光の巨人と九人の女神   作:日々野未来

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第4話『君のノゾミ』Bパート

 それから夜を迎えるとまた街から光が消えていく、その中心にはあのエレキングの姿が、ガッツウイングが駆け付ける。

「放電竜エレキングを確認!」

 過去に出現した個体と容姿が少し違うことから『放電竜エレキング』のレジストコードが付けられた。

「ミズノ隊員の予想通りだ、電圧低下がエレキング出現の前兆なんだな」

 GUTSは一般市民の通報でここに駆け付けた訳ではない、エレキング出現の前に電波障害だけならず、停電の前兆である電圧低下が確認されていた、電圧低下はダイブハンガーから監視できる、そこで電圧低下が確認できればそのエリアにエレキングが出現するとミズノは予想、見事に的中した。

「よし、攻撃開始!」

 シンジョウが指示を出すとレーザービームによる攻撃を開始、命中するとエレキングは吸電行為をやめ、口から放つ電子ビームで反撃するも避けられ、ガッツウイング1号の攻撃を受けてダメージを食らう。

「昨日みたいに当たってはやれねーぜ!」

 電子ビーム攻撃を避けていくオオガワラ、昨日はすぐに撃墜されてしまったため、雪辱戦でもあった。

「キュイィィィィィィン!」

 きりきりまいをするエレキング、注意がガッツウイング1号に向いている。

「今だツカサ!」

「モンスターキャッチャー、発射!」

 ガッツウイング2号から一発の弾が発射され、エレキングに命中して火花を散らした。

「モンスターキャッチャー命中しました」

 2号機の後部座席に座るミズノから報告が入る、今、発射したのは特殊発信器『モンスターキャッチャー』だった、それから発生する粒子により怪獣を追跡できるのだ。

「キイィィィィィィン!」

 エレキングはまた透明となり姿を消した、だが、モンスターキャッチャーの反応は健在、これで追跡ができる。

「よし、着陸して反応を追うぞ」

 ガッツウイングは着陸、地上からエレキングを追跡した。

 

 

 

 その頃、美羽の自宅マンションの前にススムの姿があった。

「やっぱり来てた」

 そして、またにこが話し掛けてきた、手にビニール袋をぶら下げて。

「にこちゃん」

「はい、来ると思ってたから差し入れ」

「ありがと~まだ何も食べてなかったからお腹空いてたんだ~」

 ありがたく差し入れを貰い、パンにかぶり付く。

「まだってことは学校から帰ってすぐにここに来たの?」

「家で着替えてからだけどね」

 そうなると今、希は家で一人というわけになる。

「そう………」

 昼間、希が昨日は珍しく一人で過ごしたと話してたのを思い出す、あの後、ススムが遠慮して自分の部屋に戻ったからというのも理解できた、そこで美羽の事も調べていたのも。

「美羽さんのこと、なんか分かったの?」

「一応ね、だけど個人情報には改竄された痕跡もない、普通の人間だった」

 やっぱりという顔をするにこ、当然の結果である。

「それでも納得してなさそうね」

「へへへ、やっぱり気になるんだよね」

 これは気が済むまで調べそうだ、意外と頑固なんだな、と思うにこ、すると。

「あ、帰ってきたわよ」

 美羽が帰ってくる、そのまま自宅マンションに入ろうとしたその時、美羽のもとに駆け寄ってくる子犬がいた。

「っ! 太郎!」

 にこはその子犬の事を知っていた。

「知ってるの?」

「あの子、美羽さんの飼い犬で、迷子になってたのよ、それで昨日探して帰る途中でアンタと会ったのよ」

 話を聞いていると太郎は昨晩と同じように美羽にじゃれ付くが、美羽はやはりそれを無視、せっかく帰ってきた太郎を連れずに自分の部屋に入ってしまった。

「なんでよ、せっかく太郎が帰ってきたのに!」

 怒りを露にするにこ、あれだけ可愛がっていたペットが帰ってきたのにあんな態度をして無視したのだ、無理もない。

「くぅ~ん……」

 太郎もまた悲しそうな声を漏らして座り込んだ、二人は近寄り、にこが太郎を抱き上げた。

「久しぶりね太郎、どこに行ってたのよもう、心配したんだから」

 怒りを抑え、優しく太郎と接するにこ、太郎も見知った人物と出会えたからか、少し元気を取り戻す。

「しょうがない、今日はうちで面倒見るか」

 美羽がああでは仕方がない、にこは太郎を預かることにした。

「本当にここなのかよ?ここ、団地だぜ?」

「確かに反応はここなんだけど」

 後ろから聞き慣れた声が聞こえ、振り向いた。

「オオガワラさんにミズノさん!」

「ススムじゃねーか」

 やって来たのはオオガワラとミズノだった、なぜ二人がここに、と思うがそれは二人も同じこと。

「二人はどうして?」

「それはこっちの台詞だ、お前こそどうしてここに?」

「僕は気になることがあって」

「俺達はエレキングに撃ち込んだモンスターキャッチャーの反応を追ってたら」

 エレキング、その名前を聞いてススムは反応する。

「ススム、なんか変わったことはないか?」

「………それなんですけど」

 

 

 

「今日は帰ってこんのか」

 日付が変わった頃、希はススムの部屋に入っていた、日付が変わっているならここに帰ってくると思って、だが、携帯に今日はダイブハンガーに行くから帰れないとメールが入り、鼻でため息を吐くとススムの部屋を後にした。

「仕事だもんね、仕方ない、いつものこと」

 親が仕事で帰って来ないなんていつものこと、ススムだってGUTSに入っているのだ、こんな事があるに決まっているのだが、希は誰もいない部屋に戻るのだった。

 

 

 

 翌日の早朝、美羽の自宅マンション前にムナカタとタケル、チアキ以外のGUTSのメンバーが集まり、ススムもGUTSスーツに着替えていた。

「エレキングの反応はまだ検出されている」

 PDIに映るモンスターキャッチャーの反応。

「昨夜の捜査により、モンスターキャッチャーの発信地点は葉山美羽氏の自宅部屋であると判明している」

 あの後、美羽の部屋が発信地点であると確定させ、踏み込む事を決定したのだ。

「マンションの住人にはこの事は伏せてある、悟られて逃走、及び巨大化された場合は甚大な被害が予想される、しくじるなよ」

 住人を避難させたら悟られて逃走される危険があるため、住人の避難は行っていない、失敗は許されない。

「俺とオオガワラが先行する、三人は後に続いて退路を塞げ」

 それにより、美羽は逃げられなくなる、シンジョウ達は美羽の部屋に向かい、扉を挟むようにして立つ。

「鳴らしますね」

 ミズノがインターホンを押そうとしたその時、ドアノブが回った、ガッツハイパーを抜き、身構えると扉が開き、中から出てきた美羽は驚いた顔をする。

「どうかなさったのですか?」

 何食わぬ顔で問う美羽に事情を説明する。

「GUTSの副隊長のシンジョウです、この部屋に怪獣が潜伏していると思われますので、中に入れて頂けませんか?」

「怪獣が?そんなバカな」

「そんなバカなことをするのが怪獣なんです」

 中に入れてもらおうと説得を試みるシンジョウとツカサだったが。

「反応が消えた⁉」

 モンスターキャッチャーの反応が突然消えてしまったのだ、これでは状況証拠がなくなり、踏み込めなくなってしまう。

「私これから仕事がありますのでこれで」

 美羽は扉を閉めて会社へ向かおうとするが。

「待って下さい、まだ話は終わっていません」

「そうですよ、それに!」

 閉めようとする扉のドアノブを掴んだ、そこで部屋の中が見えた、壁に飾られた太郎の写真、そんなものを飾っているのになぜ太郎を邪険にしたのだろうか、そこで美羽はススムの腕を掴んだ、その時、一瞬、ススムは苦悶の表情を浮かべてすぐにドアノブから手を離した。

「おいススム! 乱暴だぞ!」

 美羽が美人なため、骨抜きにされたオオガワラとミズノはススムを叱り付けた。

「え、でも………」

 右腕を抑えるススム、その間に美羽はその場を後にした。

 

 

 

「で、踏み込むこともできなくて撤収したのね」

「状況証拠がなくなったからね」

 学校にて、ススムはにこに朝の話をしていた。

「だけど、直前で反応が消えたのも変な話よね、ますます怪しくなってくるじゃないの」

「そうなんだけどね………オオガワラさんとミズノさん、あんな美人が怪獣と関係ないって言い始めちゃって」

 骨抜きにされた二人は美羽はエレキングとは関係ない、対象から外すべきだと言い始めていたのだ。

「男ってどうして美人に弱いのよ」

 にこも最初は関係ないと思っていたが、太郎に対してのあの態度を見てからは変だと感じざるえなくなる、ススムの話で邪険に扱った太郎の写真が飾られていたと聞き、なおさらだった。

「それに、葉山さんに腕を掴まれたらこんなんになっちゃったし」

 袖を捲るススム、その腕には掴まれたような黒い跡が残されていた。

「何よそれ⁉」

「多分静電気、葉山さんに掴まれた時、ビリッてしたんだ、普通の人間があんな静電気を出せないはず」

 原因が静電気によるものだと分かり、更にエレキングとの関係を疑っていた。

「隊長達もそれは分かってるからオオガワラさんとミズノさん以外で張り込みしてる、VTL隊にも連絡して今は渋川さんが張り込んでるんじゃないかな?」

 何かあればすぐに連絡が来るはずだ、自分も学校が終わったら様子を見に行こうと考えていた。

「ところで昨日、帰らなかったわよね?」

「踏み込みの段取りとか話し合わなくちゃいけなくなってね、基地にね」

 作戦が終わった後、自宅に帰り、制服に着替えるが、授業が始まっていたため、一人で登校していた。

「それがどうかしたの?」

「ちょっとね、まぁGUTSなんて入ってるから仕方ないのは分かるけど、あんま遅くに帰ってきたりとか朝帰りとかは極力控えなさいよ、アンタには待ってる奴がいるんだから」

「希ちゃん、の事だよね」

「それ以外に何があるってのよ?」

 睨むにこ、ススムは苦笑するが少し浮かない顔をする。

「やっぱり昨日のは、そういう事だったんだ」

「昨日って?」

 昨日の朝の希とのやり取りをにこに話すススム、その時、寂しそうな顔をしていたことも。

「なんだ、てっきり気付いてないと思ったわ」

「さすがにね」

「だったら話は早いわ、アイツ、寂しがってるわよ」

「うん、今日の反応見て気付いた、希ちゃん、十年前と同じ顔してた」

 十年前、芭羅慈村で一緒に遊んでた時、帰る頃になるといつも寂しそうな顔をしていた、友達と別れるという寂しさ、そして、家に帰っても誰もいないという寂しさから。

「それがワガママだって分かってるからアイツは言わないけど、本当はワガママ言いたくてしょうがないんだから、女だしね」

 ワガママは女の特権、それに応えるのが男だ、度が過ぎなければの話だが。

「そしたら、どうしたらいいかな?」

 仕方ないとはいえ、希に寂しい思いをさせている、何をしたらいいのかと深く考える。

「アイツだってアンタに大切にされてるのは分かってるわ、だけど、態度だけじゃなくてちゃんと言葉にしないと、伝えたい事をちゃんと伝えるには言葉が一番よ、深く考えず、着飾った言葉じゃなくて正直な自分の気持ちをね」

「僕の正直な気持ち………」

「もう好きだじゃダメなのは確かね、アンタ達、ほとんど同棲してるようなもんだし、それでデートとかまだってのがね………とりあえず好き以上の言葉を掛けてやったら?」

 そんな言葉、好き以上の気持ちを言葉にするとしたら一つしかない。

「それで抱き締めることができたら80点ね、キスまでできたら90点」

「それでも90点って、どうしたら百点なの?」

「それは………」

 何を考えたのか、照れた顔をするにこ、それでは何も分からない、だが、健全な男子高校生のススムは察してしまった。

「そそそそそそそそれってももももももしかしててててててて!」

「動揺し過ぎよ」

 ススムの反応に呆れてしまうにこ。

「そこまで言わないけど90点取れるぐらいには頑張ってみなさいよ」

「うん、ありがとうにこちゃん、話聞いてくれて」

「構わないわよ、アイツじゃワガママじみたこと言わないだろうし、最初のアレはワガママってより気を遣い過ぎなだけだし」

 二人は互いに気を遣い過ぎなのだ、だから寝ていると思って自分の部屋に戻ってしまうのだ。

「だけど今日はまた帰らないんでしょ?」

「ははは………うん、ここまで来たからには他人任せにはできないしね、それに、寂しがってる太郎を早くご主人様の所に返してあげないとね」

「それでいいわ、希だって中途半端に放り出して自分のワガママ聞いて欲しいなんて思ってないだろうし」

 これは今日中には決着がつきそうだと感じるにこもある決意をしていた。

 

 

 

「元気ないわね希」

 生徒会室にて、絵里は唐突に話し掛け、希は慌てる。

「そんなことあらへん! うちは元気やで!」

 自分は元気だと体全体で表現する希、だが、空元気なのは明白、絵里はため息を吐いた。

「ハヤタくんのこと?」

 それを言われてしまい、希は観念した、自分も嘘が下手だな、と心の中で苦笑した。

「仕事だからなのは分かってる、いつものことやし、自分でも慣れてるって思っとったんやけどな」

「それとこれとは違うと思うんだけど?ハヤタくんは希の親なのかしら?」

「………違う、ススムくんはうちの大切な人や」

 そう、ススムは親ではない、両親が仕事から帰って来ないとは別の寂しさだった。

「分かってるじゃない、そんだけ寂しいなら自分が思ってること言ってみたら?」

「そやけど」

「確かにワガママ、だけど、言うだけならいいじゃない、それが自分の気持ちならちゃんと言葉にして伝えないと、じゃないと誰かみたいにバカなプライドに縛られて情けなくなってくるわよ?」

 説得力がある言葉、まるで自分だ、みたいな言い方だ、もちろんその通り絵里自身の体験談。

「エリチ………」

「それに、ワガママは女の子の特権よ?ちゃんと使ってあげなくちゃハヤタくんに失礼だと思うわ、彼、きっとあなたがワガママ言ってくるの待ってるわ」

 絵里も二人が互いに気を遣い過ぎていると感じていた、希は困らせたくないからとワガママを言わずいつものように我慢し、ススムもワガママを言って欲しいが、催促して困らせたくないから希に我慢させたままにしてしまう、困ったカップルだ。

「ちゃんと自分の気持ちは言葉にして伝えないとね」

 最後にはそこに行き着く、お互い、ちゃんと言葉で伝えなければならないことがまだあるのだ。

「ありがとうエリチ、だけど、ススムくんが抱えてる事件が終わってからにする」

「そうね、そこはちゃんと見極めなきゃね」

 本当に困らせてしまったらいけないし、ススムが重要の仕事をしているのは理解している、そこは見極める必要があった。

「さ、そうと決まったら美味しいもの作って待っててあげんとね」

 意気込みを入れる希、そんな元気な姿を見て絵里は安堵の笑顔を浮かべた。

 

 

 

 学校が終わり、すぐに美羽のマンションへと向かおうとするススムだったが、立ち止まって戻り始める、その先にいたのは希だった。

「希ちゃん、今日も帰って来られないと思うんだ、だから」

「待っとる、いつ帰ってきても大丈夫なようにご飯作って待っとるから、行ってきて」

「希ちゃん………分かった、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

 ススムは学校を後に、希は学校に残り、それぞれ今、自分がするべき事をすることにするのだった。




『放電竜エレキング』…ウルトラマンマックス第2話に登場した怪獣、宇宙怪獣エレキングとは違い、細身なフォルムに、両手には爪が生えている、攻撃能力は初代と変わりないが、どれも強力で、知能も高く、人間を利用できるほど。

『モンスターキャッチャー』…ホリイ隊員が開発した発信器、放出される粒子で怪獣を追跡できるが、今回は失敗に終わった。
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