学校を後にしたススムはすぐに美羽のマンションに向かった、そこには先客がいた。
「今は姉さんが担当してるんだ」
「オオガワラさんとミズノさんが頼りにならないからね」
ツカサが張り込みをしていたのだ、前に張り込んでいた渋川はツカサと交代して基地に帰っていた。
「もう、なんで男って美人に弱いのかしら?」
同じ台詞を学校でも聞いたな、と思いながら張り込みに参加するススム。
「ところで状況は?」
「さっき帰ってきたところ、まだ部屋の中よ」
部屋の中が気になるが、ベランダはカーテンで閉め切られ、中は見えないため、ここで玄関を監視するしかなかった。
「中で何やってるんだろう、太郎放っておいて」
「太郎?」
「葉山さんが飼ってる子犬の名前、前まで迷子になってたんだけど、自力でここに帰ってきたんだ、だけど葉山さん、無視して部屋に入って、今はにこちゃんが預かってる」
あの時の太郎はとても寂しそうだったと思い出すススム、美羽だって寂しかったから太郎を飼い始めた、だが、帰ってきた太郎を拒絶した、早く原因を突き止めてご主人様の所に返してあげたい、そして自分も。
しばらくして夜を迎えるが、玄関の横の窓は暗く、明かりは点かずにいた。
「まだみたいね」
そこにまたにこがやって来た、制服のままのため練習帰りだとすぐに分かったが手にはまたコンビニのビニール袋がぶら下がっていた。
「こんばんはにこちゃん」
「こんばんは、あ、これ差し入れです、良かったら」
「いいの?」
「私も見張るつもりだったので」
にこもこの一件を最後まで見届けようと考えていた、だから自分の分の食料も買っていた。
「にこちゃん、希ちゃんは?」
「練習終わったら買い物してから帰るって言ってたわ、アンタがいつ帰ってきてもいいようにって」
「愛されてるわね~もう」
「からかわないでよ」
ちょっと照れるススム、希も希で誰かに何か言われたのだと感付くにこ、その誰かはだいたい予想がつくが。
「っ! 出てきたわよ」
玄関が開き、カバンを持った美羽が出てきた、三人は陰に隠れてやり過ごしてから出て、少し距離を取る、その間にススムとツカサはガッツハイパーを出し、カートリッジを装填するとツカサはPDIで本部と連絡を取る。
「ホシが動き始めました、尾行を開始します」
短めに要件を言うとすぐに通信を切り、美羽を尾行する。
「にこちゃんも付いてくるの?」
「ここまで来たら一蓮托生よ、最後まで見届けるわ」
これは言っても聞かないと観念した、下手に引き離して勝手に付いてこられるよりはいい、その方が守りやすい。
「どこまで行くのかしら?」
ツカサがそんな疑問を呟いた矢先、美羽は広場で立ち止まり、カバンを地面に置き、口を開く、すると、中から黄色い光を纏った小型のエレキングが姿を現した。
「エレキング⁉だけどなんであんなに小さいの⁉」
「そうか、確かエレキングは縮小化できる怪獣、小さくなって葉山さんの所に身を隠してたんだ、小さくなったままカバンの中に隠れて移動してたからレーダーにも引っ掛からないで街中に現れることができたんだ」
そして、エレキングは自分の電磁波で美羽の脳波を乱して、洗脳、自分をペットだと思い込ませたのだ、それはつまり、美羽の方がエレキングに飼われていた事になる恐ろしい事実だ。
「だけどなんでエレキングは美羽さんを選んだの?」
美羽を選んだのには理由があるはず、にこは尋ねた。
「太郎がいなくなった悲しみが付け入る隙になったんだ、エレキングはそれに付け入って葉山さんを洗脳したんだ」
これは怪獣が一匹で行った事ではない、何者かが裏で暗躍し、一人の女性の悲しみを利用した許されざるものだとススムは考えた。
「………僕も気を付けないとな」
「ススム?」
ススムがなぜそんな事を呟いたのか分からないツカサ、にこは分かっていた。
「そうね、アンタの場合は余計かもしれないわね」
「うん、だけどそんな事で別れる気なんかないよ、そうなったら守り抜くよ必ず」
「そう」
それが聞けて安心した、もし別れるなんて言い出していたら殴っていた所だ。
「美羽さんが!」
すると、美羽が倒れ込んでしまった、三人はすぐに駆け寄ると、カバンの中にいたエレキングがいなくなっている。
「エレキングは⁉」
「あそこ!」
にこが指を差した先に黄色い光が浮かび上がり、エレキングが出現した、それにより街中の電気が吸収され、明かりが消えていき、暗闇に支配されていく。
「私は街の人を避難させるからススムはにこちゃんと美羽さんを避難させなさい」
ツカサはそう言い残し、その場から駆け出した。
「アンタも行きなさいよ」
「えっ………でも」
戸惑うススム、だが、にこは決めていた、ススムを行かせることに。
「行きなさい! 行ってさっさと美羽さんと希の寂しさを晴らさせなさい!」
その言葉はススムを突き動かした、この街のように二人を寂しさという闇から救い出さねばならない、自分が持つ光で。
「分かった、葉山さん頼むねにこちゃん」
スパークレンスを取り出したススムは駆け出し、地平線の向こうへと消えるとそこから光の柱が立つ、その輝きは暗闇を照らしたがすぐに消えてしまうも、闇を照らして悪を打たんとする存在が姿を現した。
「ウルトラマンティガ」
ティガ・マルチタイプが現れた、それに気付いたエレキングは振り向き、電子ビームを発射するがティガはそれをハンドスラッシュで相殺、それが戦いの合図となり、両者は駆け出した。
『ハッ!』
駆け込み、ティガは水平チョップを放つ、それに怯むエレキングだが右腕を振るい、手の甲から生えたストロングネイルでティガを切り裂く、火花を散らして後退りするティガだが足を振り上げてキックを打ち込み、エレキングの顎を打ち上げ、下ろすと同時に体を回転させてスピンキックを炸裂し、エレキングを横に吹き飛ばす、倒れたエレキングに追い討ちを掛けようとするティガ、だが、体が宙に浮き、地面に落下する。
『グッ⁉』
ティガはエレキングの尻尾に足払いを掛けられたのだ、起き上がるエレキングは背中を向け、その長い尻尾を倒れるティガに何度も叩き付けていく、そして、その尻尾を足首に巻き付けると持ち上げ、電気を流して放電攻撃で攻める、身体中が痺れるティガ、そんなティガを地面に何度も叩き付けていき、放り投げてようやく解放するも着地できず、倒れてしまう。
『強い………!』
起き上がろうとするティガ、だかまた尻尾を叩き付けられてしまい、地面にひれ伏してしまう、ティガの危機にツカサがガッツハイパーで銃撃するが効果はなく、すると、尻尾が首に巻き付けられてしまい、無理やり立たされ、ぐるぐる巻きにされて引き寄せられてしまい、また放電攻撃を食らい、カラータイマーが点滅を始める。
「キイィィィィィィン!」
口に光が灯る、電子ビームを至近距離から発射、顔面に食らわせようとしていた、さすがのティガも大ダメージを食らってしまう。
「これが終わったらちゃんと自分の気持ち伝えるんでしょ⁉だったらシャキッとしなさいよ!」
にこの叫びが聞こえる、下を向くととても怒っている顔だった、その怒りは誰かを思っての怒りだと分かった、そしてその誰かも分かる。
「そのまま伝えないでアイツを悲しませたら私は絶対に許さないわよ! だから、だから、負けんじゃないわよ!」
その言葉に発破を掛けられたティガは顔を上げた、そして、尻尾の隙間から腕を出して広げると右手にゼペリオン光輪を生成し、振り下ろして尻尾を切断して脱出、エレキングを蹴り飛ばし、その反動で飛び込んで離れて体勢を立て直すと駆け出して渾身のウルトラブレーンチョップを炸裂、エレキングの角を切り落とした。
『ハッ! ハッ!』
それに怯んだエレキングにパンチを浴びせていく、エレキングはストロングネイルで攻撃するが受け止められ、反撃のアッパーを食らうと持ち上げられ、投げ飛ばされた、そしてティガは両腕を広げて光エネルギーを発生させてカラータイマーに集結、エネルギーを充填していくと両腕をL字に組み、ゼペリオン光線を発射、起き上がるエレキングに浴びせ、しばらくして光線を止めるとエレキングはゆっくりと倒れ、大爆発を起こした。
「よし!」
ティガの勝利、それを祝福するかのように街に電気が戻り、ティガを照らす、その光の中、ティガは夜空へと飛び立つのだった。
翌日、美羽は都内の病院に入院していたが。
「すみません、何も覚えていないんです」
意識が戻り、GUTSがそこで事情聴取をしていたが美羽は数日間の事を何も覚えていなかった、もちろん予想はしていた、洗脳が解けた事にその期間の記憶だけが失われたのだ。
「ですが迷惑を掛けていたのは事実のようですし、ご迷惑を掛けて申し訳ございません」
「ま、悪いのは怪獣です、そんな気になさらず」
頭を下げて謝罪する美羽だが、シンジョウは気にしないようにと励ます。
「葉山さん、お見舞いですよ~」
そこにツカサが入ってくる、お見舞いとは誰だろうかと思っているとススムとにこが入ってきた。
「太郎!」
美羽は嬉しそうに名前を呼んだ、にこの腕に太郎が抱かれていたのだ。
「にこちゃんが面倒見ててくれたんだよね?」
「はい、美羽さんがおかしくなっちゃってたから」
「ありがとうにこちゃん」
にこから太郎を受け取る、太郎も嬉しそうに美羽にじゃれ付く、そんな彼女達から寂しさは消えていた、しばらくするとススムとにこは病室から出る。
「葉山さんまだ入院してないといけないからまた太郎を連れていかなきゃいけないけど」
「もちろん家で預かるわよ、もう太郎の寂しそうな鳴き声聞かなくて済みそうだし」
大好きな飼い主に拒絶されて寂しそうな鳴き声を上げていた様子、だが、今日からはそんな声を聞かずに済みそうだ。
「帰る時送ろうか?一応車運転できるよ?GUTSだから」
TPCに運転免許は必須、ススムは特例で16の時に車とバイクの免許を取得していた。
「いいわよ、アンタはさっさと自分のお姫様の所に帰りなさいよ」
案の定昨日は帰れなかった、今日も事後処理や報告書の作成で学校には行けず、ダイブハンガーで過ごしてしまったため、今日はまだ希とは会っていない。
「そうだね、ありがとうにこちゃん」
「早く行きなさいよ、待ってるわよ」
ススムはにこと別れ、一足先に帰路に付いた。
マンションに到着するとススムは自分の部屋ではなく、希の部屋へと向かい、玄関を開けると奥から希が出てくる。
「あ、お帰りススムくん」
笑顔で迎えてくれる希、自分も笑顔となり、口を開いた。
「ただいま、希ちゃん」
部屋に上がると少し早い夕飯を終え、希の自室のベッドに寄り掛かって雑誌を読みながら食休みをしているとマグカップを持ってきた希が入ってくる。
「コーヒー淹れたけど飲む?」
「飲む飲む、ありがとう希ちゃん」
マグカップを受け取り、コーヒーを一口飲むとテーブルに置いた、希はマグカップを両手で包みながらベッドに座った。
「…………」
「…………」
しばし無言となる二人、何か話したそうだと察したため、どちらが先に口を開くか待っていたが、さすがにこれは自分から振らないと会話にならないと感じる。
「希ちゃん」
「ススムくん」
同時に口を開くがこれでは無言の時とは変わらない。
「希ちゃんが先に」
「ススムくんが先に」
互いに譲り合っていたら埒が明かない、ここは男である自分からとススムは口を開くことにした。
「………ごめんね、寂しい思いさせて」
「えっ」
「気付いてたんだ、希ちゃんが寂しそうにしているの、それなのに僕は気付かない振りしてた、希ちゃんが何も言わないならそれでいいや、無理に言わせると逆に迷惑を掛けちゃうって、だから、ごめん」
静かに謝るススム、すると、希は静かにマグカップをテーブルに置いた。
「………仕事だからってのは分かっとる、仕方ないことなんだって、だけど、本当は寂しかった、できればこっちに帰ってきて欲しかった」
自分の気持ちを述べる希、ワガママかもしれない、だが、それが自分の気持ちなのだから、それを聞くとススムは立ち上がり、その隣に座ると向き合う。
「これからは遅くなってもここに帰ってくるようにするね、希ちゃん、愛してる」
次は自分の気持ちを伝える番、着飾った言葉もない、自分の正直な気持ちを口だけではなく、抱き締めて伝えた。
「うちも、愛してる」
その気持ちに応える希、離れると希は何かを期待するかのように目を瞑り、唇を突き出す、何に期待しているのか分かったススムは行動に移し、その突き出た柔らかそうな唇に口付けをし、しばらくすると離れるのだがススムは清々しいほど吹っ切れた顔をしていた。
「…………希ちゃん、我慢できないや」
「す、ススムくん?」
後退しようとするが後ろは壁、逃げられず、ススムは迫ってくる、この状況、嫌というわけではないが明日は予定がある。
「いやぁうち明日朝練あるからそういうのはまた今度に………」
「ごめん」
「いやぁ謝られても………だから迫るのやめい! 明日遅れたら海未ちゃんに怒られるから!」
希は抵抗するのだがその抵抗はあまりにも弱々しく、本気で抵抗しているようには思えなかった。
「希ちゃん、ちゃんと責任取るから」
「ススムくんちょとまとうんむっ⁉」
二度目の口付け、それにより希も、ススムも堕ちるのだった。
翌日、音ノ木坂学院の校門の前で海未はイライラしていた。
「遅いです、時間はとっくに過ぎているというのに」
朝練に集合したμ'sの面々だが、希の姿だけなく、一人だけ遅刻していた。
(まさかアイツ、百点叩き出した?)
なんとなく遅刻の理由に気付いたにこ、すると、黄色いスポーツカーが見えた、GUTSの特殊高速車両『シャーロック』だ、パトロール、と思いきや目の前でドリフト駐車してくるため、海未達は驚いて後退りする。
「ちょっ! 目の前でドリフト駐車すんな!」
誰が乗ってるか察したにこは苦情を飛ばす、シャーロックの扉が開き、中から出てきたのはもちろん希とススムだった。
「ごめん! ホントごめん! 調子に乗りすぎた!」
「ホンマ! ススムくん調子に乗りすぎ!」
怒られるススム、何に怒られているんだろうと疑問を抱く海未達、にこはもう完全に呆れていた。
「終わったらメールして、迎えに来るから」
「うん、帰り買い物付き合って、じゃなかったら夕飯抜きやからね」
「了解!」
一通り話を終えるとススムはシャーロックに乗り込み、その場から走り去った。
「ごめん! 遅れてもうた!」
「はっ! 希! もう時間は過ぎてますよ! 一体何をやっていたのですか⁉」
思い出したかのように問い掛ける海未、問われると希は言いにくそうに頬を指で掻く。
「それは………寝坊してもうてな」
「寝坊!?今日は朝から練習があると言いましたよね⁉」
「一応言ったんやけど押し切られてもうて………」
照れる希、押し切られた?と首を傾げる海未、そこで希の首に何か見え、真姫が尋ねる。
「ん?希、どうしたのよその首の絆創膏は?」
そう、絆創膏だった、寝坊と首に貼られた意味有りげな絆創膏、にこ以外も気付き始めた。
「希ちゃんもしかして」
口を手で抑えて驚きを示すことり、何を想像したのか、花陽は顔を赤くし、穂乃果と凛はやはりちんぷんかんぷん。
「どうしたんですかみんな?」
海未も分かっていない様子、にこはニヤニヤしながら口を開いた。
「昨晩はお楽しみのようだったわね」
「流れに逆らえなかったんや………それにやっぱり男の子なんやな、ススムくん力が強くて」
「昨晩………ま、まさか!」
ようやく海未も理解した、理解すると花陽よりも顔を真っ赤に、頭から湯気が出てしまいそうなほど。
「な、何をやっているんですかあなたは!?まだ学生なのに!」
「まぁまぁ海未、落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか絵里! 不純です! 破廉恥です!」
真っ赤な顔で怒りだす海未、だが、そんな海未に思わぬ追撃が。
「でも海未ちゃん、そんな風に分かって怒ってるってことは海未ちゃんも不純で破廉恥なこと想像したんだよね?」
「なっ!?」
ことりから追撃を受けて唖然とする海未。
「つまり、海未ちゃんも破廉恥って事だよね?」
「ことり! あ、あなた! 何海斗(うみと)みたいなことを言っているのですか!?」
慌て始める海未とニコニコすることり、そんなこんなでどんどん練習が遅れるのだった。
『負けないで!』…にこのこの台詞はティガ第39話のレナの台詞を意識した。
『昨晩はお楽しみのようだったわね』…何をやっていたのかは皆さんのご想像に、ススムは弾道が1上がった、内野安打○を手に入れた。
『海斗(うみと)』…海未が慌てた時に口にした名前、どんな人物なのかは海未と穂乃果、ことりしか知らない。