笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
あと、咳風邪にかかりました。
痰や鼻水もひどいです。
皆様もお気を付けて…
本編どうぞ。
ーーーバラックシップ。かつて出現した個体は、1980年に出現した、かつてアメリカから東京へ向かう途中、氷山にぶつかって沈んだ完全無人貨物船・クイーンズ号の成れの果ての姿だ。その時の積荷にあった、強力な磁力を発生させられる特殊な合金を使って付近のあらゆる船舶や飛行機を自分の身体にに引き込んで、東京に向かおうとした。船舶ごと取り込んだ砲台を武器に持ち、そこから砲弾を一斉発射して、スペースマミーをも撃墜させた強者である。別名、スクラップ幽霊船ーーー
ーーーというのをファイルで俺たち4人は確認。
しかし決定的に違うところがある。前回出現した個体が貨物船主体で、コンピュータ制御だったのに対し、今回出現した個体は大井のマイナスエネルギーから生まれ、そしてかつて人類が使用した軍艦主体のボディ。おまけに深海棲艦まで取り込んでいる。間違いなく、前回の個体より強くなっている。艦娘のような言い方をするならば、バラックシップ改二、というのが適当だろうか。
俺と矢的先生は、すぐにスカイマスケッティで現場に向かうことにした。俺は操縦しつつ、現場にいる吹雪たちに指示を出す。
「吹雪たちは、とにかくまず大井の救助が最優先だ。その海域近くにある無人島に、ひとまず撤退してくれ。もし余力があるなら攻撃、バラックシップを食い止めるんだ。ただし繰り返すようだが、あくまでも救助が最優先だ。おまけに相手はかなりの強敵だろう、とにかく無茶まではするな。」
「了解です!」
すると矢的先生が、俺に提案をしてきた。
「提督さん、確か現場にはスカイハイヤーがいるはずだな?」
「あ、はい。」
「スカイハイヤーには、相手の身体の構造をその芯まで解析できる、ボディーリサーチ・レイ機能が搭載されているはずだ。それを使って、バラックシップを調べて欲しい。」
「なるほど、わかりました!」
俺はすぐさま鎮守府の赤城に連絡を入れる。約一分後、スカイハイヤーの妖精さんからデータが送られてきた。それによると、奴は吸収した軍艦の装備や深海棲艦、そしてマイナスエネルギーの核からなるということがわかった。
しかし、吸収した深海棲艦がえげつなかった。
駆逐イ級や軽巡ト級、重巡ネ級が数隻の他、駆逐棲姫や装甲空母姫、さらには陸上型のはずの飛行場姫や泊地棲姫までもが確認されたのだ。
「どういうことだこりゃ…」
「おそらくマイナスエネルギーの影響で吸収され、バラックシップごと動けるようになったのだろう。」
「なるほど…」
…感心している場合ではない。俺はアクセルを踏み込み、海域へと加速したーーー
ーーー「ウラー!今のうちに!」
「大井さん!大丈夫っぽい!?」
そのころ当の海域では、6人の駆逐艦娘たちが半々にわかれ、それぞれの活動をしていた。
通常北上が見えない響、吹雪、暁はバラックシップへの攻撃。残りの夕立、雷、電は、大井の救助及び避難誘導を行う。
「ありがとうみんな、大井っち、ほら!」
「私たちで食い止めます!やっつけちゃうんだから!」
夕立たちがなんとか大井を連れ始めたのを確認し、響たちも攻撃しつつ後退する。が…
「…!?そんな、攻撃が効かない!」
「なにあれ!どうなってるの!?」
練度の高い第六駆逐隊や吹雪、夕立の攻撃さえ、バラックシップは受け付けない。それどころか、無数の砲台から砲弾を一斉発射して来たのだ。
「きゃああああ!!」
途切れない弾幕に、響、吹雪、暁は中破に一気に追い込まれる。
「妖精さん、急いで援護を!」
鎮守府の赤城が、艦載機の妖精さんに援護射撃を命じた。
「まかせるです!ファイヤーストリーム、はっしゃです!」
「ゴールデンホーク、くらわせます!」
「クアトロ・ブラスター、いくぞー!」
それぞれスカイハイヤー、タックスペース、クロムチェスターδの主力武器が、バラックシップに命中する。それでもダメージは与えられない。
「赤城さん!どうするですか!?」
「くっ…ここは避難が最優先です!ミサイルを発射、空中でぶつけて、煙幕がわりに使ってください!」
「わかりました!」
3機から放たれたミサイルが空中でぶつかり、その煙がバラックシップの視界を塞ぐ。そのおかげでなんとか命からがら無人島に隠れた全員の耳に、スカイマスケッティのエンジンの音が聞こえてきた。
大井はまだ、生気を失ったような顔だったーーー
ーーーここはどこだろう。私は何をしているのだろう。
大井は真っ暗な闇の中にいた。
北上が死んだことは、最初から分かっていた。
受け入れなければならないことなんて、分かっていた。
でも、できなかった。それをしようとする度、自分の負の感情が溢れ出てきたのだ。
北上は、自分をかばって自分の代わりに沈んだ。もしあの時、自分が魚雷に気づいていたら。もしあの時、周りの敵をもっと確認していたら。過ぎたことは変わらない、そんなことは分かりきっていた。でも、後悔の念は止まらなかった。毎日北上のことを思って、ベッドに顔をうずめ、濡らした。
そんなある日、北上が帰ってきた。直感で生きている北上ではない、とわかった。でも嬉しくて、そして同時に怖かった。北上の死に責任を感じていたからだ。もしかしたら恨まれているかもしれない。だからこそ、大井は北上に、生前と同じように明るく振る舞った。そんなある日、北上のいないところで、幽霊のことを調べていた。そして知ってしまった。
霊魂がこの世にとどまれる時間は、49日間だということを。
悲しかった。せっかく来てくれたのに。そして募る、後悔の念、謝りたい気持ち、そして何も出来なかった、何も出来ずにいる自分の無力さ。それがどんどん溜まっていき…いつしかその感情に、自分は支配されていた。
提督たちが懸命に、自分のために何かしていることだって分かっていた。でも、自分は逃げてばかりだった。辛いことから、謝る怖さから、北上がいなくなって一人になってしまうことから。
もう私には、救いの手など差し伸べられもしないだろう。大井はマイナスエネルギーをその体から絶えず湧き出しつつ、暗い心の闇の海に沈むような感覚を味わっていた。とーーー
「…さん!…いさん!大井さんっ!!」
誰かが、自分を呼ぶ声がする。聞いたことがある声だ。でももう…
「大井さん!君と話したい。君はまだ、生き続けなければならないんだ!」
その声は、自然と自分に力を与えてくれるような、温かくて、どこか不思議な声だった。ならば、もう1度、もう1度だけ、それに応えてみてもいいかもしれない。
彼女の心の中で生まれた微かな希望が、彼女に闇の中から脱出するエネルギーを与えてくれた。
大井は、微かに見え、そして大きくなっていく光に、手を伸ばしたーーー
ーーー「う、うぅ…」
「大井さん!」
「大井っち!」
目が覚めると、自分は島の地面に寝ていた。既に救助艦隊は、提督に率いられて撤退している。今この島にいるのは、大井、北上、そして矢的先生の3人だけだ。矢的先生がちゃんと話をしたいからこうしてくれ、と頼んだのだ。
「よかった、気がついた」
「北上さん…矢的先生…ここは?」
「…何も覚えていないの、大井っち?」
「おそらく、マイナスエネルギーに体を支配されていたのだろう。」
「矢的先生…私、少し前から記憶が…」
「やはりな…」
「はい…?あの、北上さん、これって…!?」
大井はまた目を見開いた。北上はもう、体の一部が見えないほど透けていた。
「北上さん…」
「…大井っち。大井っちも知ってると思うけど…今日が限界なんだ。」
北上は大井をまっすぐ見つめて、自分の事実を伝えた。
「そんな…嫌です!私を置いていかないでください!!」
目に涙をいっぱいにため、声を張り上げる大井。
「大丈夫。置いていくわけじゃないよ、大井っち」
北上は答えた。その声さえ弱かった。でも、顔は微笑んでいた。
「私がこうして幽霊として甦れたのも、大井っちが私を強く思ってくれた、そのおかげなんだよ。」
「でも…北上さんを…北上さんを沈ませたのは…私なんですよ…?あの時私が…!私がもっとしっかり出来てれば…!」
「大井っち!!」
北上も泣きながら声を張り上げた。
「大井っちを恨んでたら…私、とっくに大井っちの霊力使って、呪い殺してるよ?」
「え…?」
「物騒な表現使っちゃったけど、私は大井っちのことなんて、これっぽっちも恨んでなんかないんだよ。それにね、」
北上は大井の目線に合わせてしゃがみこんだ。
「大井っちとこんなにいれて、楽しくなかったわけないじゃん?」
「北上、さん…」
「だからこそ、私は天国から、大井っちのこと見守る。ね?だから1人じゃないよ。」
見上げる大井。そんな彼女に、もう1人が声をかけた。
「これが北上さんの気持ちだ、大井さん。」
「矢的先生…」
「だからこそ、大井さんも北上さんに、自分の気持ちを自分の気持ちで伝えなきゃ。な?」
「でも…辛いです…」
「大井さん。誰だって同じさ。心の中に辛いことを持っている。誰だって涙の味を知っている。でも、それでも人は前に進む力を持っている。」
「力…?」
「そう。誰かを愛して生きて、どんなことにも負けない勇気を持っているからこそ、人は前に進めるんだよ。」
「矢的先生…」
一字一句が、彼女の心を強く動かす。
「その愛と勇気は君にもあるはずだ、大井さん。北上さんに伝えたいことがあるんだろう?」
「はい。」
「ならば伝えるのは今だ。さあ、涙を拭いて。大丈夫、君は弱くはないはずだよ。」
「…はい!」
手渡されたハンカチで涙を拭いて、大井は北上の方を向いて立ち上がる。
「北上さん…本当にごめんなさい。それから…本当にありがとう。私は…これからも頑張りますから…どうか見守っていてください!」
大井が大きな一歩を踏み出した瞬間だった。北上の死を受け入れ、そしてそれでも彼女の気持ちを受け、前に進む決心をしたのだから。彼女のマイナスエネルギーはすべてなくなり、今彼女の気持ちは少しづつ明るくなっていた。
抱き合う2人を見つつ、矢的先生は感じていた。
(大井さん…君はどうやら、君にとって一生をかけてやらねばならないことを見つけられたようだね。君の成長を見られて、私も嬉しいよ。)
あえて声には出さず、教師としての温かい言葉にまなざしでふたりを見守る矢的先生。とーーー
ドカーーーン!!!
いきなり目の前の地面が爆ぜた。吹っ飛ぶ大井、北上、矢的先生。なんとか受け身をとってダメージはないものの、爆発で開けた視界には、禍々しい影ーーーバラックシップがあった。
「よくも…!」
大井は島の沿岸に走り砲撃を行うが、バラックシップの装甲には大井の砲撃も全く通じない。
「そんな…!」
動揺する大井。海に出てさらに近づいて攻撃を仕掛けようとする大井。しかし彼女を、制した者がいた。
「矢的先生…!?」
「大井さん、ここは下がっていたまえ。」
矢的先生は前をーーーバラックシップをじっと見つめる。
「まさか、あれと戦う気ですか!?危険です!」
必死に引き留めようとする大井。彼女の方を向き、矢的先生は言った。
「大井さん、君は立派にマイナスエネルギーを断ち切って、前に進むことを誓った。今度は、」
改めて前を向く矢的先生。
「…私が、その君の気持ちに応える番だ!!」
矢的先生はそう言い放つと、数歩先に出る。拳を右、左と力強く前に突き出し、そして右手を、その手に持っているモノーーーブライトスティックを天に掲げて叫んだ。
「エイティッッッ!!!」
瞬間、ブライトスティックから光が放たれ、矢的先生の体を包み込む。その光はどんどんと大きくなっていき、やがて一体の巨人の形を成した。
たぎる強さ、そして力強さを象徴させるかのごとく、銀色の体を走る赤色のライン。
腰に見える、金の菱形。
胸に灯る、青い灯。
無限の優しさを感じさせる、黄金の瞳。
「あれは…!?」
大井は、矢的先生の正体を目の当たりにした。
「シュワッ!」
巨人が飛び立ち、バラックシップを島から遠くへと誘導していく。
呆気に取られる大井に、北上が駆け寄った。
「北上さん…あれって!?」
北上はそっと答えた。
「あれが矢的先生の正体…
ウルトラマン80だよ!」
というわけで今回も読んでくれてありがとうございました!
結構書いてきました…この作品もクライマックスに近づいてきてます(唐突でごめんなさい)。
最後までよろしくお願いします!
評価や感想も待ってます!
では、また次回です!