笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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…思いのほかペン(じゃなくて指)が進みました。
勉強と引換に。



着任の章
歯車が動き出す


 平和な人類に突如現れた、海の底からの謎の敵。

 通常兵器の効かない、深海棲艦には、人類の連合軍もなす術なく敗北、そして全世界の制海権を失うのにそう時間はかからなかった。

 しかし、それに対抗する唯一の切り札が人類の前に現れた。艦娘と呼ばれる彼女らは、ありし日の艦の記憶と能力を持つ。救世主を、神は人類に遣わしたのだ。

 人類はこの緊急事態に大本営を創設、その管理下の彼女達艦娘の活躍により、制海権は少しづつ少しづつ、しかし確実に取り戻されていった。

 そんな大本営極東本部に勤めるとある男は、ある日長官室に呼び出され、今まさにそこへ向かっていたーー

 

 

「お呼び出しですか…。」

 俺は長官の部屋に入ると、早速そこの椅子に座るよう促された。俺が座るのを見た長官から、1枚の書類を手渡された。

 

[辞令]

 〇月×日をもって、第35鎮守府への異動を命ずる

 

 こう書いてあった。

「君にこれを頼みたい」長官は淡々と告げた。

「第35鎮守府への、配属命令ですか?確かあそこは、提督が永らくいなかったはずの…」

「ああ。ここは、心に傷を負った艦娘たちが多くいる所なんだ…。私もこの辞令を言い渡すのは辛いのだが…普段我々の元で管理し、鎮守府配属を待つ艦娘たちの面倒を見ている君だからこそ、と思ってな…すまん」

「心に傷を持つ艦娘ですか……放ってはおけませんね」

「…やってくれるのか?」

「もちろんです。」

「そうか、ありがとう…本当にすまん。

 実は我々はそこに、以前も何度か提督を派遣したことがあるのだが…あまりの重さに次々と自己退職してしまうんだ…辛くなったら、いつでも…」

「大丈夫です。やって見せます。」

「ありがとう、では、君にこれを頼む。

 それと、だ。この場合も例外ではなく、ここの寮の艦娘から、一人選んで連れていっていい…まぁ、お前のことだから、連れていく奴はだいたいわかっているがな。」

「ふふ、でしょうね。では。」

 …俺は長官に敬礼し、部屋を後にした。

 そして、配属待ちの艦娘たちがいる、大本営の寮へと向かった。

 

 寮に着いた俺は、さっそく玄関から入り、階段を上がる。向かう先は決まっている。そして、お目当ての人の部屋の前に着いた。ノックし、呼びかけてみる。

「いるか?俺だ」

「司令官?いいよ、入って」

「ふふ、邪魔するよ」

「邪魔じゃないのに。」

 そう言って、部屋に入った俺を優しい笑顔で迎えてくれたのは、銀髪に帽子の女の子、駆逐艦の艦娘、響である。

 俺は普段艦娘寮で、艦娘たちの管理…もとい、お世話のようなことをしていることが多い。その娘たちの中でも、響とは戦いが始まってから大本営にスカウトされてすぐ出会い、初めて会った日から3年弱たった今も付き合いが続く、結構長い間の仲だ。提督経験のない俺を何故か司令官と呼び、結構なついてきてくれる。

「で、僕に何の用かな」

「ああ、そのことなんだが…」

 俺は、第35鎮守府へ異動することになったことを彼女に伝えた。

「え…司令官、いなくなっちゃうの…?」

 途端に響の表情が暗くなる。体が小刻みに震え、帽子を目深にかぶる。その隙間からわずかに見える目は、真っ赤に充血して涙がたまっているように見えた。必死に泣くのをこらえているのだろう。

「いや、待て響…。落ち着け。」

 俺は慌てて、一緒に行く艦娘を選べることを説明した。

「うん、それで……?」彼女は少しだけ帽子を上げる。

「響、お前についてきて欲しい。いいか?」

「司令官…!!」

 響の表情が打って変わって明るくなり、満面の笑顔を見せる。しかし、少したってはっとした彼女は、顔を隠すように後ろを向き、

「まぁ、僕でいいなら。いいよ、司令官。」

 きっと、少し恥ずかしくなってしまったのだろう。彼女は昔からこういう奴だった。

「とりあえず、向こうの鎮守府と連絡や、こっちの設備や荷物の色々を持ち込んだり、それをあっちに対応できるように工事する関係で、2、3週間待つことになるがな…。

 とにかく、だ。響、これからもよろしくな」

 俺がそう言うと、響はくるりと振り返って、いつものクールな笑顔でこう言った。

「うん、よろしく。ハラショー。」

 

 それから俺と響、2人は私物整理や異動用書類の確認、さらには、俺と響が去ることを惜しむたくさんの艦娘たちに追われることになった。その1人1人に挨拶しつつ、忙しい十数日を2人で過ごした。

 

 一方、第35鎮守府ーーー

 鎮守府の窓から、電は雷とともに不思議なものを見た。

「はわわわ…あ、あれは何なのです?」

「何あれ?なんか大本営の大型ジェット輸送機みたいじゃない?」

「でも、なんでなのです?それに、何を運んでいるのです?」

「わかんないわよそんなこと。あ、近くの山に向かってくわ!」

「雷ちゃん、追ってみるのです!」

「もちろん!」

 2人が振り向くと、そこには通りすがりの、眼鏡をかけた1人の艦娘がいた。

「あら、雷ちゃん、電ちゃん、いつもありがとね。どうしたんですか?」

「大淀さん、なんか今、あっちの山に大本営の輸送機が飛んでいったのです!」

「あれなに!?私と電で、これから見に行ってくるわ!」

 しかし、

「だめよ2人とも。」

 大淀は2人をとめた。

「えー?」

「なんでなのです?」

「なんかもうすぐ、ここに久しぶりに新しい提督が着任するみたいなの。その影響で、色々工事してるのよ。我慢して。」

「はーい…」

「電、我慢するのです…」

 2人は少し不服そうに、自分の私室へ戻って行った。その道中、電はふと思った。

「でも…なんでこんなに大規模なのです…?」

 また、大淀も、輸送機の飛んでいった山の方を見て、念じるように呟いた。

「お願いします、提督…。どうか、どうか1日でも早く来てください…。ここの限界が来るのは、時間の問題になりつつあります…。お願いします…!ここを、私達を助けて下さい…!!」

 




ここまで読んでくれてありがとうございます!
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