笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
鳳翔さんの章は今回でクライマックスです!
既に暁たちによって、豪華な3段式の弁当が広げられていた。色とりどりの料理が、所狭しと散りばめられている。
「まぁ…」
「ハラショー…こいつは美味しそうだ」
感嘆の声を漏らす2人。電に渡された割り箸で、早速食べ始める。
「う〜ん!美味しいわ!」
「さすが間宮さん、なのです!」
「鳳翔さん、卵焼きあげるわ!」
「ふふ、ありがとう」
響もその光景を見つつ、お喋りなどに参加して、みんなで団欒のひとときを過ごす。
昼ごはんの後もみんなで遊び、語り、おやつを食べ、そしてヒトナナサンマルをすぎた頃には…
「…すっかりみんな寝てしまったね」
「そうね…きっと、よほど楽しかったのでしょうね…」
床に寝転んだ暁、雷、電の3人にタオルケットをかけつつ話す響、鳳翔。窓からは夕日が差し込み、部屋を哀愁漂う橙色にそめている。時折寝息や、幸せな内容の寝言が、2人の口角を緩ませる。すると、
「…さて、そろそろいい頃かな」
「?」
唐突に呟く響に戸惑う鳳翔。コンコン、とドアをノックする音が、彼女の意識を引く。
「提督が、来たみたいだよ」
開かれたドアから、響の言う通り、本当に提督が入ってきた。
「すまんな鳳翔、少し失礼しても、いいかな」
ーーー鳳翔の目は、この間の怯えたような目ではなく、少し優しさの灯がともされたような、そんな目をしていた。
「ええ、どうぞお入り下さい。この間は締め出したような形になってしまったので…私もお話をしたかったです」
「そうか、ありがとう。では」
俺は座布団に座る。鳳翔が向かい側に座る。話を切り出したのは、鳳翔の方だった。
「私の話、聞いてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろん」
そう言うと、鳳翔は安心したように語り出した。
「私に対するイメージとして、お艦、というものがあるというのは有名な話ですよね」
「…そうみたいだな」
「はい。私も、そのことは周知でした。それでか、よく色々な艦娘の仲間達、時には提督や憲兵、上官の方々からも相談されることがあったのです」
「そうか…」
「私は私を頼って相談してくれた皆さんに応えようとしたんですが…あまりに重い内容のものもあって…」
「うん、うん」
「それで…結局私は、皆さんに対して何も出来ませんでした…」
「…出来なかった?」
「…はい。友人関係や装備関係、その他色々な心の問題…。私にも、やはり限界というのが来てしまって…」
少しずつ、鳳翔の言葉が詰まるようになってきた。きっと話しているうちに、思い出してきているのだろう。
「今でも…申し訳なく思って…」
もう俺の我慢は限界だった。気付けば鳳翔のことを思い切り抱きしめていた。
「…!?」
「馬鹿野郎…鳳翔、お前無理しすぎだ…」
「提…督…なんで、ですか?私は、何も…艦娘の鳳翔として当然のことさえ出来なかったんです…そんな、無理しすぎ、だなんて…」
「鳳翔、今お前は自分のこと俺に話して、心はどうなった?」
「え…」
ふと自分の心と向き合う鳳翔。そして、自分の心に今まで溜まっていた負のモノが、ゆっくりと溶かされていくような感覚に気がつく。
「あ…あ…」
自然と目からは大粒の涙がこぼれる。
「ほらな?話すだけで、心ってのは結構スッキリするんだよ。」
「…そんな…私は、一体…今までしたことは、なんだったんでしょう…」
「鳳翔?無駄なことなんてひとつもない。お前は自分に出来ることを精一杯やった。ただ、少し不器用だったんだな。」
「…うう…」
「お前は、お艦というイメージがある。ただそれは決してそういないといけないというわけでは断じてない。きっと鳳翔、お前は辛いことがあっても、そのイメージにとらわれ、きっと話せなかったんだろう?」
「…はい。本当に、その通り、なんです」
「でもな、ここには俺がいる。間宮や大淀、第六駆逐隊のみんなもいる。だから、決して遠慮なんかしなくていいんだ。ずっと我慢してばっかだと、いつか限界を迎えてしまう。」
「…そう、ですね…」
「たまには思い切り、溜めてたもん吐き出すのも大事だ。お艦も結構だが、たまには赤ん坊みたいに、頼れる誰かに思い切り甘えてみるのも、大事だと俺は思う。」
「提督…じゃあ今は」
「ああ。俺でよければ、思い切り来い。」
鳳翔はその言葉を聞き、俺の体に身を埋め、いつまでも、いつまでも泣き続けたーーー
ーーーその日の夜。
鎮守府の食堂では、いつにも増して豪華な料理が振る舞われていた。鳳翔の復帰記念、その鳳翔は…
「鳳翔さん、赤城さん唐揚げカレー赤城専用盛りおかわりです!」
「はい、今よそりますね!」
食堂で間宮と2人で、相次ぐ注文に動く鳳翔。ついに彼女も持ち直し、食堂へと復帰した。あの後提督には、恩返ししたい、役に立てることならなんでもやる、と言って、自ら希望する形でここの職についた。
「よかったな、鳳翔」
「はい、提督。それと」
「?」
「完食、ありがとうございます」
「はは、美味しいからな。理性がないと、俺の腹が大破しちまうわ」
「もう、お上手なんですから!」
「鳳翔さん!また唐揚げカレーおかわりお願いします!」
「もう赤城さん、少し自重してください…」
先程提供された唐揚げカレーをものの数分で平らげ、鳳翔に再びおかわりをせがむ赤城、そしてそれを見て半ばあきれぎみの加賀。
「ここもだんだん、活気が戻ってきたのかな…」
俺はそんなことを思いつつ、食堂を後にしたーーー
ーーー数日後
鎮守府に新たな2人の艦娘が来る日がやってきた。俺は執務室で、響とその日の書類を全力ですべて終わらせ、2人の到着を待つ。
そしてヒトマルマルマル、ドアがノックされる音。
「提督だ、入りなさい」
「はい!失礼します!」
扉の向こうから、ハリのある元気な声が聞こえてきたーーー
というわけで、今回もここまで読んでくれてありがとうございました!
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それではまた次回!