光の巨人と九人の女神   作:日々野未来

19 / 20
第7話『共闘ーユナイテッド・フロントー』Bパート

 真姫の父親が院長を務める病院『西木野総合病院』、ここに海未は運ばれ、手当てを受けていた。

「軽い怪我で本当に良かった、入院もしなくていいみたいだし」

「ご心配お掛けしました」

 ことりの場合はバグバズンブルードのガスを浴びていたため、身体に影響がないか調べる必要があったが、海未の場合は外傷だけなため、そこまでする必要はなかったが、最初に襲われていた女子生徒は意識がまだ戻っておらず、入院することとなった。

「良かったね、海斗くん」

「あ、ああ」

 返事をするも浮かない様子の海斗、理由は分かる、海未に怪我をさせてしまった、それがどうしても許せなかったのだ、だが、だったら、ネクサスに変身すれば良かったのではないかと思えた、相手は実の姉、穂乃果は秘密の共有ができると思えた、自分ともできているのだから。

「みんな、家まで送っていくわね」

 手当ても終わったのでツカサは海未達を家に送ろうとしたが。

「あ、私は大丈夫です」

 穂乃果はその申し出を断った。

「だけど、夜も遅いわよ?」

「大丈夫、海斗くん連れていきますので」

「えっ!?」

 まさか自分が指名されるとは思わず、驚く海斗。

「海未ちゃん、ことりちゃん、海斗くん借りるね!」

「おい! ちょっと! 穂乃果! 穂乃果さん!?」

 海斗は穂乃果に無理やり引っ張られ、連れていかれてしまった。

「行っちゃった」

「まぁ、あの二人なら大丈夫でしょう」

「そうだね」

 海斗の様子がおかしいという事には気が付いていた、それを聞き出せるとしたら穂乃果ぐらいだ、ここは穂乃果に任せ、先に帰ることにした。

 

 

 

「もう、なんだよ穂乃果」

 日も暮れて、街灯に照らされる夜道、そこで穂乃果は立ち止まる。

「なんで海未ちゃんとことりちゃんに話さないの?」

 何を話さないのか、それはすぐに分かった。

「だってヒーローは自分の正体明かさないもんだろ?」

 適当な理由を付ける海斗、もっともらしい理由ではあるが。

「嘘、いくら照れ屋でも海斗くん、そういうのは真っ先に海未ちゃんやことりちゃんに自慢するはず」

 もちろん自分にも、だから何か別の理由があると考えたのだ。

「………まったく、穂乃果には敵わねーな」

「だって、海斗くんの親友でもあるけどお姉ちゃんでもあるんだよ私?当然だよ」

 観念して話すことにした、自分の胸に秘めた思いを。

「穂乃果は自力でネクサスが俺だって見抜いてそれを受け入れてくれた、それがスゲー嬉しかったんだよ、けどさ、それが分かる前はスゲー怖かった」

「怖かった?」

「人間じゃない存在になった俺を受け入れてくれるのかって、もしかしたら怖がられるかもしれない、そう思って最初は穂乃果にも話さないでおこうって思ったんだ」

 海斗は周りへの影響を考慮して、自身の正体を話さなかったのだ、どれだけ親しく、それが身内や恋人であっても、人間ではない存在になれる自分を受け入れてくれるのか分からない、拒絶されるかもしれない恐怖に。

「海斗くん、海未ちゃんとことりちゃん、見くびり過ぎじゃない?もちろん穂乃果のことも」

「え?」

「私達が海斗くんを怖がるわけないじゃん、そりゃ驚くかもしれないけど、海斗くんは海斗くんなんだよ?人間だろうかそうじゃないだろうかなんて関係ないよ」

 なんも迷いもなく言い切る穂乃果、その目にも迷いはなく、真っ直ぐな眼差しだった。

「だから、話してあげなよ、今の海斗くんを、きっと受け入れてくれるよ、だって、お姉ちゃんと恋人なんだよ?それも昔から一緒にいる」

「穂乃果………サンキュー、すぐには無理でも話すよ、絶対に」

「それでいいよ、話すって決めただけでもよし」

 あれこれ話していると穂乃果の実家である和菓子屋『穂むら』の前に到着。

「姉ちゃん達のほむまん買って帰ろうかな」

「それいいね、サービスしちゃうよ?」

「穂乃果にそんな権利あるの?」

「お母さんがサービスしてくれると思うよ」

「あ、菊恵さんならしてくれるか」

 二人は穂むらに入り、海斗は買い物してから自宅への帰路に付いた。

 

 

 

 その夜、そんなすぐに話せるわけもなく、寝に就こうと、布団に入る海斗、そこに。

「海斗?私です、海未です」

 海未が部屋の外から呼び掛けてきた。

「姉ちゃん?入っていいよ」

「失礼します」

 扉を開ける海未、その手には枕が抱かれていた、何しに来たか分かる。

「珍しいじゃん、姉ちゃんが自分からこっちの部屋に来るなんて、いつもは姉ちゃんが誘ってきて、あっちの部屋で寝るのに」

「たまにはこういうものいいかと思いまして」

 自分の枕を置くと海斗の隣に腰を降ろして布団に入る。

「電気消すよ?」

「はい、お願いします」

 電気を消すと二人は横になる。

「………海斗」

「なぁに?」

 二人ともすぐに眠るつもりはなく、寝に就くまでお話するのがお決まり。

「何か隠してるのは分かっています、だからと言ってすぐに話せとは言いません、私も、ことりも待ちますよ」

 やはり気付かれていた、海未の話からするとことりにもだ。

「あなたの事ですから穂乃果には話していそうですね」

「バレた?」

「バレバレです、あなたと穂乃果は本当に仲が良いですから」

 苦笑する海斗、いつも気付かれてないつもりでいたのに、今までも気付いていたんだろうなと実感させられる。

「あなたは隠し事多いですから、日本に帰って来た本当の理由とか」

「ッ! やだな~俺が帰ってきたのは姉ちゃんのアイドル姿を」

「嘘、とは言いませんがそれが一番ではありませんよね?他に目的があって帰ってきた、そうではありませんか?」

 知っていればウルトラマンとして戦うために日本に帰ってきたと思えたが、もし、それを知っていても海未は別の理由に気付いていただろう。

「………友達を探しに帰ってきたんだ」

「友達、ですか?」

 頷く海斗、観念して話すことにしたようだ。

「そいつとは仲良くてさ、穂乃果と同じぐらいに、向こうでできた親友だった、だけど、突然、いなくなっちまったんだ」

「その方を探しに?」

「うん、そいつと日本人で、日本に帰ったのは知ってるから、どこかにいると思うんだ」

 それが、海斗が日本に帰ったきた最大の理由だった、その親友を探すべく、大学を卒業してまで日本に帰ってきたのだ。

「どんな方なんですか?」

「無愛想だけどさ、どんな小さい動物の死を悲しむことができる優しい奴、俺と同じ海が好きでさ、あっちで遅くまでその話してたこともあったな」

 その「親友」の話を楽しそうにする海斗、海未は静かにその話を聞き、その親友との絆の深さを知る。

「見付かるといいですね」

「………ああ」

 しばらく、沈黙するも海斗は決意した、海未にあの話をしようと。

「なぁ姉ちゃん」

 と振り返り、話し掛けたら、返ってきたのは寝息だった。

「ホント、寝るの早いな~」

 可愛い寝顔に癒されると頭を撫でる。

(急がなくてもいいか)

 次第に、海斗も眠くなり、姉の温もりが広がる布団の中、眠りに落ちた。

 

 

 

 翌日、現場は未だに立ち入り禁止となっていたが、授業は普通に行われていた。

 

 

 

「おはよーって、ススムは?」

 希達の教室ににこが入ってきた、そこでススムがいない事に気付いた。

「今日はハヤタくんはお休みよ」

「朝早くに起きてな、任務やって」

「あらそう、まぁGUTSに入ってるんだし、あり得なくはないか」

 ススムが不在の理由に納得するにこ、以前のように希からは寂しさは感じられなかった。

「ちゃんと送り出せたの?」

「うん、お弁当も作ってあげられたから大丈夫」

 どこの新婚だ、と思うにこは安心した、二人を見守っていた身として。

「そしたらススムくん調子に乗って行ってきますのキスとか言い出すし」

「相変わらずね」

「まぁもちろんしたけど」

「そこまで言わんでよろしい!」

 一応アイドルなのだからそういう発言は控えて欲しい、いいお嫁さんにはなるだろうが。

「ホント、ラブラブね希」

「なぁにえりち?えりちも彼氏欲しくなった?」

「ちょっと憧れるわね」

「だけど………絵里だとハードル高過ぎて釣り合う男いなさそうね、そしてだんだんと歳だけ重ねて独身貴族に」

「に~こ、それ以上はさすがに怒るわよ?」

 にこはそこまではさすがにないと思った、絵里みたいな美人を世のを男達が放っておくわけないはず、いずれは恋人ができて結婚するだろうと思っているとにこの脳裏に青い髪の毛に赤いメッシュが入った目付きの悪い少年の顔が思い浮かんだ。

(なんでアイツの顔が出てくるのよ!)

 頭を左右に何度も振って思い浮かんだ顔を消した、自分はアイドル、希やことりは許すが自分に関しては許さない、恋愛はご法度、と思うのだが、一度気になった事を無視するのにはかなりの精神が必要だった、それも昔から知る人物だったらなおさら。

(なんでアイツなのよ、アイツはただの幼馴染で乱暴でバカで、だけどなんだかんだで勉強ができて、お母さん思いで優しくてって! なんでいい所ばっか上がるのよ!」

 机を思い切り叩くにこ、強すぎて手を痛めて涙目となる。

「大丈夫にこ?」

「なんか途中から声出てたけど?」

「出てた!?忘れて! マジで忘れて! 一生のお願いだから!」

 そこまで頼み込むほどにこは恥ずかしくて仕方がなかった。

「もしかしてにこっち、気になる男の子おるんの?」

「は、はあ!?そんなわけないでしゃ! 私は宇宙一のスーパーアイドル、矢澤にこにーよ! にこはみんなのものなんだから気になる男なんていないわよ!」

 すごい剣幕で否定するにこ、それに圧されて絵里は戸惑いながら頷いた。

(にこっちにね~ちょっと意外やけど手伝いたいな)

 自分達の事も気に掛けてくれたのだ、にこの助けになりたい、そん考える希はある決意をするのだった。

(なんであんな奴なんか………)

 

 

 

 そして昼休み。

「うん! 今日もパンはうまい!」

「パンばかり食べていたら体に悪いですよ」

 中庭のベンチで二年生組が昼食を食べていたが、海斗の姿はなかった。

「まさかあんな海未ちゃんベッタリな海斗くんが一人で学食食べに行くなんてね」

「私もビックリしました、まさかあの子が私の誘いを断るなんて」

 軽くショックを受けている様子の海未、なんだったら一緒にと思ったのだが、断られてしまったのだ。

「昨日は一緒に寝たのに………」

「海未ちゃんも結構拗らせてるよね」

「だけど、海斗くんが海未ちゃんの誘い断るなんて珍しいよね」

 海未の誘いならなんでも受け入れそうなイメージがあるため、不思議であった。

(ま、なんとなく分かるけど)

 穂乃果は海斗が一緒に食事を取らない理由が分かっていた、ふと見上げた。

 

 

 

 屋上の棟屋の屋根の上、そこで海斗は一人で学食のパンとコーヒー牛乳を頬張っていた。

「今んとこ異常なしか」

「そうみたいやね」

「え?」

 いつの間にか隣に希がおり、驚く海斗、危うく落ちそうになる。

「希ちゃんどうしたのこんな所で!?」

「なんでやろうね?スピリチュアルパワーの導き?」

 答えになっていないが希らしい答えだ。

「そういう海斗くんは?」

「見張り、一度入られたんだ、もしかしたらまた入ってくるかもしれないだろ?相手は虫だし、仲間のフェロモンを辿ってさ」

 残ったパンを頬張り、さっさと食事を終わらせた。

「ススム先輩は?」

「今日は休み、任務やって」

「そう」

 バグバズンブルードは各地に潜伏している、ローラー作戦でもやろうものなら参加しないわけにいかない。

「………昨日のススム先輩、マジでヤバい目してたな」

「知っとる、いつと通り装ってたけど険しい顔しとった、海斗くんに怒っただけやないよね」

「さすが、なんでも分かってるね」

「そんなことあらへんよ、まだまだ分からないことだらけ、その事もまだ聞けてないし」

 溜め息を吐く希、また遠慮してしまった、やはり癖は抜け切れない。

「海斗くんはことりちゃんのことなんでも知ってそうだよね?」

「そうかな?幼馴染だけど………変な所で負けず嫌いな所あるんだよなことりって」

「あー………そやね、衣装作りとかできるのに穂乃果ちゃんと海未ちゃんと違って自分には何もないとか思っちゃう辺りとか?」

「そうそう、手先が器用で、スゲー服とか作れるのにさ、それに、ことりが作るお菓子もすごくうまいし、それで何もないなんて、それに………スゲー可愛いし」

 小声で言うがもちろん聞こえている。

「ことりちゃんのこと、ホンマ好きなんやね」

「そりゃな、俺となんか釣り合わねぇんじゃねぇかって何度思ったことか、だけど、それでもアイツは俺の彼女でいてくれた、俺みたいな奴の」

 それは嬉しい事なのだが、最後の方は少し、弱々しかった。

「だから、大切にしたいんだ、ことりのこと」

 ことりを傷付けたくない、その想いがあるから照れ隠しするかのように海未に抱き付いたりしてしまうのだ、半分は素だが。

「………海斗くん、それを怖れちゃアカンよ」

「え?」

「相手を傷付けたくないって思うのは大切だけど、それを乗り越えないといつまでもそのままだよ、うちらもそうやった、お互いに遠慮して、自分の思いを話さないでいた、もし、そのままでいたらすれ違ってたかもしれへん」

 なかなか踏み出せない海斗、ちょっと前までの希やススムのようだった。

「海斗くんは、ことりちゃんとどんなことしたいの?」

「俺がことりとしたいこと………」

「そう、もしくはこれからどうしたいか」

 質問されて考える海斗。

「………いつまでも一緒にいたい、かな?いつまでも一緒にいて、ことりの笑顔をずっと見ていたい」

「それやったらもっと近付かんとね、そうやないとどんどん離れてまうよ?」

「うん、ありがとう希ちゃん」

「ええってええって、だけどがっつきすぎちゃダメだよ?ススムくんみたいなことになってまうから」

「ああ見えて強引だもんね」

「うんうん、断れないんやけどね」

「惚れた弱味って奴?」

「そうそう」

 困った顔はしているが、嫌ではなかった、すると、チャイムが鳴る。

「お昼休みも終わりやね、早く教室に戻ろっか?」

「そうだね」

 二人は屋上を後にするのだった。

 

 

 

「へっくしゅ、希ちゃんが僕の話でもしてるのかな?」

「何言ってんだよ、ラブラブだねまったく」

 西木野総合病院、そこにススムと渋川がいた、診察に来たわけではないが、エントランスのソファーに座り、わざとらしく新聞を広げていた。

「本当に来るんですかね?」

「うちのパトロール隊が見掛けてる、それにミズノ隊員の仮説が正しければ」

「あまり気が進みませんね」

 ススムはあまり乗り気ではなかった、だが、やらなければならないと割り切っていた。すると、襟の流星バッジが、渋川のトランシーバーも鳴り、通信に出る。

「こちらB班、ターゲット確認しました」

「了解、すぐに向かいます」

 通信を切ると頷き、その場から立ち上がり、病棟へと向かった。

 

 

 

 そして放課後、昨日の今日という事もあり、さすがに部活は中止となっており、生徒全員下校を余儀なくされていた。

「こ、ことり!」

 学校を出ると海斗は勇気を振り絞った感じでことりを呼び掛けた。

「どうしたの?」

 その勇気を感じ取ったことり、何を言い出すのかを待つと。

「て、てて………」

「て?」

「手、繋がね?」

 その申し出にことりはまるで花が咲いたかのような笑顔となる、答えはもちろん。

「うん!」

 それ以外なく、ことりは海斗と手を繋いだ。

「どうしたのでしょうかあの子、自分から手を繋ごうだなんて」

「どうしたんやろうね~?」

「希ちゃん、いつの間に」

 またもやどこからか沸いてくる希、もちろん二人の様子を見に来たのだ。

「どーやら海斗くん、踏み出せたみたいやね」

「さすが希ちゃん、穂乃果じゃそういう話はできないから」

 恋愛ごとには疎いため、そういう話はできない穂乃果、希はそんな穂乃果の代わりとなった。

「私達は邪魔にならないようにしようか?」

「そうですね」

 穂乃果の提案に賛成、別の道を使い、二人きりにさせた。

「海斗くん、ちょっと痛いかな?」

「えっ! あ、悪い!」

 握力の強さかと勘違いし、離そうとするのだが、ことりが離してくれなかった。

「違う違う、海斗くん離れ過ぎなの、だから」

 握力の強さではなく、距離だった、離れ過ぎてるため腕が伸び切っていた。

「もう、海斗くんから手ぇ繋ごうって言ったのに」

「ごめん」

 やっぱり照れてしまうようだ、ただ手を繋いでいたら一向に離れたままになってしまう、手を離せば済むがそれは嫌だ、だったらとことりは海斗の腕にしがみついた。

「こ、ことり!?」

「こうすれば痛くないよね?」

「そ、そうだけど! 当ててる! 当ててるんだけど!」

「当ててるんじゃないよ?当たっちゃってるだけだよ」

 何が、とは皆まで言わなくても分かる、ことりも照れているため頬を赤くしていた、海斗なんてもう真っ赤である。

「ずっと離れてた分、いっぱいイチャイチャするんだから」

 考えてみたら、このようにことりと二人きりで歩くのは初めてだった、この性格故に、告白も時間が掛かり、出発当日となってしまった、それから度々帰ってきてはいるが、ヘタレてしまうためいつも海未や穂乃果を巻き込んで二人きりにならないようにしてしまっていた。

「………ごめんな、こんなヘタレで」

「そんなヘタレさんが勇気を出してくれてすごく嬉しいからいいよ」

 許されてしまった、こうなったらもうとことんイチャイチャするしかない。

「せっかくだからこのままどっか行かね?まだまだ時間あるしさ」

「うん! 行こう行こう!」

 このまま放課後デートに洒落混もう、二人は街へと向かおうとしたが、ことりの鼻がひくひくと動く。

「ん?この匂い………」

「匂い?」

 ことりが臭気を感じた、海斗も嗅いでるみる、その匂いは甘ったるい匂いだった。

「この匂いは」

 覚えがある匂い、海斗は嫌な予感がして辺りを見渡す、コートを着込んだ男が何人か見えた。

「おいおい、人がせっかくやる気出してデートしようって所で」

「海斗くん………」

 この異様な空気に怯えることりは海斗の後ろに隠れる。

「心配すんなよ、お前は俺が守る、だからデートはまた今度な?」

 安心させようと笑顔を向けるとことりは頷く。

「走るぞ!」

 海斗はことりの手を引っ張り走り出す、コートの男達は二人を追い掛け、フードが捲れ、バグバズンブルードの頭が露となる。

「あの時の!」

「やっぱりか!」

 正体はもちろん察していた、だが、こうも何度も遭遇するとなると何か原因があるように考えられた。

「フェロモン………まさか」

 昼間、学校にバグバズンブルードが入ってこないか見張っていた時の希との会話を思い出す。

「マーキングかよ」

 バグバズンブルードが仲間のフェロモンを辿ってまた学校に侵入するのではないかと考えた、仲間のフェロモンを辿るのは間違いないが、それはルート上の物ではない、逃がした獲物に吹き掛けた催眠ガスをマーキング代わりとしていたのだ、逃してもまた追跡できるようにするために、奴らの狙いはことりだった。

「もしかして、ことりのせい?」

 マーキングとか聞いて察してしまうことり、自分のせいでこんな事になってしまったと考えてしまう。

「んなわけねーだろ、変なこと考えんなよ」

「でも!」

「前に言ったろ?女神を守るのが俺の役目だって、だから、絶対に、守ってみせるさ、絶対にな!」

 前にバグバズンブルード達が現れ、行く手を阻む、だが、海斗は構わず走る。

「しっかり掴まってろよ!」

「えっ?キャッ!」

 海斗は走りながらことりを抱き抱えるとジャンプ、飛び掛かってきたバグバズンブルードは地面に落下、その背中に着地されて悲鳴を上げ、海斗はことりを抱き抱えたまま、走り抜けた。

 

 

 

「ギシャァァァァア!?」

 西木野総合病院の病室、そこからバグバズンブルードが煙を上げながら飛び出し、窓から飛び降りて逃走する。

「モンスターキャッチャーの反応確認、これを追い掛ければ巣に辿り着ける」

 病室からススムと渋川が出てくる、その病室は昨日、襲われていた女子生徒が眠る病室だった、ススム達もマーキングの事には気付いており、危険だが、バグバズンブルードがそれを頼りにやって来た時を狙い、モンスターキャッチャーを撃ち込み、それを頼りに追跡する作戦が提案されたのだ。

「こんな事させたんだ、絶対に全滅させてやる」

「まぁまぁ」

 興奮するススムを宥める渋川、二人は病院を後にする。

(マーキング………っ!)

 ススムもようやく学校にバグバズンブルードが現れた理由に気付いた、そうなると彼女が危ない。

「渋川さん! ここはお願いします!」

「ちょっ! どこ行くんだよ!?」

 ススムはシャーロックに乗り込むと走り出した。

「こちらススム! 今から言う人の携帯のGPSを確認してシャーロックに送って下さい! 名前は南ことりさん!」






『にこが思い浮かべた男』…同じマンションに住んでる幼馴染、お互い片親しかいないことと、お隣さんなため、一緒にご飯を食べることが多かった。バカで乱暴ではあるが、なんだかんだで勉強ができて母親思い、にこの妹達の面倒を見ることもある、最近はμ'sの活動で忙しいにこや、仕事が忙しいにこの母親の代わりに買い物をして矢澤家のキッチンに立つことが多い。因みに、地元では『青い悪魔』として名が知れており、不良達に恐れられている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。