剣と魔法の世界に転生するはずがB級パニック世界に来てしまった件   作:雫。

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ハワイのサメ討伐の旅最終日。

 

俺たちは、ジョックを招く平和が戻った海辺にいた。

 

「ライアン、早くこっち来たら〜? サメのいない海でするサーフィンは格別よ!」

「ライアン、サーフィンが嫌ならおれと泳ぎで競争しないか? エレメンタリースクールの時、よくレースしたな、懐かしい」

 

海では、キャサリンとクレアが各々の流儀ではしゃいでいる。全く、ついさっきまでヤマタノジョーズが暴れていて、今でも普通のサメはいるかもしれない海でよく遊べるものだ。

 

ダニーは少し離れたところの木陰でパソコンをいじっているが、そのサングラスの裏ではしっかりと少女の水着姿を最高画質で記録している。

 

「勘弁してくれ、俺はサメの胃袋から生還したばっかりなんだ」

 

俺は友達の誘いを当然に断る。サメの体内でガソリン塗れになってからまだ一日しか経っていないのだ。油の匂いはとれたが、やっぱり何だか気分は良くないし、肉体的にも精神的にも色々とエネルギーを使い過ぎた。こうして砂浜に腰掛けてボーッとしているのが一番だ。

 

「平和が戻った海じゃ。もっと満喫してもバチは当たるまい」

 

そんな俺の隣にいつの間にか座っていたのは、あのマシロ老人だった。気配を全く感じなかったので、俺はその声に少し仰け反った。

 

「疲れたんですよ、俺も。それに明日には帰るんだ。中途半端に遊んで未練を残しても良くない」

「ほう。しかし……このような試練は、まだお前に降りかかるぞ? この程度でへこたれていて良いのか?」

「……⁉︎」

 

マシロ老人の声色が、眼光が、豹変していた。

 

「転生にあたって理に干渉する力を授けられた者……。お前にはまだ、試練と使命が残っておる。次の大いなる試練は……天からの災厄であろうな」

「マシロさん……あなたは一体……!」

 

俺は反射的に飛び起きて、マシロ老人と距離を取った。しかし、マシロ老人は武術で鍛え上げられた絶妙な足運びで、俺との距離を一定に保ってしまう。

 

「……まあ、そう身構えるでない。ワシも別に、お前と敵対する者ではない」

「……じゃあ、あなたが一体何者なのかを答えてもらおうか」

「ふむ……ワシが、というよりも我々が、じゃな」

「我々?」

 

俺は首を傾げる。まさか、俺の転生のことを知るような者が、偶然ここに一人いるのではなく、集団を成しているというのか。

 

「我々の名は〈アルバトロス〉……」

 

アルバトロス……アホウドリか?

 

「我らは観測者。この世界に介在する、外なる因果を観測し続けてきた者。そして、その諸悪の根源に抗するための希望を探す者」

「諸悪の根源?」

「〈アサイラム〉……本来存在し得ない宇宙意志……我らはそれがこの世界を歪めていると見ておる。そして、それに立ち向かい得る第一候補こそが……転生と共に〈理力〉を授けられし君なのだ」

 

何だ、一体何を言っているんだ。

 

俺は心配になって、海辺に遊ぶ友達に目を向ける。彼女たちには問題は無かった。

 

が、視線を戻すとそこにマシロ老人はおらず

 

「お前も、こらから目覚めてゆくだろう。だが、まだ練度が足りん。〈アサイラム〉に相対するにはな」

 

背後を取られていた。

 

「あなたたちは一体……」

「言っただろう、観測者だ。世界の歪みと共に、お前の覚醒を観測する者。我らには、守らねばならないものがある。だから待つ、お前の覚醒を」

「……俺の友達にも手を出すのか?」

「それはお前次第だ」

 

マシロ老人は、くるっと背中を向けた。

 

「時間だ。また見えることもあろう。次なる試練を経て、お前は大きく覚醒のレベルを上げることになる。心せよ」

 

そう言ってマシロ老人は、走っていって遠くに停めてあったバイクに乗り、どこかへ消えた。

 

そこはテレポーテーション的なことしろよ。

「ライアン、今誰かと話してたの?」

 

と、流石に気配を察したらしいキャサリン。

「いや……何でもない」

 

俺には答えるべき言葉が見つからない。

 

俺にとってもあまりに想定外だったからだ。

 

ただ一つ言えることは、これから俺の新たなる戦いが、次の段階の何かが始まるということだ。この世界の正体に向かって。

 

……嫌だなぁ。

 

 

第一部完

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