翌日、東京の空は分厚い灰色の雲に覆われていた。
音ノ木坂学院のアイドル研究部の部室にて、にこがパソコンの画面をじっと見つめていた。
「何見てるのにこ?」
そこに、絵里が入ってきて尋ねてくる。
「昨日の映像」
にこが見ていたのは昨日のキングバッサーとティガの戦いの映像、昨日の恐怖体験を思い出し、絵里はまた青ざめていく。
「昨日の………なんで昨日の?」
「ちょっとね」
画面にティガがキングバッサーの衝撃波を受け、右肩から火花を散らす映像が流れ、にこの目付きは鋭くなる。
(やっぱり、同じ所だ)
それを見てある考えが過ると、強い風が吹き、窓ガラスをガタガタと揺らす。
「風、強いわね」
「まだあの怪獣がこの空にいるからよ」
空を見上げ、目に入るのは灰色の雲、昨日のような死に直面する恐怖体験をしたからだろうか、異様に青空が恋しくなる。
「ホント、嫌な空ね」
その雲の上では青空が広がっていた、そこに、二機のガッツウイング1号が飛行しており、ガッツウイング2号はハイパーモードとなり、待機していた。
「作戦を説明する」
ミズノが操縦し、通信席にタケルが座る2号機に乗るムナカタが作戦の説明を始める。
「レジストコード魔風鳥獣キングバッサーは電離層に生息する怪獣だ、そのため、マイクロ波に敏感だと考えれる、シンジョウ、オオガワラがマイクロ波を放射し、バッサーを誘導、そこでツカサがハイパワーニードルレーザーで攻撃、2号は待ち構えてデキサスビームで攻撃する、作戦開始!」
ムナカタの合図が響き、返事をする隊員達、まずはシンジョウとオオガワラが乗るガッツウイング1号が加速して先行する。
「マイクロ波、放射します」
ガッツウイング1号に搭載された発生装置からマイクロ波を発生させる。
「シンジョウ副隊長! 四時の方向から近付く生命反応をレーダーで確認しました!」
タケルからの報告、食い付いた、皆の頭にその言葉が過ると雲が盛り上がり、中からキングバッサーが姿を現す。
「出てきたな!」
ガッツウイング1号は更に加速、キングバッサーはマイクロ波を放つガッツウイング1号を追跡する。
「ツカサ追え!」
「了解!」
ムナカタの指示でツカサはキングバッサーを追跡。
「早くしてくれよツカサ!」
放電光線を放ってきた、それを避けていくオオガワラ、追い付かれても終わりだが、追い抜かれたら衝撃波で終わる、このまま飛行していたらいずれは追い付かれる、早めに決着をつけて欲しいところ。
「発射!」
機首から通常のニードルレーザーよりも強力な青く光るハイパワーニードルレーザーが発射され、キングバッサーの翼の付け根に命中、減速した事により、オオガワラは操縦桿を後ろに倒してガッツウイング1号を上向きにして上昇、それからターンして下向きに降下、上からキングバッサーを攻撃し、横切る。
「今だミズノ!」
「デキサスビーム発射!」
そこにデキサスビームが発射される、これで仕留めた、誰もがそう思ったその時、キングバッサーは体を傾けてデキサスビームを避けてしまい、急降下して雲の中へと飛び込んだ。
「何っ!?シンジョウ、マイクロ波は!」
「放射し続けてます! それなのに!」
キングバッサーはマイクロ波を無視して降下した、原因は何かと考える。
「隊長、今、我々の現在地、音ノ木坂エリア上空!」
そう、ガッツウイングが飛行していたのは音ノ木坂エリアの上空だった。
「絵里アレ!」
教室に戻ろうとしたにこ達の目に急降下してくるキングバッサーが目に入った。
「昨日の怪獣!」
キングバッサーは飛び回ると高層ビルの天辺に着地し、天に向かって咆哮を放つ。
「か、怪獣だ!」
「逃げなきゃ!」
怪獣の出現にパニックになる生徒達、このままではまともな避難ができなくなると思われた、そこに、放送が流れる。
「怪獣が出現しました、生徒の皆さんは先生、生徒会の指示を聞いて落ち着いて避難して下さい、繰り返します」
「ススム……」
声の主はススムだった、ススムはキングバッサーの出現に気付くとすぐに放送室へと向かったのだ。
「分かったわ、みんな! 自分が先に逃げようとか思わないで! 怪我するわ!」
自分の役割を理解した絵里は生徒達に呼び掛ける、我先に逃げようなんて考えていたら転んで怪我してしまう、階段だったらなおさら危ない。
「そやよ! みんな~落ち着いて、ゆっくり、一人ずつ避難してな~!」
希の声が聞こえてくる、ススムも何度も繰り返して放送室から注意を呼び掛けていく。
「にこも落ち着いて避難して」
「何言ってるのよ、下級生を避難させるの、三年生の役目でしょ?私は一年生の様子見てくるからアンタは二年生よろしく」
「にこ………うん、分かったわ」
にこも避難誘導に参加、その最中、キングバッサーは放電光線を放ち、地上に放電光線が雷のように降り注いでいき、炎が上がる。
「ギュオォォォォォォン!」
まるで天の怒りだと言わんばかりの攻撃と咆哮、放電光線を止めると飛び上がり、高層ビルに正面を向けて滑るように急降下、発生した衝撃波により高層ビルは上から崩壊を始め、キングバッサーが水平に飛び始めた時には高層ビルは完全に崩壊、今度はキングバッサーが飛ぶことにより建物や車、看板と何もかもが吹き飛ばされていく、更にはあの鋭い衝撃波は左右のビルを切断していき、大惨事となる。
「なんてことだ!」
そこにようやくガッツウイングが駆け付けるが、この惨状に歯を食い縛るオオガワラ、シンジョウは天井を叩く。
「これ以上奴に好き勝手させるな、攻撃開始!」
再びムナカタは攻撃を指示、GUTSは攻撃を仕掛けるが、高速で飛ぶためににレーザービームは命中することはなく、キングバッサーは我が物顔で飛び回り、被害を広げていく。
「こっちだ! 早く避難するんだ!」
各地ではVTL隊も避難誘導を行い、その中には渋川もおり、声を張って人々に呼び掛けていたが、顔に風で吹き飛ばされてきたチラシが覆い、前が見えなくなる。
「うわっ!?なんだこれ!?前が見えねー!?」
慌てふためく渋川、その頃、音ノ木坂学院では生徒達の避難が終わり、教職員達も避難を始めていた。
「ススムくん! 避難終わったよ!」
「こっちもよ!」
希達はススムに報せるべく合流、そこでふと空を見上げるとキングバッサーは上昇して旋回を始め、暗雲を発生させていた、あの旋回と発生する暗雲が意味するもの、それが分かっていたススムは何かを決意した目となる。
「分かった、みんなも早く避難して、僕は逃げ遅れた人がいないか確認するから」
それを言い残すとススムは学校の中へと入っていった。
「さあ、私達も避難するわよ」
自分達も避難しようとする絵里達、だが、にこはススムが走り去っていった方向を向いたまま立ち止まっていた。
「にこ、ボーッとしてないで早く行くわよ」
「え、ええ」
話し掛けられてようやく返事をし、後ろ髪が引かれる気持ちで避難を始める。
(にこっち、もしかして)
希はにこが何を気に掛けていたのか、なんとなく察していた。
屋上に出るススム、空には暗雲を発生させ、ぐるぐると旋回するキングバッサーの姿が目に入る、また竜巻を発生させられる、なんとしてでも防がねばならない、ススムはスパークレンスを取り出し、それを持った右手を突き出し、引いて両腕を十字に組むと右腕をゆっくりと大きく回してスパークレンスを頭上高く掲げる。
「ティガァァァァァァーッ!!!!!!」
内に眠る力の名を叫ぶとスパークレンスのカバーが展開、レンズから薄紫の光が解放され、輝きに包まれるとその中で姿を変えていき、右手の拳を突き出して巨大化していく、その光景はまるで、光の柱が立ったかのようだった。
「光………」
光に気付き振り向くにこ達、輝きが消えるとそこにはティガ・マルチタイプが立っていた。
「ティガが来てくれた!」
ティガの登場に喜ぶ絵里、だが、にこは何か考え込んでいた。
(まさかね)
(にこっち、勘ええからな)
自分の考えが確信に変わる希、すると、ティガはスカイタイプへチェンジ、ハンドスラッシュを素早く発射、キングバッサーはそれを回避すると、暗雲は四散し、竜巻発生は阻止された。
「ススム!」
ティガの登場に喜ぶのは絵里達だけではない、ツカサ達GUTSもだ、ティガの登場に頷くムナカタ、ティガはキングバッサーがいる空へと飛翔、ハンドスラッシュを連続発射していく、キングバッサーは連続で放たれる光弾を次々と回避していき、放電光線で反撃されるも、ティガは両手から放つ金色の光線・フラッシュボマーで相殺し、眩しい光が広がる。
「クア?」
光が消えるとティガの姿はなく、辺りを見渡すキングバッサー、そこに、真上から光が広がり見上げると両手を突き出して一気に急降下する光り輝くティガの姿が見えた、ティガは全身に光を纏い、マッハ7の速度で体当たりを仕掛けるウルトラ・ボディーアタックを炸裂、それを避けることはできず、それを食らい、更にティガはそのまましがみついて地上へと急降下、キングバッサーを地面に激突させてからティガは高く飛び上がって空中で反転し、それから地上に華麗に着地した。
「ギュアァァァァァァン!!」
咆哮を上げながら起き上がるキングバッサーは頭を向けて低空で飛行しながらティガに体当たりを仕掛けてくるが、瞬時にスピンキックを繰り出して側頭部にヒットさせて動きを止めると、足を途中で止めて反対に動かして連続でヒットさせた、次に素早くチョップを連続で振り下ろしていき、スピードを活かした連続攻撃で攻め立てていくとキングバッサーは反撃に翼を交互に横に振るっていくが、ティガはそれを見切り、体を後ろに引いて避けていく。
『ハッ!』
体を回転させ勢いを付けて、今度は足を突き出してのキックを炸裂させ、キングバッサーを後退りさせる、距離が離れ、放電光線で反撃されるも、側転しながら避けていき、止まると両手を瞬時に広げてエネルギーをチャージ、すぐさま右手を振るってランバルト光弾を発射して直撃させるも、止めには至らなかった。
「ランバルト光弾で倒せないなんて」
「メルバよりも強力ってことか」
キングバッサーは身軽さだけならず、持久力も兼ね揃えた怪獣だった、そのため、ランバルト光弾では止めにはならなかった、反撃にと翼を思い切り羽ばたかせ、突風を巻き起こし、植木や電柱、車などが吹き飛ばされ、次々とティガにぶつかっていく、それに怯むティガ、キングバッサーはすぐに飛び立ちまた低空飛行、今度はその足の爪でティガを切り裂いていき、ダメージを与えると足を引っ掛けてティガを転倒させ、その上に何度も降りて踏みつけていく。
「援護するんだ」
「了解!」
後ろからガッツウイング2号がレーザービームで攻撃、二機のガッツウイング1号も攻撃し、キングバッサーを怯ませるとティガは起き上がり、その足を掴んで地面に叩き付けるとマウントを取り、両手にエネルギーを纏い、同時に振り下ろすティガ・電撃チョップを打ち込んでいき、首筋から無数の火花が飛び散るが、キングバッサーも負けじと放電光線を発射、それを食らい、ティガは吹き飛ばされる、スカイタイプは身軽だがその分、持久力はないため、かなりのダメージを受けてしまった。
「角を攻撃するんだ!」
ムナカタの指示により、攻撃が頭部に集中、ハイパワーニードルレーザーにより、放電光線を放つ角は吹き飛び、攻撃手段を失うと立て直したティガが飛び上がり、右足を伸ばしてティガ・スカイキックを炸裂、ヒットさせると反転して飛び上がり、今度は前に向かって縦に回転してウルトラかかと落としを脳天に叩き込み、大ダメージを与えると着地して膝を地面に付けたまままたランバルト光弾を撃ち込んで追い打ち、バッサーは勝機がないと判断したのか、空へと飛び、逃亡を計るが。
『逃がすか!』
ティガはマルチタイプに戻るとゼペリオン光輪を発射、逃げるのに必死だったキングバッサーはそれを避けることはできず、右の翼が切断、青い羽を散らせながら落下し、地上に激突した。
「今だティガ!」
オオガワラの合図に反応したかのように、ティガは両手を後ろに引き、突き出すと交差、交差した所から光が放たれ、ゆっくりと横に広げていき、光の線が走り、カラータイマーに光が集結していく、ゼペリオン光輪と同じ集束のポーズだが、今から放つ技は違う、ゼペリオン光輪はその技を発生させた光線技で、本来は破壊光線として放つ光線技だ。
『タァァァァァァァア!!!!!!』
両腕をL字に組み、薄紫が掛かった白色の破壊光線、ウルトラマンティガ最強の必殺技・ゼペリオン光線を発射、キングバッサーに浴びせると稲妻が走り、光線が止まると大爆発を起こし、青い羽が飛び散る。
「よし!」
「やった!」
ティガの勝利に喜ぶツカサ達、すると、空を覆っていた雲が流れていき、青空が見え隠れする、そこから太陽の光が射し込み、ティガはその光に照らされ、ゆっくりと両腕を降ろしていく、その姿はまるで、歌い終わったアイドルがスポットライトに照らされるかのようだった。
「綺麗………」
その次々と光に照らされていくティガを見てにこは呟いた、その美しい姿に感動して。
光に照らされたティガはその場から飛び立ち、青空の彼方へと飛び去っていった。
「にこっちいつまで空見上げとるの?」
「えっ?あっ………そうね」
もうティガの姿はない、顔を降ろすと声が聞こえて振り返るとその先には手を大きく振って駆けてくるススムの姿があり、事後処理はVTL隊に任せ、ガッツウイングがダイブハンガーへと帰還するべく飛び去ると、それにも手を振るススム。
「おーい! みんな怪我とかない?」
「ええ、みんな無事よ」
「そりゃよかった」
「当たり前じゃない、ティガが来てくれたんだから」
素っ気ないにこ、確かにそうだが冷め過ぎではないかと思う、態度からしてウルトラマンへの過信とかではないようだ。
「さ、避難所に行くわよ、みんなと合流しなきゃ」
「そうね、行きましょうか」
家族や友達がいるであろう避難所を目指し、歩き始めると。
「綺麗でカッコよかったわよ、アイドルみたいに」
「え?」
ボソッとにこは呟いた、その呟きにきょとんとなるススム、希はクスッと笑った、本当に嘘が下手だと。
戦闘はガゾート戦をイメージして書きました、スカイタイプだから飛び回らせたかったのですが、地上戦のスカイタイプもスピーディーで好きなんですよね、ランバルト光弾だけでは倒し切れないので、魔王獣でなくてもバッサーは結構強い感じになりました、マガジャッパもこんな感じになるかと。
最後ににこっちが気付いてますが、それは次回に、にこっちはイケメン、異論は認めますが引きませんよ、次回もよろしくお願いします。