笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
不自然だったら…ごめんなさい。
よければお気に入り、評価お願いします!
大本営ーーー
俺と響の忙しい日々は、ここで区切りがつけられようとしていた。第35鎮守府の工事担当の作業員や妖精さんたちから、無事に作業終了の知らせがあったからだ。
「…旅立ちの朝か、晴れてよかった」
「だね、司令官。ハラショー」
「さあ、最後の荷物を車に載せて、行こっか!」
「うん。」
大本営の建物の出口に、俺の3台の愛車が縦列で用意されていた。そのうち1番前の赤いコンパクトカー・ジオアトスに、俺と響は乗り込む。
「…いよいよだな。どうか、体には気をつけてくれたまえ。」
「長官、ありがとうございます。」
「提督ー!響ちゃーん!元気でねー!!」
「うん。不死鳥の名は、伊達じゃないよ。」
大本営の長官をはじめとする上司や同僚、部下、そして艦娘たちに最後の挨拶を交わす。
「では。」
俺は車の窓を閉じ、中央のモニターにカードを差し込んでジオアトスを起動させた。それに伴い、後ろの青いミニバン・ジオアラミスと、黄色いトラックのジオポルトスも、自動運転モードが起動する。
「みなさんも、どうかお元気で」
そう言って、俺は車のアクセルを踏んだ。
静かに、3台の車が、大本営を後にしていったーーー
途中の道のりは、俺と響、2人の小旅行と言ってもいいくらいだった。
着任予定日より幾分早く工事が進んだので、道中は専用の移動トンネルを使わず、内陸の山の中の道を通って行くことにした。
艦娘の響にとっては、山は滅多に体験できない場所である。緑あふれる自然を、全開の窓から感じていた。そして、何が彼女にとって物珍しいことがある度、ハラショーハラショーと、目を輝かせながら言っていた。普段のクールな彼女の印象とのギャップで、その様子が少し可愛らしいとも思えた程である。
もちろんその分時間はかかるが、余裕があるので、少しだけ(もちろんスケジュールの許容範囲内で)のんびりさせてもらった。途中の道の駅でその土地の名物銘菓を買ったり、途中山の奥地の秘境として有名な温泉旅館に泊まったりもした(もちろん風呂は別々で、夜中に夜戦したわけでもない)。
そして、大本営を出てから、約30時間が経とうとしていた頃ーーー
「あ、あれじゃないか?」
「みたいだね、司令官。」
山から海へのトンネルをぬけると、そこには小さな海辺の街があった。
そして、そこから少し外れにあるところに、というより離れされられたように、赤レンガ造りの大きな建物があるのがかすかに見える。
「あそこが第35鎮守府か。…気を引き締めて行こう」
俺と響は、専用の駐車場に3台を留め、鎮守府の門をくぐった。
中は至って普通だった。
まずは執務室へ、二人で向かっていった。
「司令官、少し緊張するな…」
「俺も確かに緊張する…まあ、頑張ろう」
「うん」
そうこうしているうちに、執務室、と書かれた板が見えた。ここのドアのようだ。
大きく息を吐き、俺はドアをノックした。
「大淀です。」
「待たせてしまってすまない。ここに配属された提督と、連れの響だ。」
「提督ですか…!?ど、どうぞお入りください!」
こちらが開ける前に、向こうからドアを開けてくれた。
執務室の中へ入ると、眼鏡をかけた艦娘が1人。
「君が、ここの大淀さんだね。」
「はい。大淀と申します、どうかよろしくお願いします。」
「駆逐艦の響です。よろしくお願いします。」
「あなたが、提督の相棒さんなのね、よろしくね」
笑顔で挨拶する大淀。互いに3人で握手を交わした後、大淀がさてと、と本題を切り出した。
「…既にご存知かと存じ上げますが、ここの鎮守府は艦娘の数がとても少なく、またそのうちの半分近くが心に傷を負っています。提督には、通常と同じく防衛任務、加えて、大変なことだと思いますが、ここの艦娘たちに笑顔を取り戻して欲しいんです…お願い、できますか?」
大淀は淡々と言った。しかし、彼女にとっては無意識なのだろうが、目から涙が出ていた。
「…大変だったんだな、大淀。…無意識に泣くほどに」
「え…!?あ…やだ、私としたことが…」
「大丈夫大丈夫…俺がなんとかしてやるから」
「提督…ぐす…ありがとうございます…うぅ、本当に、ひっく、よろしく、おねがぃじまず…うわぁぁぁぁん!」
彼女の心も、もう限界を迎えていたのだろう。抱きついてきた大淀を、俺は思わず抱き返していた。
「大丈夫大丈夫、大丈夫大丈夫…」
しばらくの間、大淀は俺から離れず泣き続け、響は顔を真っ赤に染めつつ、ハラショーハラショーと、小声でつぶやき続けていたのであったーーー。
それから十数分後。大淀はようやく泣き止んだ。
「提督、ありがとうございます……私は、もう、大丈夫、です……。はぁ、はぁ…」
俺は大淀の背中をよしよしとさすった。もうだいぶ落ち着いてきている、なんとか大丈夫そうだ。
「……響ちゃんも、急にごめんね、混乱させちゃって」
「いえ……大変だったんですね。」
「……ふふ、心配かけてしまってごめんなさい。ありがとうね。あ、そうだ、このことをここの皆さんに知らせないと…」
「全体一斉放送ですか?えーと…」
「いえ、ここでは、心に傷を負った艦娘たちと少しでも直接コミュニケーションできるように、そのようなことはしません。その代わり、駆逐艦の娘たちに一人ひとりの部屋を回って、伝令を頼んでいます。今呼びますので、少々お待ちください…」
そう言うと大淀は内線電話を使って、どこかに伝令依頼をし始めた。これを数回繰り返すことから、どうやら伝令依頼をしたのは1人ではないらしい。しばらくして、彼女が戻ってきた。
「すぐに来てくれるそうです。」
「そうですか、そりゃよかったです。」
「ふふ、響ちゃんにとっては少し嬉しい人たちかもね」
「?」
「ふふふ、お楽しみよ。…でも、もう来たみたいね」
大淀が言っている中、既に廊下をかける足音。そして、執務室のドアがノックされた。
「「「大淀さん、来た(わよ!)(よーっ!)(のです!)」」」
声からして3人らしい。そしてその声を聞いた途端、響の顔が驚き一色に変わる。
大淀が中に促すと、3人の駆逐艦の艦娘が勢いよく中に入ってきた。響の顔は満面の笑みだ。
「大淀さん、このレディへの用件って…あれ!?もしかして、響!?」
「暁…姉さん……!?」
「あ、響姉さんー!」
「はわわわ…!」
そこにいたのは、暁、雷、電の、響と同じ第六駆逐隊の娘たちだったのだ。姉妹の再会を喜ぶ四人。
「ここにはこの娘たちがいたんですね、大淀さん」
「はい。提督が来るまで、秘密にしていました。本当に仲がいいんですね…感慨深いです。」
大淀と俺が見守るなか、彼女たちは輝く笑顔ではしゃいでいた。
「さて、みんな、今回も伝令のお仕事を頼みたいの。」
「レディの私に任せて!」
暁が名乗りを上げた。私も私も、と雷と電が手をあげる。
「ありがとう暁ちゃん。今回の用件は、新しい提督と響ちゃんが着任したことと、これからコピーしてくる、提督と響ちゃんの自己紹介カードをみんなにお願いできる?」
「もちろん!」
自信満々の暁。
「ありがとうね。じゃあ、提督に響ちゃん、このカードを書いてくれる?」
「あ、はい。」
「わかった。」
すらすらとカードを書き終えると、大淀さんがすぐに印刷してくれた。その数二十数枚。ここの艦娘の数はかなり少ない方らしい。
「じゃあ折角だから、第六駆逐隊のみんなに、一緒に配ってもらおうかしら。」
「はいなのです」
「響姉さん、行こっ!」
「わかった。ハラショー。」
「じゃあ司令官、ごきげんようです!」
「おう」
去っていく四人。ふと俺は思った。
「…俺は…行かないのか?」
「あ、そのことなんですが、いくつか理由がありまして…」
大淀はそう言いつつ、俺を執務机に座らせる。
「まずやはり、着任の関係の書類に目を通して欲しいんです。」
「あー…多そうだな。」
「私も精一杯お手伝いしますので、そこは一緒に頑張りましょう。それと、もう一つ」
「というのは?」
「ここの心に傷を負った艦娘たちの中には、提督という存在が、…なんというんでしょう、過去の悩みに深く関わっている方もいるんです。なので、いつも伝令を担当してくれている駆逐艦の娘たちに、まずは提督の着任を知らせることで、ある程度の慣れを作る目的もあります。」
「なるほどな。ありがとう。」
「いえ。では早速、書類の方に取り掛かりましょう。」
「だな。」
夜ーーー
「ようやくこなしてることが実感出来るな…しかしまだあるのか…」
大淀は今風呂だ。俺はひとりで作業をしていた。かなりきつい。そんな時、ふいにドアがノックされた。
「司令官、響だよ」
「おお、どうした?」
「書類整理が大変かと思って、食堂で間宮さんと一緒にボルシチを作ってきたんだ。良かったら少し休んで、…その…一緒に、どうだい?」
「おお、間宮さんとわざわざ作ってくれたのか。気遣いありがとな、響。そうだな、折角作ってくれたことだし、貰うことにしようか。」
「ハラショー」
2人で仲良く夕食をたべる。以前も響のボルシチを食べた事はあるが、やはり何度食べても美味い。
「ありがとう響。ごちそうさま。」
「こちらこそ、全部食べてくれてありがとう、司令官」
「はは、美味しかったからな。しかし、これからは本当に俺も司令官か…」
「ふふ、頑張ってね。」
「おう!」
響の気遣いによって俺のやる気とテンションはMAX。大淀が風呂から上がる頃には、書類はもう片付いていた。
「提督…すごいです」
感心する大淀を見て、心の中でガッツポーズする。
「とりあえず、今日着任して、色々とお疲れでしょう。書類整理も終わったことですし、今夜はもう休んでください。」
「いいのか、大淀。ありがとう」
「いえ。それで、明日からは、提督にここの艦娘たちのカウンセリングをして欲しいんです。」
「だな。まずはみんなの心を立て直さなきゃだな。」
「はい。それで、最初の方なんですが…まずはこの方を担当して欲しいんです。」
「おお、どれどれ」
大淀が一枚の所属艦娘データ紙を見せてきた。
「……工作艦の明石か。」
「はい。やはり彼女がいませんと、工廠の効率が上がりませんし、それに…個人的な意見で申し訳ないのですが、彼女とは以前同じ鎮守府に所属していて…」
「友人の悩みを解決させて欲しい、ってか。」
「すみません」
「いや、大丈夫だ。むしろ、大淀は優しいんだなと改めて思えたよ。」
「いえ、そんな…」
少し赤面する大淀。
「…で、明石には過去何があって、今どんな状況なんだ?」
「はい、実は…」
大淀が淡々と告げる。
「今の彼女には…左手首より先が無いんです」
ここまで読んでくれてありがとうございます!
上手くかける他の先輩筆者さんたちが羨ましいです…
次回からは明石さんです!
これからも頑張ります、よろしくお願いします!