笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
すっかり冷えて来ました…
筆者寒いのは苦手中の苦手です…
おまけに今日に限ってカイロと手袋忘れるという…
長くなりました本編どうぞどうぞ。
※今回は金剛さんの過去編で、前後編予定です。
かなり残酷な描写あります。
苦手かもと思ったら、無理せず戻ってください。
ーーー第11鎮守府
「ふぁ〜…」
ゆっくりと提督はベッドからその身を起こす。窓から見えるのはあいにくの空模様。しとしとと雨もふっている。
「さて、と…」
着替えを済まし、彼は寝室から出て執務室へ。机には美味しそうな洋風朝食が並ぶ。そしてその傍らには、
「ヘーイ、テートクー!good morningデース!」
「おはよう、金剛」
満面の笑みで朝の挨拶を交わす、彼の秘書艦、
「今日も張り切って、愛情たっぷりのbreakfast作りましたヨー!」
「はは、ありがとうな。いただきます」
提督は金剛自慢の朝食をとる。互いに見合い、笑みをこぼしつつ。
「…ごちそうさま。今日も美味しかったよ」
「Thank youデース!テートク、今日も一緒に、お仕事頑張るネー!」
「ああ、そうだな。…さて、と。」
提督の表情は、先程の微笑みから一転、暗くなっていた。
「テートク…」
「念のため、な。」
そう言って提督は、重い腰を上げ、傘をさして外へと出た。向かう先へと、真っ直ぐに。そして彼の目は、いつもと変わらない、異常な光景を目の当たりにした。ふぅ、と大きくため息をつく。
「今日もわざわざ雨の中、遠いここまでご苦労様…と」
そこには、ビニールの口が開いて中身が散らばった、たくさんのゴミ。ここで出たゴミではなく、ここが処理場を兼ねていたり、収集場所になっているわけでもない。つまりどういうことかというと…
ここのゴミは、全て近くの街から、そこの住人が置いて行ったものである。不法投棄もいいとこだ、と呟きつつ、提督は今日も、雨の中1人でゴミを処理するのだったーーー
ーーー「ただいま…」
数十分後、ゴミの処理をたった1人で済ませて手を洗い、執務室へと戻った提督を、金剛が迎える。彼女もまた暗い顔だった。
「あ、テートク、おかえりなさい…今日も、デシタカ?」
「ああ…。たくさん置かれてたよ」
「そうデスカ…いつも私たちのせいで…本当にゴメンナサイ…」
「いや、いつも言っているだろ?気にしないでいいし、これは金剛たちのせいじゃないって。な?」
そう言って提督は、金剛の頭を撫でる。
「うぅ…」
「…さて、気持ち切り替えて、今日も頑張ろう、な?俺は元気な金剛が一番好きだよ」
「もー、テートクったらー!お上手デース!」
「あはは、ありがとう。じゃあ、始めるか」
ーーー艦娘。それはありし日の艦の魂を持つ少女たちであり、人類を圧倒した深海棲艦の脅威への唯一対抗できる存在。
しかし。
一部、ごく一部の人間は、彼女たちに対してあまりいい印象を持っていないのだ。そいつらにとっては、艦娘=得体の知れない兵器人間、らしい。
大本営が各地に鎮守府を置く時も、そのうちいくつかの建設予定地で、住民の反対運動が起こった。ただ大本営、国家としても、その予定地近くが重要な都市だったり、工業港だったりと、外せない根拠をしめすはっきりとした、少なくとも差別派の人間の理不尽なそれよりはましな理由もあった。大本営の必死の住民への説明会などで、その殆どは要求をのみ、設置を容認した、ただ。
全てではないのだ。表では一応納得したように見せ、鎮守府が始まった途端に住民たちの嫌がらせなどが連発することが希にあった。
第11鎮守府は、その典型例だった。魚介類の国内水揚げ量の大方を占める漁港が、すぐ近くにあることで建てられたのだが…運営が始まった途端に、住民の陰湿な嫌がらせも始まってしまった。先程のように、天候に関わらず門の高い塀を越えてゴミを投げ入れてきたり、塀に暴言を書きなぐったり。艦娘が外の街へ出れば、店の店主からは「あんたらに売る品などない」と門前払い。さらに、すれ違った人にわざとぶつかられて倒されたり、大声激しく罵られたり…数えだしたらキリがないのだ。
さらに、ここの街の住民たちの差別の矛先は艦娘に収まらず、設置賛成派だった漁業関係者やその家族、しまいには提督までにも及んでいたーーー
ーーー「お姉様…?」
「oh...ヒエー…」
「大丈夫、ですか?…やはり、司令とのことで?」
「yes…やっぱり最近、テートクの表情がとても暗いデース…私もとても心配デース。
…って、私たちが原因なのに、おかしい、デスヨネ…」
「そんなことありません!」
比叡は思わず大声で叫んでいた。
「おかしくないです、お姉様!」
根拠などない。しかし、比叡は自身が気づいた時には、そう叫んでいたのだ。
「…す、すみませんお姉様、いきなり…」
「No problemネ、ヒエー。大丈夫デスヨ。私たちも、出来ることで、提督を助けて、一緒に少しでも幸せに、過ごしまショウ」
「はい、お姉様…!」ーーー
ーーー意気込む金剛、比叡。やがて、彼女たちには、更なる大切な人ができた。漁業関係者の子供たちである。この街で数少ない、艦娘に友好的な人たちだ。
時々、鎮守府に招き入れては、提督と一緒に、その子達と一緒に遊んだり、簡単な楽器で音楽を楽しんだり、勉強を教えたりすることもあった。
「金剛おねーちゃん、見てみてー!」
「oh!meたちの絵デスカー!とっても上手デース!」
「比叡おねーちゃん、クッキー焼けたよ!」
「いい匂いだね!また、一緒に作ろうね!」
「提督さん、ここの問題は…」
「ああ、ここは道のりを求めているから、この公式を使って…」
ちなみにこの時、金剛は比叡に料理のノウハウをありったけ叩き込み、比叡はメシマズ艦を見事に脱却。こうしてお菓子作りをすることも増えた。
…しかし、そんな幸せな日々も、そう長くは続かなかったーーー
ある日。
夕方に買い物をすべく、提督が街に行ったきり、なかなか帰ってこない日があった。心配になる金剛。そして、夜遅く…
「遅くなって、すまん…!帰ったぞ…!」
帰ってきた提督を迎えに、玄関に走る金剛。だが…
「もう、遅いデース!
おかえりなさい、テート…ク…!?」
「ああ…ただい、ま…金、剛…」
苦しそうに受け答えする提督は、体中に痣や出血があり、服も何箇所も裂かれていた。そして、彼は、目に涙を浮かべ、同じようにボロボロの、数人の子供を引き連れていた。見覚えがある。そう、漁業関係者の子供だった。
「どうしたんデスカ、テートク!?傷だらけでボロボロデース!それに、その子ハ…!?」
「ああ、実は、な…」
提督はこう言った。
ーーー買い物をしようと街まで出掛けた(と言っても何も売ってもらえずまたしても門前払いだった)時の帰り、街中の公園からの子供たちの泣き声を聞いた。近づいたそこには…
「もうやめて!痛いよっ!」
「うるせーなっ!おらっ!」
「うわー!泣いてる泣いてる!すげー無様なんですけど!」
数人の男女。高校生くらいだろうか。彼らがよってたかって、子供たちに暴行を加えていたのだ。子供たちを助けようとした提督。しかし、提督もまた高校生たちから、「てめぇもそこでくたばってろ」などと暴言を吐かれ、さらに暴行を何度も受けて、こうなってしまったとーーー
「そんな…ひどすぎるデース…!」
「すまねぇな、金剛…」
提督をぎゅっと抱きしめる金剛。子供たちを迎えに来た漁業関係者たちも、思わず深い怒りや悲しみの色を顕にしていた。
「俺たちの子供に、なんてことを!」
「提督さんも、ごめんなさい…」
彼らが帰って行き、静かになった鎮守府。金剛と比叡は、提督の応急処置をしていた。
「テートク…これで、ひとまず手当ては完了デス…」
「司令、本当に、大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとな、金剛に比叡。大丈夫だよ」
「ならいいんデスガ…」
「もしまた痛くなったりしたら、いつでも呼んでください。」
「悪いな、心配かけて。本当にありがとう。今日はもう、寝かせてもらうよ」
「ゆっくり休んで、早く傷を治してクダサイネ…」
「ああ、そうだな。おやすみ、金剛、比叡。」
「おやすみなさい、司令…」
「goodnight…」
彼女たちに優しく微笑んで、提督は眠りについたーーー
ーーー彼女たちはその時、夢にも思わなかった。おそらく、万が一知っていても、信じたくなかっただろうーーー
この2人が見た笑顔の提督は、
これが最期だったのだーーー
というわけで今回も読んでくれてありがとうございました!
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ではまた。