笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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筆者は加賀さんは個人的に結構好きです。
ツンだけどケッコンセリフでのデレが効くというか。
…ちなみに筆者、艦これのゲームはソーシャルゲームもアーケードもやってません。全てアニメとゲーム実況などでの妄想です。ごめんなさい。

それではではでは本編どうぞーーー。


夜明けの陽射し

 ーーー弓道場

 矢をつがえ、的に向かって放つ。

 加賀はこの時も練習に明け暮れていた。

 放った矢は、的のど真ん中に命中する。

 次の矢をつがえる。

 引いた手を離す瞬間、ふとある思いが頭をよぎる。

 ーーー赤城さんは、今頃話し終わった頃かしら。

 放たれた矢は、かろうじて的の端近くに命中する。

 ーーー…雑念が混じってしまいました。これではいけません。

 深呼吸をして、再び矢をつがえる。と、

「失礼するぞ…すまん、練習中だったか」

 提督が入ってきた。

「加賀、随分と練習に励んでいたようだな。少し休まないか?」

 

 ーーー俺は加賀と休みつつ、少し話をすることにした。…加賀は筆談だが。

「聞いたよ、赤城から。過去の、事件のこと。同情して気を悪くするなら申しわけないけど、大変だったんだな…」

 コクリ、と一つ頷く加賀。

 

 ーーーあの時加賀の理性が戻って、真っ先に彼女の視界に入ったのは。

 うずくまる提督2人。

 足の一部が抉れ、轟沈寸前の傷を負い、血だらけの状態で意識を失って、伊勢と扶桑に支えられている赤城。

 加賀はあの咆哮の後、闇雲に艦載機を次々と放った。しかし、演習用のものだったのと、さらに理性を失っていたことも加わり、結果的に敵艦載機をほとんど落とせず、味方の艦載機も陣形を乱し…

 この事を加賀はすぐに悟り、同時にそれが招いたであろう今の結果を見直す。

 彼女の心は、崩れ去った。

 

 提督は2人とも幸い命に別状はなく、一ヶ月と数週間の入院でなんとか復帰したが、全身に痛々しい火傷のあとが残ることになってしまった。

 赤城は足の切断は免れたものの、戦列復帰は不能と判断され、車椅子生活となった。2人とも、加賀は悪くない、気にすることはないと言ってくれたが。

 そのショック、そして罪悪感。そして2人とも目に見える形で事件の傷あとが残ってしまったこと。それらが重なり、加賀は、咳や嗚咽など、反射的かつ自然な身体現象を除き、一切ものを言えなくなった。さらに、自分が飛ばしたゼロ戦と敵艦載機の入り交じる、地獄のようなあの時の空のことがトラウマとなり、ゼロ戦型艦載機の発着艦、つまり実質的な艦載機発着艦も不可能となってしまったーーー

 

[すみません…提督にまでご迷惑をかけてしまって]

 加賀がメモを差し出してくる。

「いや、謝ることはないよ。」

 俺は加賀の頭を優しく撫でた。顔を赤らめ、そっと加賀が俺に寄りかかってくる。

「大丈夫大丈夫、大丈夫大丈夫…」

 彼女の背中をさする。気づいたら泣いている加賀。腕に顔をうずめ、嗚咽が漏れている。

「大丈夫大丈夫…加賀、もしお前の前に、1人じゃ越えられない壁があるなら…

 …俺たちみんなで一緒に、乗り越えていこうな。

 よしよし…大丈夫大丈夫…1人じゃないよ、大丈夫大丈夫…」

 

 その夜、寝る前に響と少し話した。

 今日赤城が話してくれた、加賀の過去の事件。

 心に深く傷を負った彼女。

「加賀さんが早く、元気になってくれるといいね」

「ああ。」

 俺の中で決めた、加賀に対する目標は2つ。

 再び話すことと、艦載機の発着艦ができるようになることである。

 

 まず彼女を話せるようにするため、響の了解を得て、加賀を第二秘書艦にした。そして、加賀と積極的にコミュニケーションをとるようにした。加賀についていき、一日を過ごすこともあった。午前中は自分の弓道場での練習、そして午後は、瑞鶴と翔鶴の指導もしていた。ちなみに、ここはお互い事情をわかっているのか、ほかの鎮守府で一種の名物と化している加賀と瑞鶴の争いごとは全くない。瑞鶴も加賀の指導を素直に聞き入れ、そして加賀も瑞鶴と笑顔でおやつを食べたりすることもある。時折赤城、戦列に復帰した翔鶴も共に時を過ごすことがあった。

 やがて加賀は俺に対し、笑顔を見せてくれることも多くなったが、まだ喋るまでには至っていなかった。

 

 そしてもう一つ、艦載機の発着艦について。

 基本的に、空母の艦娘が飛ばす艦載機は、ゼロ戦のような形である。もしかしたら、精神的部分の他、その形とかも少しながら記憶にトラウマ的要素で絡んでいるかもしれない。そう考えた。

 俺は目標を決めたその次の日に、再び金庫からアタッシュケースを取り出した。

 ーーーじーさん、またこれ、使わせて頂きます。

 そしてそれを工廠の、明石と夕張のところへ持って行った。

「すまん、明石、夕張、いるか?」

「あ、提督、どうしたんですか?」

 明石が応対してくれた。後から夕張がやってくる。

「実は、なんだが…」

 俺は2人に、加賀のこと、そして自分の考えを話した。

「なるほど、そうですか。…それで、私達はどうすればいいでしょうか。」

「…加賀の負担を少しでも軽くしたい。2人には、新型艦載機の開発を頼みたいんだ。」

「新型艦載機、ですか。」

「え、でもそれってまたゼロ戦型になってしまいますよ?さっき提督さんが言っていたことと、違うじゃないですか…」

 夕張が反論する。しかし、落ち着いて俺は用件の中核を伝える。

「いや、ゼロ戦型じゃないものだ。」

「え…!?でもそんなもの、設計図とかないと…」

 心配する明石。夕張も同じ表情だ。

 そこで俺はアタッシュケースを開け、中からある大量の設計図を2人に見せる。

「これって……!?え…!?」

 明石が思わず感嘆の小声を漏らす。夕張の目は、未知の設計図にキラキラしまくっている。

「提督さん、こんなものどこで!?」

 興奮気味の夕張。

「こないだのシルバーシャークGと同じく、俺のじーさんの遺品だよ。」

「…あぁ、そういえば、前も話してましたね…。

 …提督のお祖父さんって、一体どういう方なのですか?」

 明石が聞いてきた。まあどのみち話すつもりだったと、ここで2人に話すことにした。

「実はな…」

 

 話し終わると、2人はなるほど、と納得してくれたようだ。

「正直いって、多種多様な形だ。だが出来るだけ多く、速く全種揃えたい。…無理な要求ですまないが…ん?明石?夕張?」

「ふふふ…私達をなめてもらっては困りますよ、提督…」

「こんなのちょちょいのちょいちょーい、朝飯前のへのかっぱです…ぐへへ…」

 …逆に2人ともめっちゃ燃えてるんですけど。まあ結果オーライか。

「資材などはこちらに任せてくれ。大本営に連絡して、手配してもらう。」

「ええ!?大本営って、大丈夫なんですか!?」

「大丈夫だ。俺のじーさんの後輩が、実は今の大本営極東部の長官やってるんだよ。

 …あ、ここだけの話な。」

 

 大本営に連絡すると、やはり早速、各地の鎮守府に、廃棄予定の装備を回収、また大本営自体も備蓄資材を少し分けてくれるなど、色々動いてくれた。

 ここ数日間、俺は日中は加賀とコミュニケーションを図り、深夜は3台の愛車のうち、トラックタイプのジオポルトスで大本営と鎮守府の間のシークレットトンネルを、 コンテナに資材を載せて一晩数往復することを繰り返した。当然疲れはたまるが、加賀のことを考えれば、こんなことでへこたれてはダメだ、と自分を奮い立たせた。響も、夜食においしいおにぎりや、温かいボルシチを作ってくれたりと、支えてくれた。

 

 そして、その日は艦載機の完成が近いと、工廠の2人から連絡があったので、俺は日中工廠に入り浸っていた。一方の加賀は、赤城、五航戦姉妹と一緒に、弓道場にて練習に励んでいた。

 

 それと時を同じくして、翔鶴と瑞鶴が加賀に配慮し、そして彼女の了解を得て、彼女の目に入らないところで早朝に飛ばした索敵機が、洋上に恐怖を発見した。

 深海棲艦。そしてその編隊はというと、軽空母ヌ級が2隻、そして航空戦艦のレ級が1隻。

 さらに奴らとともに敵棲地から飛び立ったであろう、おびただしい数の敵艦載機…

 そしてやつらの向かう先には、第35鎮守府があった。

 索敵機に乗った妖精さんは、この非常事態をすぐに事務室の大淀に連絡する。

「…はい、はい。…なんですって!?

 わかりました!すぐに提督に連絡します!」

 

 俺のいる工廠の方では、新型艦載機は、明石と夕張の神がかり的な作業により、ほぼ完成し、夕張が提督からの情報を元に、飛行する上でのそれぞれの機体の特徴を妖精さんたちに教えていた。提督と明石は妖精さんたちへ、新しい操縦服を作っていた。そこへ、大淀が息を大淀が息を切らして駆け込んできた。

「提督!!大変です!!

 翔鶴と瑞鶴の飛ばした索敵機から入電、敵航空戦艦レ級1隻と敵軽空母ヌ級2隻が、多数の敵機動部隊を伴ってこの鎮守府に接近しているとのこと!!」

「なんだって!?」

 明石と夕張も表情が一変する。

「この鎮守府に、大規模空襲をかける気か…!」

「提督、どうしましょう…!?」

 俺は数秒間、脳回路をフル回転させる。

 ーーー機動部隊には機動部隊で相うつしかない。

 …大丈夫、あいつらを信じよう…!!

 俺は下した判断を大淀に伝える。

「大淀!弓道場の加賀、瑞鶴、翔鶴に招集をかけろ!」

「でも、まだ加賀さんは…」

「…大丈夫だ、あいつはきっと大丈夫だ。俺を、加賀を信じてほしい…!」

「…わかりました。すぐに招集をかけます!!」

 事務室へと駆ける大淀。

「夕張、新型艦載機の矢を取ってきてくれ、速く!」

「はい!」

 艦娘寮へと急ぐ夕張。

「明石、シルバーシャークGを起動、迎撃を頼む!」

「了解!」

 明石はシルバーシャークGの準備に取り掛かる。

 俺も大淀に続き、事務室と隣接する作戦司令室へとダッシュした。

 

 ーーー数分後

 俺は夕張に艦載機をもらった。

「ありがとう夕張、第六駆逐隊の4人に連絡して、残りの艦娘の避難誘導を頼む!」

「はい!」

「明石、シルバーシャークGは?」

「起動完了!いつでも大丈夫です!」

「了解した、俺は港に行ってくる!」

 

 ーーー港にて

 提督が向かっている時には、招集した加賀、瑞鶴、翔鶴は既に集まっていた。

「敵の大規模機動部隊…!?」

「どうしよう、翔鶴姉!」

 焦る五航戦姉妹。

 一方加賀は少し離れたところで、1人考えていた。

 ーーー提督は迎撃部隊に私を加えてくれた。

 …でも私は艦載機の発着艦ができないし、戦闘で重要な意思疎通をする一番大事なツールの言葉も話せない…。なのになんで?なんで私を?

 今の私は、何も出来ない足でまといなのに…?ーーー

 ふと加賀の脳裏に、提督の言葉が蘇る。

『もしお前の前に、1人じゃ越えられない壁があるなら。

 俺たちみんなで、乗り越えていこうな…』

 …提督は私の心を知ってから、いつもそばに居て、色々励ましてくれた…

 赤城さん、五航戦、大淀さん…色々な人が味方についてくれる…ーーー

 

 台車に矢を載せて、俺は港に着いた。

「みんな、話は聞いているな!?」

「もちろんです。しかし、どうするのですか?

 私達が艦載機を飛ばしても、そこにいる加賀さんにはそれを見るだけでも大きな負担となります…」

「加賀さん可哀想だよ…!?」

 ーーーあぁ、五航戦の2人が、私のことを提督に言っています。…でも…そろそろ私も、支えてくれる皆の思いに答えなければ…このままで、いいはずないです!もう、あの時のような惨事を、起こさせるわけにはいきません…!!ーーー

 加賀は心に決めた。

「平気よ、五航戦」

「え…!?」

「加賀さんが…しゃ、喋った…!!

 …加賀さん、加賀さぁぁぁぁん!!」

 俺もこれはすごく驚いた。

 思いきり加賀に飛びつこうとする瑞鶴。しかし、加賀はひょいとかわす。

「おっと!?ちょっと、なんでよけるのよ!?」

「瑞鶴、今はそんな場合ではありません…!!」

「…!」

「私は守り抜きます。私を支えてくれた、皆さんを!そして、この海を!!」

「加賀さん…!」

 俺は奇跡を見た気がした。

「加賀…!」

「提督、恐らく敵機動部隊はすぐ近くまで来ています。…私達に矢をください」

「わかった。…実はな、明石と夕張に頼んで、お前達に新型艦載機を作ったんだ。」

「新型…艦載機?」

「ああ。」

 俺は台車の上の箱を、加賀に見せた。

「この矢、ですか…」

「…よかったら、使ってほしい」

「もちろん、使わせて頂きます」

 加賀は矢の中から一本を取り出す。

 見ると、それは矢羽根が銀色に輝き、そして日の丸の代わりに、丸いエンブレムのような形にMATと書かれている。少し変わった矢だなと思いつつ、構える。

 やはり、構えた瞬間、彼女の中にあの時の記憶が流れ込んでくる。辛く、忌まわしき、悪魔のような記憶。しかし、ここで屈するわけにはいかない。

 加賀は強い心でそれを打ち払い、叫ぶ。

「迎撃隊…発艦はじめ!!」

 立て続けに二本の矢を放つ加賀。そしてそれは、空中で輝き、彼女が見たこともない、銀色の戦闘機へと形を変えたーーー




というわけでした。
次はウルトラメカが初登場!
…ごめんなさい筆者の趣味です。コラボさせてみたかっただけです。

よろしければ評価やお気に入りなどお待ちしております!
今回もここまで読んでくれてありがとうございました!
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