ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語   作:叶夢望

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深海王との戦いが決着する話です。


十七撃目 ヒーローとは何か

J市災害避難所のシェルターに隠れている住民は外に居るという深海王に恐怖を抱きつつ、ヒーローがやっつけるだろうとどこか安心しているようだった。だけどその安心は消え去り、絶望となった。

その深海王がシェルターをぶち壊し、災害避難所の中へと入り込んだのだ。ちょうど四人のヒーローがそこに居合わせていたので住民は安心したが、その四人のヒーローは内心ビクビクの恐怖心が彼らに襲いかかる。そのヒーロー達は怖くて避難したから戦う意思が無かったから目の前に大きく佇む怖い深海王の圧力が彼らの戦意をさらに削られていた。

その怯えた四人のヒーローをいとも容易くボーリングのピンを倒すように深海王が殴ったら四人のヒーロー達は吹き飛ぶというヒーローの姿に住民は戦慄した。

もうダメだ、ヒーローの四人が何も出来ずに倒れていく様にただただ絶望になっていた。しかしそんな彼らに希望という名の一筋の光が見えた。

 

「お前を排除する」

「うへぇ、お魚さんじゃないよぉ~。美味しくなさそう」

 

S級16位ヒーロージェノスとA級7位ヒーローユメの姿は住民にとって救いの手そのものであった。ジェノスは深海王の顔面に向かって高速で凄まじい威力をもった拳で殴り深海王を吹き飛ばし、数メートル先まで吹き飛ばした。しかしダメージを負ったものの深海王はすぐさまにジェノスの視界の外から殴る攻撃をしかけようとしたが、ユメは素早くその拳を小さな両手で掴み深海王をハンマー投げの要領でグルグルと高速回転し、遠心力を使って深海王を数メートル先まで投げ飛ばした。

その様子を見た住民達は大興奮して彼らの名前を大声で叫び喜びに満ちあふれていた。

しかしその喜びはまた絶望と化した。深海王はボロボロにながらも急に身体を再生させ、傷一つ残ってはいなかったのだ。深海王は雨を浴びると身体を活性化させる事が出来るのでその芸当が出来るのだろう。

 

「キレたわ、そこの坊やとおチビちゃんはただじゃ済ませないわ」

 

深海王は猛スピードでジェノスに襲いかかりジェノスは無意識的に蹴りや殴りを入れるが、深海王の拳による連打が強すぎてジェノスの身体の部品がボロボロとなり、深海王はジェノスの頭を掴んで更に一撃を入れた。上半身のみしか存在しなかった。

 

「次はあなたの番よ」

 

ジェノスを戦闘不能にして次はユメの番であった。ユメは身体をフルフルと震わせボロボロになったジェノスを見て涙を浮かべた。恐怖を感じた訳ではない、ただ好きなジェノスの変わり果てた姿に悲しさと寂しさを感じた。ユメの弱点の一つとして好きな人がボロボロになって倒れたら悲しくて悲しくて涙が止まらない弱点があり、全力を出せないのだ。

 

「ぅぅぅひっくひっく、お前なんか、ひっく、お前なんか、消えちゃえー!!うわあああんっ!」

 

ユメはジェノスの仇を討つように深海王の腕を拳による二撃で破壊したり深海王の脚を足払いで二撃与えては破壊してという行為を残像を作りながら深海王の身体を破壊していくけど悲しさと寂しさで泣いていたから全力を出せず深海王を倒せなかった。深海王は雨による再生能力を使い身体が治りつつ、ユメの小さい身体を力いっぱい殴り飛ばし、数メートル先まで吹っ飛んだ。

吹き飛ぶユメを小さな影がかばいながらキャッチし、地面に転がりながらも助けてくれた。その影の人物はC級1位ヒーロー無免ライダーであった。

 

「ナイスガッツだ。その小さな身体でよくみんなを守ってくれた。たいしたヒーローだよ、ユメちゃん」

 

無免ライダーは一般人より少しだけの実力がある。しかし、S級16位ヒーローとA級7位ヒーローが二人がかりでも倒しきれない怪物を彼が倒しきれる訳がない。だけど、今抱き寄せているわんわんと泣き叫ぶボロボロのユメの姿を見たらヒーローとして一人の男として見過ごせる訳がなかった。ユメを何とかあやし、無免ライダーは深海王をギロリと睨んだ。

 

「俺は正義の自転車乗り無免ライダー!お前を倒す者だ!覚悟しろ!魚人野郎!」

 

無免ライダーが深海王に勝てる事はない・・・それは本人さえ分かる事だ。C級ごときでは誰にでも期待されない事は分かる、一般人だし実力も無いし、その程度ではB級ヒーローに這い上がる資格は無い。しかし、誰かが助けて欲しいというならば彼はどんなに強敵でも立ち向かわないと誰が怪人を倒すというのだ?誰が怪人を抑えるというのだ?ならばヒーローたる彼がどんな強敵にでも立ち向かう勇気があった。その勇気に住民は心打たれた。頑張れ無免ライダー、やっつけてくれ無免ライダー、無免ライダーそいつに勝て、無免ライダー頼りにしてるぞ・・・そんな応援が彼の背を押してくれた。見てくれている。こんなC級ごときのたいしたヒーローじゃない自分を、A級やS級ヒーローが勝てない怪人相手でも応援してくれる住民を心から感謝した。

 

「うおおおおお!!!ジャスティスジャッジメント!」

 

無免ライダーは深海王をとにかく殴ったり蹴ったりした。もちろん効果が無かった。だけど、とにかく深海王に立ち向かった。でも、深海王はハエでも追い払うように無免ライダーを顔を殴り飛ばし、無免ライダーは戦闘不能になった。その様子を見たユメは怒りを感じた。何故自分は泣いているばかりで戦おうとしないのか?何故自分は深海王と戦わないのか?ジェノスや無免ライダーがやられたのに自分は何をしているのか?自分を自分で怒った。情けないヒーローだ、何がヒーローだ、何がいっぱい頑張るだ。そんな思いが募ったユメの怒りは爆発した。ユメの弱点の一つとして自分に対しての怒りにより思考回路がショートし自分でも何するか分からないので本来の実力以下しか実力が出せず、ただ闇雲に深海王に体当たりで突っ込んだ。

 

「さようなら、おチビちゃん」

 

深海王は大きい拳を大きく振りかぶりユメの身体めがけて大きい拳を思いきり殴りつけ、ユメは胃液を口から吐きながら吹き飛ぼうとしたが一つの影がユメをキャッチして何事もないようにユメを安全な場所へ座らせた。

 

「ぱ、パパ・・・ご、ごめんね、ジェノスくん壊れちゃった。わ、わたし、あのお魚さん倒せなかった、ぅぅぅ、ひっくひっく、ぅぇえええんっ!」

 

ユメは涙をポロポロと大量に流しサイタマは泣くユメの頭を撫でるも全然泣き止まなかったからただ事ではないと直感した。大好きな父親から頭を撫でてもらってもユメが泣き止まないのは相当に心が傷ついた証拠だ。サイタマはチラリと目線を流し上半身のみのジェノスや倒れている無免ライダーの姿を見て、再びわんわん泣いているユメの姿を見てサイタマは激怒して深海王をギロリと睨んだ。

 

「おい、魚人野郎。その二人を倒しあまつさえこの小さい子供を泣かしたのはお前か?」

「ええそうよ。そのおチビちゃんはワタシの腕や脚やら破壊したからお仕置きしなきゃね。だからそのおチビちゃんをよこしなさい?もしくはあなたもろとも殺してあげようか?」

「だまれ、魚人野郎消え失せろ」

「あなたがね!」

 

深海王はバカにされた怒りをサイタマを殴ろうとし、大きく腕を振りかぶった。しかし、サイタマの怒りによる一撃が深海王の胸を大きく風穴を空けて深海王は倒れた。その様子を見た住民達は驚いた。しかし、サイタマの実力はインチキかもしれないとざわついた。何故ならばS級ヒーローのジェノスやA級ヒーローのユメが深海王をボロボロとなりながらも手が出せないでいた。なのにC級ヒーローごときのサイタマの力が信じられる訳がなかった。避難した一人のオタク風の男性はその事をみんなに聞こえるようにニヤニヤと笑いながら語った。

 

「実はあの魚人は弱かったんだよ、その魚人よりもヒーローが弱かったんだよ。S級とかA級とかただの肩書きでたいした事ないよ。現にS級ヒーロージェノスはすぐにボロボロになったし、A級ヒーローのあの子供はただ泣いていただけ・・・あははっ、何が人を救うヒーローなんだって話さ。そんな彼らにボクらは募金してバカだよね?怪人を倒せなくて何がヒーローなんだい?もしそんなヒーローがボクらを守るって言ったって信用出来ないよね?んで今回の魚人退治には数々のヒーローが挑んだけどあのC級のハゲが一人でやっつけたんだろ?あははっ、これまであの魚人にやられたヒーローは無駄となった。だったらヒーローは時間つぶしが出来れば誰でもなれる、ヒーローによっては活動そのものをしていないヤツがいるらしいよ?そんな彼らにボクらは背を、命を預ける事なんて出来るのかい?」

 

オタク風の男性の言葉にユメはフルフルと身体を震わせた。そんなユメの手を握ったサイタマは首を横に振って何も言うなとアイコンタクトを送った。そしてサイタマは住民に聞こえるようにわざと大きい声で叫んだ。他のヒーロー達が深海王のスタミナを奪ったり傷をつけて深海王を弱らせたところをさも自分が深海王を倒したと叫んだ。更に自分の名を広げる為に深海王にやられたヒーロー達を救って証言を得たいと伝えた。つまりは深海王と戦ったヒーロー達を利用する悪いヒーローの立場になった。そんなサイタマを住民達は激怒した。ふざけるな、インチキだ、他のヒーロー達に謝れ、卑怯者などなど罵詈雑言の嵐であった。

 

「ぱ、パパ、いいの?悪者になっちゃうよ?イヤだよ、ダメだよ」

 

ユメは目に涙を浮かべてサイタマのマントを引っ張りワガママを言うけどそればかりは聞けなかった。だからサイタマは切なそうな顔で「ごめん、ユメ」と言うだけでありユメはポロポロと涙を流した。ヒーローなのに悪者になるなんて、大好きな父親が悪者になるなんて信じたくなかったのだ。だけど、ユメはサイタマが大好きだ。サイタマに向けて誰かが何と言おうとも、誰かがヒーロー止めろと言おうともユメだけは、いやジェノスもサイタマを認めなくてはならない。彼の事を大好きで慕っているからだ。

 

「ジェノス、ユメ、帰るぞ」

 

サイタマの切ない声にただただ頷くしかない二人であった。

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