アイドルマスターシンデレラガールズ 少女はアイドルを目指す   作:こきゅー

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第1話 《First step to Cinderella》 1/2

 私の人生は私が決める。

 

 けれど人生は一度きりで、明確な目標や夢なんて持ったことはあまりない。優柔不断の私にとってそれはとても残酷なことだ。

 

 無数とも言える選択枝の中から1つを選び、悔いのない人生を送る自信は、今の私にはない。

 

 武内さんと渋谷さんの二人に出会い、数日が経った。

 私の考えは、あれから変わらずにいて、やはり私にアイドルなんてものは似合わないという考えが頭から離れなかった。

 日頃から面倒事を避けてきた私には「努力」や「頑張る」といった言葉が嫌いで、不向きにしか思えない。

 けれどこんなにも考えているということは自分の中のどこかで「アイドルになった自分を見てみたい」と思う自分がいるのだろう。

 だから私はもう一度、武内さんと会って、そこで自分は幸せになれるのか考えてみたい。

 

「たっちゃん、今日一緒に帰らない?」

 

 たっちゃんとは友人から呼ばれてるあだ名である。さっき誘ってくれたのは吉井だね。あだ名はよっちゃん。

 笑顔で私に話しかけてくれる数少ない友人であり、是非ともその誘いを受けたいのだが、

 

「ごめん、今日は用事で急いでるから」

 

「そっかー」と残念そうに凹むよっちゃんを見てると心が痛む。ごめんね、また今度一緒に寄り道したりしようね。

 

 それから私は今日、家に帰り渋谷さんから貰ったCDを聞いてみることにした。あの日から数日、実は机の上に置きっぱなしにしていた。

 理由は情けない話だけど、あれを聞いてしまうと私の中で何かが強制的に変えられてしまうのではないかと思う自分がいて、それがとてつもなく怖い。

 キラキラしている渋谷さんを見るのはきっと、想像を越える苦痛が襲い掛かりそうで拒絶していた。

 けれど今日は聞く。渋谷さんの「今」を私は見てみたい。アイドルになって、渋谷さんの中で何が変わったのか少しでも感じてみたい!

 

 

――――☆

 

 

「おかえりー。夕飯できてるけど食べる?」

 

 決意を固めた私に母は何時も通りに私を声をかける。しかし、今の私はCDのことで一杯なのだ。だから適当に返事をする。

 

「晩御飯何?」

 

 そう、これはあくまで雑に、軽く返事をしただけであって、決してお腹が空いたから好物じゃなかったら真っ先に自分の部屋に向かってやるんだから!

 

「今日は唐揚げとシチューだけど?」

 

「食べる」

 

 即答である。さらば、私の意思。

 

「そう、んじゃ手洗ってきて。その間に並べておくから」

 

 時間はまだ短い針が六を指している時間だ。やはり今通っている高校は片道1時間以上というのは掛かりすぎか。んでもって、この時間に晩御飯というのは一般家庭では少し早いかもしれない。けれど、うちはうち、他所の事情などあまり気にしない。むしろ、なぜ決まった時間に食べる必要がある? なぜ時間を気にする必要がある? 食べたいときに食べ、休みたいときに休む。あくまで時間は目安であって、バカ真面目に守る必要性はないのだ。今の世の中に必要なのはこういった考えだと問いかけたいね。

 

 私が手を洗い、うがいもしっかりこなしてからリビングに戻ると母は既に並べ終わっている後で、私の箸を取ってくれようとしていた。

 

「ここに置いとくから」

 

「あい」

 

 いつものように返事をし、箸を受けとると目の前にある暖かなシチューを見つけ、スプーンを探す。母はしっかりしているようでどこか抜けているのだ。それとも「スプーンは自分で取れ」という隠されたメッセージでもあるのか?

 ま、なんでもいいや。私は「いただきます」と小さく呟くように言うとシチューから食べ始め、あっという間に平らげた。

 女子高生の胃袋は、学業で既に餓えているのだよ。食べ終わったら「ごちそうさま」と同じく小さく呟き、皿を洗い流す。

 それが終わったら、私はお風呂を沸かすのだがその前に自分の部屋へとのんびり向かった。今の私には、アイドルという言葉は頭の中に無かった。今日も平和に過ごせた、という満足感しかないのだ。けれど、

 

「あっ……」

 

 不意に視界に映る、渋谷さんからもらったCD。思わず私は見て見ぬふりをしようと逃げた。ネットサーフィンをするためにパソコンの電源を点ける。けど、逃げたくないし、もう迷ってるのはめんどくさいと考え、私は、今後の人生について後ろ向きに前へと進んだ。

 

「それでは聞いてみますか」

 

 CDケースから中身を取り出すと、パソコンの中に入れ、読み込んでいる間はヘッドホンを装着する。音楽は好きだから、ヘッドホンもそれなりに拘っているのだ。

 

「えっと、中身は……これかな?」

 

 取り敢えず、曲らしきファイルが2つ。おまけって書いてあるのが1つ確認した。まぁ1つずつ聞いてみよっか。うん、そう。私は、ただ音楽を聴くだけ。聴いて、感想を言う為だけに聴くの。

 そう自分に言い聞かせ、私は再生した。1曲目を聞き終わると2曲目へと間髪入れずに再生する。これも聞き終わるとここで深呼吸をする。

 

「はぁー……どっちもいい曲だなぁ」

 

 歌詞も作曲も、渋谷さんの歌声をどれも最高級に仕事をしていると思えた。本当に、アイドルが楽しいのだろうなって想いが伝わってきた。

 

「それじゃあ、最後のファイルいってみるか!」

 

 あとはおまけと書かれたmp3形式のファイルを再生する。するとそこにはアイドルになったばかりだと思われる渋谷さんの声が収録されていた。

 

『し、渋谷凛です。アイドルとして、これから頑張りたいと思いますのでよろしくおnーー』

 

『ダメダメ凛ちゃん。顔が笑ってないよ? もっとスマーイルで。そう、大事なのは笑顔だ!』

 

『は、はぁ……』

 

 カメラマンの声かな? スタッフとのやりとりがこんな感じで約六分だけ入っていた。これだけ聴くと、さっき曲を聞いて、アイドルとしての渋谷さんのイメージが書き換えられ、普通の女子高生としての渋谷さんが垣間見えた気がする。

 全部再生してみたがどれも悪くない。寧ろ最高に良かった。

 いつの間にかパソコンの前にはネットサーフィンをするだけの自分ではなく、渋谷さんにもっと話をしてみたい。アイドルについて知りたい、アイドルになってからの渋谷さん自身についても知りたくなっている真面目な自分がいた。

 

――――☆

 

「こんばんは」

 

 別の日、学校の放課後の帰宅途中にまたしてもあの人は突然現れた。

 

「こんばんは」

 

 挨拶を返す。特に無表情で。この時私は何も考えていなかったから。

 

「アイドルについて、考えて下さいましたか?」

 

 やはりそのことか、でも私は最初に会ったときより嫌な顔はしていなかったと思う。渋谷さんのCDの影響だろうか。

 しかし、ここでやる気を見せるとトントンと話が勝手に歩き出してしまう可能性がある。ここは様子見で、普段通り接しよう。

 

「はい、少しは……」

 

「そうですか」

 

 見込み無さそうな空返事にガッカリする武内さん。

 

「では、見学の件についてはどうでしょうか」

 

 この前の終わり際に提案されたアイドルを知るには絶好のチャンスであり、まさしくアイドルへの第一歩とも言えるかもしれない。

 

「もし、今はまだ心の整理がついていなくとも、決心がつきましたら私のところに電話で連絡を下さい」

 

 で、電話? どうしよ……電話だなんて友達同士でもあまりしないっていうのに大人と仕事の話だなんて緊張するッ!

 

「電話、ですか?」

 

「あ、そんなに怖がらなくても大丈夫です。貴方に見せたいものがあります」

 

 私の気持ちを悟られ、気持ちをなだめてくれた。

 

「……見せたいものってなんですか?」

 

「アイドルがどのようなことをしているのか、それを貴方に知っていただきたいのです」

 

「つまり、見学だけってことですか?」

 

「そういうことになります。詳しいことは両親を通して、決定していこうと思いますので、もしお電話を頂ける場合、ご家族とも話をさせて下さい」

 

 見学だけと言っておきながら、ちょっとだけ体験してみようとか、そういう流れになるのを極端に避けたい気持ちがあるのだけど、見学だけなら大丈夫かな。もし私がこの機会を得て、もっとアイドルをしてみたく思えるようになれればそれでいい。

 けど、今までの私通りなら、過酷な練習やお客さんがたくさんいる中でのライブとか、緊張するし、私には不向きだと思っている。

 だからもし行ったとしても、この件はなかったことにして、いつもの私に戻るだけってことも十分ありえる。

 

「分かりました。あの、期限は何時までですか?」

 

 だから私は即答はできなかったし、期限が明日までとか、3日以内とかなら私は曖昧なまま断るだろう。しかし、

 

「何時までも、私は貴方を待ち続けます」

 

 この言葉を言われ、私は一瞬聞き間違いかと思った。あまりキザなことは言わない人だと思っていた。いつもスーツだし、冗談とか苦手なタイプだと考えていた。

 

「……あ、はい。分かりました」

 

 予想外の返答に私は適当に頷いてしまった。

 

「電話番号はこちらに記載されています。では、私はこれで失礼します」

 

 そう言うと深く頭を下げ、名刺を受け取ったのを確認した後、どこかへと去っていこうと後ろを向く。そのまま帰るのかと思った矢先、2,3歩歩くと何かを思い出したのか私の方へ振り替えり、こう言って去っていった。

 

「次に会うときは、出来るだけ、貴方の笑顔がみたいと願っております」

 

 何とも予想外なことを言う人だ。けれど武内さんのことを嫌いではなくなっていくのを感じた。

 

 

――――☆

 

 

「ただいま」

 

「おかえり、詩音」

 

 学校が今日も何事もなく終わり、家に帰宅する。

 

「今日はブリの煮付けとハンバーグよ」

 

 今日の晩御飯は嫌いな魚と好きな肉。でも私はそろそろ武内さんに言われたことを話す義務がある。

 母は、私の何事も積極的にやりたがらない性格を知っている。私が幼い頃は寧ろ反対に色々やっていたみたいだけど。

 だから私から言うまで基本は黙っていてくれる。そしていつの間にか話は流れていくのが今まで新しい何かを提案されたときの流れだ。でも、そんな優しさを私も理解しているから、自分から告げる必要がある。

 

「あのね、お母さん」

 

 いつも通りに、何事もなく、ごく自然に振る舞うのよ。変にキョドったりなんかしたらカッコ悪いし。

 

「何?」

 

「前にアイドルの話持ち掛けられたよね」

 

「そうね、詩音はどう? やっぱり嫌?」

 

「見学だけでも行ってみようと思う。費用は向こうが出してくれるみたいだし」

 

「そう、分かったわ。後で武内さんに連絡しておくわね」

 

 母も私を様子見しているのだろう、普段ならあまり言わない私を見てもいつもと変わらない対応だった。

 

「あ、電話番号何だったかしら」

 

「えぇ……」

 

 思わず声を出してしまった。ちょっと抜けているところがあるのは私にも言えるところがある。きっと母から遺伝で受けたのだろうなと思う。

 

 晩御飯を食べ終えた私はその後、お母さんが電話で武内さんと話しているのが見えた。目が会うと電話を代わり、電話越しに武内さんが嬉しそうに「ありがとうございます!」と何度もお礼を言われた。流石に照れ臭くなった私は半ば強引にお母さんに電話を返し、私は部屋へと戻っていった。

 

 一人で部屋に戻って時計の針が動く音しか聞こえない静かな空間でふと思った。

 

「はぁ……」

 

 今頃になって不安が押し寄せてくる。見学だけ、やっぱり嫌なら話はなかったことにすればいい。そう、深く考えすぎないで! 私!

 

「お風呂、沸いてるかな……」

 

 気を紛らわす為にリビングへと戻って、その後の話を母と一緒に聞くことにした。

 一通り日時や場所などを聞くと私はお風呂が沸いていたのでさっさと湯船に浸かって、さっさと自分の部屋に戻って、夜の窓の向こう側を眺めて気持ちを落ち着かせる。そして布団の中でゆっくりと眠った。

 

 

――――☆

 

 

 そして、武内さんとの約束の日があっという間にやってきた。

 いつも通りの服で行こうとしたら母にお洒落をされて少し恥ずかしい。あまりフリフリの水玉模様のスカートなんて履かないのにぃ……。

 

 指定された場所に向かうと武内さんの姿は見えなかったが、少し待っていればワゴン車で来てくれた。武内さんはやはりスーツで、遅れたことにたいして申し訳なさそうに謝ってくれた。まぁ、武内さんは色んなアイドルのプロデューサーをしているみたいだし、仕方ないよね。

 

「着きました」

 

 車で移動すること数時間。途中、久しぶりの高速道路に少し胸をときめかせたり、何気ない会話を交えたりしているとあっという間に感じた。

 車から降りるよう、丁寧に対応してくれた武内さんの後ろを着いていくと、ふと私の視界に想像以上の建物がそびえ立っていた。

 

「こちらが、346プロダクションです」

 

「これが……事務所?」

 

 そうです、とゆっくり私の言葉に頷く。

 周りを見渡すと壁にいろんなアイドルのポスターが貼られていた。その中でも私は渋谷さんが他のアイドルと写っているポスターに目を奪われてしまった。

 

「気になりますか?」

 

「ふぇっ!?」

 

 ポスターを凝視していた私の隣で不意に声が聞こえ、驚いてしまう。そんな私を見て武内さんも申し訳なさそうに手を首の後ろに回しながら謝ってくれる。

 

「すみません、驚かせるつもりは全く……」

 

「あ、いえいえ。私もすみません」

 

 そうだね、こんな出入口で立ち止まってたら迷惑になるし時間も有限なのだから急がないとね。

 今日、渋谷さんはライブでもするのだろうか、そんなことを脳裏に浮かんだが、すぐに消す。

 私はポスターを後に、武内さんと一緒に建物に入る。周りを見渡すと圧倒的に広い! 何ここ、ホテルのロビーみたいなんだけど!

 

「あ、プロデューサーさん!」

 

 私が呆気にとられていると武内さんに近寄る美人な人が声をかけていた。この人も綺麗な人だな……書類を大事そうに持ってるし、事務員さんのような服装だけど……、

 

「お待たせしました、千川さん」

 

 なるほど、千川さんと言うのね。

 

「そちらの方が見学希望の方ですね?」

 

 私に話を振られ、まずは挨拶をする。

 

「は、はい! 立花詩音と申します!」

 

「うふふ……」

 

 あれ? 笑われてしまった? 何か言葉遣いを間違えたかな?

 

「そんなに固くならなくてもいいですよ?」

 

「あ、はい! すみません」

 

 思わず力みすぎてしまったようで不自然だと思われたのだろう。謝ってもまた微笑されてしまった。

 

「では、プロデューサーさん、あとはよろしくお願いします」

 

「分かりました。では、行きましょうか」

 

「はい!」

 

 私はなるべく元気よく返事をしたが、やはりこういう場所は体がカチコチになってしまう。

 昔からの悪い癖でもあるが、家族や友人からは「真面目だね」と誉めてくれた。

 そんなことは、一切ないというのに……。

 

「どこか、行きたいところはありますか?」

 

「ふぇっ!?」

 

 さっきも見たようなリアクションをしてしまった。いけないいけない、余計なことは考えないで、今私がやりたいこと、やらなきゃいけないことをしないと。

 

「えっと……まずは皆さんが何をしてるのか見てみたいです!」

 

「何を……ですか」

 

 少し考えてくれるとそうかからないうちに提案してくれる。

 

「そうですね……ではレッスン室に行ってみましょうか」

 

「分かりました」

 

 と、いうわけでレッスン室にお邪魔させていただくことになりました。

 けれど、そこでは私の予想外のことが待ち受けていた。

 

 

コンコン(レッスン室の扉を武内さんがノックする)

 

 

「失礼しまーー」

 

「「「プロデューサーだぁ!」」」

 

 うわおっ! 扉を開けた瞬間に小さな女の子が3人ほどこっちに向かってきた!

 

「ねぇねぇプロデューサー! あのねあのね! さっきトレーナーさんに褒められたの! みりあね! スゴく嬉しかった!」

 

「あ! みりあちゃんだけじゃねーですよ? 仁奈もバッチリでごぜーます!」

 

「あの……お疲れ様です……千枝もガンバりました」

 

「皆さん、お疲れ様です」

 

 武内さんは子供の前でもぶれないのか! 流石にこれ程の純粋無垢な子供たちの前では見ている私もにやけてしまうと言うのに。

 

「あれ、プロデューサーさん、そちらの方は?」

 

 この3人の中では比較的大人しい小さな子供が私を見つける。

 

「あれー? 知らない人だ。あ! もしかして! みりあたちの新しいお友達!?」

 

「そうでごぜーますか?」

 

「あ、いや、その……」

 

 不味い、疑うことを知らない真珠のような煌めきを放った瞳で私のことを新人のアイドルか何かだと思われてる! まだ見学だけだって言いにくい、スゴく!

 

「彼女は、立花詩音さん。今日は皆さんを見学をするという目的でここにいます」

 

「そうだよみりあちゃん。今日、プロデューサーさんから言われたでしょ?」

 

「あ! そうだった! ごめんなさい……」

 

 なんということだ、小学生くらいの少女が私に頭を下げて謝ってくれてる。今の小学生ってこんなに礼儀正しいのか!?

 

「いえいえ……」

 

 それに対して私は動揺してこの一言しか言えなかった。これがアイドル力というやつか……!

 

「プロデューサーさん、お疲れ様です」

 

「トレーナーさん、お疲れ様です」

 

 子供たちの後ろからこれまた綺麗な大人の女性が現れた。というかトレーナーさん、胸大きくないですか?

 

「そちらの方は見学の方ですね。初めまして、私は346プロダクションでトレーナーを努めています」

 

 爽やかな笑顔で挨拶をする。その笑顔に耐えきれずまたもやキョドってしまう。

 

「あ、えっと……立花詩音です! よろしくお願いします!」

 

「アハハハ。宜しくね。他のレッスン室ならまだやってるし、そっちに行くといいんじゃないかな? こちらはあと10分程で再開しますが」

 

「おねーさん! みりあたちのこと見てくれるの!?」

 

「えっと……」

 

 うーん、レッスンがどんな感じか知れるし、みりあちゃんがかなり見てほしそうにしてるから残りたいけど、折角だし同世代くらいのアイドルがみたいかな。

 

「ごめんね、他のところに見学してくるよ」

 

「そっか……」

 

「それは残念でごぜーます。折角、仁奈たちが考えた合体技を見せれると思ったのに……」

 

 それはちょっと見たいかも。

 

「こらこら、あまり困らせたらダメだよ」

 

「「はーい」」

 

 みりあちゃんと仁奈ちゃんはトレーナーの言うことを素直に聞いていた。千枝ちゃんも私に一言「じゃあね」と言うと手を降りながら悲しそうな顔をしてくれた。

 みりあちゃんと仁奈ちゃんも「ばいばーい」と元気よく手を降る姿を見て私も笑顔で手を降り、別れの挨拶をした。するとみりあちゃんが、

 

「あ! おねーさんの指スゴくキレイー!」

 

「ホント? ありがとっ」

 

 まさか指のことを子供から誉められるなんて、あの一瞬でいろんなところを見ているんだね。

 

「え? ホントでごぜーます!」

 

「まるでモデルさんみたい……」

 

 他の2人もじっくりと見たいと興味津々に私の指を見に来た。アハハ……これじゃここを離れるのは難しいかもね。

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