ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語 作:叶夢望
J市魚人族襲来から数日が経ったある日の事、サイタマとジェノスそれに満面の笑みを浮かべるユメはスーパーにて買い物を済ませサイタマ宅へと向かっていった。しかし、その自宅付近にてパラシュートが落ちていてそこにはやや大きい段ボールがあった。
ジェノスが解析するにはサイタマ宅付近に配達員が来れないようで空から落とすというのだが、風の動きや鳥など全ての障害を読みきり送り届けるというヒーロー協会の無駄な才能であるというのだ。
それでその段ボールを持ってサイタマ宅のリビングへと入り、早速段ボールを空けるとたくさんの手紙が入っていた。それは住民のファンレターであり、それを楽しみにして力とするヒーローも少なくはないのだ。ジェノスやユメには大量のファンレターが届いていてジェノスは何事もなく読みあさったが、ユメは大興奮して手紙を読みあさり一通読んでは「でへへ~」とだらしがない笑い声をもらしてはもう一通の手紙を読んで「でへへへ~」とだらしがない笑い声を出し、ヨダレがたらぁと垂れるくらい顔がデレデレと照れた表情を浮かべていた。しかしサイタマのファンレターはさんざんであった。ヒーローやめろ、卑怯者、インチキなどなど批判殺到であった。
「ヒマだなコイツら。俺なんかの為に手紙や切手を買ってしかも俺の住所まで調べて手紙を書くなんてな」
サイタマは何も感じずもう一通のファンレターを見つけた。そのファンレターは彼を応援していた。その手紙内容はシンプルに「ありがとう!」と大きく綴られていた。サイタマにはその手紙主に心当たりは無かったので、もう一通ヒーロー協会からの知らせがあるとジェノスから手紙を渡され、それを受け取り開くと、C級1位ヒーロー昇格の知らせとZ市ヒーロー協会支部に来いという知らせがあった。
サイタマはヒーロー協会支部に顔を出すと、どうやらB級ヒーローになる権利があるからB級ヒーローにならないかという誘いにサイタマはその誘いに乗った。ジェノスがS級でユメがA級なのに自分だけC級なのは些か居心地が悪かった。
一方、そのサイタマの様子を観察するように別室で数人の職員がサイタマを見て彼の噂をしていた。例えばプロヒーロー認定試験時係員を買収したとか係員のストップウォッチをすり替えたとか他の受験者を脅して受験者の数を大きく減らしたなどなど悪い噂が流れていた。
しかし、それが嘘でも本当でも関係がなかった。B級ヒーローにはランク争いが非常に活発であり、ヒーローなのにヒーロー潰しはザラであった。
そんな事を全く知らないサイタマはB級ヒーロー認定許可状を手にいれた。サイタマは最下位の101位となったけど、特に悔しがる訳でもなく、地道にランクを上げようと決意し、小腹が空いたので近くのおでん屋に顔を出した。
「へい、らっしゃい」
おでんの良い匂いがサイタマの鼻を擽り、お腹が少し減ったので軽く食べる事にした。B級ヒーローの祝いとしてサイタマは店主に適当な物を頼んでいた。するとサイタマの近くの席にドカッと座る腕を骨折したからかギプスを巻き、顔にはガーゼなどを貼り付けた丸めがねを掛けた青年が現れた。その青年は無免ライダーであり、サイタマにありがとう!という手紙を送った送り主であった。
「飲まないのか?いや、飲めないのか?」
「ああ、どうやら酒に弱いし、味に慣れなくてな」
「そうか、今日はキミを探していてね。手紙では伝えきれない事があるんだ」
「お前!あの手紙の主か!」
「ああ、それよりも昇進祝いだ!俺のおごりで何でも注文してくれ!」
「じゃ、もずくをくれ!オヤジ!もずくをくれ!」
サイタマと無免ライダーはささやかに昇進祝いを開き、しばらく雑談を交わした後、サイタマは満腹となりサイタマ宅へと戻るとユメがサイタマの身体に飛びつくように抱きつき、クンクンとサイタマの身体の匂いを嗅いだ瞬間、頬を膨らませて怒っていた。
「むぅ、なんか良い匂いするけど?おいしそーな匂いするけど?・・・おでん?」
ユメは鼻が良かった。しかも美味しそうな匂いには敏感であった。犬みたいな嗅覚したユメにサイタマはお土産としておでんの詰め合わせを与えた瞬間、ユメは大喜びになった。ユメはおでんをそれほど大好物ではないが、サイタマからお土産として出され、それが食べ物ならばそれが非常に嬉しいのだ。ユメは早速リビングへと移動し、おでんの詰め合わせの容器を開けて、ユメにおでんの良い匂いがユメの鼻に直撃し、ユメのお腹がぐるるると可愛い音がなり、胃もおでんはまだかと待ちわびているようだった。
「わぁ!がんもとか巾着とかハンペンがある!やったぁ!はふっはふっはふっはふっ!うまーっ!」
ユメは満面の笑みを浮かべておでんを次々と胃の中に詰め込みおでんを堪能していくのであった。つまりはユメはおでんの誘惑に大敗してしまった。
それから数日が経ったある日、バングが道場に遊びに来いと言われたサイタマ、ジェノス、ユメはそのバングの道場へと向かうが、その道場へと行く道が険しかった。目の前には断崖絶壁の岩がありそこには三千段以上はある階段が傾斜七十度以上はある急な階段の頂上にチョコンと小さな道場らしき家があった。
しかし、三人はものともせずサイタマはポケーッとした顔でジェノスは無表情でユメはニコニコとサイタマとジェノスの手を握って遠足だと無邪気に楽しんでいた。そんなこんなでバングの道場の玄関へと普通に到着した三人はバングの案内のもと全面畳の道場の中へと入り、適当な場所に座わり、面白いものを見せるとバングが言うのでサイタマとジェノスは興味なさそうな期待しない目で見る事にし、ユメはサイタマの膝の上にチョコンと座って目を輝かせていた。ユメは子供なので面白いものをみせると言われれば興味を抱かない訳がなかった。
「流水岩砕拳」
バングは三人に覚えて貰おうと流水岩砕拳の動きを見せた。その技は力技そのものではなく、敵の動きを流れるようなステップを刻みながら敵の攻撃を見切った上で反撃を与えるという護身術のような技であった。
サイタマとジェノスにとってはやはり興味が無かった。バングがやる流水岩砕拳は絶対的な力ではないし、かといってそれをやっても敵を倒せる確証もなかったのだ。
しかしただ一人イキイキとした動きでバングがやった流水岩砕拳をマネしていた者がいた。それはキャッキャッと無邪気に笑うユメである。
「すごぉい!この動きに騙し討ちとかステップを変えればスゴい事になるよ!」
いつしかユメの動きはバングがやった流水岩砕拳そのものの動きではなくなり、流水岩砕拳が静かな武術ならばユメオリジナルの武術は動きまわる武術といった正反対の武術を行い、正拳突きをやったら小さい拳から成された音とは思わないブォォ!という音がする大きな風を起こし、ユメはキャッキャッと無邪気に楽しんでいた。
「爺さん、今やってたはずのユメの動き見ている限りオレらじゃ役に立たないぞ」
「そうだぞ。師匠が今やってらっしゃる動きの方がオレ達に合ってるぞ。師匠!オレもその修行ご一緒します!」
はしゃいでブンブン拳を振り回すユメとこうですか師匠とユメに確認するジェノスをよそにサイタマはオレ達は流水岩砕拳を習わないぞとハッキリ伝えるも、バングの一番弟子であるチャランコは腹が立った。彼は一般人であり、ただ一人のバングの弟子だけど、バングと流水岩砕拳をバカにするのは許せなかった。だから一人の弟子としてジェノスに襲いかかったけど一瞬で戦闘不能になってしまった。その戦闘不能になったチャランコの横腹にツンツンと指で突っつくユメは笑みを浮かべて大丈夫と聞いていた。そんな情けないバングの一番弟子に愛想がついたジェノスは冷たい視線をバングに向けた。
「バング・・・お前の弟子は有能ばかりじゃなかったのか?コイツ弱すぎるぞ」
「痛い所をつくのぉ。しかし他の弟子達はかつての一番弟子ガロウというヤツが居てな、ガロウはワシの弟子のほとんどを倒してしまって他の弟子達は怖がって出ていってしもうたんじゃ。で、ワシがガロウをボコボコにして破門としたが、入門してくれる弟子がおらず、キミ達を弟子にしようと思っていたところじゃ」
「へぇ、随分勝手な爺さんだけど強いんだな」
サイタマの呑気な声にチャランコは叫んだ。バングを知らないのか?シルバーファングを知らないのか?流水のような攻撃で翻弄し、激流の如き一撃をもって巨岩を砕く武術の達人を、と。しかしサイタマとジェノスはそれを聞いてふぅんそうなんだと興味なさそうに相槌を打って、ユメはおじいちゃんなのにスゴいねと純粋に褒めていた。
「ほっほっほ、ユメちゃんはワシを褒めてくれるのか?こんな老いぼれたジジイを」
「バングおじいちゃんはスゴいもん!さっきの動きを見たらわたし少し強くなれたもん!だからスゴいおじいちゃんなの!」
バングはユメの言葉に嬉しさを感じてユメの頭を撫でてユメはだらしがない笑顔を浮かべ「でへへ~」と笑い声を漏らす。そんな時にヒーロー協会の職員がバングのもとへと訪問しS級ヒーローはヒーロー協会本部に集合しろという報告を受け、ジェノスもS級なのでその招集を受ける事にした。サイタマとユメは面白そうだからと着いていった。
ヒーロー協会職員に車でA市ヒーロー協会本部へと辿り着いたサイタマ一行は会議室に直行するべく厳重なセキュリティを職員に解いてもらい、デカい扉が開かれる事三回か四回したらサイタマ一行の目の前に一人のS級4位ヒーローアトミック侍が現れた。彼は作務衣を着ていてその上に羽織を着ていた。彼の懐には二本の刀が帯びていた。そんなアトミック侍はジェノスとバングを歓迎したが、気になる二人が目についた。
「誰だお前?それにお嬢ちゃんも誰だ?」
アトミック侍の質問にバングは今後S級ヒーローになるかもしれんからとサイタマとユメを紹介したが、アトミック侍は強者しか認めずふて腐れた顔をしていた。しかし、ユメもふて腐れた顔をした。
「むぅ、おじさん!ちゃんと挨拶しなさい!お友達少なくなっちゃうよ!いいの!?」
ユメはプンプンと怒った顔をして両手を横腹に添えて子供のようにワガママを言っていた。しかしそんなワガママが通じないアトミック侍は眉間にシワを寄せて37歳だからおじさんじゃないと言い訳するが、どう考えてもおじさんである。
そんな言い合いするとS級2位ヒーローのタツマキが現れてB級ヒーローは邪魔だから消えろと言いながらサイタマ一行の前に現れたが、ユメはガルルルと仔犬みたいにタツマキを威嚇した。その威嚇に気づいたタツマキも威嚇するように睨んだ。
「あの時のチビじゃない!これはS級ヒーローの仕事なのよ!帰りなさい!」
「うるさい!おねーちゃんがあっちいけ!ガルルル!」
タツマキもチビなのにチビと言われては怒るのは当然であった。身長はユメとほとんど同じぐらいであり、タツマキは身も心も子供なのでお互いに気に入らないと駄々をこねていた。そんな彼女らの掛け合いをよそに緊急会議が開かれようとしていくのである。