笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
筆者は金欠です…なのに…
なぜココアやカフェオレはやめられないのだろう(真顔)
本編どうぞです。
錆びた鎖の縛るモノ
「そうか…。分かった、変なこと聞いてすまん、霧島」
「いえ…こちらこそ、わざわざ姉のことを気にかけて下さり、ありがとうございます」
すると、やりとりに気づいた金剛と比叡が、こっちを見て言う。
「…?2人ともどうしたネー?せっかくの紅茶が冷めちゃいますヨー?」
「スコーンも食べてください!私の自信作です!」
金剛と比叡に促され、とりあえずティータイムを済ませたあと、俺は霧島を連れて執務室へ行くことにした。すると、食堂で第六駆逐隊の姉妹たちとおやつを済ませてきた響と合流した。
「司令官、ただいま。おかえり」
「おう響、おかえり、ただいま」
「うん!あ、霧島さん、こんにちは」
「あら響ちゃん、こんにちは」
そのまま、3人で執務室へと入る。現在療養を試みている、榛名のことについて話し合うためだ。そのきっかけは、数日前ーーー怪獣アーストロンが出現し、金剛と比叡、そしてウルトラマンジャックが倒した日の翌日に、朝の執務室に霧島が訪ねてきたことである。
ーーー数日前
響と一緒に、書類を整理していた俺。不意に、ドアがノックされた。
「司令、少し失礼してもよろしいでしょうか?」
「ん?構わん、入ってくれ」
「では、失礼します」
ドアを開けて現れたのは、
「お、霧島。どうした?」
「おはようございます、司令。その、少しご相談したいことが…」
「そうか。よし、そこに座ってくれ。」
言われた通り、ソファに座る霧島。俺と響は向かい側に座る。
「で、何かな、相談事って」
すると霧島は、その前に司令に質問があります、と前置きした上でこう聞いてきた。
「司令、私たち艦娘が、どのようにしてこの世に生を受けるか、現在確認されているその事例を全て、解説を添えて言えますか…?」
「霧島さん…」
響が見つめる中、俺は答えた。大本営で艦娘の世話係だったので、こういうことは得意分野だ。
「まず一つ目は、ドロップ型艦娘だな。海で生まれ、その海域の敵を倒した時に、艦隊によって発見されるパターンだろう。確か、自然型艦娘、とも呼ばれるな。」
「正解です。他には?」
「建造型艦娘。大本営や各地の鎮守府の工廠で、資材を使うことで生み出される艦娘。任務の報酬として大本営から来るのもそうだよな。」
「はい、そうです。」
淡々と答える霧島。
「まあ、その2つだよな。」
そう俺が言った時の霧島の顔は、やはり真顔というか、無表情だ。そこで、一言付け加えるように言う。
「…大方は。」
霧島の表情が一瞬、何かを当てられたかのように変わった。しかし、すぐにまた無表情になる。しかしその無表情は、何かを押し殺しているように、俺は思えた。少なくとも、響も同じように感じていたようで、じっと霧島を見つめている。そして当の本人は、再び口を開いた。
「では、他にあると。」
「相談してきた霧島、君自身が一番よく知っていてーーーそしてそれが、今回の相談事の要点、なんだろ?」
そう言うと、霧島は少しだけ口角を上げて言った。
「ふふ…流石です司令、データ以上の方ですね。明石さんや金剛お姉様が復帰できたのも、納得できます」
…金剛に関しては、たまたま地球に来ていたウルトラマンジャックーーー郷さんのことを紹介しただけなんだけどな。きっと、尊敬する姉だから、ということだろうか。
「ありがとな、霧島。んで、さっき言った大方の二つの他、もう一つのパターンっていうのは…人産型艦娘、だろう?」
少し間を開けて、霧島が答える。
「…ご名答です、司令。では、それはどのようなものかは、わかりますよね?」
「ああ。人産型の文字通り、一般の人が産んだ艦娘ってことだろう?と言っても、艦娘とだけあって、今のところ産んだ本人かその相手側のどちらかが、海関係の仕事をしているって聞いたが。」
「…司令、その説明…お見事です。」
そう言われるとなんか嬉しい。というかその語り口から、昔ヒットしたとある予備校教師がMCの番組を思い出してしまったが…
霧島は続けて語る
「それで…今回の相談事は…私の姉であり、金剛型戦艦三番艦の…榛名お姉様のことなんです。」
「なるほどね…榛名なら、俺も見かけたことはあるな…」
…しかし、ここの彼女もまた、郷と会う以前の金剛のように、自分に対して恐怖心を抱いているようだ。そして…その度合いが、金剛とは比べ物にならないくらいなのだ。
「ここまで霧島、君が話したことから探ると…要するに、榛名はその人産型艦娘、なんだろう?」
すると、俯きつつ答える霧島。
「はい。そして…榛名お姉様は…生みの親に、ひどい虐待を受けたんです」
「虐待…!?そんな…」
「私も最初会った時は信じたくなかったわ。尊敬するお姉様が、虐待を受けて育ったなんて…
でも、すぐに気づいたんです。体中に残る傷跡に、そして怯えきった表情に…妹にあたる私にも、なかなか心を開いてくれませんでした…」
「…霧島。榛名は君に、虐待の詳細を話してはいるのか?」
「あ、はい…その、榛名の他にも、憲兵さんとかにも話を聞いて、ようやくその詳細がつかめたのですが…」
「よければ、そのことを、詳しく俺に話してくれないか?」ーーー
ーーー霧島はこう語った。
まだ、艦娘の存在がようやく世間に知れ渡った頃のこと。ある港町の1組の夫婦の間に生まれたのが、榛名だった。
しかし、榛名は艦娘。当然、生まれた時は人と何ら変わらない赤ん坊だったが、普通の人と比べ、桁違いのスピードで成長、1ヶ月も経たないうちに、現在各地の鎮守府で見かけるような榛名の姿となった。そしてそれゆえに…夫婦は榛名を気味悪がり、そしていつしか虐待が行われるようになった。
父親からは暴力を常に振るわれえ傷だらけにされ、母親からは言葉で精神的に追い込まれる。飯もろくに与えられず、部屋にずっと縄で拘束されるようになっていった。
そんな日がとても長く続いた。だがある日、榛名はたまたま夫婦の家に来ていた訪問販売のセールスマンに、力を振り絞って助けを求めた。夫婦は驚き、必死にごまかそうとするが、セールスマンはすぐに家を出て、近くの交番の警察官にこのことを知らせる。夫婦は即刻逮捕された。そして榛名は警察に保護され、そして運び込まれた病院で、初めて艦娘ということが明らかになった。
当時、人産型艦娘は大本営ですら存在を把握しきれていなかった。皮肉にもこの事件で、その存在、そしてそれに対する調査が進んだのだ。
しかし当の榛名は、身体の傷が癒えても、心の傷は癒えるはずがなかった。着任した鎮守府で霧島に出会い、彼女に対し少しづつ心が開けても、虐待で植え付けられた恐怖心でまともに戦えなかった。もちろんその鎮守府の提督は優しかったのだが…榛名は、こんな自分はまたひどい仕打ちを受けてしまうと被害妄想に走ってしまった。そしてある夜ーーー彼女は鎮守府を脱走した。
どこに向かうかも決めずに、ただ逃げることだけ考えて、暗い夜道をただ走り、そして疲れ果てて、そして発見した大本営によって、ここ第35鎮守府へと送られたのだとーーー
ーーー「…ひどい話だな…」
「私も本当に、そう思います…。
…お願いします提督、どうか榛名お姉様を、本来の強くて優しい方に治して欲しいのです…」
「うん…俺もそうしてあげたいが…」
俺はその話を聞きつつ、対策を練っていた。今回はかなり厄介な事例だと考えいたからだ。今まで通り俺がカウンセリングに当たっても、虐待によって大きな恐怖心を植え付けられた榛名にはかえって逆効果だからであるからである
「霧島、対策を考えたいから、少し時間をくれないか?」
「は、はい司令、分かりました」
ーーーそして今に至る。そう、考えがまとまったのだ。
「で、司令、考えというのは?」
俺は霧島に冷静に伝える。
「俺があまり出すぎると、かえって榛名には逆効果だ。だから…」
俺は脇にいる艦娘の頭に、ポンと手を置く。
「響に、今回のカウンセリングを任せようと思う。」
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今回も読んでくれてありがとうございました!m(_ _)m
また次回お楽しみに!