落ちこぼれの拳士最強と魔弾の姫君 番外編まとめ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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本編一区切りついたで、今月新刊でるまでこっちメインで書きますよー。
久々なので短め。


第六桜「ここにいる間は仲良くしようね」

 

 生徒会室の外は変わらず黄昏の空だ。この旧校舎はこれがデフォルトらしい。風情があるとは思うが、しかしこれでは時間間隔が狂ってしまう。データ体であっても睡眠という生理現象的なことは行ったほうがいいという知識が頭に過って、あまりいいことではないなと思う。

 ともあれ窓の外を見て、廊下へと視線を向けて、

 

「あわわ……」

 

 走り去っていく学ランに青い髪の少年が見えた。

 間桐慎二だ。

 とりあえず聖骸布で捕まえた。

 しかしこの聖骸布便利である。

 

「ちょ、やめ、やめろよぉ!」

 

「言うまでもないけど――断るわ」

 

「ですよねー」

 

 さて、

 

「どうやら生徒会の様子が気になっていたけれど素直に顔を出すのはそのちみっちいプライドが許さず扉に聞き耳を立てているも私が出ようとしていたので慌てて逃走を開始した、ということで間違っていませんね?」

 

「ち、違うよー! そんなことない、僕は、ただ、そのっ……そう、なんかいきなり走りたくなっただけさ!」

 

「どんな青春だ」

 

「というか離せぇ!」

 

「応えはもう言ったからスルーするけど……このまま生徒会に放り込めばいいのかしら」

 

「いいんじゃね? しかしこの聖骸布便利だなぁ、相手が男だと拒否権ゼロじゃん。何気にこのミッション楽勝だぞ。次行こう次」

 

「貴様らァ! もうちょっとあるだろぉ、もっとこう、再開を喜ぶとか、でもそう簡単に力なんか貸さないよ的な!」

 

「面倒なのでパスで」

 

 聖骸布に巻いたまま慎二を放り込む。中から悲鳴とか笑い声とか斬撃音とか聞こえたが気にしない。私に与えられた任務はマスター捕獲であって、その後はあの王様に任せればいいのだ。あれならば面白おかしく適当に慎二を弄るだろうし、ユリウスがいればストッパーにもなる。

 つまり問題ない。

 

「ユリウス、お前は尊い犠牲なのだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人目をフィッシュしたところで次なる得物を求めて移動する。と言ってもこの旧校舎は二階建てでそれほど広いわけではない。二階には生徒会の奥に物置とさらに一つ分の部屋、あとは先ほどアサシンと合流した教室とそのさらに奥にあるもう一つの教室だけ。表側に比べれば随分と小さいが、今のところ人影はないから問題ないがもし人が増えたらどうするのだろうか。

 そんな心配は必要ないだろうけど。

 人気のない廊下をアサシンと二人で歩きながら一番奥の教室へ。

 扉の前に立てば教室の中から人の気配。扉を開ければそこには、

 

「そうそう、そんな感じだ。さすがさつき、いい動きをしている」

 

「え、そうですか? 普通なのが取り柄な私がこんなに褒められるなんて……。えへへ、才能あったりしちゃいます」

 

「あるある。さぁだから一緒に叫ぼう! 放課後ろ――おや、シスター。目を覚ましたのか」

 

「あ、カレン! もう大丈夫なの?」

 

 中で頭の悪そうな、微妙に見覚えのあるポーズをしていたのは二人。銀髪に黒の騎士礼服の女とクリーム色のベストの制服姿の茶髪の少女。

 彼女たちが誰かであることを私は知っていた。

 未だ姿を見ないシオン・エルトナム・アトラシアのサーヴァントであるランサー。それにマスターの一人である弓塚さつきだ。レオやユリウス、慎二といればさつきがいることにはそれほど驚くことではなかった。

 だが、ランサーがいるというのは、

 

「いや、シオンはいない」

 

 その言葉に疑問を覚える。サーヴァントはマスターなしでは存在できなかったはずだろう。

 

「細かい理屈は解らないがこの旧校舎にいる間は現界に必要な最低限な魔力は勝手に私の中で精製されていてね。戦闘行為には足りないが普通に活動する分には問題ないのさ。そして残念ながらシオンはまだこの旧校舎に現れていないよ」

 

「ちなみに私のランサーさんもいないんだよねー。なんか一人で颯爽と影ぽいのから避けて。ひどいよねぇ、もっとこうマスターのために頑張るって気概はないのかなー」

 

「ないない。アレにそんなこと求めたらダメだろ。あれは千尋に子供を突き落して瓦礫を落としまくるキャラじゃねぇかなぁ、多分」

 

「うわそんな気がする……ってなんでそんな詳しいんですか?」

 

「いや、そんな感じの思い浮かべたくもない記録が……」

 

 微妙にアサシンが目を逸らしたのでローキックで退かしながら本来の目的を話す。流石にこの二人を聖骸布で連行するのは無し。

 

「生徒会で作戦会議っていうのは言いけど……アサシンさん大丈夫なの?」

 

「かはは、慣れてるからなッ」

 

「というわけでこんな感じでおざなりに扱ってくれて構わないので、どうぞ」

 

 微妙にさつきとランサーが嫌な顔をしてアサシンが傷ついた。まぁ本人も慣れているというのでこんな感じの扱いでも十分というもの。記憶が曖昧でもそれくらい解る。

 

「さて、本来ならば私やマスターであるシオンも表では敵同士だが、この非常事態では小さなことだ。ここから脱出する間は力を合わせようじゃないか。よろしく頼むよシスター。あ、あとシオンが戻ってきたら仲良くしてあげてくれ」

 

 そういうランサーの手袋に包まれた手と握手を交わす。

 そしてさつきも、

 

「私もここからは早く出たいしね。それまではよろしくカレン。本当は戦うって言っても、ここにいる間は仲良くしようね」

 

 重ねた手のひらは暖く――何故かそれがどうしようもなく得難いものであると私は心の奥底でそう感じていた。

 いや、もとより殺し合うだけの聖杯戦争だったはずなのにこうして手を取り合うことがあり得ないのは確か。だからこれが得難いというのは当然のこと。

 それで間違っているはずがない。

 そんなことを思いながら私は手に残った残滓を感じながら二人を見送っていた。

 

「さ、主殿。次に行こうぜ。一階にも何人かいるっぽいしな」

 

「……えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段を下りていく。先ほどは校舎の外に目が行ったが、よくよく観察すれば階段の隣に意味ありげなスペースがあった。ショーケース付の空間は購買部か何かだろうか。表の時もマスター用のアイテムを取りそろえた同じようなものがあったはず。けれど今は完全な無尽で何もなく、NPCがいる気配もない。視線をずらして階段の奥を見れば倉庫への扉らしきものがあったが今は用はないのでスルー。基本的にあの手の空間は何もないのが普通だろう。

 そのまま下駄箱の前まで来て、右と左のどちらを行くか少し考える。

 

「なぁーんかどっちもいい気配しないなぁ。できれば行きたくないんだけど……」

 

 アサシンの言う通りになんとなくだが嫌な感じ。特に右は凄い行きたくないと思う。どうしようかと考えて、ふと校庭に視線を向ければ、

 

「――おや、目覚めたのかね。オルテンシア君」

 

 麦わら帽子につなぎ姿で校庭の雑草を抜いていた老人と目が合った。

 

「……えっ」

 

 背後アサシンが間抜けな声を上げていなければ自分も似たような声を出していただろう。

 

「ははは、この校庭にもディテールとして雑草が生えていてね。やることがなくてそれを抜いていた所だ。私のような年寄りからすればこういうのも悪くない」

 

 朗らかに笑みを浮かべながら校舎の中に入って来たのはダン・ブラックモア。英国の老軍人であり、聖杯戦争に参加したマスターの一人だった。優勝候補の一画でもあった一人のはずなのだが、

 

「どうみてもただの用務員のお爺ちゃんじゃん……」

 

 少なくとも私自身学校に通っていたわけではないが、ブラックモア卿の姿がなんとも表現しにくい姿だと解る。

 

「それで、どうしたのかね? 私に何か用事のようだが」

 

 促されて、生徒会のことを話す。

 

「なるほど、一時休戦と協定か。この非常事態ならばそれも順当だろう。サーヴァントがいない身ではあるが、私にできることをさせてもらう。では私も生徒会室へと向かうとしよう。……あぁ、それとこれから戦友となるならば気軽にダンと呼んでくれても構わないよ、カレン君」

 

「では、気兼ねなく。よろしくお願いします、ダン」

 

「うむ」

 

 そうして重ねた手は先の二人よりも固く、無骨で、けれど暖かった。

 階段を駆け上っていく背中をアサシンと共に見送りながら、

 

「さすがの貫録というか……キャラぶっ壊れてるレオとかよりだいぶ頼れそうだな」

 

「それを言ったら彼は泣くかしらね」

 

「多分キャラ崩壊がさらに進んで泣くのはユリウスだ」

 

「彼でオチを付ければいいという話ではないだろうけど――違いないわね」

 

 さて。

 ダン・ブラックモアという予想外の人物との協力を得られたのは僥倖だったが、問題は解決せず、

 

「右か左か、どっちも嫌な出会いしかなさそうね」

 

「俺は嫌いなものは最後に食べる」

 

 なら――左だ。

 

 




一応今回はタイトル通り協力的な面子。
次回はエロ魔人と過負荷ジナ子さん……

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