「で、なんでにこ達まで付き合わされなきゃなんないのよ?」
灰色の雲の下、とある河川敷、そこにススム、希、そしてにこと絵里もおり、ビデオカメラを回していた。
「たまには付き合ってぇな、一応部員なんやから」
「部員って言ってもにこ達は幽霊部員なんですけどー?」
そうは言うがそれでも付いてくるという、人が良いのか、暇なのか、両方であろう、絵里に至ってはお目付け役。
「だけど、どうやって竜巻を調べるの?」
「一応それは手配してある、そろそろかな?」
PDIを取り出し、メッセージを確認するススム、すると、近くに一台の車が停まる、ドアにVTLと書かれていることからVTL隊の車だとすぐに分かる。
「お待たせ! 頼まれてたもの持ってきたよ!」
中から出てきたのは渋川だった、手にはアンテナや風見鶏と天気に関係した器具が付けられ、更にはタブレットまで取り付けられたガラクタの寄せ集めのような装置を持っていた。
「あ、渋川さんお待ち………」
ススムが迎えの声を掛けようとしたが。
「一徹伯父さん!」
「一徹伯父さん!?」
希が先に口を開き、ススムはその呼び方に驚いた。
「希ちゃんじゃないか、久しぶり、元気してた?」
「元気元気、伯父さんこそ元気そうやん」
「まぁね、てかまだ変な関西弁使ってるの?」
親しげに話す二人、どういう事なのかススムは質問する。
「え?うちの伯父さん」
「俺の姪っ子」
予想はできていたが、面と向かって言われると驚きを隠せない、そう、この二人、親戚の伯父と姪の関係だった。
「てか希ちゃんとススムくん、知り合いだったの?」
「ほら、芭羅慈村で友達になった子がいるって話したやん、その時の子がススムくん」
芭羅慈村に派遣され、そこで出会ったススムがまさか希の友達だったとは思わなかった、友達の話は聞いていたが、名前までは出していなかったため今まで分からなかったのだろう。
「ほえ~世間は狭いな~かれこれ十年ぐらいの付き合いになるのに、そんな接点があったなんてな」
「ははは、そうですね」
乾いた笑いをこぼすススム、唖然としていた、まさかこんな近くに希の親戚がいたとは、名前を話していればすぐに会えたのではないかと思えてしまう。
「ドンマイね」
同情するにこは背中を叩こうとしたが身長的に無理なため、腰を叩いていた。
「てことは、これって希ちゃんが頼んだってこと?」
ガラクタの寄せ集めのような装置を高く上げる渋川。
「まぁ、そうなりますね」
「もしかして例の竜巻調べようとかしてるわけ?」
この装置がどんなものかを知る渋川は察した、昨日の事件に関係する竜巻を調べようとしていることに。
「そうだけど?」
「まったく、超常現象とかスピリチュアルなことに目がないんだから、てかススムくん、どうして止めなかったの?危険なの分かってるよね?」
「そうなんですけど………」
苦笑するススム、今朝の話をし始める。
「竜巻を調べたい!?」
「うん、太平風土記の悪魔の風も気になるし」
「ん~だけどな~」
竜巻が危険な現象だ、前に約束した通りこれは反対しなければ、調査するなら自分一人で、と考えたが、すると、希は姿勢を低くして上目遣いをしてくる。
「ススムくん、おねがぁい」
「よし分かった、希ちゃんは僕が守るよ」
「「チョロッ!?」」
呆れるほどチョロかった。
「ことりちゃん直伝やで」
「なんてもん教えてるのよあの子」
「恋人にはこれが一番やって」
ことりのその話にいろいろ突っ込みたい所があるが、その前に渋川が。
「なんで朝から一緒にいるの君達は?」
そこが気にならずにはいられない伯父さんはススムのチョロさよりもまず、そこを指摘した。
「引っ越したマンションが希ちゃんも住んでるマンションで、それと………」
「付き合ってるんようちら」
「マジで!?」
それにも驚きで目を丸くする渋川、父親とかならば揉めそうな場面ではあるが、そこは伯父、それも彼氏の方もよく知っているためそんな事はなく。
「まぁススムくんなら安心か、その歳でGUTSに入ってるぐらいだし、それに………この話はしなくていいか」
渋川もまた、ススムがティガだと知る人物だった、この場ではその判断は当たりであるが、二人きりでもその判断をしていただろう、だから十年間今まで二人の関係に気付かなかったのだろう。
「それで、それが例の装置ですよね?」
「ああ、急拵えだからガラクタの寄せ集めみたちになっちまったみたいだけど、イデさんが開発した奴だ、性能は間違いないはずだ」
渋川は竜巻を調査する装置『ストームチェイサー』をススムに渡した。これを開発した『イデ・ミツヒロ』はハヤタ達と同じ元・科特隊員で、柔軟な発想で様々な発明を行い、歴代の防衛チームを発展させていった、今はVTL隊に所属しており、日本支部の責任者を務めている。
「さすが科特隊の息子、そういう繋がりがあるのね」
「まぁね、イデさんには昔からお世話になってるから」
ストームチェイサーを起動させ、調査を開始するススム、渋川も調査を見守るため、この場に残ることにした。
「そういえばなんでここを調査することにしたの?竜巻が発生する場所なんて分からないのに」
疑問を口にする絵里、根拠があってこの場を選んだのだと考えた。
「うん、SNSで鳥を見たとかそんなつぶやき探して、それで画像付きのつぶやきを見付け出して、背景から場所を特定したのがここなわけ」
船員の「鳥を見た」という証言から、似たようなつぶやきがないかをSNSで捜索、その中で信憑性が高いつぶやきを探しだす、画像があれば背景や日の位置で簡単に場所が特定できる、ススムはそれを見付けるとタケルに場所の特定をしてもらい、この場所を導きだしたのだ。
「闇雲ってわけじゃないのね」
「うん、電離層の怪獣となるとちょっとの事で刺激されて凶暴化しちゃうから、早くなんとかしないと」
少し浮かない顔をするススム。
「ススムくん、まだあの事を?」
その表情の理由を知る渋川は問い掛けた。
「気にしてないと言ったら嘘ですけど、自分にできることをしないと」
「………そっか、そうだよな」
この十年間でいろいろな事が起き、それに関わってきたもの達の会話だった。
(ホンマ、この十年間でいろんなことあったんだ)
その会話に自分は入れない、近くにいるのに遠い所にいる、希は寂しさを感じていた。
「希?」
そんな僅かな変化に気付く絵里もまた、深く入り込めない一人だった。
(なんか遠慮してるわね二人………ん?)
そんな二人の心境を察するにこ、すると、目に何かが映り込み、空を見上げると何かが黒い雲を渦を巻いていくように引いていく光景が見えた。
「何よアレ」
指を差すにこ、その方向を見た時には暗雲となり、雷鳴が響き始めていた。
「ッ!」
その雲の中で何かを見付けるススムだが。
「ストームチェイサーが反応してる!」
同時にストームチェイサーが反応する。
「低気圧反応が920!?ここから距離約100メートル、複数の竜巻が発生、どれも風速150!?」
その数値に驚くススムと渋川、暗雲の中心から複数の竜巻が発生、建物や車を巻き上げていく。
「まずい、竜巻が近すぎる!」
「渋川さん車を! みんな乗せてここから逃げましょう!」
「そうだな、みんな、車に乗ってくれ!」
渋川は自分が乗ってきた車、『VTL隊専用車』に希達を乗せ、最後に渋川は運転席、ススムは助手席に乗り込むと、渋川はアクセルを踏んでVTL隊専用車を走らせた。
「こちらススム! T4エリアで複数の竜巻発生しました!」
PDIで本部に連絡するススム、そこで急にハンドルを切られて横に傾く。
「うわっ!?」
「伯父さん気を付けて運転して!」
「気を付けろつったってな希ちゃん!」
竜巻により様々な物が吹き飛ばされてくるため、それを避けるために荒い運転となってしまっていた。
「前! 前~!」
にこが叫ぶ、前方に吹き飛ばされてきた車が落ちてきて爆発、避けきれなかったが、その爆炎の中を突き抜けただけで収まる。
「あ、危な………い!」
だが、まだ危険が続いていた、希が危ないと言い掛けたがもう遅く、VTL隊専用車は目の前に発生した竜巻に巻き上げられ、宙を舞う。
「にこぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!?」
「エリチカおうち帰る~!!!!!!」
二人とも涙を浮かべながら絶叫、VTL隊専用車はどんどん地上から離れていき、落ちたら全員助からない高度に達していた、そこに、目の前に後ろ向きに伸びる赤い角を持ち、巨大な翼を広げた鳥や龍に似た姿の青い怪獣が通り過ぎる、にこは咄嗟に持っていたビデオカメラで撮影を始める。
「怪獣!?」
「翼(バッサー)!」
その怪獣を見た希は太平風土記に記載されていた妖怪の名前を叫んだ。
「バッサーって!?」
「日本太平風土記に残る風の妖怪や! 描かれてた絵とそっくりや!」
『魔風鳥獣キングバッサー』は咆哮を上げながら翼を大きく羽ばたかせる、すると、それに伴い、竜巻がまた発生する。
「もしかしてこの竜巻騒ぎってあの怪獣が!」
「太平風土記にも嵐を起こして滅ぼすって書かれてたから犯人はあの怪獣やろう」
一連の事件の犯人が分かったが、このままでは希達の命が危ない。
「渋川さん」
「しょうがない、頼んだぜススムくん」
短い会話だけで察した渋川、後ろの三人に気付かれぬようにドアのロックを解除、ススムもシートベルトのロックを外し、ただ刺さっている状態にするとあたかも揺れで傾いたようにドアに寄り掛かり、ドアを開けて外へと飛び出した。
「ハヤタくん!」
まさかの事で驚く絵里とにこ、だが、希は気付いていた、ススムは、渋川もわざとこうしたのだと、そうでなければ自分達は足すから泣きと分かっていたから。
「か、怪獣が来る!」
再び前を向くと、キングバッサーが前から向かってくるのが見えた、このままでは地面に落ちる前に終わってしまう、そう思われたその時、下から光が広がり、拳を突き上げた光を纏うティガ・マルチタイプがそこから飛び出し、下からキングバッサーをその拳で打ち上げ、吹き飛ばした。
「ウルトラマンティガ!」
ティガの登場に不安が少し和らぐ、ティガはすぐに振り向き、希達を助けようとするが、背中に稲妻状の光線が当たり、火花が飛び散る。
「風の妖怪なのに光線出しやがったぞアイツ!」
「そこ突っ込むとこ?」
今の光線はキングバッサーが角から放ったもので、渋川は風以外のもので攻撃したキングバッサーに突っ込みを入れたが、にこがそれに突っ込んだ。
『くっ………ハッ!』
ティガはハンドスラッシュを連続発射して攻撃、だが、キングバッサーは横に飛んで回避、頭の角を光らせてそこから放電光線を発射するが、両腕をクロスして、その交差した部分で攻撃を防ぐウルトラクロスバリヤーで放電光線を弾くとまたハンドスラッシュを発射するがキングバッサーはティガに向かって突撃、ハンドスラッシュの下を飛んで寸前で回避すると高速でティガの横を通り過ぎた、その瞬間、右腕から火花が大きく飛び散った。
「ぶつかってないのになんで!?」
「もしかして鎌鼬!?」
そう、ティガが食らったのは鎌鼬、空気の刃、真空刃、もっと分かりやすく言えば衝撃波だった、キングバッサーは高速で飛行する事により衝撃波を発生させることができるのだ。
「それはいいんだけど私達、落ち始めてない?」
青ざめる絵里、万有引力の法則が発動してVTL隊専用車が落下を始めていた、ティガはすぐに助けに向かおうとするがキングバッサーは旋回、再び迫ってくる、遠ざけようとハンドスラッシュを連続発射するがキングバッサーはそれを掻い潜る、このままではまた衝撃波を受けてしまうと思われたその時、緑色のレーザーが飛んでくる、キングバッサーはそれを回避して後ろに下がる。
『姉さん! オオガワラさん!』
駆け付けたのはツカサとオオガワラが乗る二機のガッツウイング1号だった。
「怪獣確認! って渋川さん!」
「希ちゃん達までいるわよ!」
二人はここでキングバッサーと戦うためにティガに変身したのではないと分かった、これはティガにしか助けられないと察した。
「竜巻に巻き込まれないように注意して!」
「分かってるよ!」
キングバッサーの放電光線、発生させる竜巻を避けながら攻撃を行い、注意を引いくとティガは両腕を横に広げ、光の線を発生させると両手を胸の前で揃え、右手を肩の高さまで掲げ、発生した光は右手に集結していくと薄紫色に光る、ノコギリのような刃が並ぶリングが形成される。
『タァーッ!』
右手を振り下ろし、光のカッター光線・ゼペリオン光輪を発射、キングバッサーは避けようとしたが、右翼を霞め、それに怯んだ。
「ススム早く!」
それを聞いたティガは頷くと急降下、VTL隊専用車に手を伸ばす。
『届けぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!』
そして、ティガはVTL隊専用車を掴んだ、そして、足を地面に向けてゆっくりと降下していく。
「ギュアァァァァァァン!!」
ゼペリオン光輪を受けたキングバッサーは分厚い雲の中へと入っていく、ツカサ達は追撃するべく、雲の中へと入っていった。ティガはVTL隊専用車を地上に置いたその時。
『グッ!?』
ティガは右肩を押さえた、同時にカラータイマーが点滅を始めるとすぐにその場から飛び去った。
「私達は助かった、けど」
ススムは助からなかったと浮かない顔をするにこだったが。
「おーい!」
声が聞こえてきた、振り向くとそこには左手を振りながら走ってくるススムの姿があった。
「アンタなんで!?」
「ウルトラマンに助けてもらったんだ」
ちゃっかりと自分だけ助かってと思うにこは思わず右腕を叩いた。
「あだっ!?」
すると、ススムはものすごく痛がる素振りを見せた。
「ん?どうしたのよ右腕?」
「ティガの手から降りる時に転んじゃって、それで」
適当に言い訳をするススム、にこは少し考え込んで沈黙するがすぐに口を開いた。
「ふ~ん、そう」
何か納得がいかないにこだった。
その後、通信が入りキングバッサーを見失ったと報告を受け、GUTSは正式に魔風鳥獣バッサーと命名する事を決定、すぐに対策を練り始めた、そして、ススム達は渋川に自宅へ送られ、ススムに至ってはすぐに希の部屋に入っていた。
「ススムくん、顔色悪くない?」
「そ、そうかな?」
「そうやよ、にこっちに軽く叩かれたぐらいで………まさか」
思い出すのはキングバッサーの衝撃波で右腕から火花を散らしたティガの姿、希はすぐにススムの服の袖を掴んで捲る、目に入るのは右腕に伸びる鋭い傷で、そこから血も流れてた。
「やっぱり、だからにこっちに叩かれたぐらいで痛がってたんだ、座ってて、救急箱持ってくるから」
希は救急箱を取りに行くため奥に入り、ススムは言われた通りにソファーに座る、しばらくすると希は救急箱を持ち、リビングに入り、横に座ると手当てを始める。
「鋭い傷、ホンマ鎌鼬みたい」
「奴は高速で飛行することで鋭い衝撃波を発生させるんだ、まるで鎌鼬みたいな」
だから悪魔の風と呼ばれているのだろう、それ以外に竜巻を発生させる能力もある、そして、放電光線、まさに天の怒りだろう。
「電離層の怪獣はちょっとの刺激で凶暴化するんだ、今までバッサーが怒らなかったのが不思議なぐらい」
「マイクロ波問題やね」
電離層の怪獣はキングバッサー以外にも存在する、そのほとんどは通信等に使われるマイクロ波に敏感で、それで怪獣化した電離層の生物もいた、キングバッサーもまた、マイクロ波に刺激された怪獣と考えれた。
「地球はうちらだけのもんやないからね、ちゃんと人間以外の動物の事も考えてあげんとな」
十年前はその問題が発覚した時は電離層に住む生物を一掃しようなんて過激な提案もあった、だが、数年後にはマイクロ波問題を解決しようと動き出すのだが、人間至上主義の者達はやり方が温いと反対、一掃を主張していた、希はそんな事を考える人物ではないと分かっていたが嬉しかった。
「だけど、あの怪獣が誰かの命を奪うなら、僕は戦う、人間として、ウルトラマンとして」
そう、いくら人間のせいだからと言って他人の命が奪われていい訳ではない、ススムはどんな理由があろうと戦う決意を固めていた。
「ホンマ、この十年でいろんなことがあったんやな」
「希ちゃん?」
「伯父さんと話してる時、実感したんや、ススムくんのこと全然知らないんだなって、そしたらなんか寂しくてな」
「そしたら僕もだよ、僕も希ちゃんのこと全然知らない、だけどもっと知りたいって思ってる、今までの思い出も全て」
「うちもや、ホンマ、うちら知らない事だらねやね」
「ホントだね」
よくそんなんで付き合い始めたと思うが、お互いが好きだという気持ちは本物、だからこそだった。
「いっぱい話さんとな、はい、包帯巻き終わったよ」
「ありがとう希ちゃん」
『渋川と希』…この小説では親戚同士の設定、ナオミのポジションが希となっているため。
『イデ・ミツヒロ』…科特隊の隊員だった天才発明家、お調子者で剽軽に振る舞うが、本当は繊細で、自身の発明に自信が持てなくなった事もあるが、発足されていった防衛チームにはいなくてはならない存在となり、VTL隊日本支部の責任者となり、GUTSにも協力、ススムにも個人的に協力し、親しい渋川に発明品を届けてもらっている。
『VTL隊専用車』…科特隊専用車のVTL隊版、攻撃能力はない。
『魔風鳥獣キングバッサー』…悪魔の風の異名を持つ妖怪の名前、魔王獣ではないためマガクリスタルもなく、名前からマガを取り、魔王獣の旧設定であるキングを付け、普通の怪獣として扱う、能力は竜巻発生だけではなく、飛行するだけで衝撃波を放ち、全てを吹き飛ばし、角から放電光線を発射する、電離層の怪獣なため、マイクロ波にとても敏感、その事にススムは少し、トラウマを抱えている。
『ゼペリオン光輪』…ゼペリオン光線のエネルギーをリング状にしたカッター光線、ティガ版の八つ裂き光輪、ウルトラスラッシュ、二枚になることも可能。