『インセクトタイプビースト・バグバズンブルード』『インセクトタイプビースト・バグバズングローラー』『クラシキアンタイプビースト・グランテラ』登場
海未の双子の弟、海斗が音ノ木坂に帰って来てから数日、登校初日、波乱があったものも、今では落ち着きを取り戻し、海斗のあの性格と海外暮らしの長さからすぐに学校に溶け込んでいた。
「海斗くんありがとう! すごく綺麗に撮れてる!」
「なぁに、この俺が撮ってるんだ、当たり前だろ?」
カメラの腕がいいことから、撮影を頼まれることが多く、それも学年問わず、下級生も上級生も頼みに来るほどだ。
「海斗くんの順応の速さは凄いね」
「裏表はもちろんあるけど、あの性格だからね」
その順応した海斗をススムと穂乃果、希が眺めていた。
「大学入ったらすぐ友達できたってメール来たぐらいだし」
「ホンマ、コミュ力高いな~ちょっと羨ましい」
自分もこれぐらいコミュニケーション能力があれば明るい性格だったのだろうな、と想像する希。
「希ちゃんはミステリアスなだけで根暗とかじゃなかったと思うよ?」
「ミステリアスな所が根暗に見えるんよ」
「そうだけど、ま、そんな希ちゃんの魅力に気付けたのは最初は僕って事だよね?笑顔が可愛くて素敵だ、とか声が綺麗とか、優しい目をしてる、とか」
そんな恥ずかしい事を躊躇いもなく述べるため、また顔を赤くさせられる希、放っておくととんでもないことを口走るのだから。
「いい絵いただき、すごくいい感じだったよ」
海斗は撮った画像を見せた、会話はともかく、写真の二人はいい雰囲気を出していた。
「ホンマよく撮れとるな~」
「なんだったら今度、デートの写真撮ってあげるよ?」
「その前にことりちゃんをデートに誘うのが先じゃない」
痛い所を付かれてしまい、戸惑う海斗。
「そうだけどさ………ことりと二人きりなんて、そんな、俺、恥ずかしくて我慢できなく」
「何が我慢できないのかな?」
「ピギャア!?」
突然後ろから声を掛けられて悲鳴を上げる海斗、後ろにはことりと海未が立っていた。
「もしかして、ことりをおやつにしちゃいたいのを我慢できなくなっちゃうの?キャー」
「う、海斗! そういうのはまだ早いです!」
「え、あ、えっと」
顔を赤くする海未とテンパる海斗、ことりは満足げな笑みを浮かべていた、なかなか構ってくれない罰として、ことりもなかなかいい性格をしている。
「海斗くんかわいい~」
頭を撫で始めてしまうことり、海斗はオーバーヒート寸前だ。
「海斗………」
そんな初々しくてうぶな海斗を見た海未、自然と携帯を取り出して撮影していた。
「姉ちゃん何撮ってるの!?」
「わ、私は無意識の内に何を!?」
「海未ちゃん、後でその写真ちょーだい」
「穂乃果も穂乃果も!」
「うちも欲しいな」
「僕も」
「希ちゃんとススム先輩まで!?やめてー!」
音ノ木坂に来て一番の辱しめを受けることになる海斗、その写真はμ's全体に広がったのは言うまでもない。
「まった………っ!」
すると、海斗は何かを感じ取った。
(えっ?今、だけど奴らは)
自分が倒した、倒したはずなのだ、それにも関わらず、その気配を感じた、嫌な予感がする。
「海斗?」
その様子を見て心配そうに声を掛ける海未。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」
「ん?ああ、なんでも………あるからチューして」
「大丈夫ですね、分かりました」
冗談?を言えるほどだ、大丈夫だと判断して華麗に流した。
「つれないな~姉ちゃん」
「海斗くんもつれないよね?」
恋人のはずなのに構ってくれない海斗に不満そうなことり、頬を膨らませるがまだ怖くない、むしろ可愛い、そのため、直視できず、また海未の方を向いて抱き付いてしまう。
「私を避難所にしないで下さい」
溜め息を吐く海未、ことりも残念そうだ。
(だけど、あの反応は………)
やはり先ほどの反応が気になって仕方がなかった。
「どうも! VTL隊の渋川です!」
その頃、渋川とVTL隊はある廃屋の前に来ていた、そこには警察官達が集まっており、その廃屋を包囲していた。
「北川警察署刑事課の高槻茂樹です」
「ッ! シンジョウ副隊長!?」
渋川を出迎えたのはなんと、シンジョウに似た覆面刑事だった。
「GUTSのシンジョウは自分の従兄弟ですが?」
刑事である『高槻茂樹』はシンジョウの従兄弟だった。
「従兄弟なんですか」
「はい、俺達親戚みんな、同じ顔をしてまして、その話は置いておいて、この中に」
渋川達は壁に張り付き、汚れた窓ガラスから中を覗いた、そこで目撃したのはコートを羽織った男達、と思われたが、よく見てみると人間ではなかった。
「奴らは………!」
「地元の住人が使われてない廃屋から物音がすると通報があり、うちの刑事達が調べに行ったのですが………」
その刑事達の末路が分かってしまった、喰われたのだ、あの思慮も博愛もない連中に。
「GUTSに連絡、バグバズンブルードを発見したと」
「了解」
そう、その中に潜んでいたのはバグバズンブルードだった、だが、バグバズンはネクサスが倒したはず、生き残りだろうか。
「ん?そういえばこの地域では失踪事件が多発していましたよね?」
「ええ、そうですが?」
この北川エリアでは失踪事件が多発していた、その情報を思い出した渋川はある考えに至る。
(まさか、奴らは他にも)
ネクサスが倒したのは氷山の一角だとすると、都内全体にバグバズンブルードが潜伏し、事件を引き起こしていると考えられた。
「渋川隊長! 動き出しました」
すると、バグバズンブルード達は次の獲物を求めて動き始めようとしていた。
「奴らを絶対に逃がすな! 各部隊、俺に続け!」
ここで逃がしたら次の犠牲者が出る、渋川はそれを食い止めるべく、部隊を引き連れ、廃屋に突入した。
放課後、海未達は屋上で練習に励んでおり、海未の手拍子とカウントによりダンスの練習が行われていた。
「凛! 少し速いです! みんなと合わせて下さい! ことりは腕をもっと広げて下さい!」
海未の指摘は的確で、その指摘された部分を直すと纏まっていく。
「さっすが姉ちゃん、鬼教官なのは変わらないな~」
その練習風景を屋上の棟屋の屋根から見守る海斗。
「誰が鬼教官ですか海斗!」
「聞こえてた?」
「聞こえるように言ってますよね!?」
地獄耳という訳ではない、海斗が海未を怒らせるためにわざと聞こえるような声で言っているのだ。海斗に茶々入れられながらもダンスの練習は終了、一度休憩に入る。
「まったくあの子は………集中できないじゃないですか」
そう言いながらも練習はやり遂げているが。振り向くと海斗が満足そうな笑顔を向けていた。
「………ま、完全な邪魔にはなっていないから許しましょう」
「海未ちゃんってことりちゃん以上に海斗くんに甘いよね、穂乃果には厳しいのに」
「身内だからってのもあるんじゃないの?」
にこの言うとおり、身内だから甘くなっているのかもしれない、互いにブラコン、シスコンなのだ、仕方ないと言えば仕方ないかもしれない。
「そういえば希、あんま息上がってないわね」
汗を拭う真姫、その横で涼しい顔をしてスポーツドリンクを飲む希だが、あまり呼吸が乱れていない様子。
「日頃の運動でちょい体力が付いてきてね」
「素晴らしいです希、自主的に体力作りに励むとは、それで、その運動方法とは?」
参考にしてみようと尋ねる海未、希は困った笑みを浮かべる。
「場所だけは言うわ」
「場所?」
「…………ベッドの上」
「アウトアウトアウト! スリーアウトチェンジ! てか退場よ!」
その単語だけでにこが止めに入った、なんとなく想像していたため行動も速かった。
「ベッド?どういう意味ですか?」
「姉ちゃん、それはな」
海斗は耳打ちで意味を伝えた、ようやく意味を理解した希は顔を真っ赤にした。
「そんな破廉恥なことで!」
「しょうがないやん、ススムくん、鬼のように体力あるから」
(((そりゃそうだ)))
穂乃果、海斗、にこは心の中で納得した、ススムの体力は同い年の高校生と比べたら数倍はある、それに付いていくとなると体力も自然と身に付く。
「希! あなたは自重するべきですよ!」
「いやぁ、そうは言っても一緒に暮らしとるから自重しても流れでってことも」
「お泊まりじゃなくて一緒に暮らしてるって言い切ったわよコイツ」
恋人という垣根はもう越えている、後はいろいろな手続きを済ませば見事にゴールインだが、さすがにまだ高校生なためそこは自重、関係は恋人以上夫婦未満とでも言うべきだろう。
「海斗くんもハヤタ先輩ぐらいの甲斐性あったらな………チラッ」
ことりのその呟きは来るものがある、どうしたらいいものか、ススムにアドバイスでも聞こうと考えた時、またスペースビーストの気配を感じた、それも一瞬、この反応の仕方はやはりバグバズンブルードだと考えた。
「あ、ちょっと用事思い出したから帰るね」
「用事、ですか?」
「うん、帰り気を付けてな」
海斗は屋根から降りると屋上を後にした。
「海斗?」
様子がおかしいと感じる海未、何かを決意した様子だった。
校舎裏、そこに、横たわる女子生徒と作業着を着て、日除け帽子を深く被った、用務員の男が傍に座っており、一見すればその女子生徒を介抱しているように見えるが。
「おいおい、部外者は立ち入り禁止だぜ?」
その男の後ろに海斗が立ちはだかった、どこからどう見ても用務員にしか見えないが、海斗は分かっていた、この男、人間ではないと。
「まさかとは思ったけど、生き残りがいたなんてな」
海斗の存在に気付き、振り向くとそれにより日除け帽子が落ち、素顔が露となる、バグバズンブルードだ。
「姉ちゃん達がまだいるんだ、さっさと終わらせるぜ」
エボルトラスターを取り出す海斗、鞘から抜いて変身、一気に倒そうと考えたが。
「海斗?何しているんですか?」
そこに、海未が来てしまった、海斗の様子が機になり、付いてきてしまったのだ。
「姉ちゃん!?くっ!」
驚く海斗、だが、その隙を付かれ、バグバズンブルードが迫ってくる、この状況での犯行は危険と判断したため、捕食することなく海斗を跳ね退ける。
「ひっ!」
バグバズンブルードのおぞましい姿を見た海未は固まってしまい、海斗と同じように跳ね飛ばされてしまい、木にぶつかってしまう。
「姉ちゃん! てめえ!」
追い掛けようとするが、ただ追い掛けても追い付けない、このままでは逃げられてしまうと思われたその時、ピンク色の閃光がバグバズンブルードの右足を貫き、膝を付かせた。
「ススム先輩!」
ススムだ、ススムがガッツハイパーのレーザーでバグバズンブルードの足を貫いたのだ。なおも逃げようとするバグバズンブルードだが、ススムはその背中を蹴り飛ばして壁にぶつけると押さえ付け、その後頭部にガッツハイパーを突き付け、引き金を引いてその頭に風穴を空け、バグバズンブルードは事切れた。
「ま、マジかよ………」
スペースビーストに対して容赦しなくていいのは分かるが、まさか、そこまで容赦しないで滅するとは思いもしなかった。
「そうだ! 姉ちゃん大丈夫!?」
「大丈夫です、大したことは………」
海斗はすぐに海未のもとに駆け寄る、木に寄り掛かる海未は少し、苦悶の表情を浮かべていたが、海斗が来ると笑顔を向けるが苦痛にその笑顔が歪む。
「大したことあるじゃん!」
袖を捲ると海未のその白い肌は赤く腫れており、痛々しかった。
「ススム先輩! 姉ちゃんが!」
「落ち着いて、大丈夫、ちょっとした打撲だから」
見てくれは酷いが、そこまで深刻な怪我ではなかったためススムは冷静だったが、海斗はそうもいかない。
「けど怪我してるんだよ!」
大好きな姉がこんな怪我をした、自分がもたもたしていたせいで、その罪悪感もあり、冷静ではいられなかったが。
「いいから落ち着け!」
胸ぐらを掴まれ、怒声を浴びせられた。
「は、ハヤタ先輩?」
まさか胸ぐらまで掴むとは思わず、唖然とする海未。
「………ごめん、だけど落ち着いて」
ススムも少し熱が入っていた、海未が少し怖がっているのに気付くと熱が引いていき、自分も落ち着きを取り戻し、手を離した。
「海未ちゃん大丈夫!?」
騒ぎに気付いた穂乃果達がやって来た。バグバズンブルードの死体を見て驚くも、海未達を見て心配となり、構わずに駆け寄った。
「はい、私は」
「大丈夫、軽い打撲だからちゃんと手当てすれば大事にはならないよ」
怪我の具合を説明するススム、それに安心する穂乃果達。
「とりあえずその子も一緒に保健室で応急措置して、それから病院、一応怪獣に襲われたから検査も受けてね」
軽症でも怪獣に襲われたとなると何かしらのウイルスに感染している可能性もある、スペースビーストなんてウイルスの塊みたいなもの、そのため、前にことりが拐われた時も病院で検査、一日だけ入院した。
「病院の方はシンジョウ副隊長達が来てからね、誰か付き添わないといけないから」
「分かった、とりあえず海未ちゃんは保健室な」
「はい」
「絵里ちゃんはここに人が近付かないようにして、現場保存とかしないといけないから」
「分かったわ、じゃあみんな、ここはハヤタくんに任せて離れましょ」
海未達はバグバズンブルードに襲われていた女子生徒を連れ、この場から離れた。
しばらくするとシンジョウがツカサとTPCの調査班と処理班を引き連れて到着、現場を包囲、海未はツカサが病院に連れていき、穂乃果とことり、海斗が付き添いで付いていった。
「それにしても、エグいやり方がやったもんだな」
「すぐに仕留めるにはこれしかなかったですから」
運び出される、後頭部に風穴が空いたバグバズンブルードを見るシンジョウ、穴の形状等を見て至近距離、零距離で撃ったのが分かる、さすが射撃の名手だ。
「希ちゃんが言ってたぞ、険しい顔してたって」
「気付いてたか」
「そりゃ一緒に暮らしてるんだからな、嫌でも気付くだろうよ」
自分では冷静になったつもりでいたが、それでも分かる人には分かる、ススムの高ぶり、荒ぶる気持ちが。
「ビースト相手になるとやっぱり熱くなってしまうんですよね」
「分かってるさ、俺だってあの時引き金を引いた一人なんだ、そしてあの人も」
五年前、地球に飛来した最初のスペースビーストを倒したのはススムと、ガッツウイング2号に乗っていたシンジョウ、そして、初代ウルトラマンだった、その戦いにより最初のスペースビーストは倒された、だが、細胞は完全に消滅せず、その残った細胞片は世界中に飛び散ってしまい、様々な生物に寄生、それがスペースビースト発生の原因となってしまった、後にその戦いは『新宿大災害』と呼ばれるようになる。
「あの時、ちゃんとザ・ワンを倒していれば、細胞も残らずに、そうしてれば、と思うと」
長い間戦い続けていると後悔することがある、シンジョウも沢山の後悔をしてきたが、ススムは、自分以上の沢山の後悔をすることになる、幼い時からティガとして戦っているのだ、自分よりも多くの後悔を残していくことになる、そう考えると心苦しくなる。
「だからこそ戦わないと、そうじゃないと守れるものも守れないから」
その言葉は大人としてシンジョウは安心した、ススムはその後悔に引きずられず、その体験した一つ一つの後悔はススムを強くしていた。
「にしても、まさか生き残りがいたなんてな」
ここで倒されたバグバズンブルードを生き残りだと考えるシンジョウ、そこに。
「生き残りなんかではありませんよ」
渋川がやって来た。
「渋川さん! どういう事ですか?」
「奴らの群れはまだ生きてます、俺達が倒したのは氷山の一角、これを見て下さい」
タブレットを出す渋川、画面には地図が表示され、線でエリア分けされていた、そのエリアの一つ一つに数字が出されており、最初にバグバズンブルードが出現した新宿、音ノ木坂、そして北川町。
「これはここ数日で発生した失踪事件の件数です」
「失踪事件!?それにしても多すぎませんか?」
「はい、先ほど、VTL隊は北川署刑事課からの要請で出動、そこの廃屋でバグバズンブルードを発見、殲滅しました、もちろん北川町でも失踪事件は多発していました」
その話によりようやく分かった、この失踪事件を引き起こしたのはバグバズンブルードの仕業だと。
「音ノ木坂署にも確認したらここ数日、多くの失踪届けが出されていました」
「バグバズンブルードの群れは生きてる………けど、大型の方はウルトラマンが」
大型のバグバズンはネクサスにより倒された、だから終わったのではないかと思い込んでいたシンジョウであったが。
「あのバグバズンですら、群れの一角だったのでは?」
そう考えるとバグバズン達を使役している黒幕はどれほど強力なのだろうか。
「VTL隊はバグバズン達のボス、つまり女王蟻のような存在を捜索しています」
「分かりました、こっちもその女王バグバズンの捜査、協力します」
「ありがとうございます、早速本部に連絡します」
「お願いします」
渋川とシンジョウは本部に連絡、GUTSとVTL隊は協力体勢を取ることとなった。
久しぶりに単語説明。
『新宿大災害』…五年前に起きた最初のスペースビーストとの戦いの名称、その時、新宿は壊滅的な被害を受けたがすぐに復興するも、人々の心にその恐怖を刻み付けた。最初のスペースビーストはティガ、初代ウルトラマン、GUTSの手により倒され、それが、イルマ参謀がGUTS隊長として最後の戦いとなり、ムナカタ、シンジョウは昇格、レナとダイゴは火星へと移住した。だが、それでは終わらなかった、残ったビーストの細胞は世界中に散らばり、様々な生物に寄生し、新たなスペースビーストを生み出す事となる。