笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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本編どうぞーーー!


温かみに触れて

 ーーー翌朝 第35鎮守府

 起床すると、既に比叡と響が朝食を作ってくれていた。

「おはようございます、司令」

「司令官、おはよう」

「ああ、二人ともおはよう」

 3人で朝食をとる。比叡は響に、昨夜のことをもう説明していた。響も納得してくれたようだ。…食後に彼女からの要望で、数分間頭を撫で続けてからだが。

 今日は、早速金剛の療養を始めるべく、俺は響と比叡とともに、彼女の部屋に行くことにした。

 

 ーーーヒトヒトマルマル 金剛の部屋

「お姉様?比叡です」

「ヒエー…?オーケイ、どうぞ入ってクダサイ」

 内側から開かれるドア。金剛が姿を現す。

「今日はどうしたんデスカ、ヒエー…?」

「いえ、少しお話がしたくて。

 …司令と、響ちゃんも一緒に」

「……」

 黙り込んでしまう金剛。やっぱり、まだ厳しかっただろうか。…と、

「ワカリマシタ…テートクと、響も、通してクダサイ」

 相手側から了承がきた。俺と響は中に入る。

「…失礼するよ、金剛」

「失礼します」

 中の小さなテーブルへと促され、4人でそれを囲む。

「…比叡から話は聞いているよ。…辛かったんだな…」

「…」

 無言で頷く金剛。恐らく、今も人間不信になったままなのだろう。今の彼女の姿は他の鎮守府で見られる、元気な姿とは正反対だった。

「…テートク…ゴメンナサイ…」

「いいよ、謝らなくて。」

 ーーー無言。いざとなると、何を話していいかわからない。と、唐突に響が言った。

「金剛さん、明日僕、間宮さんや司令官と街へ行くんだけど…よかったら、金剛さんも来ませんか?」

「…」

 考え込む金剛。目を固く閉じ、必死に考え込んでいる。過去との葛藤だろうか。

「…無理はしなくていいんだ、けど…」

 俺も金剛に言葉をかける。

「金剛、ここの街の人たちは、みんな金剛たち、艦娘を信頼して、共に助け合って暮らそうとしている。本当に、心からの気持ちでな」

「…知って、イマス。時々、ヒエーから聞きますカラ」

「お前がかつて人間から受けた仕打ちは、許されざるものだ。でも、ここの街の人は、そんなこと絶対にしない。もう一度、人間を信じてみないか…?」

「テー、トク…」

「私からも、お願いします。金剛お姉様…」

 比叡も援護射撃してくれた。

「…ワカリマシタ、皆サン。明日、よろしく、お願いシマス」

 金剛が、迷いの末に出した結論だった。…100%同意したようではなかったがーーー

 

 ーーーさらに翌日 ヒトヒトマルマル

 鎮守府の正面玄関に集まらせたのは、響、間宮、金剛、比叡。俺は彼女たちを、ジオアトスに乗せた。

「じゃあ、出発するぞー」

 アクセルを踏み、車が加速していく。十分ちょいで街の商店街の入口に着いた。駐車場に車を停め、俺たち5人は街へと歩き始める。

 金剛はというと、今日はここまででも終始不安そうだった。当然だろう。後部座席の真ん中に座っていた移動中の時も、両脇の比叡と間宮にずっと支えられていた。

「金剛、無理はしなくていいが…できれば、少しでも商店街の人々と会話してもらいたいっていうのが、俺達の本音なんだ。できそうか?」

「…頑張って、ミマス」

 蚊の鳴くような声で、彼女がそういったのが聞こえたーーー

 

 ーーー商店街

「えーと、まずは青果店ね…」

 間宮が、商店街の中の一つの店に向かっていく。そこは青果店で、カラフルで鮮やかな色の果物や野菜が、店先に並んでいた。

「すみませーん」

「おお間宮さんか!いらっしゃい!」

 八百屋の中から、初老の男性店主が姿を現す。

「今日もとれたての野菜や果物がいっぱいあるから、ゆっくり見ていきなさい。

 …ん?ありゃ、あんたそこの鎮守府の、提督さんかい!?それに綺麗な艦娘のねーちゃんたちたくさん引き連れて!天国だなっ!」

 がっはっはと、大声で笑っている店主。

「こんなにねーちゃんがたくさん来たんなら、なんかサービスしなきゃだなぁ!」

 そう言って、店主は店先のトマトを5つ、小さなザルに載せ、俺達の前に運んできた。

「遠慮なく、食ってくれ!」

「いや御主人、しかし…」

「気前がいいのが男前ってもんよぉ!ほらほら、新鮮なうちにっ!」

 俺達は勧められるがままに、トマトをとる。比叡がまず一番にかぶりついた。

「…おいしい!」

「だろぉ!?喜んでもらえて何よりだぜ!」

「今度カレーにも入れてみよう…!いいとこ見つけちゃったな!」

 俺達もかぶりついた。口に広がる酸味と甘味。その絶妙なバランスに、思わず口角が上がる。

「ほんとだ!これは絶品だな!」

「ハラショー」

 金剛は店主のノリに、若干戸惑いながら、トマトをじっと見つめている。とても複雑な表情だった。

「ほら、金剛さん!あなたも!」

 間宮に促され、俺達と同じように、金剛もトマトを人かじり。

「…oh...!これは、とってもdeliciousネー…!」

 気づけば、金剛はトマトを全て食べ終えていた。5人の中で、一番遅くかぶりついたはずだが…

「おお!あんたいい食いっぷりじゃないか!嬉しいねぇ、また来た時サービスしてやっからな!」

 間宮さんが買い物を終えたので、店主に別れを告げ、青果店を後にした。

「次はお米屋さんね、っと…」

 間宮さんは少し歩き、お米屋さんへと着いた。

「ここも今の時間なら、サービスがあるのよね〜」

 買い出しにいつも行っていることからか、彼女は商店街の情報にやたらと詳しい。すごい。

 お米屋さんの前に来ると、何やら行列が出来ている。そしていい匂いも…

「間宮さん、この匂いって…!」

「ふふ、気づいた、響ちゃん?ここはね、お昼のヒトヒトマルマルからヒトサンマルマルまでの限定で、格安の軽食をとることが出来るの!」

「へえー!すごいですね!」

「俺も初耳だなぁ…」

 行列に並び、やがて自分たちの番となる。店奥のスペースへと案内される。

「私も最近知ってね。それで、たまに使うの。おすすめは米粉パンサンドイッチのセットかな〜」

「なるほど…」

 そうだ、金剛は…というと、彼女は先程の暗い表情が、少し和らいでいる。ただ、やはり落ち着けはできないらしく、少し戸惑うように周囲を見回している。

「あ、来たみたいだ」

 頼んだサンドイッチセットを運んでくる、若い男女。夫婦だろうか。と、男の方が聞いてきた。

「ごゆっくりどうぞ。そうだ、あなた方は、艦娘の方達ですか?」

「は、はい。そうですけど」

 唐突の問に比叡が答える。すると、今度は女性のほうが、

「やっぱり!」

 と言うといきなり、2人は揃って深々と頭を下げてきた。

「「いつも、ありがとうございます!!」」

 人目を気にせずに。

「え、いや、あの…」

 戸惑う俺達に、男性が話す。

「私の兄が輸送船の船長なのですが、この間そちらの艦娘に助けてもらったと言っていたのです。本当に感謝しております。」

「私たちがこうやってお店をやっていられるのも、あなた方のおかげです!なんと言ったらいいか…」

 2人から、心からの感謝の言葉を、他にもたくさん並べられた。さらに、代金を少し割引してくれたりと、至れり尽くせりだった。サンドイッチも美味しかったし。

「司令官、なんだか嬉しくなっちゃうね。」

「ああ。これからもそれに応えられるよう、頑張らなければな。」

「私も食事で、それを支えますね」

 俺はみんなと話しつつ、商店街のほかの店も廻った。どこも親切に、温かく接してくれた。金剛も、だんだんと笑顔を見せる回数が増えてきたが、やはり戸惑いも同様に見せていたーーー

 

 ーーーヒトヨンサンマル

 俺達はすべての買い物を終えて、商店街入口の駐車場へと来ていた。俺はみんなに言う。

「さて、じゃあ車に荷物のせて。これからもうひとつの目的地行くから」

「了解、司令官」

 納得する響。間宮も頷く。ただ、比叡と金剛はこのことを話してないため、キョトンとしている。

「…anotherの目的地?テートク、それは、どこですか…?」

「ああ、車の点検だよ。」

「司令、でしたら明石さんや夕張さんに頼めば…」

 比叡のごもっともな問い。

「うーん、いつもならそれがいいんだけど…」

 俺はジオアトスのフロントガラスの上部をさして言った。

「…こいつもうすぐ、車検なんだよね」

 

 ーーーヒトヨンゴマル

「さてと、もうすぐだよ」

 町外れに進んで数分、やがて車の窓から、目的地である海のそばのある建物が見える。

「大本営からここへの異動通知が来てから、車検受ける所探すのに苦労したんだ。んで、なんとかここを見つけてな、そしたら、俺の祖父とここの店主が結構面識あったんだよ」

「そうなんデスカ…」

 つぶやく金剛に、俺は言う。

「それから金剛、ここに今日いる人に、是非お前を会わせたい。」

「え…?」

 再びキョトンとする金剛。

「誰、デスカ…?」

 俺は静かにその人の名を答える。

「郷秀樹さん、っていうんだけどね…

 よし、着いた」

 車を止めたそこの店の看板には、

『坂田自動車修理工場』

 の文字があったーーー




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