より先に銃弾とか斬撃と拳骨が飛んでた」

 

「スクールライフ最悪ですね!」

 

 この少年はこんなキャラだったのか疑問だ。もっと、威厳のあるキャラだったような気がしないでもない。

 

「大体あなたの影響ですよね。あの空間では実に面白いことを面白いことを教えてもらいましたから。素晴らしいですね――愉悦」

 

「どうしてこうなった……」

 

 絶望に染まった声はユリウスだ。服装の変わった私やレオとは違いあのビジュアル系の謎の黒衣のままだ。だが今彼が背負っている気配はその服よりも尚黒く重い。

 

「全く……恨むぞオルテンシア。レオに余計なことを教えたようだな。おかげ俺の心労は天井知らずだ」

 

 それは言葉と反して恨むというような負の感情はなかった。諦めと疲れ切ったような気配があるだけだ。何故か――それに激しく違和感を覚える。いや、どうせこれもまだはっきりとしない記憶のせいだろうから気にする必要もないだろう。

 私は私らしくユリウスの沈んだ顔を愉しむとしよう。

 

「主殿主殿。心の中なんだからって好き勝手思うのはよくないぞ」

 

 心の中だからこそ好き勝手思わせてほしい。

 

「……こいつも敵だったか……」

 

「頑張ってくださいユリウス。ぶっちゃけ私も被害受けたくないので。苦労人ポジションは全て貴方に押し付ける所存です」

 

「うわこの騎士ひどいな」

 

「何を言うのですか。私は騎士であり、セイバーです。つまり――とりあえず聖剣をぶっ放していれば最低限の役目は果たされるのです」

 

「最優ってなんだよ――一撃必殺でいいだろうが」

 

「ははは、脳筋しかいないですねここのサーヴァント」

 

 全くだ、まともなのは私だけのようである。

 

「……」

 

「なぜ目を逸らすのかしら?」

 

 まぁ、いいだろう。それに関しては後で問い詰める。

 なのでこの下らないコントはいい加減に終わらせて、

 

「え? もう終わりですか。仕方ないですねぇ、じゃあここからシリアス入ります。兄さんBGMを。はい、しんみり系の奴で」

 

 死んだ魚のような目をしたユリウスがホロウィンドウを弄ったら室内にしんみり系の音楽が流れ始めた。

 そしてレオは整った眉をキリッと吊り上げ、両肘を机に置き、顔の前で指を組む。

 

「――では話を始めましょう」

 

 色々台無しだ。

 

「オルテンシアさん。貴女はどれだけの記憶がありますか?」

 

「それは――」

 

「あぁ、解っています。記憶、ないのでしょう? それは目覚めてすぐの混乱ではない。僕も兄さんも、今ここにいるマスター全員が同じように記憶がありません。聖杯戦争についての知識はあっても、対戦相手や対戦結果の知識は在りません。あるのは自分のサーヴァントの知識くらいしかありません」

 

「そしてそれはマスターだけではなありません。私や他のサーヴァントも、貴女のアサシンも同じでしょう」

 

 なるほど。

 だから目が覚めても記憶が戻らなかったのか。時間が解決すると思っていたがそんな簡単な話でもなかったらしい。ならば記憶の話はいい、問題は。

 

「えぇ、どうして我々がこんな状態に陥っているか、ですね。残念ながら現状は全く解っていません」

 

「使えないですね。王様かっこわらい」

 

「ばっさり言いますねー」

 

「我がマスターながら実に恐ろしい。慣れたけど」

 

「慣れるものなのか……」

 

 ユリウスが戦慄していた。

 

「ともあれ謎の黒幕に対して我々は力を合わせなければなりません。表側、正規の聖杯戦争では殺し殺されの関係ではありますが、この裏側では協力して表側に帰還しなければなりません。故に今ここに」

 

 バッ、と立ち上がり腕を振って、

 

「――月海原学園愉悦部の発足を宣言します!」

 

 叫んだと同時にユリウスとガウェインに取り押さえられた。

 

「カレンさん、あの少年王に影響与えすぎじゃね? なにあれキャラ斜め上過ぎじゃね? どうやったらああなるの? あ、正座させられた」

 

「私は特に何もしてないわよ。元々の素質でしょうアレは。あ、頭叩かれたわね」

 

 そのまま五分ほど主にユリウスからレオは説教を受けていた。

 

「こほん、失礼しました。まったく兄さんも固いですねぇ、ハーウェイジョークだったのに。愉悦部とか――後で別口で作ります」

 

「レオ」

 

 「それでは月海原学園裏生徒会の発足を宣言します! えぇ! これからよろしくお願いしますね!」

 

 なにやら先行きに不安があるがこうして生徒会とやらは生まれていた。というか、私も一員なのか。

 

「当然でしょう。会長は僕、副会長は兄さん、じいやのガウェインです。オルテンシアさんには庶務をお願いします」

 

「下っ端ですか。いいですけどね」

 

「代わりと言ってはなんですが愉悦部部長を――あいたぁ!?」

 

 殴られていた。ユリウスがレオを殴り始めるのはやっぱストレス溜まってるらしい。まったくレオはもう少し兄のことを気遣えないのか。あと、じいやってなんだ。

 

「サーヴァントですからねー。役員はマスターで固めるべきでしょう。なので、オルテンシア庶務。ファーストオーダーです。この校舎内にいるマスターをこの生徒会しまで集め、役員として連れて来て下さい」

 

「拒否されたら?」

 

「無理やりにでも」

 

 酷い話だ。無理やりとかそんな人道に反することなんて私がするわけがないだろう。こんな花も恥じらう乙女だというのに。

 

「突っ込まない、どの口が言うのだとか俺は突っ込まない……!」

 

「行くわよ、アサシン」

 

「あ、はい。って、ちょ、鎖掴まないで!? 歩きにくい――って伸びたぁ!?」

 

「おお」

 

 アサシンの首に垂れていた鎖を掴んだら一メートルほど伸びた。まるで犬のようだ。実に似合う。

 

「いい様ね?」

 

「いや、あのやめてよ!? なにこの犬プレイ! つかレオとか見てるしっ」

 

「ガウェインガウェイン、REC、REC。ちゃんと録画しておきましょう。弱み握るって大事ですよねー。このご時世情報が最大の武器ですねぇはい」

 

「ぬかりはありません。まぁ同じサーヴァントとして同情を禁じえませんが、まぁ似合っているのでよしとしましょう」

 

「……まともな人間がいないのかここは」

 

 

 

 

 

 




ユリウス兄さんの胃がマッハ。
どこぞのブリュンヒルデとかマーチヘアを思い出しますねぇ^^

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