ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語 作:叶夢望
サイタマが本気の一撃を放つ数分前、ユメは巨大要塞へと辿り着いて無駄に広すぎる巨大要塞に圧巻な表情を浮かべつつ、とにかくそこら中を殴って殴って殴り続けたが、サイタマより実力がない為に直径十キロはある巨大要塞は四十パーセントほどしか壊せなかった。
巨大要塞の搭乗員である数人の宇宙人がユメに対して前方からやってきてユメに挑むも、あえなく倒れる怪人達は倒れ続けて、ユメは怪人が現れた方向へと進んでいく。宇宙人が前からやってくるというのは、前方方向に他の宇宙人が居るだろうからユメはとりあえず真っ直ぐに進んだ。目の前に壁あろうがそれを殴り壊し、付近から宇宙人がやってきて襲ってこようがなりふり構わずユメは巨大要塞を壊し続ける事数分が経った時、サイタマによるマジ殴りという本気の一撃によってボロスが倒れ、その本気の一撃の衝撃波で巨大要塞が思いきり揺れて、墜ちようとしていた。それを感じたユメはきっとサイタマの仕業なのだろうと直感したが、初めてサイタマの本気の一撃に身震いしたユメはサイタマが戦っているであろう敵に戦慄した。
サイタマは強すぎるのでどんな敵でも本気でいけば一撃で倒せる事をユメは分かりきっていた。だからそのサイタマが本気を出すというのは敵が相当強かったはずだ。災害レベル竜なんかじゃ収まらない、災害レベル神レベルだろう。災害レベル神は人類滅亡危機として恐れられるが、その災害レベルには過去に一切無かった。大予言師シババワの予言が無ければ地球は本当にヤバかっただろう。
「でも、一度だけだとは限らない、よね?パパ」
シハバワは半年以内に起こるであろう予言をして今回の地球がヤバいという予言は明日以降にもひょっとしたら起こるかもしれない。いや、もしかしたら今から数時間後かもしれない、と思考が堂々巡りしている中、ユメは数十メートル先にいるサイタマの姿を目撃したのでユメは思いきり走り出し、数秒もかからずにサイタマの胸に抱きついた。
「パパ!大丈夫?怪我ない?」
「ああ、大丈夫だ。だけどだいぶ敵が強いから大変だったよ。心配かけたな、ユメ」
「でも勝ったんでしょ?スゴいなぁ」
「へっ、まあな」
報告を受けたユメはサイタマの胸板に顔をうずくませ思いきり甘えた後、巨大要塞はサイタマによる本気の一撃によって墜ちる寸前だからと二人は巨大要塞を出来るだけ破壊しようと試みる一方、地上のS級ヒーロー達は墜ちていく巨大要塞に驚くしかなかった。タツマキによる超能力攻撃でも墜ちようともしなかったのに、ユメが突入して数分もしないうちに巨大要塞は墜ちようとしていたのだ。
「マジで何モンなんだ?あのお嬢ちゃん」とアトミック侍が唖然とした表情を浮かべ、「へっ、またシンプルな作戦でも立てたんだろうけどスゲェぜ」と金属バットが尊敬の眼差しで巨大要塞を睨み、「褒め言葉はそれくらいにして協会本部の方向に逃げるぞ!激突に巻き込まれる!」とぷりぷりプリズナーは避難勧告し、「そうじゃな、とっとと走るぞ」とバングはイアイアンを担ぎ、既に逃げていた。そして巨大要塞はA市に激突した後、しばらくしたら中から満面の笑みを浮かべたユメが現れた。影にコッソリといたサイタマには誰にも目を向いていなかった。それほどまでにS級ヒーロー達はユメの存在に夢中であった。
「やっほー!壊したよー!」
ユメの登場にS級ヒーロー達はユメに笑みを浮かべながら近寄りユメの頭を雑に撫でながら精一杯褒めた。良くやった、頑張ったな、やるじゃねぇか、小さいくせに大したヤツだ、弟子にならない?と様々な褒め言葉を受けたユメはこれ以上もないほどだらしがない笑顔を浮かべて「でへへ~でへへへへへ~」と笑い声を漏らしていた。サイタマは影に隠れ無言でただ頷いた。俺も褒めてやる、スゲぇなユメは、と。だけどサイタマは一番の功労者なはずなのに、それをユメの手柄にする事は特に何も思っていない。ユメだっていっぱい、いっぱい、いっぱい頑張ったからそのご褒美としてそれくらいの事をしてあげないと、とサイタマは心からそう思っていた。その想いは「娘可愛がりシリーズ」と繋がり、その技の名は「ユメが頑張ったご褒美だ、受け取れ」である。
ユメは影にいるサイタマにようやく気づき、抱きついているとジェノスは彼らのもとへと飛んでいき、嬉しそうにサイタマ達を褒めている一方、タツマキは腹が煮えくりかえっていた。
「ちょっと!何勝手に盛り上がってんのよ!私一人でどうにか出来たのに!特にA級のお前!何勝手に突っ込んでいるの!?バカじゃないの!?」
タツマキはプライドが高かった。いかなる任務でも彼女にはそれが出来て当然であり、失敗なんて夢にも思わなかった。しかし、巨大要塞をタツマキが時間をかけて攻撃し続けた結果が蓋を開けてみればユメが突入した数分間の攻撃で墜ちていく結果が納得いかなかった。これはタツマキの誤解であるし、他のS級ヒーロー達も勘違いしているだろう。
「ガルルル!おねーちゃんがバカだもん!超能力であんな大きな物が壊れるはずないもん!岩とか吹き飛ばすだけだもん!大した事ないもん!」
「ムカッ!もう本気で怒ったわ!このチビ!無鉄砲!無神経!寸胴!アホ!間抜け!バカ!クソガキ!ーーー」
タツマキが永遠にユメの悪口を言うので、ジェノスは怒りを感じてタツマキに「おい糞ガキ黙って失せろぶちのめすぞ」と戦意をメラメラと燃やしタツマキを焼却しようとするもタツマキによる超能力でジェノスは吹き飛び、ユメは怒りを感じてタツマキに襲いかかろうとするもバングの仲裁によって何とか喧嘩はおさまったのだ。
「やめんかタツマキ。同じヒーロー同士で争うな」
「ふん!私の方が年上なのにガキ扱いされたからよ」
「それでもS級2位なのか?ん?」
「ふん、私気分悪いから帰るわ」
タツマキは踵を返し、超能力で空へ飛びどこかへと消えていく一方、A級1位ヒーローイケメン仮面アマイマスクがA市ヒーロー協会本部へと辿り着き、A市が完全崩壊している様子を見渡し、深く深くため息を吐いた。
彼は今回の騒動を聞き、S級ヒーローが集合する話も聞いていたが、S級ヒーローが何人も集まっているはずなのに一つの市が崩壊しているのはヒーローとして情けないと思っていた。アマイマスクは近くにいた金属バットに詳しい話を聞くと更に彼らの事を情けないと思っていた。ヒーローは人や街を救う職業のはずなのに守れないとはどういう事だと近くに居た金属バットはじめアトミック侍やぷりぷりプリズナーらに話を聞くと、予言がどうとか会議をしている最中に攻撃されたとか最善をつくしたという彼らの言い訳にアマイマスクは心底嫌気がさした。
「ふざけないでもらえるかな?ボク達は正義のヒーローだ。キミ達のような体たらくじゃ住民達は困る。ボク達は住民達を安心させるようにならないといけない。だから、役に立たなかったら自主的にヒーローを辞めたまえ」
「ふざけんなよテメェ、遅刻してきたのに偉そうに言いやがって。どうせお前はアイドルやってて遅れたんだろうがよ?その片手間にヒーローやってるテメェが気にくわねぇ。テメェこそヒーロー舐めてんだろうがよ?」
金属バットの言う通りでアマイマスクはアイドルや俳優をやりながらヒーローをやっていた。今回もアマイマスクはドラマの撮影で遅れて重役出勤でこのA市に来たのだ。ヒーローをやりながらではないと正義の象徴として住民から慕われないし、見知らぬヒーローが住民に信用を得られるなんて雲を掴む話であった。それをアマイマスクがヒーローの活動報告をメディアで通して、テレビや雑誌に大きく報道されるからアマイマスクの仕事は裏で結構役が立っていたのだ。
「ボクはS級に上がらないのはボクがキミ達のような弱い者と勘違いされない事と、今後キミ達のような雑魚をS級ヒーローにしないように見張る為さ」
「へぇ、雑魚だ?面白ぇ、細切れに斬ってやらぁ。おい、金属バット下がってろ、俺がやる」
「うるせぇ、お前が下がってろアトミック侍」
アマイマスクの挑発にアトミック侍と金属バットはこめかみに血管を浮かび上がらせ激怒していると彼らの近くに謎の金属で造られたであろう人型ロボットが現れた。彼はS級7位ヒーローメタルナイトであるが、その身体は遠隔操作のロボットであり、本体はどこかにある施設で潜んでいた。彼は巨大要塞を一目見てから宇宙人の技術力に興味があるのかずっと観察するように巨大要塞を見て、自分の兵器としてどうにか利用できないかと企んでいた。
「コンゴマタ、コウイウジタイガアルカモシレナイノデ、ソレニソナエキョウリョクナブキヲツクルカラモラウゾ、イイナ?」
片言で喋るメタルナイトの遠隔ロボットにヒーロー達は仕方ないなという表情で納得し、メタルナイトに墜ちた巨大要塞の始末をさせることにした。それからしばらくすると巨大要塞はS級7位ヒーローメタルナイトに回収され何処かもしれぬ場所へと移動させられた。
一応宇宙人襲来騒ぎは解決となったが、A市は完全崩壊し、地図から消え去ったがヒーロー協会本部は建物の強化改築し、これまで以上にない鉄壁の要塞を作り上げる事に成功した。
その新しいヒーロー協会本部にどの街からでも迅速にヒーローが駆けつける事が出来るように道路を作り、A級以上のヒーロー達はヒーロー協会本部に住めるようにもして守りを徹底にした。
そして宇宙人襲来に貢献したユメのランクが上がり、A級2位ヒーローとなり、元A級2位ヒーローイアイアンはユメの実力を知り自ら降格すると宣言し、イアイアンはA級7位ヒーローとなり、そこから出直すと言い放った。イアイアンは片腕を失ってもなお実力があるので這い上がるのは容易であるが、イアイアンはもっと高みを目指していた。師匠であるアトミック侍はもちろん、ユメに追いつけるようにと日々奮闘していた。
しばらくするとメディアはユメをインタビューする事にして、ユメをテレビ局に呼び出し生中継で全世界中に放送する事にした。A級1位イケメン仮面アマイマスクもゲストとして呼び出し、彼がインタビューアーとして進行を進め、ユメが答えるという番組であった。
「まずは宇宙人襲来の件、お疲れさんと言ったところかな?A級2位ヒーローユメ。A市は無くなってしまったが、あの宇宙人を見過ごしら他の市も消えていただろう。しかし、キミはそれを勝利と思うのかな?」
「違うと思う。でも、わたしと他のヒーローが・・・タツマキおねーちゃんやアトミック侍おじさんや金属バットおにーさんやぷりぷりプリズナーおじさんやバングおじーちゃん、そしてパパやジェノスくんがいっぱい頑張ったの。精一杯頑張ったもん。だけど、街が無くなったからその代表として謝りたいの。みんな、ごめんね」
「ごめん、で済む話ではないだろう?逃げ遅れた住民だって居たはずだ。恐らく数万人ぐらい命を失っただろう、そして大切な居場所や思い出も失っただろう。だからそのケジメをどうやってとるつもりだい?」
「分からない・・・だけど、わたしはヒーローを辞めたくない!もっと何かを救いたい!誰かを救いたい!もっと強くなりたい!みんな大好きだからもう失いたくない!信用しなくてもいい、褒めなくてもいい、だから大好きな場所を守らせて!お願い!」
「・・・、ふん。勝手にしろ」
このインタビューは有名になり、ユメを知らぬ者はもちろんユメを信用しない人間は居なくなり、人気ヒーローランキング上位に入り込み、ユメファンクラブが結成された。ユメを信用しない訳が無かったのだ。小さな身体で、小さな手で、まだ幼い女の子だというのにユメが大切な居場所を守るという言葉にファンは心打たれた。ユメは強いかもしれないけど、心が弱いかもしれない、まだ甘え足りない女の子かもしれない、だからファンとしてユメを影から支えてあげないとユメは壊れてしまうかもしれない。ユメのファンはユメの活躍や貢献に期待し、街や人に役立ったら褒めてあげようと決意した。頑張れユメちゃん、応援しているよユメちゃん、負けるなユメちゃん、オレ達がついているよユメちゃん、無理をするなユメちゃん、ユメちゃんが守るならばオレ達も守るよーー彼らの応援はユメに届くか分からないけど、願う事ならばいつでも出来る。だから挫けるなという気持ちを込めて彼らの応援はいつまでも続くのである。
「わたしはもっと強くなる!誰にも負けない強さに!」
ユメは小さい拳を握りしめながら振り上げヒーローとして一歩前進していくのであった