μ'sの他のメンバーにもススムを紹介するて最終下校時刻となり、学校を後に、夕焼けに染まる空の下、希とススムは一緒の道を歩いていた。
「十年ぶりだね、こうして一緒に帰るの」
「そうだね、芭羅慈村の時もこんな夕焼けの空だったね」
夏休みだったため、かなり遅くまで遊んでいたので空は暗くなるかならないかの直前でいつも一番星が輝いていた。
「最初に遊んだ時は真っ暗やったけどね、ススムくんが無理やり連れ回すから」
「あの時はごめんね、怖い思いさせて」
「怖かったけど、あの時見た星空は今でも忘れられんよ、空ってあんなに星が沢山あったんやね」
「うん、その時は関西弁じゃなかったよね?」
実は希、関西出身ではないのだ、エセ関西弁である。
「まぁね、ちょっと関西弁使わんといかんとこあったから」
「希ちゃんにそんな時が来るなんて」
「ま、高校入ってすぐだから最近なんだけど」
きっと誰かのためなのだと思うススム。
「だけど、うちダメだな~ススムくんのこと思い出せないなんて」
「だけど思い出したってことはあの時の思い出、ちゃんと覚えててくれたんだよね?」
「そりゃね、あの頃の友達はススムくんだけやったから、森の中で迷子になっちゃうなんて、今までそんなことなかったし」
「それだけでも嬉しかったな僕は」
「それでも、ススムくんはうちを見てすぐに分かったんよね?うちが東條希だって」
「まぁね、希ちゃん、あの頃から可愛かったから、今はすごく美人さんだし」
「お世辞でしょ?うちなんて昔は根暗な子やったやろ?」
「そんなことないしお世辞でもない!」
突然大声を出したため驚く希、ススムもそれに気付き、一言謝る。
「ごめん、だけど、本当にお世辞じゃないから、だって僕は」
何か言おうとしているが畏まってしまうススム、何かを言おうとしている、それは分かるため希はススムの口が開くのを待つ。
「…………希ちゃん、希ちゃんがスクールアイドルだって分かってる、だけどね、言わないと絶対後悔するから言うね」
前置きが長い、だが、それほど大事なことを話そうとしているのかは分かった。
「僕は、あの時から、希ちゃんのことが………好きでした!」
その告白にはもっと驚いた、動揺を禁じ得ない希はあたふたする。
「そんな、うちのこと好きなんてじょうだ」
「冗談じゃないよ、最初は希ちゃんの笑顔が見たかった、それだけだった、だけど、あの星空を見上げた希ちゃんの笑顔を見たらずっと見ていたいと思った、ずっと………だけど、それを言えないで希ちゃん引っ越して、僕は後悔した、本当に言いたかったのはまた会おうだけじゃなかったのに」
別れの時、ススムが他に言いたいことがあったのはこれだった、自分の希への内なる想いを打ち明けたかった、でも、それはできなかった、今度はいつ会えるか分からないため、その恐れがススムの勇気を押さえ付けてしまった。
「えっと………うちは」
「スクールアイドルだもんね、ごめんね、答えは言わなくてもいいから、じゃあね、明日からよろしくね」
ススムは何も聞かずその場を後にした、振り向かず、ただ前へと歩いていった。
「ススムくん………」
何も答えられず、もやもやした気持ちになりながら希も帰宅するのだった。
それから、ススムが転校してきたが、ススムはその話について触れようとはしなかった。
そして数日が過ぎ、急に気温が上がり、蒸し暑い朝の生徒会室、そこで絵里と希は書類整理していた。
「はぁ………」
仕事中、ため息を吐く希、そんな希を横目で見る絵里は痺れを切らしたかのような顔をしながら口を開いた。
「希、どうかしたの?」
「どうって、うちはどうもしとらんよ?」
「嘘、気付いてないと思ってるの?」
さすが親友と言ったところか、希の変化に気付いていた。
「ハヤタくんと再会した次の日からだったわね、希の様子がおかしくなったのは」
「………エリチはなんでもお見通しやな」
「あなたほどじゃないわよ、みんなのことをよく見てる希には敵わないわ」
これ以上は隠せないと悟った希はあの日の事を話した。
「なんとなく予想できてたわ、それにしても彼、言うの早かったわね」
「それも気付いてたの!?」
「ハヤタくんがこの学校に転校してきた理由もね、彼ぐらいならどこ入っても変わらないだろうし、好きな人がいる学校に通いたかったが本音でしょうね」
「ススムくん、そのために………」
「まぁ聞いたらバカとしか言いようがないけど、それほど本気だってことね」
それにより、本気の度合いが分かる。
「それで、希はどうしたいの?」
「うち?うちは………その、スクールアイドルあるし、それにこういうの、にこっち怒りそうやん?恋愛はご法度だって」
「とか言ってるけどどうなのにこ?」
いないにも関わらず呼び掛ける絵里、すると、扉が開いた。
「にこっち!?」
「そうね、確かにアイドルに恋愛はご法度ね」
にこが入ってきた、希が知らぬ間にスタンバイしていたようだ。
「だけど、希のそのスクールアイドルだからっての、言い訳にしか聞こえないのよね」
「そうね、逃げてる感じがするのよね」
絵里のその言葉に完全に観念した希は白状することにした。
「………そやね、エリチの言う通りうちは逃げとる、そや、うちはススムくんのこと好きや、下ばっか向いてたうちに空を見上げさせてくれたススムくんが、だけど、あの時は引っ越しが近くて何も言えなかったし、それが当たり前だった、そしたら十年経った今、また会えた、だけどうちはすぐにススムくんだって気付けなかった、ススムくんはすぐに気付いてくれたのに」
申し訳なさそうな希、だが、それだけが理由じゃない。
「確かに、ススムくんがうちのこと好きでいてくれて、好きって言ってくれて嬉しかったけど………」
「けど何よ?」
「うち、今がとても幸せなんよ、エリチがいてにこっちがいてμ'sのみんながいて、すごく幸せ、それにススムくんも加わったら、と思うと………だけど、もしもの時のこと考えると」
もしもの時、それはススムがGUTSであることが関係する言葉だった、GUTSは怪獣や宇宙人と戦う危険な仕事だ、場合によっては大事に至ることもある、それによりススムを失うのが怖かったのだ。
「なるほどね、だけどそれ、コクった本人も分かってんじゃないの?」
「え?」
「だって親が科特隊でお姉さんがGUTSでしょ?いつ家族を失うか分からない状況に常にいたのよ?自分がそんな相手の気持ち分からないわけないじゃない」
それを覚悟した上でススムは告白に踏み切った、自分の気持ちに区切りを付けるために。
「希、あなたが私に前に言ったことをまんま返すわ、希がしたいことは何?」
「うちがしたいこと………」
「後はあんたがどうしたいか決めなさい」
後は希の問題、答えを言わないならそのまま、行動を起こすのならば手助けをしようと考えた。
「うちは!」
立ち上がる希、決心が付いたようだが、そこにチャイムが鳴ってしまった。
「ま、何をするにも準備は必要ね」
「ええ、この話は休み時間の時に」
この話の続きは休み時間にすることに決め、生徒会室を後にした。
「嫌われたならそれでいいかな」
空を見上げるススム、今、ススムがいるのは屋上の搭屋の屋根の上、そこで寝転がり、空を見上げていた、日射しは別に強くない、だが、なぜか蒸し暑かった。
「それ、逃げてるって奴じゃないの?」
そこに声が聞こえ、起き上がると搭屋の屋根ににこが登ってきた。
「矢澤さん」
「にこでいいわよ」
呼び方を訂正してからにこは座り込んだ。
「なんでここに?」
「ちょっとね、ま、私も友達はμ'sのみんなぐらいしかいないし、お昼食べる時はだいたい屋上だったわ」
手には弁当箱、包みを広げてお弁当を食べ始める。
「だけど今はμ'sのみんながいる、希ちゃんもそう、僕がその中に入る余地はないし、それに、無駄に悲しませることないし」
「だから答え聞かないで逃げたってわけね」
「なんで知ってるの?」
「様子が変だったから本人から聞いた、答えはちゃんと聞きなさいよ、ま、言えなかっただろうけど」
「なんで?」
「あんたら二人似てるのよ、互いの気持ち深読みし過ぎて自分の気持ち抑え込んで、何事もなかったようにして、あんたは嫌われようとして」
まるで希が自分のことを好きのような言い方だった。
「アイツがあんたを嫌いになるなんて無理よ絶対、アイツ、意外とワガママなところあるし」
「希ちゃんが?なんで?」
「それは直接聞きなさい」
後ろを二度ぐらい向くにこ、その向けた先の下を見るとそこには希がいた。
「希ちゃん!?」
先ほどの話、全て聞かれていた。
「後は当人同士で話しなさいよ、私は戻るから」
いつの間にか食べ終えた弁当箱を持ち、にこは下に降り、屋上を後に、ススムと希はその場に取り残された。
「ちょっと待って、すぐ降りるから」
「そのままいて、うちがそっち行くから」
梯子を使い、搭屋の屋根に登る希、ススムの隣に座った。
「ススムくん、この前の答え、聞いてくれる?」
「答えも何も、僕、嫌われてるよね?」
「そんなことあらへん、そうだったらうちはあの時すぐに断っとるよ」
「だけど」
「言い逃げなんて許さんよ?」
場所が場所なため逃げられない、大人しくすることにした。
「ススムくん、うちね、今が本当に楽しくて幸せで、それにススムくんが加わる、昔のうちの状況じゃ考えられんぐらい、だけどね、うちワガママだから失うのを怖がって答え言いに行けなかった、どうなるか分からない、それが怖くて、だけど、今なら答えが言える、ススムくんがどんな思いで告白してくれたのも分かったから」
目を瞑る希、再び開くと微笑んだ、ずっと見ていたいと思った笑顔が隣にあった。
「うちは、ススムくんのこと好き、下ばっか向いてたうちに空を見上げさせてくれたススムくんのことが大好きや」
その答えにススムは驚いた、てっきりダメだと思っていたため。
「うちも逃げない、ススムくんも、言い逃げなんかしないで」
「希ちゃん…………そうだね、分かってたはずなのに、僕は途中で逃げた、どんな答えだろうと聞かないといけなかったのに希ちゃんが何を思うかって考えたら」
「うちら、臆病になっちゃうんだね」
「そうだね」
似た者同士だと言われたのも今なら分かる、互いに互いを思っているから臆病になってしまう。
「ありがとう希ちゃん」
「うちこそ、ずっと想ってくれてありがとうススムくん」
十年の歳月を経て、二人の想いが重なった。
「ハヤタ先輩と付き合うことになった!?」
放課後、アイドル研究部の部室で希がその報告をしていた。
「はっ! にこちゃん!?」
花陽は真っ先ににこを見た、恋愛はご法度とか言い出すのではないかと。
「私からは何も言わないわ、発破掛けたの私だし」
それには驚きだ、にこなら反対すると思っていたため。
「みんなここ最近のコイツの様子見てたでしょ?それが原因だったのよ」
「もしかしてみんな気付いとったんの!?」
絵里やにこだけじゃない、ここにいるみんなも希の変化に気付いていたのだ。
「まったく、人には素直になれとか言ってた癖に、自分のことになると」
呆れる真姫、ここにいる何人かは希のお節介を受けている、真姫もその一人、体育会系の関係を取り払って結束を固めようという提案にイマイチ乗り気になれなかった真姫、そのことで希に何度お節介の言葉を掛けられたことか。
「ごめん、心配掛けてもうたな」
「当たり前です、みんな希が元気ないことに気付いていたのですから」
「そうにゃ、毎日のようにやってたワシワシもしてなかったし」
「じゃあ復帰祝いってことでワシワシMAXいっとく?」
希は構えた、その手つき、指の動きはとてもイヤらしいもので、凛は怯えた。
「遠慮するにゃ! やるならにこちゃんにゃ!」
「なんで私を売るのよ! やるなら穂乃果にしなさい!」
「えーっ!?なんでーっ!?」
『ワシワシMAX』とやらを受けたくないがため仲間を売る三人、希はニヤッと笑った。
「なら三人纏めてワシワシMAXや!」
「やめておきなさい」
絵里が止めに入ったおかげでワシワシMAXは行われずに済み、三人はホッとした。
「だけどいいな~希ちゃん、好きな人と付き合えて、凛の好きな人は火星にいるから自分から告白もできないにゃ」
衝撃発言、凛はそういうのに疎いイメージがあったため、似た感じの穂乃果はもっと驚いた、一名、驚いていないのものがいるが。
「凛好きな人いるの!?」
「どんな人なのよ!?」
まさかの凛に食い付くにこ、そして同級生の真姫。
「んっとね、目立ちたがり屋で真っ直ぐで、どんな時も諦めないし絶対に逃げない人、だけどそれ以上に照れ屋で寂しがり屋さん、かよちんはそんな所ばっかり似ちゃったにゃ」
なぜそこで花陽が出るのか分からなかったが、花陽が答えを言う。
「小泉朝陽お兄ちゃん、花陽のお兄ちゃんです」
「花陽のお兄ちゃんが!?」
少し照れる凛、年上で身近な人物は要素さえあれば憧れる。
「小泉朝陽………確か甲子園に出場した学校の野球部にそんな選手が」
記憶を掘り返す海未。
「そうにゃ、朝陽お兄ちゃんは甲子園球児で凄腕のエースピッチャーだったにゃ」
「あのフォークボールの名手の………まさか花陽のお兄様だったとは」
小泉朝陽は高校野球会でとても有名で、一時期、ニュースに何度も取り上げられた。
「火星にいるって言ってたけど」
「うん、お兄ちゃん、スーパーGUTSの隊員で、こっちにはいないんだ」
こんな身近にもTPCに関わりを持つ人物がいるとは思わなかった、知っていれば花陽や凛にいろいろ聞きたかったと思う希。
「そういえばハヤタくん、スーパーGUTSに研修に行ってたって話してたわよね?」
「うん、そしたら花陽ちゃんのお兄ちゃんに会っとるね」
スーパーGUTSに研修に行ってたのだ、必ず会っているのが分かっているため、かもとか使わなかった。
「好きな人、か………」
呟くことりは窓から空を眺めてから海未を見る。
「あの子、今頃どうしてるかな………」
なぜ海未を見るのか、その理由が分かるのは穂乃果と海未だけだった。
「さて、そろそろ練習始めましょうか、暑いから水分補給忘れないように」
ここで話は切り上げ、練習に入るのだった。
練習後、支度を終えて学校から出ようとすると。
「あ、ススムくん」
校門の前でススムが待ってた。
「練習お疲れ様希ちゃん」
「待っててくれたん?」
「ちゃんと一緒に帰りたかったから」
この前は逃げてしまったのでそれの穴埋めのつもりだろう。
「ハヤタくん、希を悲しませたらここにいる全員が承知しないからね?」
ここで一言言っておきたいと思った絵里、全員、絵里と同じ気持ちだった。
「りょ、了解!」
さすがに八人の気迫には圧倒されてしまい、ススムは敬礼までしてしまった。
「ん~………」
「かよちんどうかしたかにゃ?」
「え?ちょっと………ハヤタ先輩が朝陽お兄ちゃんと雰囲気似てるかな~って」
先ほど話した兄、だが、ススムとその兄では性格は正反対のように思えた。
「そっか、花陽ちゃんは朝陽さんの妹だったんだ」
「はい、お兄ちゃんは元気でしたか?」
「元気元気、元気過ぎて火星の名所に連れ回されて大変だったよ、キャッチボールした時なんて全力フォークボール投げてくるし」
やはりスーパーGUTSへの研修の時に花陽の兄と一緒になったようだ。
「雰囲気似てるって言ってもね、僕はあの人ほど真っ直ぐじゃないよ、臆病で逃げちゃうし、あの人は何があっても絶対に逃げない、僕なんかと違って」
「ススムくんまたそんなこと言って、自分なんかって言ったらあかんよ?」
「その言葉、まんま返すよ?」
ボケとツッコミと言ったところか、息がピッタリだった。
「さ、私達は邪魔だろうし早く帰るわよ」
「そうね」
「私達は退散しますが、高校生らしい節度を持ったお付き合いを心掛けるように」
最後に海未が注意して他の八人はそそくさとその場を後にした。
「高校生らしいって海未ちゃんの高校生らしいってどこまで?」
「海未ちゃんのことやから手を繋ぐまでやない?」
それは健全過ぎである、せいぜいキスまでは許して欲しいところ。
「家まで送っていくよ」
「あ、そしたら家に上がってく?」
「いいの?」
「うち独り暮らしやからお茶だけじゃなくて夕飯もご馳走するよ?」
「ホント?僕も独り暮らしだから助かるよ」
「じゃあ帰ろうか?」
「うん」
二人は歩き始めた、手を繋いで。
「あ、この道僕も使ってるよ」
「そうなん?朝会わないのはタイミング合ってなかったのかな?うち、朝練あるし、神社の掃除もよくしてるし」
希の自宅に向かっているはずだがススムは道に覚えがった。
「ここがうちのマンションや」
「え」
希が暮らしているマンションに到着したススムは固まった。
「どうかしたん?」
「ここの三階………僕の部屋」
「マジ?」
「マジ」
どれだけタイミングが合ってなかったのか、まさか同じマンションに暮らしていたとは。
「挨拶回りした時にいなかった部屋、希ちゃんの部屋だったんだ」
「そういえば引っ越しのトラック来とるな~と思ったらススムくんやったんや」
驚きを通り越して感心してしまった、この偶然に。
「部屋、入ろっか?」
「そうだね」
『小泉朝陽』…スーパーGUTSに入隊する花陽の兄、身近な男性だったことから凛の想い人となるが、火星にいるためまったく会えない、元高校球児で、ストレートとフォークボールは天下一品、数多くの三振を出してきた、因みにスライダーも投げられ、その速さから高速スライダーとなっている。お調子者の目立ちたがり屋だが、凛の言うとおり寂しがり屋、父親が行方不明となった日、朝陽は自分が花陽を守るんだ、と決意し、泣かないようにしていたらしい。