笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
次の投稿がいつになるやら…
出来るだけ早く出せるよう頑張ります!
それでは鳳翔さんの章へ突入ーーー
冷たい川に揉まれ
「鳳翔さんか…」
着任の時に見た名簿に、確かに鳳翔の名はあった。しかし、俺のイメージが正しいなら、彼女は出撃や空母艦娘の指導、食堂で調理担当のどれかのイメージがあるのだが…
いや、ここは第35鎮守府。きっと彼女も、何か事情があるのだろう。
「わかった。DVDと設計図は鳳翔さんの分も作っておく。」
「はい、ありがとうございます。」
車椅子ながらも礼儀正しく頭を下げる赤城。他のメンバーも頭を下げ、4人は部屋を出て行った。
ちなみに、赤城にはもう1枚、パラリンピックの車椅子アーチェリー競技を編集したDVDを渡す予定だ。先程3人がレ級を倒して帰還している間に、赤城から「自分もみんなと一緒に戦いたい」という願いがあったからである。きっと驚くであろう。
そこへ入れ替わりに、先程の敵襲撃に備え鎮守府の避難誘導をしてもらった響がやって来た。
「おかえり響。さっきはありがとな」
そう言って頭を撫でると、満更でもなさそうな顔になる響。そうだ、この際響に鳳翔のことを聞いておくことにしよう。
「なあ響、一ついいか?」
「?なんだい司令官?」
「さっきは本当に避難誘導ご苦労様。それで、鳳翔さんとかって、どう避難させたかな?」
「?鳳翔さん?」
「ああ。ここに着任してしばらくたったけど、鳳翔さんは見てないからな。」
「…鳳翔さん、僕が避難誘導しようと思ったんだ。でもそしたら、間宮さんが『鳳翔さんは私に任せて』って。やっぱり何かあったんだと思う。だから、間宮さんに聞いた方がいいと思うよ?鳳翔さんの心の傷を治したいなら。」
「ふふ、響はなんでもお見通しだな。わかった、休憩ついでに食堂に行ってみよう。」
「ハラショー」
なんとなく響がおやつを楽しみにしてるのは、彼女の表情からお見通しである。
ーーー食堂にて
「間宮さんどうも…お、大淀もいたのか」
食堂のテーブルには、大淀の姿が。他の艦娘の姿は見当たらないが。
「大淀さんも休憩ですか?」
「ええ。間宮さんの甘味は本当に美味しくて。食べ過ぎが心配になるくらいよ。」
ニコニコと微笑む大淀。そこへ間宮がやってきて、メニューを渡す。
「ありがとう間宮さん。そうだね、この前と同じホワイトチョコケーキを頼む。」
「僕もそれで」
「かしこまりました〜」
程なくして運ばれてくるケーキ。本当にこれは美味い。響も満足そうに頬張っている。
するとそこに間宮さんが来た。その手には、外された店先の暖簾がある。
「あれ、どうしたんですか間宮さん」
「いえ、ただこれから、大淀さんと少し鳳翔さんのところへ行くので…」
「鳳翔さんのところ、ですか?」
「ええ。今彼女、自室にこもりきりで…」
「そうなんですか…」
…あ、これチャンスだ。ならば逃すまいと間宮さんにすかさず言う。
「よろしければ、俺と響も一緒に行っていいですか?まだ鳳翔さんと話をしてないので。」
「僕からもお願いします」
響も同じことを考えていたようだ。
「ええ、構いませんよ」
間宮さんは笑顔で言ってくれた。
「鳳翔さんって、どういう事情でここに来たんですか?」
部屋に移動する間、間宮さんと大淀に聞いてみた。
「ん〜…提督さんは、鳳翔さんについてどういうイメージがありますか?」
逆に間宮さんから質問された。先程赤城から鳳翔さんの分のDVDと設計図を頼まれた時に考えた、あのイメージをそのまま彼女に伝えた。
「そうですか。まあ、普通そうですよね…」
「すまん間宮さん、何か落ち度でもあったかな…」
「いえ、それは誰しもが鳳翔という艦娘に抱く普通のイメージです。その母性はたくさんの艦娘たちに認められ、お艦とも呼ばれる程なので…。こちらこそ、少し言い方が悪かったみたいですみません…」
「いや、大丈夫、気にしなくていい。」
「ありがとうございます提督。
ここにいる鳳翔さんも、とても頼りになる、優しい鳳翔さんでした。前の鎮守府でも、たくさんの艦娘たちの相談に乗っていたんです。しかし、そこはかなり戦いの厳しいところで、いわゆるブラック鎮守府ではなかったのですが、いつも彼女に相談に乗ってもらわんとする艦娘が後を絶たなかったんです。」
「なるほど…それで、どうなったんだ?」
「彼女は一つでも多くの仲間の艦娘の悩みを解決しようと奔走しました。中にはかなり重い内容の相談も少なからずあったみたいで…それでも彼女は必死になんとかしようとしていたそうです。しかし、その影響で彼女の精神は疲弊の限界を超えてしまったようで…」
「そんなことが…」
「以前鳳翔さんとお話したんですが、彼女、こんなことを言ってたんです。『自分は相手の話を聴くばかりで、他に何もその人にしてあげられなかった』って…」
「そうか、なるほど…」
そうこうしているうちに、鳳翔の部屋の前に着いた。間宮さんがドアをノックする。
「鳳翔さん、すみません。」
すると中から、
「はい、どうぞ…」
か細い声が聞こえた。
「こんにちは、お邪魔します。」
間宮さんと大淀に続いて、俺と響も入る。
「はじめましてだな、鳳翔」
「こんにちは、鳳翔さん」
しかし、挨拶した途端に鳳翔の顔が、焦りと怯えの混じったような顔に変わる。おそらく先程の間宮さんの話からの推測だが、解決させてあげられない、という無力感に囚われてしまい、人と関わることが、恐怖と罪悪感で無理になってしまっているのだろう。
「あ…あの…こんにちは、はじめ、まして…」
動揺が明らかに見て取れる。
「大丈夫だ鳳翔、落ち着いてほしい。少し話をしたいだけだ。」
「は、はい…」
もう既に滅入っている。このままだと彼女が限界を迎えてしまうかもしれない。
「…ごめんなさい、提督。今は…私、もう、無理です…」
やはり。
「いや、謝ることはない。こちらこそ突然押しかけてすまなかった。」
申し訳なさそうにする鳳翔。すると響が鳳翔の手をそっと握り、こう言った。
「鳳翔さん、今回はごめんなさい。でも、僕は鳳翔さんと、いつか色々話をしたいと思っているんだ…。自分勝手かもしれないけど、もし今度空いていたら、お話したいんだけど…」
「響ちゃん…」
そこへ大淀も加わる。
「大丈夫ですよ鳳翔さん。響ちゃんはとても優しい人です。」
「は、はい…」
「もしよかったら、僕の姉妹たちも連れてきていいかな?」
響が笑顔で質問する。すると鳳翔の顔が、少しだけほころんだように見えた。
「ええ。いつも第六駆逐隊の娘たちには色々、話して少し落ち着かせてもらっているから…。ありがとう響ちゃん、本当にありがとう…。提督も、せっかく来てくれたのに、無愛想で本当にごめんなさい…」
「いや、大丈夫だ鳳翔、無理をすることはない。きっと色々、心が疲れている中、俺が来ていることでますます混乱させてしまっただろう…こちらこそ申し訳ない」
「いえ…あの、提督…?」
「なんだ、鳳翔?」
「いつになるかは私もわかりませんが…もし私が大丈夫になったら、あなたのことを呼んで、そして一緒にお話も、したいです…。
ダメですか…?」
「…そんなこと、ダメなわけないだろう?大丈夫、俺も、響も、間宮さんも大淀も、みんな鳳翔、お前の味方だから。」
「…ふふ、ありがとう、ございます」
鳳翔は少しだけ笑った。しかしこれはきっと、今の鳳翔の精一杯の笑顔なのだろう。俺は外に出たあと、必ずやあの悲しい笑顔を、太陽のような明るく、爽やかな、心からの笑顔にしようと心に誓った。
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