『インセクトタイプビースト・バグバズン』『インセクトタイプビースト・バグバズンブルード』登場
(ん~………あのウルトラマン、一体)
あれから数日、学校の廊下を歩きながらススムはバキシムを倒したウルトラマン、ネクサスについて考えていた。
(話を聞く限り森の外で会った海未ちゃんに似た子なのは確かだけど、その子が一体誰なのか)
本当ならば穂乃果からその話を聞けていたはずなのだがまだ聞いていなかった。
(まさか課題忘れて三日も話ができないなんて)
そう、穂乃果は課題を忘れていたのだ、そのため、その課題の量が倍となり、三日も話ができず、そのためμ'sの練習も中止となっていた。
(海未ちゃんかことりちゃんから聞こうと思ったけど穂乃果ちゃんに付きっきりだから聞けないし)
お預けとなり、もやもやした気持ちになっていた。
「さぁて、希ちゃんはミルクティーでにこちゃんはイチゴ牛乳だったよな」
売店に到着、希がにこの課題の手伝いをしているため、差し入れに飲み物を買いにきたのだ。
「あ、海未ちゃん」
そこに海未がいた。
「どうもです」
「穂乃果ちゃんの課題、終わった?」
「あ、はい、なんとか………あの子ったらまったく」
困った顔をする海未、あの時の海未がまさか偽物だとは、と思い出すススム、だが、今目の前にいる海未はきっと本物のはずだ、制服も着ているのだから。
「海未ちゃんも大変だね」
「もう慣れっこですから」
微笑む海未、いつもは怒っているがやはり穂乃果の事が好きなのだ、だから厳しい事を言ってしまう。
「では私は」
去ろうとする海未、穂乃果の所に戻って課題の手伝いの再開だろうと思いながら横切ろうとすると。
「失礼しますね、ススム先輩」
「えっ?」
呼び方がまた違っていたのだ、振り向くとそこにはもう既に海未の姿はなかった。
「ま、まさか」
超常現象研究会の部室、そこで希はにこの課題を手伝っていた。
「これで終わったわね」
「にこっちにしては早いやん」
「まぁね、私が本気出せばこれぐらいは」
とか言いつつ内心は焦っていた、期間はまだあったが一人で終わらせられるか微妙だったのだ、量の問題ではなく、自分がやるかやらないで。
「希ちゃん! にこちゃん!」
そこに、飲み物を買ってきたススムが慌てながら帰ってきた。
「どうしたのよそんな慌てて」
「えっと、そのね!」
「はいはいこれ飲んで落ち着きぃ」
そこで希は飲み掛けのお茶を渡してススムに飲ませた。
(普通に飲み掛けを………)
どこまで関係が深くなっているんだと思うにこ、お茶を飲んで落ち着きを取り戻したススムに希は尋ねる。
「それでどないしたんの?」
「あの海未ちゃんに似た子と会ったんだ!」
「えっ!?それってあの男の娘!?」
「だから言葉じゃ分からんってにこっち」
「最初は制服も着てたから海未ちゃん本人だと思って話してたらススム先輩って呼んできたんだ」
「完全に海未になりきってるわねそいつ」
そのために女性用の制服を着るとは、アイドルとしてのキャラ作りを欠かさないにこは逆に感心した。
「それで、その子はどこに?」
「振り向いたらもういなくなってて」
森を出た時と同じである、気が付いたらいなくなっている、実に不思議、悪く言えば怪しい少年である。
「きっとまだ学校の中にいるはずやね」
「探すしかないわね」
ここはその海未に似た少年を探そう、三人は部室を出てすぐに行動を開始した。
「ん~………こうじゃないわね………」
「そうかしら?私はいいと思うわよ?」
音楽室にて、真姫は作曲のためピアノを弾いており、それを聴いて絵里が感想を述べていた。
「やっぱり作詞の海未がいないと………早く穂乃果の課題終わらないかしら?」
「まだ無理そうね、量が量だし」
なかなか作曲が捗らない真姫、絵里もダンスならば細かいアドバイスができるのだが、作曲に関しては上手く言葉で表せなかった。
「どうかしたのですか?」
そこに、噂をすればと海未が入ってきた。
「海未! 穂乃果の課題は?」
「少し休憩です、ピアノの音色が聴こえたので立ち寄ったんです、どうですか?捗ってますか?」
「捗ってるって言いたいけど煮詰まっちゃってるわ、エリーにも聴いてもらってるのに」
「私は悪くないと思うんだけど真姫が納得しないのよ」
「そうですか………それならばいっそ、自分が好きな曲調にしてみるというのはどうですか?」
「それだと………」
「みんなのため、というのも素敵ですがたまには自分が好きな事をやるのもいいかと」
「そうね、海未の言うとおりかもしれない、自分が納得できないってことは好きじゃないってことのはずよ、私達の事は考えないで自分が好きなように弾いてみて」
「う、うん」
戸惑いながらも真姫はピアノを弾き始めた、すんなり弾けたという事はこの曲調も考えていたのだ、だが、自分の好みに寄りすぎてるから不採用にしてしまったのだ。
「どうかしら?」
恐る恐る尋ねる真姫、その問いに絵里は握手を送った。
「すごい、さっきよりもいいわ! ハラショーよ真姫!」
絶賛だった、自分の好みだったからと躊躇っていたのがバカみたいだった。
「ありがとう海未、やっと………あれ?」
お礼を言うがその相手が既にいなくなっていた。
「どこに行ったの?」
「あの子が何も言わないでいなくなるなんて」
疑問に抱く絵里、すると。
「どうですか真姫?作曲の方は?」
海未が何食わぬ顔で入ってきた。
「う、海未!?」
「どうしたのですかそんなに驚いて?」
「あなたさっきまでここに!?」
「はぁ?私は先ほどまでことりと一緒に穂乃果の課題を見ていましたが?ようやく終わったので真姫の様子を見に」
そうなると先ほどまでいた海未は何者なのだろうか、考えれば考えるほど海未の顔は青ざめてくる。
「ま、まさか」
ガクガク震え始める絵里、そこにススム達が入ってきた。
「海未ちゃん!」
「希、なんですか?」
「ススムくんのことなんて呼んどる?」
突然の質問、意図が分からない海未だが聞かれたので答えた。
「ハヤタ先輩ですが?そんなこと、あなたが一番知っているのでは?」
「この海未は本物ね」
「そうだね」
「一体なんの話してるのよ?」
まったく話に付いてこれない真姫、絵里も何か言うと思ったのだが。
「ドッペルゲンガーなんていないわ、ドッペルゲンガーなんて認められないわ」
机の下で震えながら念仏を唱えるように同じ言葉を繰り返していた。
「え、エリー?」
「このポンコツは放っておいて、やっぱりまだおるみたいやね」
「本当になんの話をしてるのですか?」
「それが、あんたと瓜二つの顔をした男の娘があんたのふりして学校を彷徨いてるのよ」
にこの話に驚く真姫だが、海未は震え始めた、恐怖ではない、これは怒りだ。
「あの子はまたそんなことをぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!」
絶叫しながら音楽室を飛び出す海未、海未にはその男の娘の正体が分かったようだ。
「う、海未ちゃん!?」
「追い掛けるわよ!」
にこ達は海未を追い掛け、音楽室を後にしようとしたが。
「待って~私を一人にしないで~」
涙声の絵里に腕を引っ張られてしまい、宥めるのにしばらく時間が掛かるのだった。
その頃、新宿にある地下駐車場、そこにシンジョウ、オオガワラ、ミズノ、そして、渋川がやって来ていた。
「お待ちしてましたシンジョウ副隊長」
「渋川さん、本当なんですか?こんな所で正体不明の生物の群れが確認されたのって」
「はい、駐車場内はVTL隊で封鎖して一般市民の避難は完了しました」
「了解しました、とにかく入ってみましょう」
シンジョウ達はガッツハイパーとスーパーガンリボルバーを抜き、地下駐車場に突入すると、中はなんとも言えない甘ったるい臭いが充満していた。
「うわ、なんだよこの臭い………」
甘過ぎて吐き気を催すオオガワラはそこで、背を向けるフードを深く被った男を見付けた、ここは立ち入り禁止のはず、逃げ遅れたのだろうか
「そこの人、ここは立ち入り禁止だから早く出て」
近付いて声を掛けるオオガワラ、その肩を掴んで振り向かせた瞬間。
「ギュアァァァァァァン!!!!」
そのフードに隠れたのは人間の顔ではなく、昆虫のような顔をした昆虫人間だった。
「うわっ!?」
「っ! オオガワラ隊員!」
このままでは襲われる、すぐさま渋川はスーパーガンリボルバーの引き金を引いて光弾で昆虫人間を射抜き、昆虫人間は崩れ落ちた。
「大丈夫かオオガワラ隊員?」
「は、はい、ありがとうございます渋川隊長」
実は渋川はとても偉い人だった、VTL隊の情報特務隊で隊長を務めており、今、ここを封鎖しているVTL隊の隊員達に指揮する権限を持っているが、日頃は隊長という身分をあまり明かしていない、情報特務隊という名称の通り、情報収集がメイン、隊長という硬い肩書きがあると聞き出せない事もある、普段おちゃらけてるように見えて結構考えている。
「この生物は………」
渋川が撃破した昆虫人間を分析するミズノ。
「コイツ………この細胞の構成は!」
その分析によりすぐにこの生物の正体が分かった。
「コイツ、スペースビーストです!」
「スペースビーストだと!?」
『スペースビースト』とは、五年前、宇宙から飛来した宇宙怪獣の細胞が地球上の生物に寄生し、取り込んだ事により繁殖してしまった人間を補食する危険な怪獣だ。
「だけどビーストならビースト振動波が検出されるんじゃ?」
スペースビーストは特殊な反応によりサーチが可能、今までもこの方法で発見、掃討してきた、だが、このビーストからはビースト振動波が検出されなかった。
「囲まれたな」
「ええ」
すると、柱や車の陰から次々と昆虫人間が姿を表す。
「コイツらを外に出すわけにはいかない、掃討する!」
シンジョウの指令により戦闘開始、害虫駆除が始まった。
「海未ちゃん遅いね~」
「うん、真姫ちゃんとのお話、長引いてるのかな?」
音ノ木坂学院、教室で穂乃果とことりは海未の帰りを待っていた。
「穂乃果ちゃん、ことりちゃん」
「差し入れ持ってきたにゃ~!」
待っていると花陽と凛が差し入れの飲み物を持ってきて教室に入ってきた。
「花陽ちゃん! 凛ちゃん! ありがと~! だけど今さっき課題は終わったよ!」
「じゃあこれで練習に来れるね!」
「そういえば………海未ちゃんは?」
「真姫ちゃんの様子を見に、真姫ちゃん、煮詰まってるみたいだから」
「授業中も考えてたみたい」
「それですごく難しい顔してたにゃ」
真姫が煮詰まっているのは皆が知っていたため心配していた。
「お待たせしました」
噂をすれば海未が戻ってきたのだが。
「うみ……ちゃん?」
穂乃果は横を見てことりと目を合わせた。
「花陽、凛、どうかしましたか?」
「頑張ってる穂乃果ちゃん達に差し入れ持ってきたんだ」
「そうだ海未ちゃん、真姫ちゃんの様子どうだったにゃ?」
「どうやら納得ができるものになったみたいですよ」
それを聞いて安心する花陽と凛、どんな曲か楽しみだ。
「見付けましたよ!」
すると、なんとそこに海未が入ってきた。
「海未ちゃん………にゃっ!?」
「海未ちゃんが二人!?」
二人目の海未に混乱する花陽と凛、穂乃果とことりは苦笑していた、今度は希、にこ、絵里、真姫、そしてススムがやって来る。
「海未が二人!?やっぱりドッペルゲンガー!?」
二人の海未を見て今にでも倒れてしまいそうな絵里だが。
「ドッペルゲンガーなんかではありません!」
海未はそれを全否定し、目の前の自分と同じ顔をした人物に迫る。
「まったくなんであなたは帰ってくるといつもいつも女装してくるんですか!?」
「だって楽しいんだもん、みんなの反応が面白くて面白くて」
「私は面白くありません! まったくどこで制服用意したんですか!?」
「独自ルートで調達した」
「どうせお母様からですよね?あなた達はまったく………」
「だって俺、母さん似なんだもん」
「理由になっていません!」
怒る海未と怒られる海未、シュールな光景である。
「そ、それで、ドッペルゲンガーじゃなかったらなんなの?」
震えながら恐る恐る問い掛ける絵里、そんな絵里を見て可愛いと思ったとか思わなかったとか。
「園田海斗(うみと)、私の双子の弟です」
「弟!?」
「それも双子なのぉ!?」
ここまで似ているのだから双子であるのは予想していたが、驚かずにはいられなかった。
「どもー園田海斗でーす」
軽い乗りで挨拶する『園田海斗(うみと)』、姉とは正反対の性格をした弟だった。
「園田海斗………え、園田海斗!?」
何か思い出したらしく、何度も確認するススム。
「どうかしたん?」
「どうもこうも! アルケミースターズの園田博士ですよね!?」
「そう、リパルサーリフト開発チームにいた園田博士だよー」
改めて自分がアルケミースターズに入っていると自己紹介する海斗。
「アルケミースターズってあの天才集団の?てこては何?海未の弟って天才なわけ?」
「はい、アメリカの大学に留学して………そうだ、学校、学校はどうしたんですか!?」
大事なことを思い出す海未、とても嫌な予感がした。
「飽きたから卒論叩き付け卒業してきた」
「やっぱり!?あなたって人は!」
「別にいいじゃん、卒業したんだから」
「するならするで連絡ぐらい!」
「すると思う?」
「開き直らないでください!」
先ほどから怒ってばかりの海未、血管が切れないか心配になる。
「本当に天才なのね」
天才とよく言われる真姫だが、それはちょっと頭がいいからというレベルの話、アルケミースターズは十代で博士号を得ることができるほどの能力を持っているため、かなり差がある。
「それで、なんで日本に帰ってきたんや?」
「あの可愛くてカッコよくて恥ずかしがり屋の姉ちゃんがスクールアイドル始めたって聞いて帰ってきたんだ、これは生で見ないと一生後悔するって思って!」
そんな理由で、帰国ならまだしも卒業までしてくるとは、どれだけ姉が好きなのだ。
「海未の弟っていつもこんなんなの?」
「うん、海未ちゃん大好きだから、帰ってきたらいつもこんなん」
「怒った顔も可愛いからいいんだって」
シスコンを拗らせすぎのようだ。
「我慢できねーや、姉ちゃん!」
「ちょっ、 う、海斗!」
海斗は海未に抱き付いて頬擦りをする、その顔はとても心地よさそうだが、海未は恥ずかしくて顔が真っ赤だ。
「姉ちゃん姉ちゃん姉ちゃん!」
「恥ずかしいからやめなさい! 私達兄弟ですよ!?」
「弟だけど愛さえあれば関係ないよね?」
「関係あります! 破廉恥です!」
「出た! 姉ちゃんの破廉恥です!」
海未の怒声は海斗を喜ばせるものでしかなかった。
「それと、構う相手を間違えているのでは?」
固まる海斗、皆は誰の事だと首を傾げる。
「お待ちかねだよ~海斗くん」
穂乃果にも言われた、まさかと思い見てみると、ことりがとてもそわそわしていた。
「あ、いや、その………ことりは、ダメ」
先ほどとは打って代わり、戸惑い始める海斗。
「なんでかな?」
「だ、だってことりいい匂いするから、そんなことりに抱き付いたら絶対に離れられなくなるからさ………」
同じ顔をした実の姉に抱き付いて頬擦りをするという普通では恥ずかしい行為をしておきながら恥ずかしがる海斗。
「ことり、アンタまさか」
恐る恐る声を掛けるにこ、ことりは照れていた。
「みんなには隠してたけど、海斗くんとは………ね?」
「あ、ああ」
具体的に言わなくても分かるやり取り、意思が通じ合っているように見えた。
「恋人、なんだ」
海斗が言わないため、ことりが答えた、その答えには本日、何度目になるか分からない驚きの声が上がる。
「海斗くん、意外と照れ屋だからこういうの奥手なんだよね」
「へぇ~どっかの誰かさんとは大違いやな」
誰の事やらか、当の本人は苦笑し、小さな友人は呆れた顔をしていた。
「まさかことりちゃんに恋人がいるなんて、まったく気が付きませんでした」
「留学してたから、やり取りもお家でメールと電話だったから」
それでは気が付きにくい、メイド喫茶でバイトをしていたことりだが、つい最近まで誰も気が付かなかったほどだ、隠し事は上手い方なのだろう。
「とりあえず着替えてください、いつまでその格好でいるつもりなんですか?」
「それもそうだね、ちょっと待ってて~」
海斗は着替えるべく、その場を後にした。
「どないするんの?」
「まぁ落ち着いてからでいいかな?」
海斗に聞きたいことが山ほどあるが、今聞くのは混乱を大きくするだけ、タイミングを見計らうことにした。
着替え終えた海斗、アイドル研究部の部室で話すことにした。
「カメラ?」
着替え終えた海斗、付け毛は外されて短髪となり、その服装は青いUのロゴが入った白いTシャツの上に青いパーカーを羽織っていた、そして、その首にはカメラをぶら下げてきた。
「俺の趣味、言ってくれればなんでも撮るぜ?はいラブアローシュート」
「っ! にっこにっこに~♪」
海斗がカメラを構えるとにこは決めポーズ、そこをきっちりとレンズに納めた。
「海斗、許可取る前に撮影してはいけませんと何度言ったら、それと、その掛け声はやめてください」
「えー姉ちゃんの十八番じゃん」
「海未ちゃんそんな台詞言うんやね」
「確か………穂乃果ちゃんの家で決めポーズと一緒に鏡の前で」
「は、花陽!」
恥ずかしい話を暴露されそうになったので叫ぶが、ほとんど言い終わってるのでもう遅い。
「やっぱり照れてる姉ちゃんも可愛いな~」
とか言いながらシャッターを切る海斗、また勝手に撮影したと怒りだしそうになるが希が話題を変えた。
「そういえばなんで音ノ木坂に来たの?やっぱ驚かすため?」
「んなわけないじゃん、明日から俺、この学校通うことになるからつぐみさんにその挨拶」
平然と言い退ける海斗、もう驚くのも疲れたが、海未が黙っていられない。
「だからなんで私には知らされないんですか!?」
「母さんとつぐみさんに内緒にしてって言っておいたから」
「お母様ーっ!」
「お母さんまで」
海未の母親はお茶目な性格をしているようだ、その性格が海斗に受け継がれたのだろう。
「海未のま………お母さんってどんな人なの?」
「海未ちゃんが大人になった感じの人で、いつも敬語なんだけど、性格は海斗くんそのもの、海未ちゃんのあのきっちりした感じはお父さんの方だね」
穂乃果の説明に頷いて納得を示す真姫、その次に絵里が口を開いた。
「だけど、アルケミースターズに入ってるぐらいなんだから高校の授業なんてつまらないんじゃないの?」
「授業はね、だけど、せっかくあっちの学校卒業して日本に帰ってきたんだし、同い年の子と一緒にのんびりと学校生活を楽しみたいな~って、それに、アルケミースターズがいるって宣伝にもなるからね、俺から提案してみた」
廃校の事を知る海斗は自身を客寄せパンダとして利用しようと考えていた。
「まったく、本当にあなたは急なんですら」
「ごめんごめん、だけど転入とか決めたの本当に最近だったからさ、母さんやつぐみさんには無理させちゃったよ」
「海斗くんが急なのはいつものことでしょ?」
「穂乃果には言われたくないな~穂乃果だって急に行動する癖に」
二人ともアグレッシブな所があるため、同時に付き合うとしたら苦労しそうだ。
「穂乃果も課題終わって真姫も作曲が終わったから今から練習っていきたいところだけど、もう遅いし、明日の朝、練習ってことでいいかしら?」
放課後の残り時間もさほどないため、今日はここでお開きとなった。
「姉ちゃん、先に帰っててもらっていい?姉ちゃん達の教室に忘れ物しちゃったぽいからさ」
一人で探しに行くつもりでいたため、海未達に先に帰ってもらおうと考えたが。
「だったら私も行こうか?」
「一人で大丈夫だよ穂乃果」
やんわりと断ろうとする海斗だが、穂乃果は耳打ちをする。
「あの銀色のウルトラマン、海斗くんだよね?」
「っ! 分かったよ、じゃあ頼むわ」
断り切れなくなり、穂乃果と一緒に教室へと向かった。
「うちらもあっちの部室に行かんと、荷物置きっぱや」
「そうね、絵里、みんな、また明日ね」
希とにこ、ススムも超常現象研究会の部室へと向かった。
超常現象研究会の部室、そこにススム達と海斗が集まっていた。
「まさか穂乃果にバレるなんてな」
「動きがね、海斗くんだったから、それにヒントもあったし」
ススムを見る穂乃果、ティガだと知ったからネクサスが海斗だと気付けたのだ。
「それにしても戦い慣れしてたよね?何か習ってた?」
ネクサスとしての戦いを見る限り、海斗の意思が働いているのが分かるため、海斗が戦い慣れていなければあそこまで戦えないはずだ。
「昔は海未ちゃんと一緒にお稽古してたもんね」
「そしたら跡取りになってたんちゃう?」
海未や海斗の家は日舞の家元、そういうのは男性が跡取りとなるのが主流だが、海未が跡取りになる事になっている。
「そういうのは俺なんかより姉ちゃんの方がセンスあるからさ」
「とか言いながら海斗くんもかなりだったよね?海斗くんの踊りも綺麗だったし」
「俺は日舞よりもブレイクダンスとかそういうはっちゃけた奴の方が好きなの、それに、姉ちゃんの舞、スゲー綺麗だからさ、自分がやるよりも楽しかったんだよ」
「海未ちゃんのファン1号やね」
「そう、だからファンクラブ会長の座は誰にも譲らないぜ?」
本当に海未が好きなのだと感じた。
「それはいいわよ、だけどなんでアンタがウルトラマンなの?」
にこがここに連れてきた理由である質問を問う、その質問に海斗はポケットから赤い模様が入った白銀の短剣型の変身アイテム『エボルトラスター』を取り出した。
「さぁな、なんだか知らないけど俺みたいな奴に光が降りてきたんだ、戦って欲しいってさ」
「てことはネクサスには自分の意思があるんだね?」
「ああ、だけどスゲー無口だからなんも話してくれないけど」
ネクサスは海斗と一心同体となり、ネクサスの体を借りて海斗が戦っているということになる。
「そうなると光の国のウルトラマン?」
「分からねぇ、だけどウルトラマンネクサスって名乗ったのはコイツなんだ」
エボルトラスターを見る海斗、ネクサスというウルトラマンは一体何者なのか、まったく謎の存在だった。
「そうだよね、光の国のウルトラマンだったら連絡来てただろうし」
「おお、さすがウルトラマンやね、ウルトラ兄弟と繋がりあるんや」
「七年前の戦いの時にね」
地球が闇に包まれ、ティガが倒れた時、世界中で暴れる闇の手先達と戦うため、ウルトラ兄弟が光臨し戦い、その後、子供達の願いによりティガは復活、見事に闇を振り払った。
「だけど、コイツがみんなを守りたいって熱い気持ちは伝わってくる、だから他のウルトラマン達と同じ正義の味方のはずだぜ」
変身する海斗が言うのなら間違いないだろう、心と体を共有するのだ、もし野心に溢れていたら海斗に伝わるはずだ。
「そういえばなんであの森にいたのよ?」
「ああ、どうやらネクサスは悪意に敏感みたいでね、コイツがその悪意を報せてくれたんだよ」
エボルトラスターを見せる海斗、エボルトラスターはレーダーのような役割を持っているようだ。
「野生の怪獣とかの気配は悪意とか関係ないから感じ取れないみたいだけど、特定の怪獣は察知できるみたい」
「特定の怪獣?」
ススムは尋ねると海斗はゆっくりと口を開く。
「スペースビースト」
「これで終わりだ!」
シンジョウがガッツハイパーの引き金を引き、最後の昆虫人間を撃破した。
「なんとか殲滅できたか」
汗を拭うシンジョウ、すぐにVTL隊による現場検証が行われた。
「一匹一匹大したことねーのに、数は達者でしたね」
「ああ、こんな奴らが俺達が倒しただけとは限らないな」
この群れは氷山の一角のはずだ、どこかに別の群れがいる可能性があった。
「はい、はい、分かりました」
ミズノがPDIで本部と連絡を取っていた。
「どうかしたのか?」
「タケル隊員からの連絡で、ビースト振動波は一応確認されていたみたいです」
「なんだって?だけどそんな報告は」
「一瞬しか反応しなかったから監視は誤作動だと思い込んだみたいです」
そういう誤作動は度々ある、その一瞬の反応を全て調べるわけにもいかない、それが仇となった。
「その一瞬の反応のパターンでコイツらの正体が分かりました、バグバズンです」
「バグバズンだと?」
PDIのモニターに甲虫の幼虫のような姿に成虫の甲羅のようなものに体を覆われたスペースビーストが映し出される、これが『インセクトタイプビースト・バグバズン』だ。
「もしかして、コイツが成長してコレになるのか?」
「それはまだ分かりません」
「もしそうならコイツら後何匹いるんだよ」
ここで倒しただけで終わりとは思えず、顔が青ざめてくるオオガワラ、もしこのバグバズン達が成長して巨大化なんてしたらかなりの数を相手にしなければならない。
「よし、レジストコードをバグバズンブルードに命名する、ミズノ、お前はコイツをVTL隊輸送班と一緒に科学センターに運んでホリイとビースト振動波が検知されなかった理由を調べてくれ、渋川さん、輸送班と、都内のパトロールの強化をお願いします、奴らはまだいるはずです」
「了解しました、調査班と輸送班を出動させます」
「オオガワラは俺と一緒に都内のパトロールだ」
「「了解!」」
シンジョウの命令によりそれぞれは動き出した。
『園田海斗(そのだうみと)』
園田海未の双子の弟、長男なため、園田家の跡取りになるかと思われたが舞をする海未を見ている方がいいと跡取りを辞退、もっとも、姉の方がセンスがあると悟ったのも理由ではあるが、海斗本人も実力はある、だが、好みの問題もあった。そのため、勉強に打ち込み、小学生の時には博士号を取得できるほどの天才となり、アメリカのダラスにある大学へと留学、海洋学者となり、天才集団『アルケミースターズ』の一員となり、そこで反重力システム『リパルサーリフト』の開発に携わる。
『アルケミースターズ』
各国の天才少年、天才少女達によって設立されたネットワーク。
『リパルサーリフト』
反重力システム、VTOL機能に変わる浮遊システムであり、ガッツウイングやゼットビートルに搭載されており、旅客機にも搭載、それによりエンジントラブルが起きてもより安全な不時着ができるようになり、墜落事故も減少している。開発リーダーの名前は『深海真紅(ふかみ・しんく)』と『深海真夜(ふかみ・しんや)』の双子の兄弟、海斗とは親友同士だった。