ONE-PUNCH-MAN 一撃男と愛娘のユメ物語 作:叶夢望
ヒーロー協会は三年前、大富豪アゴーニの孫が怪人に襲われた際に通りすがりの男性に救われた事からアゴーニはヒーローを着想し、私財を投じて設立した。
主にヒーロー協会は円滑な活動を支援する為の後援組織として活動しており、各ヒーローの活動・生活資金の給付や住居等の斡旋し、効率的な怪人退治を行う為の各ヒーローに対する指揮・伝達をする事を約束し、また怪人や悪の組織に対する調査や対策、災害レベルの認定等が一任されていた。
その事をヒーロー認定試験の帰り際にジェノスが伝えたらサイタマとジェノスの説明とテストの疲れからかユメは眠り眼となりサイタマの背にしがみつくように抱きつきスヤスヤと眠っているユメを背負い歩み続けていた。
「俺達は胸を張って新人ヒーローになれたと言えるのでしょう。先生、これで正式に弟子にしていただきますよね?」
「・・・あ、そうだったけ?」
「はい、師匠には前々から弟子にしていただいているので次は先生の弟子になる番なのです。ですので今後とも先生や師匠のお世話となります。それでは俺はここで」
ジェノスは踵を返し、サイタマ家と違う方向へと歩みだし、ジェノスの姿が見えなくなるまで見送るサイタマは後悔していた。簡単に弟子にするとか言わなければ良かった、と。
所変わってZ市サイタマ達がヒーロー認定試験を受験したZ市ヒーロー協会執行部の中でスネックが愚痴をこぼしていた。サイタマとジェノスとまだ子供のユメに不服を申し込みヒゲ職員とメガネ職員に直訴していた。
「オレがA級38位という事を知らないアイツらは素人だぞ?すぐにやられるだろ。特にあの子供は戦う前に泣くだけだろ」
ヒーローは階級の他にランク付けされていてそのランクも活躍や人気により上昇する仕組みとなっていた。そんな事よりもとヒゲ職員とメガネ職員はその子供であるユメとついでにサイタマの体力測定のデータを見て戦慄していた。
それを比べる対象としてヒゲ職員とメガネ職員はジェノスを例として挙げた。ジェノスは筆記と体力両方において満点を叩き出し異例のS級ヒーロー認定とされた大型新人として期待されるヒーローなのだろう。
しかし、サイタマとユメは筆記試験結果は散々だったけど体力測定において過去の記録を大幅に上回りし、しかも未来の測定においてその記録は覆されないであろう記録を叩き出していたのだ。
「あのサイタマというハゲ頭とユメちゃんという幼気な少女の身体に神か鬼が宿っているだろうな」
「な、なに!?」
スネックは戦慄した。ジェノスがすでにS級となり自分より上だと証明されていてこのままではサイタマやユメにまでも自分のランクが超えられるに行く事に恐怖を抱きつつ、彼らの居場所をすぐさま見つけ潰さなければとスネックはヒーロー協会支部から出て行った。
所変わってユメはニコニコと無邪気な笑みを浮かべサイタマの手を握り我が家へと向かっていった。ユメはどうやらA級ヒーローになれた事が嬉しくて嬉しくてたまらなく思わず鼻歌交じりにスキップをするほどはしゃいでいたのだ。
「さんじょうっ、ひっしょうっ、しじょうさいっきょう!なんだってフラストレーションッ!俺はとまらなーい!」
「なんだその歌?なんか熱いな」
サイタマはユメが歌っている歌は聞いた事もないがどことなく胸が熱くなるのを感じる歌詞であった。しばらくユメの歌を耳に流しつつサイタマは目の前に存在するスネックに気づき、困り果てた表情を浮かべていた。
「よお!合格者セミナーの続きだ!プロヒーローの世界にはランクを気にしてヒーロー同士の潰し合いがあるんだ!ちょっくらお前から潰させてもらうぜー!」
スネックは蛇咬拳を使い彼らを脅そうとしたがユメは頬を膨らませ怒っているようだった。
「おじさん悪い人なの?ヒーローなのに?」
「ヒーローでも悪の心を持っているヤツ多いぜ?お嬢ちゃん!」
スネックの言葉にユメは頭にカチンときたからかサイタマの手を握るのは止めてサイタマの傍から離れ、スネックの前に頬を膨らませながらユメは立ちはだかった。
ユメの様子にまたかとサイタマはデジャヴを感じ、これからスネックの身に何かが起こるであろうと心配していた。ユメの弱点の一つとして正義であるいい人が実は悪者と判断した場合ものすごく怒る事であり、サイタマでもユメ自身でさえもその怒りを抑える事は出来なかったのだ。
「おじさんなんかキライだー!」
ユメは素早くスネックの顔面に飛び上がり両脚でスネックの首をしっかりと巻きつけ、そのままの状態で両手でスネックの頭をポカポカと何度も叩いていた。するとその拳の威力がすさまじくスネックは地面に深く刺さり、サイタマやユメの目視だけで地面に首だけしか存在しなかった。その技の名は「駄々シリーズ ヤダヤダヤダ」であり、その名の通りただ駄々をこねているだけだ。
「もう知らないっ!ぷぃっ!行こうか、パパ」
「あ、ああ、早く帰って飯にしようか、ユメ」
首元まで埋まっているスネックをよそに、サイタマとユメは我が家へと帰っていくのであった。
そしてその翌日の昼、Z市の外れにある荒野へと三人は向かっていった。
「わぁい!遠足だ!パパとジェノスくんと遠足だ!」とユメが作った弁当や水筒が入った大きな袋を抱え満面の笑みを浮かべ歩を進めていった。その様子を微笑ましい表情でサイタマは弁当が楽しみだとユメに伝えたらユメはだらしがない笑顔を浮かべデレデレと照れていた。
何故そんな荒野へと向かったのかというとサイタマがプロヒーローを一緒に目指そうとジェノスに師匠となる約束を安易に交わして、ジェノスは早速手合わせを願っていたので誰も居ないであろう荒野へと向かったのだ。
「先生、師匠。俺達はヒーローとなりましたが最下位からのランクとなります。例えば俺がS級最下位のヒーロージェノス、ユメ師匠はA級最下位のヒーローユメと名前通りにヒーロー名簿に記載されるようです」
ジェノスは携帯を取り出し、ヒーロー協会公式ホームページで調べた事をサイタマやユメに話した。続けてジェノスはヒーローとして活躍したらヒーローネームと呼ばれるあだ名のような名前がつけられると教えた。例えばスネックの場合、蛇咬拳のスネック、ジェノスならば金髪サイボーグといった具合に個々のヒーローの特徴を捉えてヒーローネームが与えられ住民から親しまれるはずというのだ。
「ふぅん、その名付け方法なら、パパはハゲマントなのかな?」
「くっ!ユメは毒舌愛娘だな!」
「でへへ~、愛娘、か~。パパ大好きっ!」
ユメは父親であるサイタマに愛娘と面に言われた事に嬉しさと大好きという気持ちが混ざり合い、ユメは満面の笑みを浮かべてサイタマの胸板に飛び込みそのサイタマの大きくてたくましい胸板に顔を埋めながらスリスリと寄り添っていた。恐らくこの愛情は亡きサクラの分までユメがサイタマに注いでいるのであろう。
「ヒーローネームはおいおい勝手につけられるので気にしませんが、実力ランキングの他に人気ランキングもありヒーローによってはファンクラブとかそういう団体が存在するようですね。ま、そんな事はどうでもいいとして」
「え!?そ、そうだな、人様の人気なんてどうでもいいけどな」
「そんな事よりも俺の無理な頼みを・・オレと手合わせする頼みを聞いてくれてありがとうございます」
「あ、ああ。一応弟子にする約束したしな、それくらいは別にいいけど、ユメ!とりあえず危なくない所に座ってろよ」
「うんっ!頑張ってね!パパ!ジェノスくん!」
ユメを大きな岩山の頂上にある適当な平たい岩に座らせ、ユメは両脚をブラブラと動かして落ち着かない様子でサイタマとジェノスの戦いを楽しみにしていた。ユメの弱点の一つとして何かに楽しみ過ぎたらどうしても落ち着かないのでソワソワしてしまうのだ。
「先生、本気でいきますよ?先生の本気をどれだけ引き出せるか分かりませんが、とにかく俺は先生を倒すつもりでいきますよ」
ジェノスは身体中の機械を展開し、プシューと湯気があちらこちらから噴き出され熱を発しているようだった。一方サイタマはその様子をポケーッと呆けてやる気を見せずにただ突っ立ってジェノスの様子を探る様子であった。
「なんか熱そーだなジェノス。ユメも喜んで見ているな」
サイタマは空を見上げ大きな岩山の頂上にいるはしゃいでいるユメの姿を見て思わず微笑んだ。ユメはロボのようなジェノスの戦いに興味があるようで興奮しているようだった。ユメの目がキラキラと輝かせてかっこいいと連呼していて身体がウズウズしてソワソワと落ち着かない様子だった。
(ふふふ、ジェノスはとんでもない師匠を持ってしまったな。ユメのあのはしゃぎようからして、しばらくはジェノスに懐くだろうな。どんなに抵抗してもユメは離れてくれないぞ?ジェノスよ)
サイタマの思考はジェノスの両肩からブラスターのような装置を展開しそこから炎を一気に放出し素早い突進攻撃により遮られていた。
「おお」
サイタマとユメはジェノスの速さに関心し、興奮した。思った以上にジェノスが強そうで安易に師匠にした事を後悔しないで済むような気がしていたサイタマはジェノスによる火炎放射や両手で素早い連打の攻撃を避けて避けて避けまくった。サイタマは音速のソニック以上のスピードを誇り音速を超えたスピードを更に超えたスピードで移動し、ジェノスを嘲笑うかのように残像を使いその残像でジェノスと戦ったフリをした。
「くっ!残像か!ならば近くにいるはずだ!」
ジェノスは辺りを探し逃げるサイタマを発見し、素早くサイタマの前方に先回りし両腕を連結させて巨大なバズーカ砲を展開し、素早く巨大な炎を放出し、サイタマに直撃した・・はずだったが、サイタマはジェノスの背後に回りジェノスの頬を突きオレの勝ちだと宣言したが、ジェノスは激怒した。本気の手合わせをお願いしたのにも関わらず、それを嘲笑うかのようにサイタマはジェノスに手を抜いていた事にジェノスは腹を立たせずにはいられなかった。
「悪かった、お前の性能っていうの?とにかく全力を知りたくてよ。大丈夫、これからはちょっと本気だす」とサイタマの言葉と共にサイタマとジェノスは姿を消すほどの戦いをしていた。一般人目線では一人の幼気な少女が弾けるような笑顔をするだけであり、その幼気な少女付近に誰も居ないはずの空や地面から強大な衝撃波が発生し、ドカンドカンとその地はだんだん壊れていき、それを面白そうに幼気な少女はキャッキャッと無邪気な笑みを浮かべて楽しんでいた。
「焼却!!」
ジェノスは右手の手の平で炎をゼロ距離のサイタマに向けて発射するがサイタマはその炎が発射される瞬間にジェノスの後ろに素早く移動し、拳をジェノスに向けて伸ばした。
死を本能的に覚悟するほどの拳がジェノスに襲いかかった。サイタマは言葉の通りにちょっと本気を出したに過ぎないが、サイタマの本気はこんなものではない、と理屈ではなく本能で悟ったジェノスは無抵抗のまま棒立ちになっていた。そして、サイタマの拳はジェノスの顔面数センチ前でピタリと止まった。
「うし、おしまいだな。腹減ったぞー!ユメー!弁当だ弁当ー!ついでにピクニック気分になるぞー!」
サイタマは大きな岩山にいるユメに向かい手を振っている姿を見たジェノスは呆けていた。強いとか強すぎるとかそんなレベルの話ではなかった。サイタマの実力は別次元であり、ジェノスにはその強さについていけるか心底心配であった。何故ならば振り向くとそこは大きな岩山が数々とあったはずだが、サイタマの拳の風圧により消え去っているのだからだ。
「パパー!」
ユメは高さ5メートルはある岩山の頂上から大きな袋を持って満面の笑みを浮かべて落ちてきて普通に両足で着地し、何事もなく数々の弁当箱を広げてその場でサイタマと共に食事している姿に途方も暮れなかったジェノスはただ呆けるしかなかった。だけど一つだけ気になる事があった。サイタマの強い事は分かったけどユメの場合はどうなのか?非常に気になった。
「ユメ師匠もサイタマ先生ぐらい強いのですか?」
ユメはおにぎりを頬に詰めてリスのようにほっぺがまん丸となっていて可愛い女の子となっていた。そんなユメはその状態のまま「んぅむ~んふむふまふ?ま?もふ」と訳が分からない言葉を発していた。
「なるほど、分かりました」とジェノスはユメの言葉に理解し、ユメが作った手料理を褒めながら食べ始め、サイタマは「今の分かったの!?俺分かんなかったけど!?」というツッコミを放ちつつ、三人は仲良くユメ手作り料理を口に運び続けていった。
少しだけおまけ
「んぅむ~んふむふまふ?ま?もふ(う~ん弱いじゃない?ね?パパ)」とユメはジェノスに言いました。
ジェノスはサイボーグだからユメの言っている言葉に理解出来ていましたから「なるほど分かりました」と言いました。
サイタマはユメの親ですけど分からないです。